自然科学・環境外来種問題
外から来た生きもの——外来種の定義・侵略性・公園という入口
要旨
本稿の目的は、外来種問題という視点から、公園という身近な場所の意味を検討することである。方法は文献整理と概念分析であり、生態学の古典であるエルトン(1958)の侵入生態学、リチャードソンら(2000)による外来種の定義論、ブラックバーンら(2011)による侵入プロセスの統一枠組み、そして日本の外来生物法(2004年制定)の法制度を主な素材とする。
検討の結果、外来種問題を理解する鍵は、在来か外来かという由来の軸と、侵略的か非侵略的かという挙動の軸を分けて考えることにあることが確認された。侵入は輸送・導入・定着・拡大という段階を経て進み、各段階には障壁があること、外来生物法が想定する被害は生態系・人の生命身体・農林水産業の三類型に整理できることを述べた。そのうえで、公園が緑化資材・土壌・水系・人の持ち込みを通じて外来種の侵入経路になりうる一方、駆除や対応の判断は個人ではなく関係機関に委ねるべきことを論じた。
最後に、磐田市の公園100園の資料を素材に、当サイトが動植物の種構成に関する情報を持たず、現地踏査もこれからである現状を確認したうえで、水系や緑化を含む公園という場所が、外来種問題を考える入口になりうることを述べた。外来か在来かという由来だけで生きものの是非を判断しない、地に足のついた見方が必要である。
キーワード外来生物法特定外来生物侵略的外来種生物多様性条約早期発見即時対応磐田市
1. はじめに——問題の所在
公園を歩けば、そこかしこに植物や小さな生きものの姿がある。花壇に植えられた花、芝生に飛来する蝶、水辺にいるかもしれないカエルや魚——しかしそれらのすべてが、その土地にもともと生息していたわけではない。人が種苗を運び、土を入れ替え、ペットを手放し、あるいは意図せず靴や車両に種子や小さな生きものを付着させて運ぶことで、生きものの分布は絶えず書き換えられてきた。ある生きものが「その場所に元からいたのか、それとも人によって連れてこられたのか」という由来の違いは、しばしば見た目だけでは判別できない。本稿はこの、公園という日常的な場所に潜む生きものの由来と、その由来がもたらしうる影響という問題を、外来種問題という視点から検討する。
この問題を専門に扱う法制度が、日本では2004年に制定された特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律、通称外来生物法である。同法は、人の活動によって本来の生息地から別の地域に持ち込まれた生物のうち、生態系や人の生命身体、農林水産業に被害を及ぼす、または及ぼすおそれがあるものを特定外来生物として指定し、その飼養・栽培・保管・運搬・輸入等を規制する仕組みを定めている。この法律の存在は、外来種問題が単なる生物学上の分類の話ではなく、法制度を通じて社会的な対応が図られている公共的な課題であることを示している。
1.1 なぜ外来種問題という視点から公園を論じるのか
外来種問題は、多くの場合、山野や河川、離島といった自然度の高い場所を舞台に語られる。だが公園もまた、この問題と無縁ではない。公園は、造成の際に外部から土や植栽材料が持ち込まれる場所であり、花壇や修景池のように意図的に非在来の植物や生きものを配置する場所でもあり、雨水や小川を通じて周辺の水系とつながる場所でもあり、そして何より、日々多くの人と、人が連れてくるペットや荷物が出入りする場所である。造園学が公園の空間設計を、都市生態学が緑地のネットワークとしての機能を論じるのに対し、外来種問題という視点は、公園を「生きものの由来が交錯し、意図せぬ移動が起こりうる場所」として捉え直す。この視点固有の関心は、緑がどれだけあるかではなく、そこにいる生きものがどこから来て、どこへ広がりうるかという移動と由来の経路にある。
1.2 方法と構成
方法は文献整理と概念分析である。侵入生態学の先駆けとなったエルトン(1958)、外来種をめぐる用語を整理したリチャードソンら(2000)、侵入の過程を統一的に描いたブラックバーンら(2011)、そして日本の外来生物法や生物多様性条約といった法制度・国際的枠組みを主な参照先とし、その論理を公園という対象に当てはめて検討する。本稿は特定の生物種を対象にした調査ではなく、当サイト(ATAWI PARK)のデータには動植物の種構成に関する情報がなく、現地踏査もこれから始まる段階であるため、磐田市内の公園における具体的な外来種の生息状況についての記述は行わない。
構成は次のとおりである。第2節で外来種問題の基本概念、とりわけ「在来/外来」と「侵略的/非侵略的」という二つの軸を整理する。第3節で侵入が輸送・導入・定着・拡大という段階を経て進むことを論じる。第4節で外来生物法が想定する被害の三類型を検討する。第5節で外来生物法の規制の枠組みを整理する。第6節で公園が侵入経路になりうる仕組みを論じる。第7節で防除の考え方と関係機関への対応の委ね方を述べる。第8節で反論に応答し、第9節で磐田市の公園への示唆を、第10節で結論と今後の課題を示す。専門用語は初出のたびに説明する。
1.3 本稿の立場——一律に警戒しないという前提
あらかじめ断っておきたいのは、本稿でいう外来種問題とは、特定の生きものを由来だけで一律に悪者とみなす立場を意味しないという点である。第2節以降で詳しく述べるとおり、外来であることと有害であることとは本来別の軸であり、この区別を曖昧にしたまま「外来種は危険だ」という語りだけを重ねることは、かえって問題の所在を見えにくくし、必要な警戒と不要な警戒の区別を難しくする。本稿は、外来種問題を、由来・侵入の過程・被害の類型・法制度という複数の要素からなる複合的な課題として腑分けし、そのうえで公園という場所が持つ固有の意味を検討するという立場をとる。恐怖をあおる書き方や、特定の生きものへの敵意を煽る書き方は本稿の目的ではない。
2. 先行研究と概念の整理——在来と外来、侵略的と非侵略的という二つの軸
外来種問題を学問として扱う侵入生態学(invasion ecology)の出発点とされるのが、イギリスの動物生態学者チャールズ・エルトン(Charles S. Elton)が1958年に著した『侵入の生態学』である。エルトンはこの著作で、人類の交通網の発達によって世界中の生物相が混ざり合い、本来出会うはずのなかった生きもの同士が同じ場所に暮らすようになった状況を、軍事的な比喩を交えて描き出した。エルトンの議論の核心は、生態系が長い年月をかけて形成してきた種同士の関係——捕食や競争、共生——が、新たに侵入してきた生きものによって撹乱されうるという点にあり、この着想がその後数十年にわたる侵入生態学の土台になった。
2.1 「外来」とは何か——由来の軸
外来種問題を論じるうえで最初に整理すべきは、外来種(alien species)という語の意味である。生態学における外来種とは、単に「珍しい生きもの」や「見慣れない生きもの」を指すのではなく、山脈や海峡、気候帯といった生物地理学的な障壁を、人の活動によって越えて別の地域に持ち込まれた生きものを指す。これに対し、そうした人為的な移動を経ずにその地域に分布してきた生きものを在来種(native species)と呼ぶ。この区別はあくまで移動の経緯、すなわち由来に関するものであり、その生きものが有害か無害かという価値判断とは本来別の次元にある。ある生きものが外来種であるという事実は、それだけでは善悪を含意しない。
2.2 「侵略的」とは何か——挙動の軸
外来種問題を混乱させやすいのは、「外来である」ことと「侵略的である」ことをしばしば同一視してしまう点である。2000年にデイヴィッド・リチャードソン(David M. Richardson)らが発表した論文「Naturalization and invasion of alien plants: concepts and definitions」は、この混同を整理するための概念枠組みを提示した。同論文によれば、ある土地に持ち込まれた外来種は、まず一時的に生育しても世代を重ねられない一時発生種(casual species)にとどまる場合が多い。そのうち一部が、人の手を借りずに世代を重ねて自立した個体群を築く帰化種(naturalized species)となり、さらにそのごく一部が、元の導入地点から離れた場所へ広く分散し、量的に大きな個体群を形成する侵略的種(invasive species)へと至る。つまり侵略性とは、外来であることに付随する固有の性質ではなく、定着と拡散という実際の挙動によって初めて認定される、経験的な区分なのである。
| 段階 | 定義の要点 |
|---|---|
| 外来(alien) | 生物地理学的な障壁を人為的に越えて持ち込まれたが、まだ野外に存在するとは限らない |
| 一時発生(casual) | 野外で生育・繁殖することもあるが、継続的な個体群を維持できない |
| 帰化(naturalized) | 人の手を借りずに世代を重ね、自立した個体群を維持している |
| 侵略的(invasive) | 導入地点から離れた場所へ分散し、量的に大きな個体群を形成している |
2.3 二つの軸を分けて考える意味
「在来/外来」という由来の軸と、「侵略的/非侵略的」という挙動の軸を分けて考えると、少なくとも四つの組み合わせがありうることが分かる。外来かつ侵略的な生きもの(外来生物法が主に対象とする範囲)、外来だが侵略的でない生きもの(観賞用に導入され、逃げ出しても定着や拡散に至らない植物など)、在来だが局所的に増えすぎる生きもの(外来種問題の枠組みでは通常扱わないが、管理上の課題になりうる)、そして在来かつ非侵略的な、多くの見慣れた生きものである。この四分類のうち、外来生物法が規制の対象とするのは、外来であり、かつ生態系・人の生命身体・農林水産業への被害が確認または懸念される種に限られる。すべての外来種が規制対象になるわけではないという点は、次節以降の議論の前提として重要である。
2.4 国内由来の外来種という区分
外来種というと、多くの場合、海外から持ち込まれた生きものが連想される。しかし外来生物法や環境省の整理では、国内の別の地域から人為的に移動させられた生きものも、外来種の一種として扱われる。これは国内由来の外来種と呼ばれ、たとえば本来はある地域にしか自然には分布していなかった生きものが、造園や放流、ペットの遺棄などを通じて別の地域に持ち込まれ、そこで定着する場合がこれに当たる。国境を越えるかどうかではなく、その生きものの本来の生物地理学的なまとまりを、人の手によって越えたかどうかが、外来種を判断するうえでの基準になる。この区分は、外来種問題を「海外から来た危険な生きもの」という図式だけで捉えることの限界を示しており、日本国内のある地域にとっての在来種であっても、別の地域に持ち込まれれば、その地域にとっては外来種になりうるという、由来の相対性を浮かび上がらせている。
2.5 帰化した園芸植物という中間的な存在
この四分類のうち、実務上もっとも数が多いと考えられるのが「外来だが侵略的でない」種、あるいは帰化はしているが量的な拡大には至っていない種である。公園や庭園で植えられる園芸植物の多くは、もともと日本に自生していなかった外来の種であり、その一部は植栽地の外に逃げ出して自立した個体群を築く帰化植物になっている。しかし帰化した植物のすべてが、在来の植生を大きく置き換えるような侵略的な広がりを見せるわけではなく、多くは既存の植生の隙間で穏やかに存続するにとどまる。この中間的な存在の広がりこそが、外来種問題を「外来種はすべて排除すべきだ」という単純な図式に落とし込むことを難しくしている一因であり、リチャードソンらの継続的な区分が実務上も有用である理由でもある。
3. 侵入のプロセス——輸送・導入・定着・拡大という段階と障壁
ある生きものが外来種として問題になるまでには、いくつもの段階を経る必要がある。2011年、ティム・ブラックバーン(Tim M. Blackburn)らは論文「A proposed unified framework for biological invasions」で、それまで研究者ごとに異なる用語で語られてきた侵入の過程を、一つの統一的な枠組みに整理した。この枠組みは、生きものが本来の生息域から新しい環境で拡散するまでの道のりを、輸送・導入・定着・拡大という四つの段階に分け、各段階の間には生きものがそれを乗り越えなければ先に進めない「障壁」があると捉える。
3.1 四つの段階
第一の段階は輸送(transport)である。生きものが本来の分布域から、人の活動——貿易・園芸・ペット取引・旅行者の荷物など——によって物理的に運ばれる過程を指す。第二の段階は導入(introduction)であり、輸送された生きものが飼育や栽培という管理下から離れ、野外に置かれる過程を指す。意図的な放出の場合もあれば、飼育容器からの逃走や、種苗に紛れ込んでいた種子の落下のように意図しない経路の場合もある。第三の段階は定着(establishment)であり、野外に置かれた生きものが、その環境の中で自力で繁殖し、世代を重ねる個体群を築く過程を指す。第四の段階は拡大(spread)であり、定着した個体群が、導入地点を越えて周辺へと分布を広げていく過程を指す。
| 段階 | 内容 | 乗り越えるべき障壁の例 |
|---|---|---|
| 輸送 | 本来の生息域から人の活動によって運ばれる | 地理的な隔たり(海・山脈など) |
| 導入 | 管理下(飼育・栽培)から野外に置かれる | 飼育・栽培という人為的な管理 |
| 定着 | 野外で自力で繁殖し、個体群を維持する | 新しい環境での生存・繁殖の条件 |
| 拡大 | 導入地点を越えて分布が広がる | 移動・分散のための経路や媒介 |
3.2 大半は途中で止まる——おおまかな目安としての「10の法則」
重要なのは、この四段階のすべてを突破する生きものが少数にとどまるという点である。1996年、マーク・ウィリアムソン(Mark Williamson)は著書『Biological Invasions』の中で、外来種の運命に関するおおまかな経験則を紹介した。これは、持ち込まれた生きもののうちおよそ一割程度が野外で生育し、そのうちさらにおよそ一割程度が個体数を大きく増やして問題化する、という大まかな目安であり、しばしば「10の法則(tens rule)」と呼ばれる。この数字自体は分類群や地域によって大きくばらつく、あくまで大まかな傾向を示す目安であって、個々の種に機械的に当てはめられる統計値ではない。それでも、この経験則は、輸送された生きものの大半が定着に至らず、定着した生きものの大半がそれ以上広がらないという、侵入という現象の全体像を捉えるうえで有用な見取り図を提供している。
3.3 段階論が示す実務上の含意
この段階論が示す実務上の含意は、対応のコストが段階ごとに大きく異なるという点にある。輸送や導入の段階で食い止めることができれば、労力は比較的小さく済むが、定着し、さらに拡大してしまった段階では、根絶に要する労力と時間は大きくなりやすいとされる。この非対称性は、外来生物法が水際での輸入規制や、後述する未判定外来生物制度のような早い段階での対応に重点を置いていることの背景にある。公園という場所を考える際にも、この段階論は有効な視点を提供する。すなわち、公園において問題になりうるのは、すでに広く拡大してしまった生きものへの対応だけでなく、輸送・導入という初期の段階で、緑化資材や持ち込みを通じてどのような生きものが新たに入り込む可能性があるかという、予防的な視点でもある。この論点は第6節で改めて検討する。
3.4 なぜ定着後に急に増えることがあるのか
侵入生態学の文献では、外来種が定着後にしばしば急速に個体数を増やす背景として、いくつかの仮説が議論されてきた。その一つが、導入先の環境には、その生きものを捕食したり、病気を媒介したりする在来の天敵や病原体が本来の生息域ほど揃っていないため、増殖を抑える力が弱まるという考え方であり、しばしば天敵解放(enemy release)という語で説明される。もう一つは、導入先の生態系の中に、既存の在来種が十分に利用していない資源や空間——いわば生態学的な空き地——が存在する場合に、外来種がそこに入り込みやすいという考え方である。これらはいずれも、なぜ一部の外来種だけが急速に拡大するのかを説明しようとする仮説であり、すべての事例に等しく当てはまるとは限らない、あくまで有力な説明の候補として理解しておくのが適切である。
4. 影響の三類型——生態系・人の生命身体・農林水産業
外来種のすべてが問題になるわけではないことは第2節で確認した。では、外来生物法が特定外来生物として規制の対象に据えるのは、どのような被害が想定される場合なのか。同法の目的を定める条文は、規制の対象となる被害を、生態系に係る被害、人の生命身体に係る被害、農林水産業に係る被害という三つの類型に整理している。この三類型は、外来種問題が単一の学問領域に閉じた話ではなく、生態学・公衆衛生・農林水産行政という複数の関心が交差する課題であることを示している。
4.1 生態系に係る被害
第一の類型は、在来の生態系への影響である。具体的には、在来種を捕食すること、在来種と食物や生息場所をめぐって競合すること、近縁の在来種と交雑して遺伝的な独自性を損なうこと、そして生息環境そのものを改変してしまうことなどが挙げられる。これらの影響は、エルトンが1958年に懸念した「本来出会うはずのなかった種同士の関係」がもたらす撹乱の具体例であり、侵入生態学が最も注意を払ってきた被害類型である。ただし、ある外来種が在来の生態系にどの程度の影響を与えているかは、個別の調査によって初めて明らかになるものであり、外来であるという事実だけから影響の大きさを一般化することはできない。
4.2 人の生命身体に係る被害
第二の類型は、人の生命や身体への直接的な影響である。毒を持つ生きものに咬まれたり刺されたりする危険、あるいはアレルギー反応を引き起こす危険などが想定される。日本国内で特定外来生物に指定されている生きものの中には、強い毒を持つクモや、攻撃性のあるアリの仲間のように、人の生命身体への影響が懸念されるために指定されたものが含まれる。ただし、こうした生きものへの遭遇時の対応や、症状が出た場合の判断は、当サイトが担える範囲を超える。異常を感じた場合は自己判断せず、医療機関や関係機関に相談することが基本である。
4.3 農林水産業に係る被害
第三の類型は、農業・林業・水産業といった一次産業への影響である。農作物を食害する動物、養殖魚介類を捕食したり競合したりする水生生物、木材や樹木に被害を与える昆虫などが該当しうる。この類型は、外来種問題が自然保護の文脈だけでなく、産業政策や食料生産という、より生活に密着した文脈にも関わることを示している。外来生物法を環境省だけでなく農林水産省も所管しているのは、この農林水産業への被害という類型が、法律の目的に明記された対等な柱の一つだからである。
| 類型 | 想定される被害の性質 | 主な関心の所在 |
|---|---|---|
| 生態系に係る被害 | 捕食・競合・交雑・生息環境の改変 | 生態学・保全生物学 |
| 人の生命身体に係る被害 | 咬傷・刺傷・アレルギー反応など | 公衆衛生・救急医療 |
| 農林水産業に係る被害 | 食害・養殖業への影響・木材被害など | 農業・林業・水産業の政策 |
4.4 三類型を分けて考える意味
この三類型を意識することには実務上の意味がある。ある生きものが「危険だ」と語られるとき、それが生態系への影響を指しているのか、人の生命身体への影響を指しているのか、農林水産業への影響を指しているのかによって、警戒すべき対象や取るべき行動は異なる。生態系への影響が懸念される植物であれば、駆除の判断は専門的な生態調査に基づくべきであり、人の生命身体への影響が懸念される生きものであれば、近づかない・触れないという行動上の注意が優先される。三類型を混同したまま「外来種は危険だ」とひとくくりに語ることは、かえって適切な対応を難しくしかねない。次節では、こうした被害を防ぐために外来生物法がどのような規制の仕組みを設けているかを見る。
4.5 危険性の程度は種によって大きく異なる
三類型を整理するうえでもう一点留意すべきは、同じ類型に属する生きものであっても、実際に及ぼす影響の大きさや性質は種ごとに大きく異なるという点である。人の生命身体に係る被害を例にとっても、強い毒を持ち咬まれると医療機関での処置が必要になりうる生きものと、触れても軽微な刺激にとどまる生きものとでは、必要な警戒の度合いはまったく異なる。生態系に係る被害についても、在来種を直接捕食する生きものと、緩やかに生育場所を共有するにとどまる生きものとでは、生態系への影響の速さや大きさが異なる。三類型という枠組みは、被害の性質を大まかに見取るための道具であって、個々の生きものへの対応をこの枠組みだけから機械的に導けるわけではない。具体的な種についての情報は、環境省や専門機関が公表する資料、あるいは医療機関への相談を通じて確認されるべきものである。
4.6 三類型は互いに重なりうる
なお、この三類型は互いに排他的な分類ではなく、一つの生きものが複数の類型にまたがって被害をもたらす場合もある。ある生きものが在来の水生生物を捕食すると同時に、養殖業にも影響を及ぼすのであれば、それは生態系に係る被害と農林水産業に係る被害の両方に該当しうる。外来生物法が特定外来生物を指定する際には、こうした被害が単一の類型にとどまるか複数の類型にまたがるかも含めて、生態学的な知見と社会的な影響の双方から検討されると考えられる。三類型はあくまで被害の性質を整理するための枠組みであり、現実の被害を機械的に一つの箱に押し込めるためのものではない。
5. 外来生物法の枠組み——特定外来生物・未判定外来生物・条件付特定外来生物
特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律は、2004年に制定された。同法は、政令によって個々の生物を特定外来生物として指定し、指定された生きものの飼養・栽培・保管・運搬・輸入・野外への放出などを原則として禁止する仕組みを中心に据えている。学術研究や展示、教育といった目的でどうしてもこれらの行為が必要な場合には、主務大臣の許可を得ることで例外的に認められる。無許可でこれらの行為を行った場合には罰則が定められており、規制は単なる努力目標ではなく、法的な拘束力を伴う仕組みとして設計されている。
5.1 未判定外来生物という予防的な仕組み
外来生物法には、すでに特定外来生物として指定された生きものへの対応だけでなく、今後問題化するおそれのある生きものを早い段階で把握するための仕組みも組み込まれている。それが未判定外来生物制度である。これは、特定外来生物と生態的な性質が似ており、輸入されれば生態系等への被害を及ぼすおそれがあると考えられるものの、まだ特定外来生物には指定されていない生きものを対象に、輸入しようとする者に事前の届出を求める制度である。届出を受けた主務大臣は、その生きものが実際に被害を及ぼすおそれがあるかどうかを判定し、必要があれば輸入を禁止する。これは第3節で述べた侵入の段階論のうち、最も早い「輸送」の段階で対応しようとする予防的な仕組みであるといえる。
5.2 条件付特定外来生物という新しい区分
外来生物法は制定後も社会の実情に応じて改正されてきた。近年の改正で新設されたのが条件付特定外来生物という区分である。これは、すでに広範囲に定着してしまい、飼養等を一律に禁止することが社会的に難しい生きものを対象に、野外への放出や販売目的での飼養・輸入は規制しつつ、すでに飼育している個体を無許可で飼い続けることは認めるという、実情に配慮した規制のあり方である。この区分の新設は、いったん広く定着してしまった生きものに対しては、規制の一律の強さよりも、これ以上の拡大をどう食い止めるかという現実的な観点が重視されるようになったことを示している。
5.3 リストによる情報提供という補完的な仕組み
外来生物法による規制と並行して、環境省と農林水産省は2015年に生態系被害防止外来種リストを公表している。このリストは、外来生物法上の規制対象である特定外来生物だけでなく、規制はされていないものの生態系への影響が懸念される外来種を含めて、対策の優先度や産業上の利用状況に応じて分類したものである。法的な規制力を持つ外来生物法と、注意喚起や情報提供を主な目的とするこのリストとを組み合わせることで、規制の対象にはならないが注意が必要な生きものについても、社会が情報を共有できる仕組みが作られている。
こうした法制度の背景には、国際的な合意も存在する。1992年に採択され翌年発効した生物多様性条約は、第8条(h)において、締約国に対し、生態系や生息地、種を脅かす外来種の導入を防止し、それらを制御し、または根絶することを求めている。日本の外来生物法は、この国際的な要請に応える国内法制度の一つとして位置づけられる。次節では、こうした法制度を踏まえたうえで、公園という具体的な場所が、外来種の侵入経路としてどのような性質を持つかを検討する。
5.4 国と地方公共団体の役割分担
外来生物法に基づく防除は、国がすべてを直接手がけるわけではない。生態系等への影響が特に大きいと考えられる事案については、環境省や農林水産省が主体となって防除を進める一方、地域に根ざした身近な防除は、都道府県や市町村といった地方公共団体、あるいは地域の団体が主体となって取り組む場合も多い。外来生物法は、こうした国以外の主体が防除を行おうとする際に、その計画が適切であることについて国の確認や認定を受けられる仕組みを設けており、これによって防除にあたる主体は、法律上の位置づけを持って活動を進めることができる。公園の管理を担う磐田市都市整備課のような地方公共団体の部局が、必要に応じてこうした仕組みを活用しうる立場にあることは、外来種問題が国だけの課題ではなく、地域の行政とも関わる課題であることを示している。
5.5 指定は固定されたものではない
特定外来生物の指定は、法律の制定時に一度限り決められたものではなく、政令の改正によってその後も順次追加されてきた。新たな知見が得られたり、ある外来種の被害が新たに確認されたりすれば、指定の対象は見直される。この点は、外来種問題が固定された知識体系ではなく、観察と評価の積み重ねによって更新され続ける、動的な課題であることを示している。ある生きものが現時点で特定外来生物に指定されていないからといって、将来にわたって指定されないことを意味するわけではなく、逆に指定されている生きものであっても、規制の内容が社会の実情に応じて条件付特定外来生物のような形に見直されることもある。この動的な性質を踏まえるなら、外来種問題への対応は、一度きりの法制度の整備で完結するものではなく、継続的な観察と制度の更新を前提とした営みとして理解すべきである。
6. 公園という侵入経路——緑化資材・土壌・水系・持ち込み
第3節で見た侵入の四段階のうち、公園という場所が特に関わりうるのは輸送と導入の段階である。公園は、造成や改修に伴って外部から緑化資材が持ち込まれ、日々多くの人が出入りし、周辺の水系とつながっている、いくつもの経路が重なり合う場所である。本節では、この経路を四つの観点から整理する。ただし、以下はあくまで一般的な仕組みの整理であり、磐田市内の特定の公園でこうした経路が実際に確認されたという意味ではない点をあらかじめ断っておく。
6.1 緑化資材と植栽——土に紛れて運ばれるもの
公園の造成や改修では、樹木や草花の苗、堆肥や腐葉土、そしてしばしば土そのものが外部から搬入される。こうした資材には、意図された植物以外にも、土に混じった種子や、根鉢に付着した小さな生きものが紛れ込む可能性がある。また、花壇や修景のために選ばれる植物には、観賞価値の高い外来の園芸植物が用いられることも多い。これらの多くは第2節で述べた「外来だが侵略的でない」種にとどまると考えられるが、周辺の環境条件によっては、花壇の外に逃げ出して自立した個体群を築く帰化種となる可能性も理論上はありうる。
6.2 水系——池・小川・雨水を通じたつながり
噴水や修景池、じゃぶじゃぶ池のような水遊びの設備、あるいは公園内を流れる小川を持つ公園では、こうした水域が周辺の河川や水路とつながっている場合がある。水生の生きもの——魚類、甲殻類、両生類など——は、いったん水系に入り込むと、水の流れに沿って公園の外へ、あるいは公園の外から中へと移動しうる。この水系というつながりは、陸上の緑地よりも生きものの移動を制約しにくいという性質を持ち、水辺のある公園を考えるうえで留意すべき経路の一つである。
6.3 人の持ち込み——ペットと善意の行為
公園には、人がペットを連れて訪れる。飼いきれなくなった生きものを公園やその周辺の水辺に放してしまう行為は、外来生物法が原則として禁止する野外への放出に該当しうるだけでなく、たとえその生きものが在来種であっても、その地域の在来個体群との遺伝的な攪乱を招く可能性がある。また、記念行事などで昆虫や魚を野外に放す行為が、参加者にとっては善意や自然への親しみを込めた行為であっても、放される生きものの由来や遺伝的な系統が地域のものと異なる場合には、意図せず外来種問題や遺伝的攪乱の一因となりうることが、保全生物学の文献でしばしば指摘されている。
6.4 靴・衣類・車両——気づかれない運び手
最後に見落とされがちな経路として、人や車両そのものが生きものを運ぶ「運び手」になる場合がある。植物の種子には、動物の毛や人の衣類、靴底に付着して運ばれることに適応したものが少なくなく、公園の管理に用いられる車両や工具に付着した土や種子が、別の場所へ運ばれることもありうる。これらは意図された持ち込みではなく、気づかれないまま生じる移動である点で、緑化資材や水系とは異なる性質を持つ。以上四つの経路はいずれも、公園という場所が持つ「人と物と水が行き交う」という基本的な性質から生じるものであり、公園を特別に危険な場所とみなす根拠にはならないが、生きものの移動という観点から見たときに公園が持つ一つの側面として理解しておく価値がある。
6.5 公園だけの問題ではないという視点
ここまで述べてきた四つの経路は、実のところ公園に限らず、住宅の庭、農地、道路沿いの緑地帯など、人が土や植物、水を扱うあらゆる場所に共通する性質である。公園が特に注目される理由があるとすれば、それは公園が私有地とは異なり不特定多数の人が日常的に訪れる公共の場所であり、都市生態学が論じるように、住宅の庭や街路樹といった周辺の緑地と結びついた緑地ネットワークの結節点になりうるという点にある。この結節点としての性質は、外来種の侵入にとって不利にも有利にも働きうる。多くの主体が出入りすることは侵入の経路を増やす側面がある一方、多くの人の目に触れる場所であることは、第7節で述べる早期発見の機会を増やす側面でもある。公園を侵入経路としてのみ捉えるのではなく、早期発見の場としても捉える視点が、次節につながる。
7. 防除の考え方——早期発見・即時対応と関係機関への委ね方
外来種問題への対応を語るうえで広く共有されている考え方に、早期発見・即時対応(早期発見・早期防除)という原則がある。これは、第3節で見た侵入の段階論と表裏一体の考え方であり、定着したばかりで個体数がまだ少ない段階で発見し、速やかに防除に着手すれば、根絶できる可能性が相対的に高く、費やす労力も抑えられるが、拡大の段階まで進んでしまうと、根絶は著しく難しくなり、防除ではなく個体数や被害の抑制にとどまらざるを得なくなることが多い、という経験に基づく原則である。外来生物法が輸入の水際規制や未判定外来生物制度のような早い段階の対応に重点を置いているのも、この原則の表れとみることができる。
7.1 発見と対応を分けて考える
早期発見・即時対応という原則は、「発見」と「対応」という二つの異なる行為から成り立っている点に注意が必要である。発見とは、見慣れない生きものや、急に増えた生きものに気づくことであり、これは公園を訪れる誰にでも可能な行為である。一方、対応、すなわちその生きものが本当に問題のある外来種かどうかを見極め、必要な場合に防除の方法を判断し実行することは、専門的な知識と、多くの場合は法律上の許可を要する行為である。特定外来生物に指定された生きものを、無許可で捕獲したり、移動させたり、飼育したりすることは、たとえ善意による駆除のつもりであっても、外来生物法に触れる可能性がある。
7.2 個別の駆除は関係機関の指示に従う
この点を踏まえ、本稿の立場を明確にしておきたい。公園で見慣れない生きものを見かけた場合、あるいはある生きものが急に増えているように感じられた場合、その場での捕獲や駆除、移動を個人の判断で行うことは避け、公園の管理を担う磐田市都市整備課や、静岡県、環境省の地方環境事務所といった関係機関に情報を伝え、その後の対応は関係機関の判断に委ねることが基本である。当サイト(ATAWI PARK)は磐田市の公園に関する情報を提供する立場にあるが、個別の生きものが外来種に該当するかどうかの判定や、駆除の是非についての専門的な判断を行う立場にはない。この点は、第4節で述べた人の生命身体に関わる被害についても同様であり、危険を感じた場合には近づかず、必要に応じて医療機関に相談することが優先される。
7.3 順応的な管理という長期的な視点
根絶が難しい段階まで拡大が進んだ生きものについては、根絶そのものを目標とするのではなく、被害を許容できる水準に抑えるという、より長期的で段階的な管理の考え方が採られることも多い。この考え方は、対策を一度きりの決定として固定するのではなく、モニタリングの結果を踏まえて手法を見直し続ける順応的管理(adaptive management)という発想と結びついている。防除の現場では、対策の効果が予測どおりに現れるとは限らず、継続的な観察と柔軟な見直しが必要になる。この長期的な視点もまた、個人の一回限りの判断ではなく、継続的な体制を持つ関係機関が担うべき性質のものであることを付け加えておきたい。
7.4 「気づいたその場で対応しない」という原則の徹底
早期発見・即時対応という語感からは、発見した人がその場ですぐに手を下すことが望ましいという印象を受けるかもしれないが、本稿の立場はこれとは異なる。「即時」が意味するのは、発見してから関係機関へ情報が伝わり、専門的な判断に基づく対応が始まるまでの時間を短くすることであって、発見者個人がその場で捕獲や駆除を即断することではない。特に子どもを連れて公園を訪れる利用者にとっては、見慣れない生きものに好奇心から近づいたり、素手で触れたりすることを避け、まず距離を取って様子を見ることが基本になる。第4節で述べたとおり、人の生命身体に係る被害が懸念される生きものも特定外来生物には含まれており、種の見分けがつかない段階では、安全側に立った距離の取り方が優先されるべきである。
7.5 市民の気づきが果たす役割
個別の対応を関係機関に委ねるべきだという立場は、市民の側にできることが何もないという意味ではない。近年、専門家による網羅的な調査を補う手段として、市民が日常の観察を記録として積み重ねる市民科学(citizen science)という営みが、生物多様性や外来種の分布を把握するうえでの手がかりとして注目されている。公園を日常的に利用する市民は、専門の調査員よりも高い頻度でその場所を訪れており、わずかな変化に気づきやすい立場にある。この気づきを、個人での対応にではなく、関係機関への情報提供という形で生かすことができれば、市民の日常的な観察と、専門的な判断・対応という二つの役割を、無理なく分担することができる。これが、早期発見・即時対応という原則を、公園という身近な場所で実現するための、現実的な道筋の一つだと考えられる。
8. 反論への応答——生態学的ネイティビズムをめぐる論争
ここまでの議論は、外来生物法の枠組みに沿って、外来種を被害の観点から規制するという立場をおおむね前提としてきた。しかし、この立場そのものに対する異論が、生態学の内部からも提起されてきたことにも触れておく必要がある。2011年、マーク・デイヴィス(Mark A. Davis)ら19名の生態学者は、学術誌『Nature』に「Don't judge species on their origins」と題する論考を発表し、種の由来だけを理由に外来種を一律に警戒する姿勢——批判者はこれを生態学的ネイティビズムと呼んだ——を見直すべきだと主張した。
8.1 「由来ではなく影響で判断すべきだ」という反論
デイヴィスらの主張の核心は、ある生きものが在来か外来かという由来ではなく、その生きものが実際にもたらしている生態学的・経済的な影響の大きさによって、対応の優先度を決めるべきだというものである。外来種の中には、定着後長い年月を経て、在来の生態系の一部として機能するようになったものも観察されており、そうした種を由来だけを理由に一律に排除の対象とすることは、限られた保全の資源を効果的に使う上で合理的でない場合がある、というのが彼らの立場である。この主張は、第2節で整理した「外来であることと侵略的であることは別の軸である」という区別を、より強い形で押し進めたものと位置づけられる。
8.2 この反論への応答
この反論には一定の理があるものの、外来生物法の枠組みを不要とする結論には直結しない。第一に、外来生物法自体が、由来だけでなく被害の有無・程度を要件として特定外来生物を指定する仕組みであり、第4節で見た三類型の被害が確認または懸念される種に対象を絞っている点で、デイヴィスらが批判する「由来だけによる一律の排除」とは異なる設計になっている。第二に、外来種が在来の生きものと共進化してこなかった結果、天敵や病原体から一時的に解放され、急激に増殖しやすいという傾向は、侵入生態学の文献で繰り返し指摘されてきた経験的な傾向であり、外来種の由来を完全に無視してよいことにはならない。デイヴィスらの主張以降も、外来種問題を研究してきた生態学者の一部からは、影響の予測が難しい段階では、由来という手がかりを完全に手放すことのリスクを指摘する反論が寄せられている。
8.3 判断材料が乏しいときの構え方——予防的な考え方
由来か影響かという論争が決着していない以上、ある外来種が将来どの程度の被害をもたらすかを、導入の初期段階で正確に予測することは難しい場合が多い。このような不確実性のもとでどう振る舞うべきかについては、1992年に開催された国連環境開発会議(地球サミット)で採択されたリオ宣言の第15原則が、環境問題全般に対する一つの考え方を示している。同原則は、深刻な、または不可逆的な被害のおそれがある場合には、科学的な確実性が十分にないことを、対策を先延ばしにする理由にしてはならないという考え方を掲げており、この考え方は予防的な取組方法(precautionary approach)と呼ばれる。外来生物法が、被害が完全に立証される前の段階でも未判定外来生物制度のような予防的な仕組みを備えているのは、この考え方と軌を一にしている。デイヴィスらの反論が影響の実証を重視する立場であるのに対し、この予防的な考え方は、実証を待つことのリスクそのものを重視する立場であり、両者の緊張関係は、外来種問題への対応を考えるうえで踏まえておくべき論点である。
8.4 「新しい生態系」という視点との接続
この論争と関連する概念に、2006年にリチャード・ホッブス(Richard J. Hobbs)らが提唱した新しい生態系(novel ecosystem)という考え方がある。これは、外来種の定着や環境の改変が進みすぎた結果、在来の生態系の姿に戻すことが現実的でなくなった生態系を指す概念であり、そうした場所では、すべての外来種を排除するという目標そのものを見直し、現状の生態系が果たしている機能——たとえば緑陰や土壌の保持、生きものの生息場所としての機能——を評価の対象に含めるべきだという立場につながる。この考え方を公園に当てはめるなら、公園の緑地は多くの場合、造成の当初から人為的に設計された植栽であり、もともと「在来の自然」への回帰を前提としない場所である。したがって公園における外来種問題は、原生的な自然の回復を目指す文脈とは異なる基準——第4節で述べた被害の三類型を軸とした、実務的な基準——で考えるのが妥当だと考えられる。この整理は、次節で磐田市の公園を具体的に検討する際の前提にもなる。
9. 磐田市の公園への示唆
以上の整理を、磐田市の公園100園に即して具体的に考えてみたい。あらかじめ強調しておくべき前提がある。当サイト(ATAWI PARK)が現時点で持つデータは、磐田市オープンデータ「都市公園一覧」および市の施設ガイドに由来する、名称・種別・面積・地区・トイレや砂場・遊具の有無といった項目に限られており、動植物の種構成についての情報は一切含まれていない。踏査(現地調査)はまだ始まっておらず、以下の記述は、公園の種別や設備という限られた情報から導ける一般的な見通しにとどまる。特定の公園に特定の外来種が生息しているか否かを、当サイトが判断することはできない。
9.1 水辺のある公園という切り口
第6節で述べた水系という経路の観点から見ると、市の施設ガイドの記載上、水を使った施設を持つ公園がいくつか確認できる。今之浦公園(見付・近隣公園)は、施設ガイドによれば噴水広場やじゃぶじゃぶスポット、流れといった水関連の設備を園内施設として持つ。安久路公園(御厨・地区公園)も、施設ガイドの記載に「流れ」が含まれている。こうした水を使った修景設備は、来園者にとって夏場の水遊びの場として親しまれる一方で、第6節で述べたとおり、水生の生きものが移動しうる経路の一つとして、生態学的には留意すべき対象になりうる。ただし、これらの設備を通じて実際に外来種の移動が生じているかどうかは、当サイトのデータからは分からない。
9.2 名称に自然観察を掲げる公園
磐田市の公園の中には、名称そのものが生きものとの関わりを示すものもある。竜洋昆虫自然観察公園(竜洋・風致公園)は、その名称からして昆虫を含む自然観察を意図して整備された公園であることがうかがえる。こうした公園は、身近な生きものとの出会いの場として重要である一方、来園者が生きものの由来——在来か外来か——を必ずしも意識せずに観察している可能性もある。第2節で整理したとおり、外来であることと侵略的であることは別の軸であり、来園者が見かける生きものの多くは、たとえ外来であったとしても、法律上の特定外来生物には該当しない、比較的穏やかな存在である可能性が高い。この点で、名称に自然観察を掲げる公園は、外来種問題を含めて生きものの由来を考えるきっかけを提供する場所としても位置づけられる。
9.3 緑化・植栽という切り口
第6節で述べた緑化資材という経路の観点からは、磐田市の公園のうち砂場を持つ園が43園、遊具を持つ園が64園という記録がオープンデータにある。これらの設備そのものは外来種問題と直接関わるものではないが、公園の多くが植栽や砂、土を伴う施設を有しているという事実は、公園が造成・改修のたびに外部からの資材搬入を伴う場所であることを示している。磐田市は見付・中泉・御厨・豊田・南部・向陽・竜洋・福田・豊岡の9地区からなり、地区ごとに公園数は豊田28園から南部・向陽各2園まで幅があるが、この分布の違いが緑化資材の搬入頻度や植栽の内容にどう関わるかについては、当サイトのデータからは判断できない。
9.4 種別と地区の分布から見える示唆の限界
磐田市の公園100園は、街区公園51園、近隣公園14園、都市緑地10園、地区公園4園、総合公園3園、運動公園3園、風致公園3園、広場公園2園、緑道2園、墓園1園、歴史公園1園、および都市公園法の対象外の6園という内訳を持つ。このうち街区公園は市内で最も数が多く、国の目安である誘致距離250mというきめ細かな密度で分布しているため、日常的に多くの市民が訪れる場所である。第7節で述べた市民の気づきという観点からは、こうした身近な街区公園の多さは、早期発見の機会がそれだけ広く分散していることを意味しうる。他方で、総合公園や地区公園のようにまとまった面積を持つ公園は、施設や植栽の種類も多岐にわたる傾向があり、緑化資材の搬入という経路がより多様になりうる。ただし、これも面積や種別という一般的な傾向からの推測であり、個々の公園の実態を示すものではない。
9.5 駐車場を持つ公園という切り口
第6節で述べた車両を通じた運搬という経路の観点からは、市の施設ガイドで駐車場の記載がある、または当サイトが有ると判定した公園が33園ある。駐車場を備えた公園は、造成や改修の際に工事車両が出入りしやすく、また来園者が自家用車で訪れやすいという性質を持つ。この性質そのものは公園の利用の便を高めるものであり、否定的に捉えるべきものではないが、第6節で整理した「靴・衣類・車両」という経路の観点からは、こうした公園が周辺の他地域とのつながりを比較的持ちやすい場所であるとも考えられる。もっとも、これは車両の出入りが多いというだけの一般論であり、特定の公園における生きものの実際の移動を示すものではない点は、繰り返し強調しておきたい。
9.6 問い合わせと今後の踏査
磐田市の公園の管理は都市整備課が担っており、公園で見慣れない生きものや気になる様子を見かけた場合には、第7節で述べたとおり、個人で対応するのではなく、都市整備課をはじめとする関係機関に情報を伝えることが基本になる。当サイトは、こうした関係機関への窓口の役割を担うものではなく、あくまで磐田市の公園に関する情報を整理して提供する立場にある。今後の踏査を通じて、当サイトが記録できるのは、樹木や草地、水辺の有無といった、外来種問題を考える手がかりになりうる一般的な景観の情報にとどまり、個々の生きものの同定や、外来種であるか否かの判定は、専門的な調査に委ねられるべき課題である。
10. 結論と今後の課題
本稿は、外来種問題という視点から、公園という日常的な場所の意味を検討してきた。議論の出発点は、外来生物法が定める特定外来生物という制度であったが、そこから遡って、外来種問題を正しく理解するための概念的な整理を行った。第2節では、「在来か外来か」という由来の軸と、「侵略的か非侵略的か」という挙動の軸を分けて考える必要があることを確認した。外来であることは、それだけでは有害さを意味しない。第3節では、侵入が輸送・導入・定着・拡大という段階を経て進むこと、そしてその大半が途中で止まることを、ブラックバーンらの統一枠組みとウィリアムソンの「10の法則」を手がかりに整理した。
第4節では、外来生物法が想定する被害を、生態系・人の生命身体・農林水産業という三類型に分けて検討し、それぞれ異なる専門性と対応が必要になることを確認した。第5節では、特定外来生物の指定と規制、未判定外来生物制度、条件付特定外来生物という新しい区分、そして生態系被害防止外来種リストという補完的な情報提供の仕組みを整理した。これらの制度は、生物多様性条約第8条(h)が求める国際的な要請に応えるものでもある。
10.1 公園と外来種問題の接点
第6節では、公園が緑化資材・植栽、水系、人の持ち込み、靴や車両への付着という四つの経路を通じて、外来種の侵入と関わりうる場所であることを論じた。第7節では、早期発見・即時対応という原則を踏まえたうえで、発見と対応を分けて考え、個別の駆除や捕獲は関係機関の指示に従うべきであるという、本稿の実務上の立場を明確にした。第8節では、デイヴィスらによる生態学的ネイティビズムへの批判を検討し、由来だけによる一律の排除ではなく、被害の有無と程度を軸に据える現行の法制度の設計を確認したうえで、新しい生態系という概念を通じて、公園という人為的に設計された緑地における外来種問題の位置づけを整理した。
10.2 磐田市の公園への示唆の限界
第9節では、磐田市の公園100園について、水辺のある公園、自然観察を名称に掲げる公園、緑化・植栽を伴う公園という三つの切り口から一般的な見通しを述べた。ただし繰り返しになるが、当サイトのデータには動植物の種構成に関する情報が含まれておらず、現地踏査もこれからである。本稿で示したのは、磐田市の公園に外来種問題を当てはめて考えるための「見取り図」であって、個々の公園における外来種の生息状況についての判断ではない。
10.3 今後の課題
今後の課題としては、第一に、当サイトの踏査が進む中で、樹木・草地・水辺の有無といった、外来種問題を考える手がかりになりうる一般的な景観情報を、専門的な同定や判定を伴わない範囲で記録していくことが挙げられる。第二に、外来種問題は本稿で扱った保全生物学・侵入生態学の視点だけでなく、公園の植栽を実際に管理する造園学や、生きものの季節ごとの変化を扱う生物季節学、水辺の環境を扱う陸水学など、関連する諸学問と接続することでより立体的に理解できる。第三に、市民が公園で見慣れない生きものに気づいたときに、どこに、どのように情報を伝えればよいかという、公園利用者と関係機関との情報の橋渡しのあり方も、今後検討に値する課題である。
最後に、本稿を含む公園学術論文シリーズが、複数の学問領域から公園という一つの対象を論じるという構成をとっていることの意味にも触れておきたい。外来種問題は、生態系・人の生命身体・農林水産業という三つの被害類型を通じて、生態学だけでなく公衆衛生や農林水産行政とも接続する課題であり、単一の学問だけでは全体像を描ききれない。同時に、公園という場所そのものが、遊具や砂場を備えた子どもの遊び場であり、地域住民が集う公共空間であり、そして本稿で見てきたとおり生きものの由来が交錯する場所でもあるという、複数の顔を持つ存在である。外来種問題は、専門家だけの課題ではなく、日々公園を訪れる一人ひとりの気づきが、早期発見という最初の段階を支えるという意味で、公園という身近な場所と社会全体の課題とを結びつける論点であり続けるだろう。
参考文献
- チャールズ・エルトン(1958)『侵入の生態学』(原題:The Ecology of Invasions by Animals and Plants、Methuen)
- マーク・ウィリアムソン(1996)『Biological Invasions』(Chapman & Hall)
- David M. Richardson、Petr Pyšek、Marcel Rejmánek、Michael G. Barbour、F. Dane Panetta、Carla J. West(2000)「Naturalization and invasion of alien plants: concepts and definitions」Diversity and Distributions, 6(2)
- Tim M. Blackburn、Petr Pyšek、Sven Bacher、James T. Carlton、Richard P. Duncan、Vojtěch Jarošík、John R. U. Wilson、David M. Richardson(2011)「A proposed unified framework for biological invasions」Trends in Ecology & Evolution, 26(7)
- Mark A. Davis 他18名(2011)「Don't judge species on their origins」Nature, 474
- Richard J. Hobbs 他(2006)「Novel ecosystems: theoretical and management aspects of the new ecological world order」Global Ecology and Biogeography, 15(1)
- 生物多様性条約(Convention on Biological Diversity、1992年採択・1993年発効)第8条(h)
- 国連環境開発会議「環境と開発に関するリオ宣言」(1992年、リオデジャネイロ)第15原則
- 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(平成16年法律第78号、2004年制定)
- IUCN種の保存委員会外来種専門家グループ(ISSG)「100 of the World's Worst Invasive Alien Species」(2000年)
- 環境省・農林水産省「生態系被害防止外来種リスト」(2015年公表)
- 磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0・出典:磐田市)
- 磐田市 施設ガイド(公園)
本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。