自然科学・環境地形地質学
その土地の成り立ち——台地・低地・扇状地と公園の場所
要旨
本稿は、地形地質学(地形学)の基礎概念を手がかりに、公園という公共空間の立地を読み直す試みである。公園の配置は都市公園法や都市計画にもとづく行政の決定として説明されることが多いが、なぜその一区画が選ばれたのかという段になると、制度の説明だけでは尽くせない部分が残る。そこには土地の成り立ち、すなわち地形が関わっているという見方が成り立つ。
方法としては、地形学・地誌学の基礎文献の整理と、地形図・治水地形分類図・空中写真という公開資料の読み方の確認を採る。洪積台地と沖積低地、扇状地、自然堤防と後背湿地、旧河道、段丘という基礎概念を整理したうえで、公園の立地が低地や旧河道、崖線沿いに偏る傾向があるとされる理由を、宅地化しにくい土地が公共用地として残るという観点から検討する。あわせて、地形と水・植生・土地利用の対応、地名に残る地形の痕跡を論じる。
検討の結果、地形は公園の場所を一方的に決定するものではなく、行政の歴史的経緯や土地所有の事情と重なり合いながら作用してきたと考えられる。磐田市の公園についても、地名や立地の傾向から土地の成り立ちを推測する手がかりはあるが、個別の地形分類は現地の踏査とハザードマップの参照を待つ必要がある。地形を読む視点は、公園を歩く際の新しい関心の入口になりうる。
キーワード洪積台地沖積低地扇状地自然堤防旧河道治水地形分類図地名学
1. はじめに——問題の所在
公園はなぜそこにあるのか。この問いには、都市計画法や都市公園法にもとづく行政の決定という答えがまず浮かぶ。誘致距離や標準面積を満たすように配置を決め、用地を取得し、供用する——制度の側から見ればそれで説明がつく。しかし、同じ制度のもとでも、なぜ「その一区画」が選ばれたのかという段になると、制度だけでは説明しきれない部分が残る。低い土地、川に近い土地、崖のきわなど、宅地としては使いにくい土地に公園が置かれている例は各地で指摘されており、そこには土地の成り立ち、すなわち地形が関わっているのではないかという見方が成り立つ。
地形地質学(地形学・地質学)は、山地・台地・低地・海岸などの地表の形が、いつ、どのような営力(河川の侵食・堆積、海面変動、風化など)によって作られたかを扱う学問である。本稿はこの学問の基礎概念を借りて、公園という身近な公共空間の立地を読み直すことを試みる。地形学者になるための専門技能を身につけることが目的ではない。むしろ、地形図や治水地形分類図といった公開されている資料を手がかりに、自分の住む土地の成り立ちに関心を向けるための入口を示すことが目的である。
本稿の問いは次の三つである。第一に、洪積台地・沖積低地・扇状地・自然堤防・後背湿地・旧河道といった基礎的な地形区分は何を意味するのか。第二に、公園の立地は、なぜ低地や旧河道、崖線沿いに偏る傾向があるとされるのか。第三に、地形を読むことは、公園という場所の理解にどのような示唆を与えるのか。これらに答えるため、本稿は地形学・地誌学の基礎文献の整理と、公開されている地形図・治水地形分類図の読み方の確認を方法として採る。
構成は次のとおりである。第2節で地形学の基礎概念を整理し、第3節で地形図・治水地形分類図・空中写真から地形を読む方法を確認する。第4節では公園の立地と低地・旧河道・崖線の関係を、宅地化しにくい土地が公共用地として残るという観点から検討する。第5節と第6節では地形と水、地形と植生・土地利用の対応を扱う。第7節では地名に残る地形の痕跡を地名学の視点から論じ、第8節で地形決定論への批判と本稿の限界を確認する。第9節では磐田市の公園データに即して示唆を述べ、第10節で結論と課題をまとめる。
あらかじめ断っておきたいのは、本稿が個別の公園について地盤の安全性や災害リスクを判定するものではないという点である。特定の場所の危険度を評価するには、専門機関が作成するハザードマップや、行政・専門家による現地の調査が必要であり、本稿のような文献整理と概念整理だけでこれに代えることはできない。本稿はあくまで、地形を読むための見方と語彙を提供し、関心を持った読者がハザードマップや公的資料に当たる際の手がかりを示すことに主眼を置く。
本稿が想定する読者は、磐田市周辺で子育てをしている世代、地域の公園を管理・企画する行政の担当者、まちづくりに関わる地域の関係者、そして地理や地域社会に関心を持つ学生である。地形という視点は、専門家だけのものではない。散歩の途中でふと目にする坂道や、少し湿った公園の隅、地図の上でだけ気づく川の跡といった、日常の中の小さな手がかりから土地の成り立ちをたどることは、誰にでも開かれた営みである。本稿はその入口を、公園という身近な題材を通じて示そうとするものである。
地形と公園という組み合わせは、しばしば防災の文脈、すなわち危険を避けるための知識として語られやすい。もちろんそれも重要な側面ではあるが、本稿はそれだけに焦点を絞らない。地形を読むことは、その土地がなぜ水はけがよいのか、なぜ緑が多く残っているのか、なぜ広い空地が確保できたのかといった、公園の成り立ちそのものへの理解を深めることにもつながる。恐れを起点にするのではなく、土地への関心と理解を起点にする語り方を、本稿では心がけたい。
地形と聞くと、山や谷のようなダイナミックな起伏を思い浮かべやすいが、平野部の街の中で問題になるのは、多くの場合、数十センチメートルから数メートルという、ごくわずかな高低差である。この小さな高低差が、水はけや浸水のしやすさ、地盤の性質に大きく影響することが、地形学の知見として蓄積されてきた。公園という平坦に整備された空間は、一見すると地形の影響を受けていないように見えるが、その平坦さ自体が、周囲との高低差を均すための造成の結果である場合も少なくない。
本稿で扱う「公園」は、都市公園法にもとづき磐田市が設置・管理する公園を主に念頭に置いている。街区公園のような身近な小さな公園から、総合公園や運動公園のような広い公園まで、規模も種別もさまざまであるが、いずれも一定の広さを持つ屋外の公共空間である点は共通している。地形という視点は、こうした規模や種別の違いを超えて、公園という空間に共通してあてはめられる見方として位置づけられる。
本稿は、当サイトが提供する公園学術論文シリーズの一編として、地形地質学という一つの学問領域から公園を論じるものである。同シリーズには、社会学や都市計画学、防災学など、異なる学問領域から公園を論じる論文が用意されており、本稿はその中の一つの視点を担っている。読者は、関心に応じて他の領域の論文もあわせて参照することで、公園という空間を多角的に理解することができる。
地形という語は、しばしば山間部や海岸部といった、起伏の目立つ地域を連想させる。しかし、磐田市のような平野部の市街地においても、台地・低地・扇状地・段丘といった地形の区分は失われずに存在しており、街の成り立ちを理解するうえで無視できない要素であり続けている。目立たないからこそ見過ごされがちな平野部の地形を、あらためて言葉にして捉え直すことも、本稿のねらいの一つである。
2. 先行研究と概念の整理
2.1 台地と低地——地形の大きな区分
日本の地形学は、貝塚爽平をはじめとする研究者による第四紀の地形発達史研究の蓄積を土台としている。とりわけ、河川が運んだ土砂が谷を埋め、平野をつくってきた過程を、山地・台地・低地という大きな枠組みで捉える見方は、地形学の基礎として広く共有されている。台地は、かつて河川や海によって形成された平坦面が、その後の海面低下や地殻変動によって周囲より高い位置に取り残されたもので、多くは数万年から十数万年前に形成された比較的古い地形面である。これに対し低地は、最終氷期以降の海面上昇と河川の堆積作用によってつくられた、地質学的には新しい地形である。
台地のうち、河川や海の堆積作用によって形成された古い平坦面は洪積台地(更新世に形成された台地の意)と呼ばれ、周辺の低地よりも一段高く、平坦で水はけがよいという特徴を持つ。一方、低地のうち、氷期以降の海面上昇にともなって河川の堆積が進み、比較的平坦な広がりをもった土地は沖積低地と呼ばれる。
2.2 扇状地・自然堤防・後背湿地・旧河道・段丘——低地の中の微地形
低地のうち、山地から平野に川が出るところに土砂が扇状に堆積してできた地形は扇状地と呼ばれ、扇の要にあたる扇頂から末端の扇端にかけて緩やかに傾斜し、扇端では地下水が湧き出しやすいことが知られている。低地の中にも微妙な高低差があり、これを微地形という。河川が氾濫を繰り返す過程で、川の流路に沿って土砂が集中的に堆積し、周囲の低地よりわずかに高くなった帯状の地形は自然堤防と呼ばれる。自然堤防は水はけがよく、古くから集落や道が立地しやすい場所とされてきた。
これに対し、自然堤防の背後に広がる、排水が悪く粘土質の土壌が堆積しやすい低い土地は後背湿地と呼ばれ、稲作には向くものの宅地には不向きとされてきた。さらに、川が流路を変えた跡には、周囲よりわずかに低い帯状のくぼみが残ることがあり、これを旧河道という。旧河道は軟弱な地盤であることが多いとされ、地形図や空中写真で帯状の低みとして読み取れる場合がある。
河川や海岸に沿ってできる階段状の地形は段丘と呼ばれる。河川が土地を削りながら流路を下げていく過程で、かつての河床であった平坦面が階段状に取り残されたものが河岸段丘であり、海面の変動によって海岸沿いにできる同様の階段状地形は海岸段丘と呼ばれる。段丘の縁にあたる急な斜面は段丘崖ないし崖線と呼ばれ、宅地化を免れた樹林や斜面緑地が残りやすい場所としても知られている。これらの基礎概念は、次節以降で公園の立地を検討する際の共通の語彙となる。
| 地形区分 | おおまかな形成 | 地表の特徴 |
|---|---|---|
| 洪積台地 | 数万〜十数万年前の平坦面が周囲より高く残った地形 | 平坦で水はけがよい。周囲の低地より一段高い |
| 沖積低地 | 最終氷期以降の海面上昇と河川の堆積でできた新しい平野 | 地質的に新しく、軟弱な地盤を含むことがある |
| 扇状地 | 山地から平野に川が出る所に土砂が扇状に堆積した地形 | 扇頂から扇端へ緩やかに傾斜し、扇端で地下水が湧きやすい |
| 自然堤防 | 河川の氾濫のたびに川沿いに土砂が積もってできた微高地 | 周囲の低地よりわずかに高く、水はけがよい |
| 後背湿地 | 自然堤防の背後に広がる排水の悪い低い土地 | 粘土質で水はけが悪く、稲作に向くとされてきた |
| 旧河道 | 川が流路を変えた跡に残る帯状の低み | 軟弱な地盤を含むことが多いとされる |
| 段丘 | 河川や海岸に沿ってできる階段状の地形 | 段丘面は平坦、へりの段丘崖は急な斜面になる |
地形は一つの尺度だけで語れるものではなく、大地形・中地形・小地形という階層をなしていると整理される。山地・台地・低地といった数十キロメートル規模の大きな区分のなかに、扇状地や自然堤防、旧河道のような数百メートルから数キロメートル規模の中地形があり、さらにそのなかに、庭先ほどの広さの微妙な高低差である微地形が含まれる。公園という数千平方メートル規模の空間を地形から論じる場合、注目すべきはこの微地形の水準であることが多い。日本各地には、たとえば武蔵野台地のように固有の名前を与えられた台地や低地が数多く知られており、地域ごとに台地・低地の呼び名や広がりを調べること自体が、その土地の成り立ちを知る作業になる。
なお、洪積台地・沖積低地という呼び方は、地質時代の名称である洪積世・沖積世に由来する古い用語である。現在の地質学・第四紀学では、洪積世・沖積世という呼び方に代えて更新世・完新世という用語が用いられるが、台地・低地を指す一般向けの説明では、なお洪積台地・沖積低地という呼び方が広く使われている。本稿でも、読者にとっての分かりやすさを優先し、洪積台地・沖積低地という呼称を用いる。用語の背後にこうした学史があることも、地形を読む際に知っておいてよい前提である。
地形の形成には、数万年から数十万年という、人間の時間感覚をはるかに超える時間スケールが関わっている。台地の平坦面が形成されたのが数万年から十数万年前であるのに対し、その台地の縁が崖として削られ続けてきた時間もまた、同じかそれ以上の長さに及ぶ。こうした長い時間の中で、河川は流路を何度も変え、そのたびに旧河道や自然堤防、後背湿地が形づくられてきた。現在私たちが目にする地形は、いわばこの長い変化の、ある瞬間の断面にすぎない。
地形学の基礎概念は、単に地表の形を分類するための道具ではなく、なぜその形になったのかという成因を問う視点を含んでいる点に特徴がある。同じ「低地」という言葉でも、扇状地の一部としての低地と、後背湿地としての低地とでは、成り立ちも性質も異なる。本稿が扇状地・自然堤防・後背湿地・旧河道といった細かい区分をあえて示すのは、こうした成因の違いに注目することが、土地の性質を的確に理解するために欠かせないからである。
このような地形区分は、防災や都市計画の分野でも実務的に用いられているとされる。行政が地盤の性質を把握し、下水道や治水施設の計画を立てる際にも、台地・低地・旧河道といった区分が基礎的な情報として参照されるとされる。学術的な分類であると同時に、行政の実務にも接続する語彙である点も、本稿がこれらの概念を丁寧に整理する理由の一つである。
なお、本稿でいう「地形学」は、地表の形そのものの成り立ちを扱う分野であり、地下の岩石や地層の性質を扱う「地質学」とは重なりつつも区別される。地形地質学という呼び方は、両者を合わせて指す便宜的な呼称として用いている。公園の立地を考えるうえでは、地表の形を扱う地形学の視点がまず重要になるが、地盤の強さを考えるうえでは、地質学の視点も欠かせない。
3. 地形図・治水地形分類図・空中写真から地形を読む方法
3.1 地形図と治水地形分類図
地形を読む基本の道具は地形図である。国土地理院が発行する地形図には等高線が描かれ、等高線の間隔が狭いところは傾斜が急であることを、間隔が広いところは傾斜が緩やかであることを示す。等高線を目で追うと、台地の縁がどこにあるか、低地がどちらに広がっているかを大まかに把握できる。ただし、住宅地や道路で覆われた現在の地形図だけでは、盛土や造成によって地表の形が変えられている場合があり、本来の地形を読み取りにくいことがある。
そこで参照されるのが治水地形分類図である。これは国土地理院が河川の氾濫や浸水の危険性を把握するために作成してきた主題図で、台地・低地・扇状地・自然堤防・後背湿地・旧河道・盛土地といった地形の種類を色分けして示す。治水地形分類図は、地表の見た目だけでは分かりにくい旧河道や後背湿地の広がりを教えてくれる点で、通常の地形図を補う資料として位置づけられる。
3.2 空中写真と旧版地形図
空中写真の判読も、地形を読むための古くからの方法である。上空から撮影された写真を立体視すると、地表のわずかな高低差が浮かび上がって見える。また、水田や畑の区画の並び方、道路や集落の並び方にも地形の痕跡が残ることが多い。自然堤防の上には集落や道が帯状に並び、後背湿地には広い水田が広がるといった具合に、土地利用のパターンそのものが地形を映し出していることがある。
現在と過去の地形図を見比べることも有効な方法である。明治期以降の旧版地形図には、現在は市街地化されて見えなくなった水路や湿地、旧河道の痕跡が描かれていることがあり、これを現在の地図と重ね合わせることで、ある土地がかつてどのような地形であったかを推測する手がかりになる。もっとも、こうした資料の読み取りには限界があり、個々の土地の詳しい地盤条件を知るには、ボーリング調査など専門的な地盤調査の結果を参照する必要がある。本稿はその代替を提供するものではない。
- 等高線の間隔で傾斜の急・緩を読む
- 治水地形分類図で台地・低地・旧河道などの区分を確かめる
- 空中写真や土地利用の並び方から微地形を読む
- 旧版地形図と現在の地図を重ねて変化を追う
近年は、国土地理院が公開している地理院地図のように、地形図や治水地形分類図、標高のデータをウェブ上で重ねて見られる仕組みが整えられてきており、紙の地図を購入しなくても、自宅のパソコンやスマートフォンから地形を確かめることができるようになっている。加えて、各自治体が公表する洪水ハザードマップや土砂災害ハザードマップも、地形の情報と重ね合わせて作られていることが多く、地形を読む力は、こうした公的な情報を理解するための土台にもなる。もっとも、こうした画面上の情報を読むには一定の慣れが必要であり、最初は色分けの凡例を丁寧に確認しながら、身近な場所から試してみるとよい。
地形図や空中写真から読み取れるのは、あくまで地表に現れた手がかりであり、地下の地盤構造そのものを直接示すものではないという点にも注意したい。同じように平坦に見える土地でも、地下の土質や地下水位は場所によって大きく異なりうる。住宅の建築や造成の際に行われるボーリング調査や地盤調査は、まさにこの地下の情報を直接確かめるための手段であり、地形図の読み取りとは役割が異なる。本稿で示す方法は、あくまで大まかな傾向をつかむための第一歩であり、個々の土地の詳細な地盤条件を保証するものではない。
地形を読む練習は、まず自分がよく知っている身近な場所から始めるとよいとされる。普段歩いている道に緩やかな上り下りがないか、大雨の後に水たまりができやすい場所がないか、といった経験的な気づきを、地形図や治水地形分類図の情報と照らし合わせてみることで、地図の読み方が少しずつ身についていく。地形図や治水地形分類図はだれでも参照できる公的な資料として整備されており、特別な専門知識がなくても、まずは大まかな傾向をつかむことから始められる。
地形図や治水地形分類図は、いずれもある程度の縮尺で作られた資料であり、敷地一枚ごとの詳細な高低差までは表現しきれないという限界も持つ。地図上では同じ区分に塗られた範囲の中にも、実際には数十センチメートル単位の凹凸が存在することがある。地形図を読む際には、大まかな傾向をつかむための資料であるという性格を踏まえ、細部の判断については他の資料や現地の確認と組み合わせる必要がある。
地形を読む際には、一つの資料だけに頼るのではなく、地形図・治水地形分類図・空中写真・旧版地形図といった複数の資料を突き合わせることで、判断の確からしさを高めることができるとされる。一つの資料だけでは見落としがちな痕跡も、複数の資料を重ねることで浮かび上がってくることがある。次節では、こうした方法を踏まえて、公園の立地と地形の関係を具体的に検討する。
4. 公園の立地と低地・旧河道・崖線——宅地化しにくい土地が残る
4.1 低地・旧河道と治水
都市の中の公園の位置を地形の観点から眺めると、低地や旧河道、崖線沿いに公園が置かれている例が少なくないことに気づく。これは偶然ではなく、そうした土地がもともと宅地や農地として利用しにくかったために、まとまった空地として残りやすく、公共用地に転用しやすかったという経緯が関わっているとされる。
低地のなかでも、河川がたびたび氾濫してきた区域は、治水上の理由から建築が制限されたり、河川管理者が買い上げて公共の緑地や広場として整備したりすることがある。河川に沿って帯状に伸びる公園や広場には、こうした治水と土地利用の歴史が重なっていることが多いとされる。旧河道についても同様で、軟弱な地盤や排水の悪さから宅地開発が避けられ、農地や空地として残った土地が、後になって公園として整備される例が知られている。
4.2 崖線と斜面緑地
崖線、すなわち台地の縁にあたる急な斜面についても事情は近い。崖線は建築が難しく、樹林がそのまま残されやすい場所である。斜面の緑がまとまって残っている崖線緑地は、都市の中で貴重な自然の空間となり、公園や緑地として保全の対象になることがある。台地と低地の境目という地形上の特徴が、そのまま緑地としての価値につながっている例といえる。
もっとも、地形だけがすべてを説明するわけではない。土地区画整理事業に伴って計画的に配置される公園、学校の隣接地として確保される公園、寄付や払い下げによって成立した公園など、地形とは別の歴史的・制度的な経緯で立地が決まった例も多い。都市公園法は誘致距離や標準面積の考え方を示すが、個々の用地選定の理由までは規定していない。したがって、低地や崖線に公園が多いという傾向は、地形が公園の立地を後押しした一つの要因として理解するのが妥当であり、地形が立地を一方的に決定したと言い切ることはできない。
4.3 区画整理と提供公地という制度
戦後の日本の都市計画では、土地区画整理事業という手法によって市街地が整備されてきた歴史がある。土地区画整理は、道路や公園といった公共施設を整えるために、地権者から少しずつ土地を出し合ってもらい、整った街区に組み替える仕組みであり、その中で公園用地として提供される土地は、しばしば区画の隅や、道路や水路の付け替えによって生じた半端な形の土地が充てられることがあるとされる。整形な区画には宅地を優先して割り当て、形の整いにくい残地を公園に回すという考え方は、地形条件によって生じた使いにくい土地が公共空間に転じるという本節の議論と重なる部分がある。
同様の事情は、面積の小さな都市緑地や広場公園、いわゆるポケットパークにも当てはまると考えられる。道路の拡幅や水路の付け替えの際に生じたわずかな残地、あるいは造成後に使い道が定まらなかった細長い土地が、そのまま小さな公園として整備される例は各地で見られる。こうした小さな公園は、単独では地形を語りにくいものの、その存在自体が、区画整理や造成という土地の改変の履歴を物語っていることがある。
都市公園法施行令が定める街区公園・近隣公園・地区公園といった種別ごとの標準面積や誘致距離は、人口の分布をもとに配置の目安を示すものであり、地形そのものを配置の基準として明記しているわけではない。それでも、実際に用地を選定する段階になると、造成の費用や取得のしやすさが重視されるため、結果として低地や崖線、旧河道のような、造成コストの低い土地や取得しやすい土地が選ばれやすくなるとされる。制度上の基準と、実際の用地選定の力学とを分けて考えることが、公園の立地を理解するうえで重要である。
都市公園法施行令は、街区公園・近隣公園・地区公園のような住区基幹公園のほかに、風致公園・歴史公園・墓園といった特殊公園という種別も定めている。これらは地形や景観、史跡としての価値を生かして指定される性格が強く、丘陵地や崖線、社寺の境内地のような、地形的に際立った場所に立地する例が少なくないとされる。磐田市内にも、風致公園や歴史公園に区分される公園があり、その立地には、平坦な街区公園とは異なる地形的な背景が関わっている可能性がある。
日本の都市公園の整備には、震災や戦災からの復興という歴史的な文脈が関わってきたことも知られている。市街地の復興にあわせて土地区画整理が行われる際、防火や避難のための空地として公園がまとまって計画される例があり、この場合も、被災した低地や、造成のしやすい土地が選ばれる傾向があったとされる。公園の立地には、地形条件だけでなく、こうした災害からの復興という歴史的な経緯が重なっていることもある。
5. 地形と水の対応——微地形・排水・水系
地形は水の流れ方と切り離せない関係にある。台地の上に降った雨は比較的速やかに低地へと流れ下り、低地に降った雨や台地から流れ込んだ水は、周囲より低い場所に集まりやすい。後背湿地や旧河道のように周囲より一段低い微地形は、大雨の際に水が集まりやすい場所として知られており、内水氾濫、すなわち排水が追いつかずに水があふれる現象が起きやすい土地とされる。
都市の中の公園は、この水の集まりやすさを逆手にとって、雨水を一時的にためる調整池や遊水機能をあわせ持つ場所として設計されることがある。大雨の際に園内の低い部分に水を一時的に貯め、時間をかけて河川や下水道に流すことで、下流域の急激な増水を和らげる役割である。これは近年、グリーンインフラという考え方のもとで注目されている手法であり、公園の緑と地形の低みを治水の資源として活かす発想といえる。
一方、台地の上や自然堤防の上に立地する公園は、水はけがよく、大雨の後も比較的早く乾く傾向があるとされる。同じ「公園」という言葉でくくられていても、立地する地形によって、雨の後の状態や水との付き合い方は異なりうる。
ただし、ある土地が大雨の際にどの程度水を集めやすいかは、地形だけでなく、周辺の下水道や水路の整備状況、近年の造成の履歴によっても左右される。特定の公園の浸水リスクを知りたい場合には、本稿のような一般的な地形の話ではなく、行政が公表するハザードマップを確認し、疑問があれば管理者である行政の窓口に確かめることが実際的な方法である。
註:浸水や内水氾濫のしやすさに関する具体的な判断は、地形の一般論ではなく、行政のハザードマップと関係機関の情報にもとづいて行うべきである。
近年、こうした公園の遊水機能や浸透機能は、グリーンインフラという考え方のもとで、コンクリートやアスファルトによる従来の排水施設を補完する緑の基盤として、国や自治体の政策文書でも取り上げられるようになってきているとされる。地形の低みを厄介なものとしてだけ捉えるのではなく、資源として活かす発想は、今後の公園整備を考えるうえでも参考になりうる。
台地の上に立地する公園には、もう一つ別の水との関わり方がある。雨水が地表を流れずに土壌へしみ込む浸透という働きである。アスファルトやコンクリートで覆われた市街地が広がると、雨水は地表を流れやすくなり、地下水がたまりにくくなるとされる。これに対し、土や芝生の面を持つ公園は、雨水を地面にしみ込ませる浸透面としての役割を果たしうる。台地の上に立地し、水はけのよい土壌を持つ公園は、この浸透の働きを発揮しやすい場所として位置づけられる。
低地の公園が担う貯留の働きと、台地の公園が担う浸透の働きは、どちらも水循環を都市の中で支える機能として捉えることができる。降った雨をできるだけその場やその近くで受け止め、時間をかけて下流に流したり、地下水として蓄えたりするという考え方は、コンクリートの水路で一気に排水するそれまでの発想とは異なる。公園の立地する地形によって果たしやすい役割が異なるという視点は、公園緑地の整備を考えるうえでの一つの手がかりになりうる。
台地の上や自然堤防の上では、古くから井戸が掘られ、生活用水が確保されてきたとされる。とりわけ扇状地の末端にあたる扇端は、地下を流れてきた水が地表近くまで上がってきて湧き出しやすい場所として知られ、湧水や浅い井戸を頼りに集落が営まれてきた例が各地にある。公園の中に湧水や井戸にちなむ由来がある場合、それはその土地の地下水と地形の関係を物語る手がかりになりうる。
一方、低地の中でも後背湿地や旧河道にあたる土地では、地下水位が高く、井戸を掘らずとも水が得やすい反面、大雨の際には地表にしみ込みきれない水があふれやすいという、両面の性質を持つとされる。水が得やすいことと、水があふれやすいこととは、いわば同じ地下水位の高さという性質の、異なる現れ方であるといえる。
このように、地形と水の関係は、恵みと注意の両方の側面を持つ。台地の上の水はけのよさは日常の快適さにつながる一方、渇水時には水を得にくいという面もあり、低地の水の集まりやすさは、湧水や豊かな緑をもたらす一方、大雨の際の注意にもつながる。どちらか一方だけを強調するのではなく、両面を踏まえて土地を理解する姿勢が求められる。
6. 地形と植生・土地利用の対応
地形は植生や土地利用のあり方とも対応関係を持つ。一般に、水はけのよい台地や自然堤防の上には畑や集落、道が発達しやすく、水はけの悪い後背湿地には水田が広がりやすいとされる。海に近い低地では、砂質の土壌と潮風に強い樹種がまとまって生育する砂丘の植生が見られることがある。
崖線に沿った斜面林も、地形と植生の対応を示す例である。急な斜面は農地にも宅地にも利用しにくいため、樹林がそのまま残されやすく、都市の中にあってもまとまった緑を保つ場所になりやすい。公園や緑地として保全されている崖線の樹林は、地形条件が生み出した緑の分布を反映しているといえる。
河川沿いの低地では、増水時に冠水することを前提とした植生、たとえば水に強い樹種や草地が見られることがある。公園の中にこうした植生が使われている場合、それは単なる景観上の選択ではなく、その土地が水に浸かることを前提とした土地利用の知恵を引き継いでいる可能性がある。
土地利用の履歴という点では、かつて水田や湿地であった土地を埋め立てて宅地や公園にした例も各地にある。この場合、地表の見た目は平坦な市街地であっても、地下には旧来の軟弱な地盤が残っていることがあり、地形分類図や旧版地形図を参照することで、その土地がもともとどのような地形であったかを知る手がかりになる。もっとも、盛土の厚さや締め固めの程度は現地の調査によらなければ分からず、本稿はその代替とはならない。
台地の上の畑作、低地の稲作という土地利用の対応は、水はけのよさと悪さという地形の性質から一定程度説明できるとされる一方、地域の気候や作物の需要、農業技術の発展によっても変化してきた。したがって、地形と土地利用の対応は絶対的なものではなく、あくまで傾向として理解すべきものである。都市化が進んだ現在では、かつて畑や水田であった土地の多くが宅地や公園、道路に変わっており、地表の植生から地形を直接読み取れる場面はむしろ限られてきているといえる。だからこそ、地形分類図や旧版地形図といった記録が、失われた手がかりを補う資料として重要になる。
耕作や造成をやめて放置された土地には、周囲の環境に応じた植生が時間をかけて成立していく遷移と呼ばれる過程が見られる。低い湿った土地では湿性の草地から始まり、次第に水を好む樹木が育つことがあるとされ、乾いた台地の縁では、日当たりを好む樹種から始まって、やがて陰にも耐える樹種が加わっていくといった移り変わりが知られている。公園の緑を長い時間軸で眺めると、そこには地形に規定された植生の物語が重なっていると見ることもできる。
自然堤防の上に発達した集落では、屋敷地の周囲に樹木を植えて風や日差しを和らげる屋敷林と呼ばれる緑が形成されてきたことが、地理学の中でしばしば紹介されている。ケヤキやエノキ、シイ類など、地域によって好まれる樹種は異なるとされるが、いずれも水はけのよい微高地の上に立地する屋敷地を守る役割を果たしてきたと考えられている。公園の中に大径木が残されている場合、それがかつての屋敷林や社寺林の名残である可能性も考えられる。
海に近い低地や砂丘では、潮風と乾燥した砂質の土壌に耐える樹種がまとまって生育する海岸林が発達することが知られている。クロマツなどの針葉樹は、こうした厳しい環境に適応した樹種の代表として、日本各地の海岸沿いの公園や緑地で見られる。海岸に近い公園の樹種を観察することも、その土地が置かれた自然条件を知る手がかりの一つになる。
都市化が進み、地表の大部分が舗装や建物で覆われた地域では、地形と植生の対応関係そのものが読み取りにくくなっている。それでも、公園や社寺林、屋敷林として残された緑の斑点をつなぎ合わせることで、かつての植生や土地利用の分布をおおまかに復元しようとする試みが、都市生態学の分野で行われている。公園の緑を、単独の緑地としてではなく、周辺の緑とのつながりの中で捉える視点も、地形を読むこととあわせて持っておきたい。
公園の樹木を観察する際には、その樹種が自生種なのか、植栽によって持ち込まれた種なのかという違いにも注意が必要である。地形との対応が読み取りやすいのは、多くの場合、古くからその場に根づいてきた自生種や、地域の伝統的な植栽である。近年になって景観目的で植えられた樹種は、必ずしも地形の性質を反映しているとは限らない。
7. 地名に残る地形の痕跡——地名学との接点
7.1 地名が伝える地形の記憶
地形の痕跡は、地図や現地の地表だけでなく、地名の中にも残ることがある。地名学(地名の由来や成り立ちを研究する分野)では、古い地名の多くが、その土地の地形や植生、水との関係を反映してつけられたと考えられてきた。柳田国男をはじめとする民俗学・地名研究の蓄積は、地名を手がかりに土地の性格を読み解く方法を積み重ねてきた。
たとえば「塚」は、盛り土をした高まりや古墳などの人工の高まりを指す語として古くから使われてきたとされる。「窪」「久保」は周囲より低いくぼんだ土地を、「洲」「州」は川や海の中に土砂が積もってできた土地を、「堀」は人工の水路や溝を指す語として使われてきたとされる。こうした地名の要素を手がかりにすると、宅地化や道路整備によって元の地形が見えにくくなった土地でも、かつてどのような土地であったかを推測する糸口が得られることがある。
ほかにも、「谷」や「谷戸(やと)」は山あいの小さな谷筋を、「袋」は周囲を丘や台地に囲まれた袋状の低地を、「原」は台地上に広がる平坦な野原を指す語として使われてきたとされる。「台」がつく地名は文字通り台地の上に位置することを示すことが多いとされ、「腰」がつく地名は台地の斜面の中腹あたりを指すことがあるとされる。こうした語は組み合わさって地名を作ることも多く、たとえば低地を指す語と方角を示す語が合わさって、より具体的な位置を示す地名になっている例も見られる。
地名を手がかりに土地を読む際には、行政区画の名前だけでなく、字(あざ)や小字(こあざ)と呼ばれる、より細かい地域の呼び名にも目を向けるとよいとされる。市町村合併や住居表示の変更によって公式の地名が変わった後も、小字は登記簿や古い地図の中に残っていることがあり、そこには合併前の集落や田畑の呼び名がそのまま保存されていることが多い。小字を丹念にたどる作業は、公式の地名からは見えなくなった土地の履歴を掘り起こす、地名学の重要な方法の一つとされている。
7.2 磐田市の公園名に見る地名の要素
磐田市の公園の名前を見渡すと、こうした地名の要素を含むものがいくつかある。「経塚公園」「かぶと塚公園」「京見塚公園」のように「塚」を含む名前は、市の施設ガイドに京見塚公園の敷地内に京見塚古墳が所在すると記されていることとあわせて考えると、盛り土状の高まりという土地の性格を地名がとどめている例として読むことができる。「久保公園」の「久保」は、窪んだ低い土地を意味する語であった可能性を示唆する。もっとも、これらはあくまで地名の一般的な語源にもとづく推測であり、それぞれの土地の実際の地形分類や成り立ちを確定するものではない。
河川に関わる地名も同様である。「豊田天竜川わんぱく広場」「天竜川ラブリバー公園」「豊田ラブリバー公園」「豊田池田の渡し公園」のように、天竜川や渡し(渡船場)に由来する名を持つ公園は、その名前自体が天竜川の流域という立地を示している。「竜洋西堀河川敷公園」の「河川敷」という語も、河川の氾濫原、すなわち増水時に水に浸かることを前提とした土地であることを名前の上で示している。地名は、その土地の成り立ちを完全に説明する資料ではないが、公園を訪れる際に土地の履歴へ関心を向けるきっかけになりうる。
地名研究は、方言学や歴史学とも接点を持つ分野である。同じ漢字が当てられた地名でも、地域によって読み方や由来が異なることがあり、地名だけから機械的に地形を断定することはできない。それでも、複数の地名を比較し、周辺の地形図や治水地形分類図と照らし合わせることで、推測の確からしさを高めていくことはできる。地名は、単独では弱い証拠であっても、ほかの資料と組み合わせることで、土地の履歴を読み解く手がかりの一つになりうる。
地名の中には、地形とは直接関係のない由来を持つものも数多く存在する。人名や由緒ある建物の名、あるいは願いを込めて名づけられた地名などである。地形の要素を含む地名だけをことさらに強調することは、かえって地名の多様な由来を見えにくくする危険もある。本稿で取り上げた地名の読み方は、あくまで数ある地名の性格づけの一つの切り口にすぎない。
| 地名の要素 | 一般的に指すとされる意味 | 本稿で触れた磐田市の公園名の例 |
|---|---|---|
| 塚 | 盛り土の高まり・古墳などの人工の高まり | 経塚公園、かぶと塚公園、京見塚公園 |
| 久保・窪 | 周囲より低いくぼんだ土地 | 久保公園 |
| 川・渡し | 河川そのもの、または渡船場であった場所 | 豊田天竜川わんぱく広場、天竜川ラブリバー公園、豊田ラブリバー公園、豊田池田の渡し公園 |
| 堀・河川敷 | 人工の水路、または河川の氾濫原 | 竜洋西堀河川敷公園 |
8. 反論と限界——地形決定論批判、個別地点評価の限界
ここまで、地形が公園の立地や土地利用、地名に影響を与えてきたことを述べてきた。しかし、地形だけを重視しすぎると、地形決定論、すなわち地形がすべてを一方的に決めるという単純化に陥る危険がある。実際には、公園の立地は地形だけでなく、土地区画整理事業や道路整備の計画、学校用地との関係、寄付や払い下げといった土地所有の経緯、財政上の制約など、多くの要因が重なり合って決まってきたと考えられる。地形は、その中の一つの、しかし見落とされやすい要因として位置づけるのが妥当である。
また、現在の地表の形が、必ずしも本来の自然地形をそのまま表しているとは限らないという点にも注意が必要である。都市化の過程で、低地や旧河道が盛り土によって平坦にならされ、周囲の台地と見分けがつかないほど地表が均されている例は少なくない。このような土地では、現在の見た目だけから地形を判断すると誤りやすく、治水地形分類図や旧版地形図など、造成前の情報を伝える資料と照らし合わせる必要がある。
地名についても同様の注意が要る。地名は長い年月の中で表記が変わったり、由来とは異なる漢字が当てられたりすることがあり、一つの地名から機械的に地形を断定することはできない。第7節で示した地名の対応関係は、あくまで一般的な語源にもとづく手がかりであって、個々の土地の確定的な証拠ではない。
地形決定論への批判は、地理学や地誌学の中でも繰り返し提起されてきた論点である。ある一つの要因だけで社会や空間のあり方を説明しようとする単純化は、地形に限らず、気候や資源といった他の自然条件についても同様に警戒されてきた。人間の活動や制度、歴史的な選択の積み重ねを軽視して、自然条件だけに原因を求める見方は、説明として分かりやすい反面、実際に働いている複数の要因を見落とす危険をつねに伴う。本稿が地形を主題としながらも、第4節や第8節で繰り返し制度的・歴史的要因に触れてきたのは、この単純化を避けるためである。
以上のような限界を踏まえたうえで、本稿は、地形を公園理解のための唯一の鍵としてではなく、数ある視点のうちの一つとして位置づけることを改めて確認しておきたい。社会学、都市計画学、防災学、考古学、地名学など、隣接する分野の視点と組み合わせることで、地形の視点はより豊かな理解につながる。本稿の関連論文として挙げる分野の議論とあわせて読むことで、単一の説明に偏らない見方が得られるはずである。
本稿が示してきた地形と公園の対応関係は、あくまで傾向としての記述であり、統計的に検証された因果関係を主張するものではない。地形学・地誌学の文献が示す一般的な知見と、公園の名前や立地から読み取れる手がかりとを重ね合わせて論じてきたが、これらを結びつける厳密な実証は、本稿の範囲を超える。今後、個別の公園について地形分類図との照合を進めることができれば、より確からしい議論が可能になるであろう。
本稿で扱った文献は、いずれも広く知られた基礎的なものに限っている。地形学・地誌学の分野には、個別の地域を対象とした専門的な研究がほかにも数多く存在すると考えられるが、存在を確実に確認できないものを取り上げることは避け、確実に参照できる基礎文献の範囲にとどめた。この判断によって、論じられる内容の具体性には一定の制約が生じているが、事実に反する記述を避けることを優先した結果である。
本稿のような文献整理にもとづく議論は、実証的なデータ分析とは性格が異なる。統計的な検証を伴う研究と、概念や文献の整理を通じて見方を提示する論考とでは、示せることの性質が異なっており、両者を混同しないことが重要である。本稿は後者の立場から、地形を読むための見方と語彙を提供することを目指してきた。
最も重要な限界は、本稿が個別の公園の地盤や災害リスクを評価するものではないという点である。ある公園が大雨や地震の際にどのような挙動を示すかは、その土地固有の地質・地盤条件や、周辺の排水・治水施設の整備状況に左右され、文献の整理だけで判断できるものではない。特定の場所の安全性について具体的に知りたい場合には、行政が公表するハザードマップを確認し、疑問があれば管理者である行政の窓口に確かめるべきである。本稿の目的は、そうした公的な資料に当たる際の予備知識として、地形を読むための基礎的な語彙と見方を提供することにある。
註:本稿は個別の公園の地盤条件や災害リスクを評価するものではない。具体的な判断はハザードマップおよび関係機関の情報にもとづいて行われるべきである。
9. 磐田市の公園への示唆
9.1 地区分布と地形の推測
磐田市には、市のオープンデータ「都市公園一覧」94件と、市施設ガイドのみに掲載のある6件を合わせて100園の公園が収録されている。これらは見付・中泉・御厨・豊田・南部・向陽・竜洋・福田・豊岡という9つの地区に分かれて分布しており、地区ごとの位置関係を大まかにたどるだけでも、地形の多様性を推測する手がかりが得られる。
たとえば、天竜川に由来する名を持つ豊田天竜川わんぱく広場、豊田ラブリバー公園、豊田池田の渡し公園(いずれも豊田地区)や、天竜川ラブリバー公園(豊岡地区)は、その名前の通り天竜川の流域に立地しているとみられ、河川に近い低地としての性格を持つ可能性がある。豊田地区は28園と市内で最も多くの公園を抱える地区であり、内陸側の低地から台地にかけて広がっていると推測されるが、地区内の個々の公園がどの地形区分に位置するかは、本稿の整理だけでは特定できない。
沿岸部にあたる竜洋・福田の両地区には、竜洋西堀河川敷公園のように河川敷という語を含む公園や、市内最大の面積を持つ竜洋海洋公園(221,722㎡、総合公園)のように広大な敷地を持つ公園がある。海に近い低地に立地する公園が多いと推測されるが、これも地名や立地からの推測にとどまる。
9.2 地名から読む土地の性格
見付地区には、経塚公園、かぶと塚公園(106,982㎡、総合公園)のように「塚」を含む名前の公園があり、中泉地区には、京見塚古墳を含む京見塚公園がある。第7節で述べた地名の要素と重ねると、これらの公園名は盛り土状の高まりに関わる土地の性格を推測させる。見付は市内で21園、中泉は14園を数える地区であり、いずれも古くからの市街地を含むことで知られている。
磐田市都市整備課(電話0538-37-4806)は市内の都市公園を所管する部署である。市の施設ガイドには、駐車場の有無や園内施設についての記載がある一方、地形分類そのものについての記載は含まれていない。当サイトが収録する公園の情報も、オープンデータと施設ガイドの記載にもとづくものであり、個々の公園がどの地形区分に位置するかを確定する現地の踏査は、まだ行われていない。地形という切り口から公園を眺め直す作業は、今後の踏査の中で、治水地形分類図やハザードマップと突き合わせながら進めていく課題として残されている。
9.3 面積の小さな公園に見る残地の可能性
磐田市のオープンデータには、面積が極めて小さい都市緑地や広場公園も収録されている。中泉地区の二之宮東第2緑地(17平方メートル)や豊田地区の豊田上新屋ポケットパーク(156平方メートル)、豊田第1緑地(254平方メートル)、豊田森下ポケットパーク(286平方メートル)、中泉地区の二之宮東第1緑地(299平方メートル)、御厨地区の県営磐田団地第2緑地(314平方メートル)、豊田地区の磐田ららシティ西ポケットパーク(362平方メートル)、見付地区の見付本通広場公園(372平方メートル)などがこれにあたる。これらは第4節で述べた、区画整理や道路整備にともなって生じる残地としての公園という性格を持つ可能性があるが、それぞれの土地がどのような経緯で公園になったかを裏づける記載は、市の施設ガイドやオープンデータには含まれておらず、本稿の範囲では確定できない。
本稿で述べてきた地形の視点は、当サイトが提供する「ハザード」「川べり」といった読みもののページと合わせて読むことで、より具体的な理解につながると考えられる。地形の一般的な語彙を本稿で押さえたうえで、個々の公園については、行政が公表するハザードマップや、市の施設ガイドの記載を確認するという順序が、実際に土地を理解するうえでは有効であろう。当サイト自身も、今後の踏査の中で、地形という切り口をどのように取り入れられるかを引き続き検討していく。
南部・向陽・豊岡といった面積の小さい地区についても、それぞれの公園名や立地から地形を推測する手がかりがないわけではない。たとえば豊岡地区の天竜川ラブリバー公園は、公園名に天竜川を冠しており、地区の中でも河川に近い低地に立地している可能性が推測される。このように、地区全体の傾向と、個々の公園の立地とが必ずしも一致しない場合もあり、地区単位での大まかな推測と、個々の公園ごとの確認とを分けて考える必要がある。
当サイトが今後行う踏査では、公園の遊具や施設の記録とあわせて、周辺の道路との高低差や、雨の日の水はけといった、地形に関わる簡単な観察も記録の対象に加えることが考えられる。専門的な地質調査ではなくとも、こうした日常的な観察の積み重ねが、将来、治水地形分類図などの公的資料と突き合わせる際の手がかりになりうる。
10. 結論と今後の課題
本稿は、地形地質学の基礎概念を手がかりに、公園という身近な公共空間の立地を読み直す試みであった。洪積台地と沖積低地、扇状地、自然堤防と後背湿地、旧河道、段丘という基礎的な地形区分を整理し、地形図・治水地形分類図・空中写真から地形を読む方法を確認したうえで、公園が低地や旧河道、崖線沿いに立地しやすいとされる理由を、宅地化しにくい土地が公共用地として残るという観点から検討した。
検討を通じて明らかになったのは、地形が公園の立地に影響を与えてきた一方で、それがすべてを説明するわけではないという点である。土地区画整理や寄付、学校用地との関係など、地形とは別の歴史的・制度的な経緯も同時に働いており、地形はその中の見落とされやすい一因として位置づけるのが妥当である。また、地名に残る「塚」「久保」「堀」などの要素は、土地の成り立ちを推測する手がかりにはなるが、確定的な証拠ではないことも確認した。
磐田市の公園について見ると、天竜川に由来する名を持つ公園群、河川敷という語を含む公園、「塚」を含む公園名など、地名や立地から土地の成り立ちを推測できる例はあるが、個々の公園がどの地形区分に属するかを確定する現地の踏査は、まだ行われていない。この点は当サイトにとって今後の課題である。
今後は、磐田市の公園データと治水地形分類図とを重ね合わせて検討すること、現地の踏査を通じて地表の様子を確かめること、そして地形の話題を、防災学や水文学、考古学、地名学など隣接する分野の知見と結びつけて考えることが課題として残る。地形を読む視点は、公園を訪れる際の新しい関心の入口であると同時に、自分の暮らす土地の成り立ちに目を向ける機会にもなりうる。もっとも、個別の安全性の判断は、常にハザードマップと関係機関の情報に委ねられるべきであり、本稿はその判断に代わるものではない。
最後に強調しておきたいのは、地形を読むという営みが、専門的な調査に先立つ、誰にでも開かれた第一歩だという点である。等高線を目でたどること、治水地形分類図の色分けを確かめること、公園の名前に含まれる古い語に目を留めること——これらはいずれも、特別な機材や資格を必要としない。磐田市の公園を歩く際に、こうした小さな手がかりへ目を向けることが、土地への理解を少しずつ積み重ねていく出発点になるだろう。
本稿の限界は、これまで繰り返し述べてきたとおり、個別の公園の地盤条件や災害リスクを判定するものではないという点にある。加えて、参照した文献は地形学・地誌学・地名学の基礎的なものにとどまり、磐田市周辺の詳しい地質図や個別の学術調査には立ち入っていない。より精緻な議論のためには、専門的な地質図や、行政が保有する地盤調査のデータとの照合が必要になるが、これらは今後の課題として残されている。
地形という視点は、公園を訪れる人にとって、遊具や広場の使い勝手とは異なる、もう一つの見方を提供する。足元の土地がどのような歴史を経てそこにあるのかを想像することは、公園での過ごし方を大きく変えるものではないかもしれないが、地域への関心を静かに深める一つのきっかけになるはずである。
本稿を読んだ読者が、次に公園を訪れる際、ほんの少しだけ足元の傾きや、周囲との高低差、あるいは公園の名前に目を向けてみることがあれば、本稿の目的は十分に果たされたことになる。地形という視点は、専門家の占有物ではなく、日々の暮らしの中で少しずつ育てていくことのできる、開かれた見方である。
参考文献
- 貝塚爽平(1977)『日本の地形』(岩波新書)
- 太田陽子・成瀬敏郎・田中眞吾・岡田篤正編(2004)『日本の地形5 中部』(東京大学出版会)
- 国土地理院「治水地形分類図」
- 柳田国男(1936)『地名の研究』(古今書院)
- 楠原佑介・溝手理太郎編(1983)『地名用語語源辞典』(東京堂出版)
- 都市公園法(昭和31年法律第79号)
- 国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」(令和6年6月)
- 磐田市「都市公園一覧」(オープンデータ)
- 磐田市施設ガイド「公園」
本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。