自然科学・環境土壌学

踏まれた土——都市土壌の締固め・団粒構造・木が育たない理由

富士ヶ丘サービス株式会社 大石浩之

学問領域:土壌学 公開・更新 2026-08-17 本文 約20,592字 読了目安 37分

要旨

本稿の目的は、都市公園の土を単なる「地面」としてではなく、生き物が暮らし植物が根を張る「生きた系」として読み直すことである。方法は文献整理と概念分析であり、土壌学の基礎——土壌生成の五因子、層位、土壌の三相、団粒構造、有機物と土壌生物、土壌pH、保水性と透水性——を平易に整理したうえで、公園の土が受ける固有の負荷を検討する。土を構造物を支える工学材料として扱う見方とは異なり、本稿は土そのものの成り立ちと生命活動を対象とする。

検討の結果、次の三点が示される。第一に、公園の土に固有の負荷は、踏圧による締固め、造成と客土による層の攪乱、落ち葉の搬出による有機物の断絶という三つに整理でき、いずれも団粒構造という一点に集約されること。第二に、締め固まった土では隙間が失われ、水が浸み込まず酸素も届かないため、根は物理的にも生理的にも伸びることができず、公園の木が育たない理由の少なくとも一部はこの土の側にあると考えられること。第三に、裸地になった広場の土はひとりでには戻りにくいが、人の通る道筋を設計し有機物を還すことで、回復の道筋を描きうること。

最後に、磐田市の都市公園100園に照らして示唆を述べる。街区公園51園・近隣公園14園という規模の分布、砂場があるとされる43園、面積が最大の園と最小の園の対比から、土への負荷の類型を立て、今後の踏査で見るべき土の項目を提案する。ただし当サイトのデータに土壌の情報は含まれておらず、現地踏査もこれからである。本稿が示せるのは断定ではなく、土を見るための枠組みと、確かめるべき問いの一覧である。

キーワード土壌学団粒構造踏圧・締固め土壌有機物土壌動物植栽基盤磐田市

1. はじめに——問題の所在

公園で人が見ているのは、たいてい地面の上にあるものである。滑り台が新しいか、ブランコが何基あるか、トイレは近いか、木陰はあるか。当サイト(ATAWI PARK)が扱う磐田市の都市公園100園のデータも、もとをたどれば市のオープンデータ「都市公園一覧」であり、そこに並ぶのは名称・種別・面積と、トイレ・砂場・遊具の有無という、地上の項目である。地面そのものについて記されているのは、せいぜい「砂場がある」という一行にすぎない。

しかし公園という場所を成り立たせているものの大半は、実は地面の下にある。木が枝を広げていられるのは根が張っているからであり、雨が降ったあとに水がひくのは土に隙間があるからであり、芝生が緑を保つのは土の中で無数の生き物が落ち葉を分解し続けているからである。地上の設備は数年から数十年で更新されるが、土は一度こわれると簡単には戻らない。公園でもっとも交換のきかない資産は、おそらく遊具ではなく土である。

見えない問い
図1公園のデータに書かれているのは地上のことばかりである。本稿は、記録されていない地面の下を見るための枠組みを整理する。

1.1 土壌学とは何を扱う学問か

土壌学(ペドロジーおよび土壌科学)とは、土壌がどのようにしてできるか、どんな性質を持つか、そこでどのような生命活動が営まれているかを扱う学問である。ここでいう土壌とは、岩石が風化してできた鉱物の粒に、生き物の遺骸が分解してできた有機物が混ざり、水と空気が入り込んだ、層をなす自然体を指す。単なる砕けた岩の粉は土壌ではない。生命が関わり、時間をかけて層ができてはじめて土壌と呼ばれる。

この定義は、同じ「土」を扱う別の学問との違いをはっきりさせる。土を構造物を支える材料として扱い、どれだけの力に耐えるか、どれだけ沈むかを問う分野もある。そこでは有機物や微生物はむしろ厄介者であり、締め固めて強くすることが目的になる。土壌学の問いはほとんど逆で、土がどれだけ柔らかく、隙間に富み、生き物を養えるかを問う。同じ一つの地面が、片方の学問では「よく締まった良い地盤」となり、もう片方の学問では「植物が育たない劣化した土壌」となる。この評価の反転が、公園という場所ではそのまま管理上の対立として現れる。

1.2 公園の土に固有の負荷

農地の土壌学は長い蓄積を持つが、都市の公園の土はそれとかなり違う条件に置かれている。第一に、人が繰り返し同じ場所を歩き、走り、立ち止まる。第二に、公園の多くは造成された土地の上にあり、もとの表土が剥がされたり、よそから運ばれた土が置かれたりしている。第三に、落ち葉が掃かれて園外へ運び出され、木が毎年つくった有機物が土に戻らない。農地であれば毎年耕され、堆肥が入り、収穫という形で持ち出される代わりに何かが返される。公園の土は、持ち出されるばかりで返されない土である。

本稿の問いは三つである。第一に、土壌学の基本概念——土壌生成、層位、三相、団粒構造、有機物と土壌生物——は、公園の土をどう見せるのか。第二に、踏圧・造成・落ち葉の搬出という三つの負荷は、土のどの性質を、どのような経路でこわすのか。第三に、こわれた土は回復しうるのか、そのために何を見て、何を測ればよいのか。

1.3 方法と本稿の限定

方法は文献整理と概念分析である。ドクチャーエフに始まりイェニーによって定式化された土壌生成の理論、ダーウィンが晩年に残したミミズと土に関する観察、ワクスマンの腐植研究、日本ペドロジー学会の土壌調査の枠組み、FAOによる世界の土壌資源の評価といった、土壌学の基礎的な文献の概念を、都市公園という対象に当てはめる。本稿は独自の土壌調査に基づくものではない。

あわせて限定を明示しておく。当サイトの踏査は始まったばかりであり、磐田市の公園の土壌については、硬さも、色も、層の様子も、まだ何ひとつ調べていない。したがって本稿は「磐田市の公園の土はこうなっている」とは述べない。述べるのは、一般に都市の公園の土に起きやすいこととして知られている事柄と、それを磐田市の公園データに照らしたときに立てられる仮説、そして踏査で確かめるべき項目である。砂場の衛生のように、判断が専門機関に属する事柄については、その旨を明示して関係機関に委ねる。

1.4 構成

第2節で土壌学の基本語彙——生成因子・層位・三相——を整理する。第3節で本稿の中心概念である団粒構造を扱い、第4節で有機物と土壌生物が果たす役割を述べる。第5節で踏圧と締固め、第6節で水と空気の道、第7節で造成・客土・土壌pHという人為の影響を検討する。第8節で裸地化した土の回復可能性と、想定される反論への応答を行う。第9節で磐田市の公園100園への示唆を述べ、第10節で結論と今後の課題を示す。専門用語は初出のたびに説明する。

2. 先行研究と概念の整理——土はどうやってできるか

土壌を独立した研究対象として立てたのは、19世紀ロシアのワシリー・V・ドクチャーエフである。彼は1883年の『ロシアのチェルノーゼム』で、黒く肥沃な土壌が単に岩石が砕けたものではなく、気候と植生と時間の働きによってできた歴史的な自然体であることを示した。それまで土は地質学の付属物か農業の道具でしかなかったが、ここで土は、生成の歴史を持ち、地域ごとに固有の姿をとる存在として扱われるようになる。

2.1 土壌生成の五因子

この考え方を定式化したのがハンス・イェニーの『Factors of Soil Formation』(1941)である。イェニーは、ある場所の土壌の性質が、気候・生物・地形・母材(もとになった岩石や堆積物)・時間という五つの因子の関数として理解できるとした。同じ母材でも、雨が多く暖かい場所と乾いて寒い場所とでは違う土壌になる。同じ気候でも、斜面の上と下では違う土壌になる。そして、どの土壌にも「どれだけの時間をかけてそうなったか」という履歴がある。

この五因子は、公園の土を考えるときにそのまま使える。公園の土の母材はしばしばもとの地層ではなく、造成のときに運び込まれた土や、掘り返して埋め戻した土である。生物という因子は、植栽された樹種と、落ち葉を掃く人間の管理によって大きく左右される。地形は造成で平らにならされている。そして時間——公園の土が今の姿になってからの時間は、多くの場合、その公園が開園してからの数十年にすぎない。自然の土壌が数百年から数千年かけて獲得する構造を、公園の土は持っていないことがありうる。

五因子のうち、公園を論じるうえで特に効いてくるのが時間である。岩石が風化し、生き物が住みつき、有機物が蓄積して層ができるまでの過程は、人の一生よりはるかに長い時間の尺度で進む。土壌が厚みを増す速さは気候や母材によって大きく異なるが、いずれにせよ、失われた表土が同じ厚みに戻るには世代を超える時間がかかるとされる。土壌が再生可能な資源でありながら、実質的には使い切りの資源として扱わざるをえないと言われるのは、この速度の非対称性による。

生物時間気候
図2土壌は気候・生物・地形・母材・時間の五つの因子がつくる歴史的な産物である。公園ではこの五つがすべて人為に置き換わりうる。

2.2 層位——土は縦に読む

土壌のもっとも目に見える特徴は、縦に切ったときに層が見えることである。この層を層位という。地表に落ち葉や枯れ枝が積もった層をO層、その下の、有機物が分解して黒みを帯び根が集中する層をA層、さらに下の、上から流れ落ちた粘土や鉄が集まる層をB層、風化しきっていない母材の層をC層と呼ぶのが一般的な整理である。日本ペドロジー学会の『土壌調査ハンドブック』のような手引きは、この層位を野外で識別するための観察項目を体系化している。

層位が重要なのは、それが土壌の履歴を可視化するからである。層がきれいに並んでいれば、その土は長い時間かけてその場でできたと考えられる。逆に、黒い層の下にまた黒い層が現れたり、地表にいきなり赤みがかった粘土が出ていたりすれば、そこは掘削・盛土・客土によって層の順序が攪乱された土地だと推測できる。公園の土を一本のスコップで縦に見ることは、その土地の来歴を読むことでもある。

2.3 土の三相——固体と水と空気

土壌はふつう、固体(鉱物粒子と有機物)・液体(土壌水)・気体(土壌空気)の三つの相からなるとされ、これを三相という。ここで肝心なのは、植物にとって都合がよいのは固体が多い土ではないという点である。植物の根が伸び、水を吸い、呼吸するためには、固体の粒と粒のあいだに隙間——孔隙——が必要である。作物がよく育つ土では、体積のうち固体はおよそ半分で、残りの半分を水と空気が分け合っている状態が望ましいとされる。

つまり土の良し悪しは、何が入っているかだけでなく、どれだけ空いているかで決まる。この「空いていること」こそ、踏圧によって真っ先に失われる性質である。本稿がこのあと繰り返し戻ってくるのは、この一点である。

2.4 基本語彙の一覧

意味公園で問題になる場面
層位土壌を縦に切ったときに現れる層。O・A・B・C層など造成で層の順序が乱れ、A層が失われていることがある
三相固体・液体・気体の体積の割合踏圧で気体の割合が減り、根が呼吸しにくくなる
孔隙粒と粒のあいだの隙間。大きいものと小さいものがある大きな孔隙が失われると水が浸みず、水たまりができる
土性砂・シルト・粘土の混ざり具合による分類砂質は水はけがよく乾きやすい。粘土質は締まりやすい
団粒構造細かい粒が集まって小さな塊をつくった状態本稿の中心。踏圧と有機物の欠乏でこわれる
腐植生き物の遺骸が分解してできた黒い有機物落ち葉を運び出すと供給が絶たれる
土壌pH土壌の酸性・アルカリ性の程度コンクリート由来の材料でアルカリ側に傾くことがあるとされる

註:ここでの語の説明は、公園という文脈で必要な範囲に絞った略述である。土壌の分類体系や層位の記号法はより細かく定められており、正確な定義は土壌学の教科書や調査ハンドブックに拠られたい。

3. 団粒構造——土の中の空間はどうつくられるか

良い土とはどんな土か、と土壌学者に尋ねると、多くの場合、返ってくる答えの中心には団粒構造がある。団粒構造とは、砂や粘土といった細かい粒子がばらばらに存在するのではなく、いくつも集まって小さな塊——団粒——をつくり、その団粒がさらに集まって土全体を構成している状態を指す。手に取るとほろほろと崩れ、崩れた先にまた小さな塊がある土である。これに対し、粒子が一つずつ独立して詰まっている状態を単粒構造という。

3.1 なぜ塊になると良いのか

団粒構造の利点は、大きさの違う二種類の隙間を同時に生むところにある。団粒と団粒のあいだには比較的大きな隙間ができ、ここを水が重力に従って流れ落ち、抜けたあとには空気が入る。一方、団粒の内側には細かい隙間が残り、ここには水が表面張力によって保持される。すなわち、水はけがよいのに乾かない、という一見矛盾した性質が両立する。単粒構造では、砂ばかりなら大きな隙間だけになって水を保てず、粘土ばかりなら細かい隙間だけになって水が抜けない。

根にとってはさらに直接的な意味がある。根は土を押しのけて伸びるが、押しのける力には限りがある。団粒のあいだの隙間は、根がほとんど抵抗なく通れる既製の通路であり、根はこの通路をたどって深くへ広がっていく。つまり団粒構造は、水と空気と根という三つのものが通るための道路網である。

団粒水の道空気の道
図3団粒構造は大小二種類の隙間を同時につくる。団粒どうしの隙間を水と空気と根が通り、団粒の内側が水を蓄える。

ただし、団粒がつくれるかどうかは、もとの粒子の顔ぶれにも左右される。土を構成する鉱物の粒子は、大きいものから順に砂・シルト・粘土に分けられ、その混ざり具合を土性という。粘土は粒子が非常に細かく、表面に電気的な性質を持つため、腐植や陽イオンと結びついて団粒の核になりやすい。逆に、砂ばかりで粘土も腐植も乏しい土では、そもそも粒子どうしを結ぶ手立てが少なく、団粒は発達しにくい。土性は人が容易に変えられない条件であり、その土でどこまでの改善が見込めるかを規定する前提となる。

3.2 何が粒をくっつけているのか

団粒は、粒子どうしが何かによって接着されることで生まれる。接着剤の役割を果たすものは複数あり、代表的なものとして、腐植(分解の進んだ有機物)、粘土鉱物、カルシウムなどの陽イオン、菌類の菌糸、細菌が分泌する粘性物質、そして植物の根が出す分泌物が挙げられる。とりわけ有機物と生き物の働きが大きく、土壌の団粒化は化学的な現象であると同時に生物学的な現象である。

この点をもっとも早く、そしてもっとも具体的に示したのがチャールズ・ダーウィンである。ダーウィンは1881年、生涯最後の著作となる『ミミズと土』で、ミミズが落ち葉を体内に取り込み、土とともに糞として地表に排出し続けることで、地表に細かい土の層が絶えず積み上げられていく過程を記述した。ミミズの糞粒は、土壌粒子と有機物が消化管の中で混ぜ合わされた、いわば生物がつくった団粒である。土は生き物によってつくられているという見方は、ここに古典的な起点を持つ。

3.3 団粒はどのようにこわれるか

団粒はつくられるのに時間がかかり、こわれるのは速い。こわれ方には主に三つの経路がある。第一に物理的な圧縮で、上から強い力が加われば団粒はつぶれ、隙間は消える。第二に水による分散で、裸の地面に雨滴が直接当たると団粒は打ち砕かれ、細かい粒子が浮遊して隙間を埋め、乾くと表面に硬い膜のような層——クラスト——ができる。第三に接着剤の欠乏で、有機物の供給が絶たれ、土壌生物が減れば、団粒を保つ力そのものが失われていく。

公園の土では、この三つが同時に進行しうる。人が歩けば圧縮が起き、植生が消えて裸地になれば雨滴が直接当たり、落ち葉が搬出されれば接着剤が届かない。しかも三つは互いを強めあう。締め固まった土では根も土壌動物も減り、有機物の供給と攪拌がさらに落ちる。団粒構造の劣化は、単発の事故ではなく、自己強化する循環として理解する必要がある。

3.4 孔隙の大きさと働き

団粒構造の意義を整理すると、結局は孔隙の大きさの分布の問題に行き着く。孔隙は大きさによって役割が異なり、大きな孔隙は排水と通気を、中くらいの孔隙は植物が使える水の保持を、非常に細かい孔隙は植物が吸い出せないほど強く水を握り込む。締固めが真っ先に奪うのは大きな孔隙であり、これは排水と通気の機能がまとめて失われることを意味する。土全体の水分量は変わらなくても、根が使える状態の水と空気は減りうるのである。

この理解は、公園の管理を考えるうえで実際的な含意を持つ。土に水を撒いても、有機物を表面に置いても、大きな孔隙がつぶれたままなら効果は限定的である。逆に、土を物理的にほぐすだけで有機物を戻さなければ、ほぐした構造は次の踏圧で再びつぶれる。物理と生物の両面から手を入れないかぎり、団粒構造は戻らない。

4. 有機物と土壌生物——落ち葉が土になる回路

森の土が公園の土と決定的に違うのは、有機物が循環しているかどうかである。森では、樹木が光合成でつくった有機物の相当部分が、落ち葉・落枝・枯死した根として毎年地表と地中に戻り、分解されて再び養分となる。この循環が土壌に腐植を蓄え、団粒をつくり、保水力と保肥力を支えている。公園では、この回路のうち「戻る」という部分が、しばしば人の手で切断されている。

4.1 分解者たちの階層

落ち葉が土になる過程は一段階ではない。まず、ミミズ・ヤスデ・ワラジムシ・ダンゴムシといった比較的大きな土壌動物が落ち葉を噛み砕き、細かくして表面積を増やす。次に、トビムシやササラダニのような小さな動物がさらに細かくし、糞として排出する。最後に、カビなどの菌類と細菌が化学的に分解し、植物が吸える形の養分と、分解されにくい黒い有機物である腐植に変えていく。それぞれの段階を担う顔ぶれが違い、どこか一段が欠けると分解の速度は落ちる。

この階層構造は、子どもが公園でよく出会う生き物とそのまま重なっている。石の下のダンゴムシ、落ち葉をめくったときのヤスデ、雨あがりのミミズは、いずれも土をつくる工程の一部を担っている。土壌動物は、公園における自然観察の対象であると同時に、その公園の土の健康を示す指標でもある。

落ち葉土壌動物腐植
図4落ち葉は土壌動物に砕かれ、菌類と細菌に分解されて腐植になる。この回路が切れると、土は接着剤を失っていく。

4.2 腐植が果たす三つの仕事

腐植の重要性を体系的に論じた古典に、セルマン・A・ワクスマンの『Humus』(1936)がある。腐植が土壌において果たす仕事は、大きく三つに整理できる。第一に、粘土粒子と結びついて団粒をつくる接着剤となること。第二に、自重に対して多くの水を保持し、乾燥に対する緩衝となること。第三に、養分となる陽イオンを吸着して保持し、雨で流れ去るのを防ぐこと。この第三の性質は陽イオン交換容量と呼ばれ、粘土と腐植がその大部分を担う。

したがって、腐植が乏しい土は、団粒がこわれやすく、乾きやすく、肥料をやってもすぐ流れる土である。植栽のたびに肥料を施しても木が育たない、という現象の背景に、腐植の欠乏があることは珍しくないとされる。

分解の速さは、材料の質にも左右される。有機物に含まれる炭素と窒素の比——炭素率——が高い材料、たとえば木質のチップや落枝は分解に時間がかかり、その間、分解する微生物が周囲の窒素を取り込むため、一時的に植物が使える窒素が減ることがあるとされる。逆に、やわらかい草や葉は速く分解される。落ち葉やチップを土に還すときに、材料の種類と置き方——土に混ぜるのか、表面に敷くのか——で結果が変わるのは、この違いによる。

4.3 落ち葉を運び出すということ

公園で落ち葉が集められ、袋に詰められて園外へ運び出されるとき、そこで移動しているのは単なるごみではない。その年に樹木がつくった有機物であり、翌年以降の腐植の原料であり、土壌動物の食料である。落ち葉を毎年残らず持ち出すことは、その公園の土に対して、収穫だけを続けて何も入れない農地と同じ処遇をすることに近い。

とはいえ、落ち葉の清掃には理由がある。園路に積もった濡れた落ち葉は滑りやすく、排水口を詰まらせ、隣接する住宅への飛散が苦情の対象になる。落ち葉の管理は、土壌のためだけに決められる事柄ではない。ここで問われるべきは「掃くか掃かないか」ではなく、「どこを掃き、どこに戻すか」という配置の問題である。園路と広場は清掃し、樹冠の下や植え込みの内側には落ち葉を残す、あるいは集めた落ち葉を園内の一角で堆積させて戻す、といった選択肢が考えられる。

4.4 菌根——根が単独では生きていないこと

有機物の循環に関わるもう一つの主役が菌根菌である。菌根菌とは、植物の根と共生する菌類で、菌糸を土中に広く伸ばして水や養分を集め、植物に渡す代わりに、植物が光合成でつくった糖を受け取っている。多くの樹木はこの共生関係に依存しており、根そのものが届く範囲よりもはるかに広い範囲から養分を得ている。菌糸はまた、土壌粒子を物理的に絡めとって団粒の形成にも寄与する。

菌根菌は土壌が攪乱されると減るとされる。深く掘り返され、締め固められ、有機物が乏しい土では、共生の相手が十分に育たない。造成地に植えられた木がなかなか根づかない理由の一つとして、土の物理性だけでなく、この目に見えない共生系がまだ成立していないことを考える必要がある。木を植えるとは、木という個体を置くことではなく、根と菌と土壌動物からなる系を立ち上げることである。この視点は、植栽後の数年間をどう扱うかという実務的な問いに直結する。

5. 踏圧と締固め——公園の土に固有の負荷

公園の土がほかの土と最も違う点は、人に踏まれることである。踏圧とは、人や車の重みが地表に繰り返し加わることをいい、その結果として土の隙間がつぶれ、密度が高くなる現象を締固めという。締固めは、道路や建物の基礎をつくる工事では意図的に行われる有用な作業である。しかし植物が育つべき場所で起きれば、それは土壌の劣化そのものである。同じ現象が、目的によって正反対の評価を受ける。

5.1 踏圧のとき土の中で何が起きるか

上から力が加わると、土の中でまず失われるのは大きな孔隙である。団粒と団粒のあいだの隙間がつぶれ、細かい粒子が隙間に入り込み、土は緻密になる。単位体積あたりの重さ(容積重)は増え、隙間の割合は減る。ここで重要なのは、失われるのが選択的に大きな孔隙だという点である。前節で見たとおり、大きな孔隙は排水と通気を担っていた。したがって締め固まった土では、水が浸み込まず、酸素も入らないという二つの障害が同時に発生する。

さらに、土は硬くなることで根の伸長を機械的に妨げる。根の先端は土を押し広げながら伸びるが、押し広げられないほど硬い土に当たると、根は伸長を止めるか、横に向きを変える。硬さが一定の水準を超えると根がほとんど伸びなくなることが知られており、造園の実務では、土壌の硬さの測定値が植栽に適した基盤かどうかの判定に用いられる。判定の基準値は土性や樹種、測定方法によって異なるため、本稿では具体的な数値を挙げない。

踏圧繰り返し締固め
図5踏圧はまず大きな隙間を奪う。水と空気の通り道が同時に失われ、根は硬さそのものにも行く手を阻まれる。

5.2 踏圧は均一には起きない

公園の踏圧は面全体に一様に加わるのではなく、著しく偏る。人の動きが集まる場所に集中するからである。典型的なのは、ブランコや滑り台の着地点、鉄棒の下、ベンチの前、水飲み場の周り、出入口から遊具へ向かう最短経路、園路の曲がり角を斜めに横切るショートカット、そして日射の強い日に人が集まる大きな木の下である。

この偏りは、対策の考え方を変える。公園全体の土を改良することは現実的でなくても、集中する数か所を見つけて手を入れることは可能である。土の劣化は面ではなく点と線で起きているため、動線の設計——どこを通ってもらうか——が、土壌管理の手段になりうる。舗装された園路が遊具まで自然につながっていれば人はそこを歩き、園路が迂回していれば人は芝生を横切る。土の状態は、しばしば設計の結果である。

荷重の源は人の足だけではない。管理用の車両、資材の運搬、遊具の設置や修繕の工事、催しのための仮設物や出店、駐車場から園内への車の乗り入れなども、土に力を加える。人の踏圧が表層の数センチに強く効くのに対し、重い車両の荷重はより深い層まで届くとされ、深いところで締め固まった土は、表層をほぐしただけでは元に戻らない。年に数回の催しであっても、同じ場所に車両が入り続ければ、その跡は土の中に残る。

5.3 木陰の下という難所

とりわけ難しいのが樹木の足元である。大きな木の下は日陰ができ、人が集まり、ベンチが置かれ、結果として踏圧が集中する。しかし樹木の細根——水と養分を実際に吸収する細い根——は、地表近くの浅いところに広く分布しているとされ、その分布範囲は枝の広がりと同程度かそれ以上に及ぶことがある。つまり、人がもっとも集まる場所と、木がもっとも水を吸っている場所が重なっている。

この重なりは、公園における人と木の利害が真正面から衝突する数少ない地点である。木陰は真夏の公園でもっとも価値のある資源であり、そこに人を来させないという選択は現実的でない。考えられるのは、木の根元の一定範囲に低木や下草を植えて物理的に立入りを減らす、樹冠下に落ち葉やチップを敷いて衝撃を和らげる、ベンチを樹冠の縁に配置する、といった折衷である。いずれにせよ、木陰の木がなぜ弱っていくのかという問いに対して、土の側から立てられる説明があることは押さえておきたい。

5.4 締固めは「よく使われている」ことの跡でもある

ここで一つ、価値判断を留保しておく必要がある。締め固まった裸地は、土壌の観点からは劣化であるが、利用の観点からはその公園がよく使われている証拠でもある。誰も来ない公園の土はふかふかのままである。踏圧の跡は、子どもがどこで遊び、どこで走り、どこに立ち止まったかという記録でもある。土の硬さの分布は、その公園の使われ方を映す地図として読むこともできる。

したがって本稿は、踏圧をなくすべき害として描かない。問題は踏圧があることではなく、踏圧が一点に集中し続け、回復の時間も有機物の供給もないまま蓄積することである。使われることと土が保たれることを両立させる設計と管理をどう組むか——それが実務上の問いである。

6. 水と空気の道——根が生きるための条件

土壌が植物に提供しているものは、養分だけではない。むしろ日々の生死を左右するのは、水と空気の供給である。この二つは同じ孔隙を奪い合う関係にあり、水が満ちれば空気は追い出され、水が抜ければ空気が入る。土壌の水分管理とは、この綱引きを適度なところで釣り合わせることにほかならない。本節では、保水性・透水性・通気性という三つの性質を区別したうえで、公園で観察できる現象に結びつける。

6.1 保水性と透水性は別の性質である

保水性とは土が水を保持する能力、透水性とは水が土を通り抜ける速さである。この二つはしばしば混同されるが、独立した性質である。砂ばかりの土は透水性が高く保水性が低い。粘土ばかりの土は保水性が高く透水性が低い。両方を高い水準で満たすのが、大小の孔隙を併せ持つ団粒構造をもった土である。良い土とは、水をよく通し、なおかつよく蓄える土である。

さらに、土が水を保持していても、その水を植物が使えるとは限らない。土壌水は土粒子に引きつけられており、細かい孔隙にある水ほど強く保持されている。植物の根が吸い出せるのは、この保持力が根の吸水力を下回る範囲の水だけである。水を含んだ土であっても、その水が細かい孔隙に強く握られていれば、植物は水不足に陥る。土壌学ではこの、植物が実際に使える水の量を有効水分と呼び、土壌の質を評価する重要な指標としている。

浸透と流去
図6同じ雨でも、土に隙間があれば浸み込んで蓄えられ、締まっていれば表面を流れ去る。根が受け取る水は土の構造で決まる。

6.2 根も呼吸している

見落とされやすいのは、根が酸素を必要としているという事実である。根は光合成をせず、糖を分解してエネルギーを得ている。この過程には酸素が要る。土壌中の酸素が不足すると、根の呼吸が妨げられ、水や養分の吸収そのものが鈍る。長く酸素が欠乏すれば根は傷み、そこから病原菌が侵入する経路にもなるとされる。

土壌中の酸素は、大気と土壌のあいだで孔隙を通じて絶えず入れ替わっている。締固めによって大きな孔隙が失われれば、この入れ替えが滞る。水が抜けなければ、孔隙は水で満たされ続け、酸素はさらに乏しくなる。締固め・排水不良・酸素欠乏は一続きの現象であり、しばしば地上部の症状——葉の色が悪い、枝先から枯れ上がる、生長が止まる——として現れる。ただし、こうした症状の原因の判定は樹木の診断に関わる事柄であり、専門家の判断に委ねられるべきである。

水と空気の出入りは、地表を何が覆っているかにも左右される。落ち葉や下草に覆われた地表では、日射が直接当たらないため土の温度変化がやわらぎ、蒸発も抑えられて水分が保たれる。一方、裸のまま日にさらされた地表は、夏には表層が高温になり乾き、乾湿と温度の変化が繰り返されることで、団粒はさらに崩れやすくなる。地表の被覆は、見た目の問題であるより先に、土の水分と温度の環境を決める要素である。

6.3 雨あがりの公園が教えること

土の状態をもっとも手軽に観察できる機会が、雨あがりである。降った雨がどこに残り、どこがすでに乾いているかは、その公園の土の透水性の分布をほぼそのまま示している。水たまりが決まった場所にできるなら、そこは締め固まっているか、周囲より低いか、その両方である。広場の一部だけがいつまでも泥濘化するなら、土の物理性が局所的に失われている可能性がある。

泥濘化した土の上を歩けば、締固めはさらに進む。土が湿っているときの踏圧は、乾いているときより大きな影響を与えるとされる。水を含んだ土は粒子どうしが滑りやすく、変形しやすいからである。雨あがりに広場の使用を控えるという運用は、利用者にとっては単なる不便に見えるが、土壌の観点からは合理的な休養の措置でもある。学校の校庭やグラウンドで雨天後の使用が制限されるのは、安全上の理由に加えて、この土の保護という意味を持つ。

6.4 表層の仕上げは土の代わりにならない

遊具の下に敷かれるゴムチップや砂、園路の舗装といった表層の仕上げは、衝撃の緩和や歩きやすさのために設けられるものであり、その下の土壌の状態を改善するものではない。国土交通省の遊具の安全確保に関する指針も、遊具の下の設置面については主として衝撃の吸収という観点から扱っている。表面が整えられていることと、その下の土が生きていることは別問題である。

この区別は、公園の点検において重要である。表面から見て問題がない広場でも、下の土は締め固まっていることがありうる。逆に、表面がでこぼこで見栄えが悪くても、土としては健全なことがある。土の評価は表面の見た目ではなく、水がどう振る舞い、植物がどう育っているかという機能から読むべきである。当サイトが今後の踏査で記録するのも、この機能の側の手がかりである。

7. 作られた土——造成・客土・土壌pHという人為

公園の土を考えるとき、踏圧と並んで、あるいはそれ以上に効いているのが、公園ができたときの造成である。踏圧は開園後に少しずつ蓄積する負荷だが、造成は開園以前に一度で完了する改変であり、その影響はその後ずっと続く。ここで問題になるのは、土壌が本来は長い時間をかけて層をなす自然体であるのに対し、造成地の土は数か月で置かれた人工の堆積物だという点である。

7.1 表土は最初に剥がされる

土壌のうち、有機物に富み、団粒がよく発達し、根と土壌生物が集中しているのは、地表から数十センチほどの表土である。この層は、土壌生成の五因子が長い時間をかけてつくったものであり、いわば土壌の資産のほとんどが集まっている部分である。しかし造成工事では、地形をならし、必要な高さを出すために、表土がまず剥ぎ取られることが多い。剥いだ表土を保管して工事後に戻す手法は知られているが、そのままでは、造成後の地表には本来もっと下にあった土が露出することになる。

こうしてできた地面は、層位の順序という点で自然の土壌と異なっている。前節までに述べた性質——団粒構造、腐植、菌根菌、土壌動物——のいずれもが、表土に依存していた。表土を失った地面は、養分が乏しいだけでなく、それらを回復させるための出発点そのものを欠いている。新しく開かれた公園の木がなかなか大きくならない場合、その原因を植えた後の管理だけに求めるのは、しばしば公平ではない。

層の攪乱境界植栽枡
図7造成された地面では層の順序が失われ、客土と締まった土の境界で根が止まる。土は開園時にすでに決まっている面が大きい。

7.2 客土と、根が出られない鉢

植栽の際には、よその場所から運んだ良質な土——客土——を植え穴に入れることが広く行われる。これ自体は合理的な措置だが、周囲の土が締め固まったままだと、思わぬ結果を生むことがある。柔らかい客土の部分は根にとって快適であり、根はその範囲に密に伸びる。しかし外側の硬い土には入れないため、根は植え穴の壁で行き止まりになり、内側で回り込むように伸びる。地下に、目に見えない鉢が埋まっているような状態である。

この状態の樹木は、植栽後しばらくは順調に見えても、根が広がらないために大きくなるにつれて水分と養分が不足し、風に対する支持力も十分に得られないことがある。木を植えるときに問われるのは植え穴の中身だけではなく、その周囲がどこまで根の通れる土であるかである。造園の実務で植栽基盤という言葉が用いられるのは、樹木の生育を支えるのが点としての植え穴ではなく、面としての土層だという理解に基づいている。

根が使える土層の厚さを制約するものとして、地下の構造物もある。公園の地下には給排水管や電気の配管が通り、貯留施設や地下構造物が置かれていることもある。そうした場所では、土層の厚みが物理的に限られ、根は下へ伸びられずに横へ広がる。植栽枡のように四方を舗装や縁石で囲まれた土も同様で、根が使える体積はそこで完結してしまう。地上から見えるのは同じ一本の木でも、その根が使える土の量は場所によってまったく違う。

7.3 土壌pHと、都市に特有の傾き

土壌pHは、土壌が酸性かアルカリ性かを示す指標であり、養分の溶けやすさと微生物の活動を大きく左右する。日本は降水量が多く、雨が土中の塩基(カルシウムやマグネシウムなど)を洗い流していくため、自然の土壌は酸性に傾きやすいとされる。ツツジやサツキのような植物が日本の庭園で広く使われてきた背景には、それらが酸性の土壌でよく育つという条件がある。

一方、都市の土壌では逆の傾きが生じることが指摘されている。コンクリートやモルタルの破片、砕石、建設残土などが土に混じると、そこから溶け出す成分によって土壌がアルカリ側に傾くことがあるとされる。公園、とりわけ造成の新しい公園や、構造物に囲まれた植栽枡の土は、この影響を受けうる立地である。植えた樹種にとって適した範囲からpHが外れると、土の中に養分があっても植物が吸収しにくくなる。生育不良の原因が肥料の不足ではなく、pHのずれにあることは珍しくないとされる。

7.4 人工物を含む土壌という分類

こうした都市の土は、もはや自然の土壌の分類にうまく収まらない。国際土壌科学連合による世界土壌照合基準には、人工物を多く含む土壌や、人の活動によって深く改変された土壌のための区分が設けられており、都市の地面は土壌学の正当な研究対象として位置づけられている。都市土壌は、自然の土壌の劣化した残りかすではなく、それ自体が固有の生成過程を持つ土壌である、という見方である。

この視点は実務的にも意味がある。公園の土を「本来あったはずの森の土」と比べて嘆くのではなく、造成と踏圧と管理という人為を含んだ生成因子のもとで、その土がどんな性質を持ち、どこまでなら改善できるのかを問うほうが建設的である。FAOが2015年にまとめた世界の土壌資源の評価も、土壌の劣化を人間活動と切り離さずに扱っている。公園の土の履歴を読むことは、その公園がどう作られ、どう使われてきたかを読むことと同じ作業になる。

8. 裸地化と回復——広場の土は戻るのか

多くの公園の広場には、草が消えて土がむき出しになった一角がある。この裸地化は、土壌の側から見ると、団粒構造の劣化が地表に現れた最終段階である。本節では、裸地化がどのような連鎖として進むのかを整理し、そこから回復の道筋を考え、あわせて予想される反論に応答する。

8.1 裸地化は連鎖として進む

始まりは踏圧による締固めである。土が硬くなると草の根が伸びにくくなり、草の勢いが落ちる。草の被覆が薄くなると、地表に直接雨滴が当たるようになり、団粒が打ち砕かれて表面に細かい粒子の膜ができ、水が浸み込みにくくなる。浸み込まない水は表面を流れ、細かい土を運び去る。土が流れれば、残った草の根元が露出してさらに弱る。こうして、踏圧が引き金になった局所的な劣化は、雨と重力の力を借りて自分で進むようになる。

この連鎖の重要な特徴は、途中から人の踏圧がなくても進行しうるという点である。したがって「しばらく立入りを控えれば自然に戻る」という期待は、裸地化がある段階を越えると成り立ちにくい。回復には、連鎖のどこかを人の手で断ち切る必要がある。

草地段階回復
図8裸地化は締固め・被覆の消失・雨滴の打撃・侵食が互いを強めあう連鎖である。回復にはどこかを断ち切る手が要る。

8.2 回復のための手だて

土壌の物理性を回復させる方法は、農地や芝生地の管理として古くから知られている。公園に適用しうるものを挙げれば、次のようになる。いずれも、物理的にほぐすことと、有機物を戻すことと、負荷を分散させることの組み合わせである。

  • 地表に穴をあけて空気と水の道をつくる(芝生地で行われる更新作業)
  • 砂や有機物を混ぜた土を薄く撒き、団粒の材料を補う
  • 落ち葉や樹皮のチップを敷き、雨滴の打撃を防ぎながら有機物を供給する
  • 利用の集中する動線を舗装するか、逆に園路を通りたい方向へ引き直す
  • 区画を分けて使用時期をずらし、回復のための休養期間をとる
  • 樹冠の下や斜面など、劣化しやすい場所を下草や低木で覆う

重要なのは、これらが一度きりの工事ではなく、継続的な管理の一部だという点である。土がこわれるのは日々の利用の積み重ねによってであり、回復もまた継続によってしか達成されない。公園の維持管理費が施設の修繕を中心に組まれているとすれば、土の管理はその枠のどこにも入っていない可能性がある。

8.3 想定される反論への応答

本稿の議論には、実務の側からいくつかの反論が予想される。それぞれについて、退けるのではなく、条件つきで受け止めたうえで応答したい。

予想される反論応答
公園の地面は歩くためのもので、農地ではない用途によって目標像は変わる。園路は締まっていてよい。問題は、木や草が育つべき場所まで一律に締め固まっていることである
落ち葉は苦情の元であり、残せない全面を残す必要はない。園路と広場は清掃し、樹冠下や植え込みの内側に限って残す配置の問題として考えられる
土を柔らかくすると、ぬかるんで使えなくなる動線を舗装して通行を担わせ、生育基盤としての土層と分けるのが基本的な考え方である
草が生えると管理の手間と費用が増える裸地は侵食と泥濘化という別の費用を生む。どちらが安いかは、期間をどれだけ長くとるかで変わる
土の状態を測る手立てがない水たまりの位置、草の生え方、根の露出、落ち葉の残り方は、器具がなくても記録できる観察項目である

手だてを選ぶ際には、時間の尺度を合わせておく必要がある。舗装や排水の工事は一度で効果が出るが、有機物を戻して団粒を育てる作業は、効果が現れるまでに年単位の時間を要する。予算の単年度主義のもとでは、後者のように成果が翌年度に見えない取り組みは位置づけを得にくい。土の管理を続けるには、何を記録し、何をもって改善とみなすかという評価の物差しを、あらかじめ長い時間軸で用意しておくことが要る。

8.4 誰が土を管理するのか

最後に、担い手の問題に触れておきたい。遊具の点検や樹木の診断には専門の技術と資格が関わるが、落ち葉を樹冠の下に戻すこと、水たまりのできる場所を記録すること、裸地の広がりを写真に残すことには、特別な資格を要しない。土の管理は、行政の専門的な業務であると同時に、公園を日常的に使っている人が担いうる部分を含んでいる。

ただし、勝手に土を掘り返したり、園外から土や資材を持ち込んだりすることは、管理者の権限に属する行為であり、独断で行うべきではない。都市公園における行為は都市公園法と各自治体の条例のもとにあり、実施にあたっては管理者との調整が前提となる。市民の側にできるのは、まず観察し、記録し、伝えることである。本稿が次節で提案する踏査項目も、その水準にとどめている。

9. 磐田市の公園への示唆

本節では、これまで整理した土壌学の枠組みを、当サイトが扱う磐田市の都市公園100園に照らす。最初に断っておくべきは、当サイトのデータに土壌の情報が一つも含まれていないことである。もとになっている磐田市のオープンデータ「都市公園一覧」に記載されているのは名称・種別・面積と、トイレ・車いす対応トイレ・砂場・遊具の有無であり、土の硬さも、層の様子も、樹木の生育状況も含まれない。踏査済みの園は2026年8月時点で0園である。したがって以下は、断定ではなく、立てうる仮説と確かめるべき項目の提示である。

9.1 種別と面積から立てられる負荷の類型

磐田市の100園の内訳は、街区公園51園、近隣公園14園、都市緑地10園、地区公園4園、総合公園3園、運動公園3園、風致公園3園、広場公園2園、緑道2園、墓園1園、歴史公園1園、および法の対象外とされる6園である。この分布は、土への負荷という観点から見ると、いくつかの類型に整理できる。

  • 街区公園51園——面積が小さく、利用が特定の遊具の周りに集中しやすい。踏圧が点に集まる典型
  • 近隣公園14園・地区公園4園——広場と遊具と樹林が混在し、場所ごとに土の状態が分かれやすい
  • 総合公園3園・運動公園3園——競技施設を含み、土のグラウンドは締固めが前提の面と、樹林の面が併存する
  • 風致公園3園・都市緑地10園・緑道2園——樹木が主役で、踏圧より落ち葉の扱いと根の環境が論点になりやすい
  • 面積の小さい緑地——二之宮東第2緑地の17平方メートル、豊田上新屋ポケットパークの156平方メートルなど。土層の厚みや周囲の構造物との関係が効きやすい規模

面積の大きい園としては、竜洋海洋公園が221,722平方メートル、かぶと塚公園が106,982平方メートル、つつじ公園が61,937平方メートルと記録されている。広い園では土の状態が場所によって大きく異なるはずであり、園を一つの単位として評価するのではなく、園内をいくつかの面に分けて見る必要がある。逆に小さな緑地では、園全体が一つの状態に収束しやすい。

100園地区確認項目
図9種別と面積の分布から土への負荷の類型を立てることはできるが、実際の土の状態は踏査でしか確かめられない。

9.2 施設の記載から読める手がかり

市の施設ガイドの記載には、土に関わる手がかりが間接的に含まれている。たとえば今之浦公園の記載には芝生広場・噴水広場・流れといった項目が並び、はまぼう公園には芝生広場、福田公園には多目的広場、中央公園には多目的グラウンドとある。芝生の広場は、草の被覆が保たれているかどうかがそのまま土の状態を映す面であり、多目的グラウンドは締固めを前提とする面である。同じ「広場」でも、土壌管理上の目標がまったく異なる。

樹木に関しては、豊田熊野記念公園の記載に熊野の長藤があり、つつじ公園は風致公園として位置づけられている。大きな樹木や古い樹木がある場所では、根の広がる範囲と人の集まる範囲の重なりが論点になる。竜洋昆虫自然観察公園は名称のとおり生き物の観察が主題の風致公園であり、土壌動物という観点からも関心の持てる園である。ただし、いずれの園についても土壌の実態は調べられておらず、ここで述べているのは記載から立てられる関心の所在にすぎない。

砂場については、オープンデータの集計で43園に「有」の記載がある。ただし砂場の砂は土壌ではない。有機物も団粒構造も持たず、生き物の分解の回路も働いていない、粒径のそろった鉱物の集まりである。砂場を土壌学の対象として論じることはできず、砂場の衛生や砂の入れ替えに関する判断は、公園の管理者である磐田市都市整備課(電話 0538-37-4806)をはじめとする関係機関に属する。当サイトはその判断を代行しない。

利用の集中を示す手がかりもある。オープンデータの集計では遊具があるとされる園が64園、トイレがある園が69園あり、当サイトが駐車場ありと判定した園は33園である。遊具・トイレ・駐車場は、いずれも人の動きを引き寄せる点であり、その周囲と、それらを結ぶ線の上に踏圧が集まりやすい。駐車場のある園では、加えて車両が園地に近づく分の荷重も想定される。園内のどこが硬くなっているかを予想するには、まずこの三つの点と、それらを結ぶ最短の線を地図の上に引いてみるとよい。

9.3 地区ごとに見るという視点

磐田市の公園を9地区で見ると、豊田28園、見付21園、中泉14園、御厨13園、竜洋13園、福田4園、豊岡3園、南部2園、向陽2園という分布になる。土壌は本来、地形と母材によって地域ごとに異なる姿をとるものであり、地区という単位は土壌の共通性を見るうえで一つの入口になりうる。ただし、公園の土は造成によって置き換えられている可能性が高く、周囲の土壌の性質がそのまま園内に当てはまるとは限らない。

園名にも手がかりがある。竜洋西堀河川敷公園、豊田天竜川わんぱく広場、天竜川ラブリバー公園、豊田池田の渡し公園のように、河川に関わる名を持つ園がある。一般に河川に近い平坦地には砂質の堆積物が見られることがあるとされるが、これは各園の土壌を調べた結果ではなく、名称からの推測にすぎない。園名から土壌を断定することはできず、確かめるには現地で土を見るほかない。

9.4 踏査で見るべき土の項目

当サイトの踏査はこれからである。土壌の専門的な調査——採土や分析——は当サイトの守備範囲ではないが、専門的な器具がなくても記録できる観察項目はある。以下は、本稿の議論から導かれる踏査の候補項目である。

  • 裸地の位置と広がり——遊具の下、ベンチの前、出入口から遊具への経路、木陰
  • 雨あがりに水たまりが残る場所と、乾きの早い場所の分布
  • 草の生え方の差——被覆が保たれている面と、まばらな面の境目
  • 樹木の根が地表に露出している場所と、その周囲の人の通り方
  • 落ち葉がどこに残り、どこが清掃されているか
  • 園路の舗装と人が実際に歩く筋のずれ(ショートカットの跡)
  • 植栽枡や花壇の土の様子と、周囲の舗装との高さの関係

註:これらはいずれも観察の記録であって診断ではない。樹木の衰えの原因や、土壌改良の要否についての判断は、樹木や土壌の専門家、および公園管理者に委ねられる。当サイトが担えるのは、園ごとの状態を継続して記録し、比較できる形で残すことまでである。

10. 結論と今後の課題

本稿は、都市公園の土を「地面」ではなく「生きた系」として読み直すことを目的に、土壌学の基礎概念を整理し、公園の土が受ける固有の負荷を検討してきた。最後に、得られた見通しを三点にまとめ、本稿が意図的に避けたことを述べ、今後の課題を示す。

10.1 得られた三つの見通し

第一に、公園の土に加わる負荷は、踏圧による締固め、造成と客土による層の攪乱、落ち葉の搬出による有機物の断絶という三つに整理でき、それらはいずれも団粒構造という一点に集約される。団粒構造は、水を通しながら水を蓄え、空気を送りながら根の通り道を提供するという、両立しにくい機能を同時に果たす構造であった。この構造が失われると、複数の機能がまとめて失われる。土の劣化が一つの症状ではなく症候群として現れるのは、このためである。

第二に、公園の木が育たない理由は、しばしば土の側にある。締め固まった土では根が機械的に伸びられず、水が浸み込まず、酸素も届かない。客土された植え穴の外に硬い土が広がっていれば、根はそこで止まる。菌根菌や土壌動物といった共生と分解の担い手も、攪乱された土では十分に育たない。木を植えるという行為は、個体を置くことではなく、根と菌と土壌生物からなる系を成立させることであり、その成否は植栽の前——造成の段階——にかなりの程度決まっている。

第三に、裸地化した土はひとりでには戻りにくい。締固め・被覆の消失・雨滴による団粒の破壊・侵食という連鎖は自分で進む性質を持つため、立入りを控えるだけでは回復しないことがある。回復のためには、物理的にほぐすこと、有機物を戻すこと、負荷を分散させることを組み合わせる必要があり、それは一度の工事ではなく継続的な管理の課題である。同時に、踏圧の跡はその公園がよく使われていることの証でもあり、利用を抑えることが目的化してはならない。

記録データ手入れ
図10土は交換のきかない資産である。記録し、有機物を戻し、負荷を分散させるという継続の中でしか回復しない。

10.2 本稿が意図的に避けたこと

本稿は、磐田市の公園の土壌について具体的な記述を一切していない。硬さも、pHも、層の様子も、有機物の量も、調べていないからである。園名や種別、面積、施設ガイドの記載から仮説を立てることはできるが、それは仮説であって知見ではない。土壌は場所ごとの個性が大きい対象であり、一般論から個別地点を推し量ることには限界がある。

同様に、具体的な数値基準も避けた。根の伸長が妨げられる土壌の硬さ、望ましい有機物の量、適正な土壌pHの範囲といった値は、土性・樹種・測定方法によって異なり、条件を抜きにして数字だけを示せば誤用を招く。砂場の砂の衛生についても、判断は関係機関に属するものとして扱った。樹木の衰えの原因の特定や、土壌改良の要否の判断も同様である。本稿の役割は、判断を下すことではなく、判断に必要な問いの構造を示すことにある。

10.3 今後の課題

課題の第一は、当サイトの踏査に土の項目を組み込むことである。裸地の位置、水たまりの分布、草の被覆、根の露出、落ち葉の残り方といった観察項目は、専門的な器具なしに記録でき、しかも継続すれば変化を捉えられる。100園という数は、一度の調査としては多いが、複数年にわたる継続的な記録の母数としては、地域の土の状態を比較しうる貴重な規模である。

第二に、他の分野との接続である。土は、樹木の健全性、雨水の浸透、生き物の生息、暑さのやわらぎ方、雨あがりの遊びやすさといった、公園をめぐるほとんどの主題の底で共通の基盤になっている。土壌学だけで公園を語り尽くすことはできないが、逆に、土を抜きにして語られる緑や生き物の議論は、根拠の半分を欠くことになる。当シリーズの他の論考との往復のなかで、この基盤の位置づけを確かめていきたい。

第三に、記録の共有である。土の状態は、行政の点検記録にも、オープンデータにも、ほとんど残されていない。誰も記録していないものは、悪くなっても気づかれず、良くなっても評価されない。公園の土について、市民が観察できる範囲の言葉と項目を用意し、それを蓄えていくこと自体が、土を管理の対象として可視化する第一歩になる。踏まれた土を見る目を持つ人が増えることが、本稿の最終的な狙いである。

参考文献

  1. ワシリー・V・ドクチャーエフ(1883)『ロシアのチェルノーゼム』
  2. ハンス・イェニー(1941)『Factors of Soil Formation: A System of Quantitative Pedology』(McGraw-Hill)
  3. チャールズ・ダーウィン(1881)『ミミズと土』(渡辺弘之訳、平凡社ライブラリー)
  4. セルマン・A・ワクスマン(1936)『Humus: Origin, Chemical Composition, and Importance in Nature』(Williams & Wilkins)
  5. 日本ペドロジー学会編『土壌調査ハンドブック(改訂版)』(博友社)
  6. 藤井一至(2015)『大地の五億年——せめぎあう土と生き物たち』(ヤマケイ新書)
  7. 藤井一至(2018)『土 地球最後のナゾ』(光文社新書)
  8. 国際連合食糧農業機関(FAO)・政府間土壌技術パネル(2015)『Status of the World s Soil Resources』
  9. 国際土壌科学連合(IUSS)『World Reference Base for Soil Resources(世界土壌照合基準)』
  10. 都市公園法(昭和31年法律第79号)・都市公園法施行令(国土交通省 都市公園のページ)
  11. 国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」(令和6年6月)
  12. 磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0・出典:磐田市)
  13. 磐田市 施設ガイド(公園)

本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。

← 自然科学・環境 の論文一覧 公園学術論文 トップ 読みもの(公園ガイド)