自然科学・環境景観生態学

パッチ・コリドー・マトリクス——景観生態学で公園群を読む

富士ヶ丘サービス株式会社 大石浩之

学問領域:景観生態学 公開・更新 2026-08-17 本文 約20,770字 読了目安 38分

要旨

本稿の目的は、景観生態学の基本概念を用いて、磐田市に散在する公園群を個々の施設としてではなく、一つの地表のモザイクとして読み直す方法を示すことにある。方法は文献整理と概念分析であり、フォアマンとゴドロンが定式化したパッチ(まとまった地表の単位)・コリドー(帯状につなぐ回廊)・マトリクス(それらを取り囲む基質)という三つの語彙、マッカーサーとウィルソンの島の生物地理学、そしてその理論の応用をめぐるSLOSS論争を、公園という対象に当てはめて検討する。

検討の結果、次の三点が示される。第一に、街区公園のような小さなパッチは面積が小さいほど内部と外部の境目である縁辺の影響を強く受け、いわば全体が縁になりやすいこと。第二に、大きな公園を一つ整備するか、小さな公園を多数配置するかという問いは、SLOSS論争として1970年代から論じられてきたが、決着のついた一般解は存在せず、目的や対象ごとに答えが変わること。第三に、パッチどうしを結ぶコリドーや、飛び石状に連結性を補うステッピングストーンという考え方が、孤立した小さな公園の意味を読み替える手がかりになることである。

最後に、磐田市の公園群を景観生態学の枠組みで概観し、街区公園51園という小さなパッチの多さと、竜洋海洋公園のような大きなパッチ、緑道や河川沿いの公園が担いうる回廊としての可能性を検討する。ただし当サイトのデータには植生や連結性を測る情報が含まれておらず、景観指標を実際に計算した結果ではない。パッチとして地図の上で公園群を読む作業は、今後の踏査と測定に開かれた課題として残される。

キーワード景観生態学パッチ・コリドー・マトリクス島の生物地理学SLOSS論争縁辺効果フラグメンテーション磐田市

1. はじめに——問題の所在

ATAWI PARKは磐田市内の公園100園を収録するデータベースであり、これまで各園は所在地・種別・面積・設備といった個別の情報として記述されてきた。しかし公園を一つずつ見る視点とは別に、100の点をまとめて一つの模様として眺める視点がありうる。景観生態学(landscape ecology)は、まさにこの模様の読み方を専門とする学問領域である。本稿は、この学問の基本的な語彙を用いて、磐田市に散らばる公園群を一つの景観として読み直す方法を提示する。

景観生態学が対象とするのは、森林・農地・住宅地・水路といった性質の異なる土地利用が入り組んで並ぶモザイク状の地表である。都市公園はこのモザイクを構成する断片の一つにすぎないが、その断片がどのような大きさで、どのように配置され、互いにどれだけつながっているかという問いは、公園を一つずつ見ているだけでは立てられない。本稿の問いは、磐田市の公園群という模様を、景観生態学の語彙でどこまで記述できるか、という一点に絞られる。

この問いを立てる理由はもう一つある。公園に関する多くの論考は、一つの公園の中で何が起きているか(遊具の配置、利用者の行動、樹木の種類)を論じる。それに対して景観生態学は、公園そのものの内部ではなく、複数の公園と、公園でない土地との間の関係を論じる学問である。街区公園が磐田市内に51園あるという事実は、一園ずつの記述からは意味を持たないが、それらを一つの配置として眺めたとき、初めて景観生態学的な問いの対象になる。

1.1 本稿の方法と限界

本稿の方法は文献整理と概念分析であり、統計的な景観解析やGISによる実測は行わない。景観生態学には、パッチの面積や形状、連結性を数値化する景観指標という手法群が発達しているが、本稿はその考え方を紹介するにとどめ、磐田市の公園について実際の指標値を計算するものではない。景観指標の計算には植生図や空中写真の解析、境界線の座標データなどが必要であり、当サイトの現在のデータはそこまでを含んでいない。

また、景観生態学はもともと生態系や生物相を主な対象とする学問であるが、本稿では公園の利用者である人間の視点も交えて論じる。土地のモザイクを読む枠組みは、生き物の生息地としてだけでなく、人が移動し、集まり、逃げ込む場としての公園群を考えるうえでも応用が利くと考えられるからである。ただし生物多様性や生態系サービスそのものの検討は、姉妹編にあたる別稿(都市生態学の観点からの論考)に譲り、本稿は景観の形とつながり方という、より形式的な側面に焦点を絞る。

1.2 本稿の構成

以下、第2節で景観生態学の成立の経緯と基本概念を整理する。第3節はパッチの面積効果と縁辺効果、第4節は島の生物地理学とSLOSS論争を扱う。第5節はコリドーと連結性、第6節はマトリクスの質、第7節はフラグメンテーションと景観指標という、いわば方法論の節にあたる。第8節では、磐田市の公園群のデータをこの枠組みに当てはめて具体的に検討し、第9節で結論と今後の課題を示す。各節はそれぞれ独立した論点を持つように構成しており、関心のある節から読んでも趣旨がつかめるようにした。

なお、磐田市固有の事実として本稿が用いるのは、市のオープンデータおよび施設ガイドに基づく当サイトのファクトシートに記載された数値と名称に限られる。現地の植生や生き物の観察記録、地形の起伏や土地利用の詳細といった、景観生態学が本来必要とする情報の多くは、当サイトにはまだ蓄積されていない。踏査はこれからの段階であり、第8節の検討はあくまで公開データの範囲での試みであることをあらかじめ断っておく。

1.3 用語法について

本稿で用いる訳語をあらかじめ整理しておく。パッチ(patch)は、周囲とは性質の異なる、まとまりのある地表の単位を指し、必ずしも生き物の生息地に限らず、公園の敷地や農地の区画のような、人が利用する土地の単位にも適用できる語である。コリドー(corridor)は、パッチとパッチを帯状につなぐ回廊を指し、マトリクス(matrix)は、それらを取り囲み景観の大部分を占める基質を指す。景観(landscape)という語は、日常語としての眺めのよさを意味する景観とは異なり、生態学では、これらパッチ・コリドー・マトリクスが組み合わさって形づくる、一定の広がりを持つ土地のまとまり全体を指す専門用語として用いられる。

本稿がこれらの語を公園に当てはめる際には、一つ注意すべき点がある。パッチという語は、本来、対象とする生き物や現象に応じて境界の引き方が変わりうる相対的な概念である。ある種の昆虫にとっては芝生と樹林は別々のパッチだが、ある種の鳥にとっては同じ公園全体が一つのパッチとして機能するかもしれない。本稿が磐田市の公園群を扱う際には、便宜上、公園の敷地という行政上の境界をパッチの単位として採用するが、これはあくまで議論を進めるための仮の単位であり、生態学的に唯一正しい境界というわけではないことを断っておく。

この仮の単位を採用する理由は単純である。磐田市のオープンデータや施設ガイドが記録しているのは、あくまで行政上の公園の敷地という単位であり、その内部の植生や地形を区分した情報ではないからである。本稿の検討は、この既存のデータの粒度に規定された範囲での試みであり、より細かい単位でパッチを捉え直す作業は、当サイトの今後の踏査によって初めて可能になる。

地図点在する園問い
図1100園の点を一つの地図として眺め、配置や大きさを問う視点が景観生態学の出発点である。

2. 先行研究と概念の整理——景観生態学の成立とパッチ・コリドー・マトリクス

2.1 用語の起源——カール・トロールから

景観生態学という語を最初に用いたのは、ドイツの地理学者カール・トロールとされる。トロールは1939年の論文で、空中写真の判読と生態学的な土地研究を結びつける学問領域として Landschaftsökologie(景観生態学)という語を提案した。背景には、第一次世界大戦後に発達した航空写真の技術があり、地表を上空から一望する視点が、それまでの地上からの観察では見えなかった土地利用のパターンを可視化したという事情がある。景観生態学は、この俯瞰する視点を出発点に持つ学問である。

トロールの構想はヨーロッパの地理学の伝統、とりわけ土地の類型を分類する地誌学の系譜に位置づけられる。これに対して、1980年代以降の北米では、生態学の側からこの分野に接近する研究者が現れ、景観生態学は生物地理学や個体群生態学と結びつきながら独自の発展を遂げた。ゼブ・ナヴェとアーサー・S・リーバーマンは1984年の著作で、ヨーロッパの地誌学的な伝統と北米の生態学的な伝統という二つの源流を整理し、両者を統合する学問として景観生態学を位置づけている。

2.2 フォアマンとゴドロンのパッチ・コリドー・マトリクス

景観生態学の語彙を体系立てて示した代表的な業績が、リチャード・T・T・フォアマンとミシェル・ゴドロンによる1986年の著作である。二人は、どのような景観も三つの要素の組み合わせとして記述できるとした。第一はパッチ(patch)で、周囲とは異なる性質を持つ、まとまりのある地表の単位を指す。森のかたまり、農地の区画、そして公園の敷地もパッチの一種である。第二はコリドー(corridor)で、パッチとパッチを帯状につなぐ回廊を指す。河川沿いの緑地帯や、街路樹の並ぶ道路がその例である。第三はマトリクス(matrix)で、パッチとコリドーを取り囲み、景観の大部分を占める基質を指す。

この三つの語彙が有用なのは、性質の異なる土地利用を同じ物差しで比べられるようにする点にある。公園という一つの種類の施設だけを見ていては、公園がパッチなのか、それとも別の何かのコリドーの一部なのかという問いは立てられない。パッチ・コリドー・マトリクスという語彙は、公園を周囲の土地利用との関係の中に置き直し、単体の施設としてではなく、景観というシステムの部分として捉え直す視点を与える。本稿が磐田市の公園群を検討する際の基本的な道具立ても、この三つの語彙である。

2.3 階層理論とスケールの問題

景観生態学のもう一つの重要な考え方は、何をパッチと見なすかが観察の縮尺(スケール)によって変わるという点である。市全域を一枚の地図として見れば、一つの公園は小さな点にすぎないが、その公園の内部だけを見れば、芝生・樹林・水辺がそれぞれ別のパッチとして現れる。生態学ではこれを階層理論(hierarchy theory)と呼び、異なる縮尺で観察すると異なるパッチの配置が浮かび上がることを前提として議論を組み立てる。本稿が扱うのは、公園の内部構造ではなく、磐田市という一つの自治体域を単位とした、より大きな縮尺での配置である。

スケールの問題は、本稿の限界とも関わる。市全域という大きな縮尺で公園群を眺めるとき、街区公園の一つ一つが持つ内部の多様性、たとえば砂場や樹木の有無といった違いは、いったん捨象される。逆に、個々の公園の中の設備を論じる読みもの(ガイド)の記述は、市全域の配置というスケールを扱わない。両者は矛盾するのではなく、異なる縮尺で同じ対象を見ているにすぎない。本稿は、ガイドが扱わない大きな縮尺の問いに焦点を当てる論考として位置づけられる。

2.4 学問領域としての広がり

景観生態学は、その成立以来、生態学だけでなく地理学・林学・農学・都市計画学など、複数の学問領域にまたがる形で発展してきたとされる。ナヴェとリーバーマンが整理したように、ヨーロッパでは土地の類型を分類し、人の営みと地形・植生との関係を記述する地誌学的な色彩が強く、北米では個体群生態学や保全生物学と結びついた、より定量的な色彩が強いという違いがあるとされる。この二つの系譜は排他的なものではなく、パッチ・コリドー・マトリクスという語彙は、いずれの系譜からも参照される共通の土台として機能してきた。

都市計画やランドスケープデザインの分野でも、緑地の配置を考える際にパッチ・コリドー・マトリクスの語彙が参照されることがあるとされる。ただし、都市計画における緑地の配置は、生態学的な合理性だけでなく、住民の利用のしやすさや土地の取得の経緯、財政上の制約など、多くの要因の積み重ねの結果であることが一般的であり、景観生態学の語彙をそのまま当てはめれば実態が説明できるというものではない。本稿が磐田市の公園群にこの語彙を当てはめる作業も、既存の配置を評価するためではなく、あくまで読み解くための一つの視点を提供するものとして位置づけている。

本節で整理した概念は、いずれも数十年にわたって蓄積されてきた学問の成果であり、本稿がその全体を網羅することはできない。以下の各節では、パッチ・コリドー・マトリクスという三語彙のうち、とりわけ公園群の配置を読むうえで有用と考えられる論点——パッチの面積効果と縁辺効果、島の生物地理学とSLOSS論争、コリドーとステッピングストーン、マトリクスの透過性、フラグメンテーションと景観指標——を順に取り上げていく。

文献の系譜縮尺の階層配置の一覧
図2トロールの造語からフォアマンの三語彙まで、景観生態学は縮尺を変えながら土地の模様を読む方法を蓄積してきた。

3. パッチ論——面積効果と縁辺効果

3.1 種数と面積の関係

パッチの性質を論じるうえで、まず整理すべきは面積の効果である。生態学には、ある土地の面積が大きいほど、そこに生息する種の数が多くなる傾向があるという経験則があり、種数・面積関係と呼ばれる。この関係は森林の断片や島でくり返し観察されてきたとされ、後述する島の生物地理学の理論的な基礎の一つになっている。面積が大きいパッチほど、多様な環境条件を内包しやすく、個体群が絶滅にいたるまでの時間も長くなりやすいという考え方が、この経験則の背景にある。

この考え方を公園にそのまま当てはめることには慎重であるべきだが、大きな公園ほど樹林・芝生・水辺といった複数の環境を内部に持ちうるという点は、面積効果の一つの現れと見ることができる。逆に、面積の小さいパッチでは、内部に持てる環境の種類が限られ、周囲の土地利用の影響を強く受けやすい。この、周囲からの影響という論点が、次に述べる縁辺効果である。

3.2 縁辺効果——境目が持つ独自の性質

パッチの内部と外部の境目を縁辺(edge)と呼び、縁辺付近では内部とは異なる微気候や光環境が生じることが知られている。日当たりや風通し、気温や湿度は、パッチの中心部と縁の付近とで異なり、そこに生息する生き物の顔ぶれも変わりうる。都市公園でいえば、道路に面した縁の部分と、樹木に囲まれた中央部とでは、体感する環境が異なることは想像しやすい。この境目に特有の性質を利用する生き物を縁辺種、内部の落ち着いた環境を必要とする生き物を内部種と呼んで区別することがある。

パッチの面積が小さくなるほど、内部と縁辺の比率は縁辺側に大きく傾く。円形のパッチを例にとれば、半径が半分になると面積は四分の一になるのに対し、周囲の長さ(縁の長さ)は半分にしかならない。つまり小さなパッチほど、面積に対する縁の割合が相対的に大きくなり、極端に小さいパッチでは、内部と呼べる部分がほとんど存在せず、全体が縁辺の性質を帯びることになる。これは幾何学的な性質であり、パッチの中身がどのようなものであっても当てはまる。

3.3 小さなパッチとしての街区公園

この幾何学的な性質を踏まえると、街区公園のような小規模な公園は、面積が小さいがゆえに、そのほとんどが縁辺の性質を持つパッチであると考えられる。国の目安では、街区公園の標準的な面積は0.25ヘクタールとされており、これは一辺約50メートルの正方形におおむね相当する規模である。この程度の広さでは、外周の道路や住宅地の影響が敷地の中心近くまで及びやすく、パッチの内部だけに固有の環境が成立する余地は限られると考えられる。

  • 小さなパッチは面積に対する縁の割合が大きく、内部固有の環境を持ちにくい
  • 縁辺付近は周囲の土地利用(道路・住宅地・農地)の影響を受けやすい
  • 縁辺の性質は必ずしも欠点ではなく、縁を好む生き物や利用のされ方も存在するとされる

ただし、縁辺であることが一方的に不利益であるとは限らない点には注意が必要である。縁辺には縁辺なりの生態的な役割があり、内部種にとっては不向きでも、縁辺を好む種にとっては好適な環境となりうる。また人の利用という観点からも、周囲の道路や住宅地から見通しやすい縁の部分は、防犯や見守りの観点から重要な機能を持ちうる。面積効果と縁辺効果は、パッチの大小に優劣をつける理論ではなく、大小それぞれの性質を記述する枠組みとして理解すべきである。

3.4 形状もまた縁辺の量を左右する

縁辺の割合を左右するのは面積だけではない。同じ面積のパッチであっても、形が円や正方形に近い、まとまりのよい形であれば周囲の長さは短くなり、逆に細長い、あるいは複雑に入り組んだ形であれば周囲の長さは長くなる。前者は後者に比べて、同じ面積の中でより多くの内部を確保できる形状であるといえる。景観生態学では、パッチの周囲の長さと面積の比によって、この形状の複雑さを表す指標が用いられることがあり、第7節で述べる景観指標の一つに位置づけられる。

註:ここでの縁辺効果は、あくまで面積と形状という幾何学的な性質から導かれる一般的な傾向であり、実際にどの程度の縁辺効果が生じるかは、対象とする生き物の種類やパッチの植生、周囲のマトリクスの性質によって大きく異なるとされる。本稿はこの一般的な傾向を紹介するにとどめ、磐田市の各公園について個別に縁辺効果の強さを判定するものではない。

面積効果と縁辺効果を合わせて考えると、パッチの価値を面積という単一の数値だけで測ることの限界も見えてくる。同じ面積であっても、形がまとまっていて内部を確保しやすいパッチと、細長く縁辺ばかりのパッチとでは、そこに成立しうる環境の性質は異なる。磐田市の公園群についても、面積の数値だけからは、それぞれのパッチがどれだけ内部固有の環境を持ちうるかを判断することはできず、形状や周囲の土地利用まで含めた検討が必要になる。この検討に必要な境界線の形状データは、当サイトの現在のファクトシートには含まれていない。

面積縁と内部樹木の有無
図3面積が小さいパッチほど縁の占める割合が大きくなり、内部固有の環境を持ちにくいとされる。

4. 島の生物地理学とSLOSS論争——大きな一つか、小さな多数か

4.1 島の生物地理学の理論

ロバート・H・マッカーサーとエドワード・O・ウィルソンは1967年の著作で、海洋の島における種の数が、新たに移入してくる種と、島内で絶滅していく種との釣り合いによって決まるという理論を示した。この理論では、島が大きいほど絶滅は起こりにくく、島が本土に近いほど移入は起こりやすいとされ、島の面積と隔離の程度から、そこに定着する種の数がおおまかに予測できるとされる。この理論はもともと海の島を対象としていたが、後に、森林の中に孤立した緑の断片や、都市の中に点在する緑地といった、陸上の生息地の断片にも応用されるようになった。

陸上の緑の断片を海の島に見立てるこの発想は、都市公園のような小さな緑地を、住宅地や道路という周囲のマトリクスに囲まれた一種の島として捉える視点を生んだ。ジャレド・M・ダイアモンドは1975年の論文で、自然保護区の設計に島の生物地理学の考え方を応用し、保護区の面積や配置についての具体的な指針を提案した。この提案が、次に述べるSLOSS論争の出発点となった。

4.2 論争の経緯

SLOSSとは、single large or several small、すなわち大きな一つか、小さな複数かという問いの頭文字を取った略称である。ダイアモンドは、同じ合計面積であれば、一つの大きな保護区の方が、複数の小さな保護区に分けるよりも多くの種を保全できると論じた。これに対してダニエル・シンバーロフとローレンス・G・エイブルは1976年の論文で、この主張の理論的な根拠を批判し、状況によっては複数の小さな保護区の方が、病害や火災などの局所的な災害に対して分散のリスクを取れる点で有利になりうると反論した。

この応酬はその後も続き、マイケル・E・ソーレとダニエル・シンバーロフは1986年の論文で、遺伝学と生態学の知見を整理しながら、単純にどちらが優れているかを一般的に決めることはできないという立場を示した。対象とする生物の移動能力や、保護区の間の距離、周囲のマトリクスの性質によって、大きな一つが有利になる場合も、小さな複数が有利になる場合もあるというのが、この論争を経て広く共有されるようになった見方である。SLOSS論争は、一つの正解を導いた論争ではなく、面積と分散という二つの価値のどちらを重視するかという、判断の枠組みを整理した論争として理解されている。

論点大きな一つ(Single Large)を支持する論拠小さな複数(Several Small)を支持する論拠
絶滅のリスク個体群が大きく維持され、絶滅までの時間が長い一か所が失われても他が残る分散のリスク回避
局所的な災害・病害対象が一つなので管理はしやすい火災・病害・伐採などが全体に及びにくい
環境の多様性内部に複数の環境を含みやすい異なる立地に置くことで環境の幅を確保できる
利用(人の場合)拠点性が高く、遠方からも利用しやすい身近な場所に複数あり、日常的に利用しやすい

4.3 決着のつかない論争であることの意味

SLOSS論争がいまなお決着していないという事実は、本稿にとって重要な意味を持つ。磐田市には、街区公園という小さなパッチが51園ある一方で、竜洋海洋公園のような大きなパッチも存在する。この構成が生態学的に見て望ましいかどうかを、本稿は判定しない。判定するためには、対象とする生き物の種類や移動能力、公園どうしの距離、周囲の土地利用といった具体的な情報が必要であり、それらは現地の踏査や測定によって初めて得られるものだからである。本稿ができるのは、SLOSS論争という判断の枠組みを提示し、磐田市の公園群がその枠組みの中でどのような位置にあるかを、第8節で具体的に見ることまでである。

4.4 対象を定めない議論の危うさ

SLOSS論争を振り返る際にもう一点注意すべきは、この論争がもともと、保全すべき対象となる生き物や生態系を具体的に想定したうえでの議論であったという点である。対象を定めずに「大きな公園と小さな公園のどちらがよいか」とだけ問うことは、SLOSS論争の本来の枠組みからは外れる。移動能力の高い鳥にとっては小さなパッチの分散が有利に働くかもしれず、逆に移動能力の乏しい生き物にとっては、大きなパッチの中でまとまった環境が維持されることの方が重要かもしれない。対象を明示しないまま一般的な優劣を論じることは、この論争が積み重ねてきた議論の蓄積を単純化しすぎることになりかねない。

この注意は、公園を人の利用の場として考える場合にも当てはまる。乳幼児を連れた親にとっては、歩いて行ける近さに小さな公園が複数あることが重要かもしれず、部活動や大会など広い敷地を必要とする利用にとっては、大きな公園が一つ整っていることが重要かもしれない。SLOSS論争の教訓は、大小どちらが優れているかを決めることではなく、誰にとって、何のために評価するのかを先に定めなければ、比較そのものが成り立たないという方法論的な戒めにあると言える。

本稿が第8節で磐田市の公園群を検討する際にも、この戒めを踏まえ、街区公園と総合公園のどちらが優れているかを結論づけることはしない。示すことができるのは、両者がどのような比率で存在し、それぞれがSLOSS論争の言う大きな一つと小さな複数のどちらの極に近いかという配置の事実そのものである。その事実をどう評価するかは、対象を定めた今後の検討に委ねられる。

大小の比較面積のデータ決着しない問い
図4大きな一つの保護区か、小さな複数の保護区か。SLOSS論争は一般解のない、条件次第の問いとして今も参照される。

5. コリドーとステッピングストーン——連結性の理論

5.1 コリドーの機能

フォアマンとゴドロンの語彙のうち、パッチと並んで重要なのがコリドーである。コリドーは、パッチとパッチを帯状につなぐ回廊であり、河川沿いの緑地帯、街路樹の連なる道路、生垣の続く農地の境界などがその例とされる。コリドーが果たす機能としては、生き物や種子が移動するための通り道になること、周囲の環境から一定程度独立した固有の環境を帯状に提供すること、そして逆に、ある種の生き物にとっては移動を妨げる障壁として働くこともあることが挙げられる。同じコリドーでも、対象とする生き物によって、通り道にも障壁にもなりうるという両義性は、この概念の重要な特徴である。

都市の中でコリドーの役割を果たしうるものとして、河川とその両岸の緑地、幹線道路沿いの街路樹、鉄道や水路の跡地に整備された緑道などが挙げられる。これらは、単独では小さな帯状のパッチにすぎないが、複数のパッチを線状につなぐことで、点在するパッチの連結性、すなわち互いの行き来のしやすさを高める役割を持つとされる。連結性は、パッチの面積そのものとは別の、配置の関係性に関わる性質であり、SLOSS論争で論じられた分散のリスクを補う手段としても位置づけられる。

5.2 ステッピングストーン——飛び石の連なり

帯状に連続したコリドーを整備できない場合でも、小さなパッチが飛び石のように点在していれば、生き物はそれらを中継地点として利用しながら、より遠くまで移動できると考えられている。この飛び石状のパッチをステッピングストーンと呼ぶ。連続した回廊ではなく、断続的な足がかりの連なりによって連結性を確保するという発想であり、コリドーを新たに整備する余地が乏しい都市部において、既存の小さな緑地の価値を見直す視点を提供する。

ステッピングストーンの考え方が示唆するのは、個々には小さく取るに足らないと見えるパッチであっても、それらが適度な間隔で連なっていれば、全体として一つの移動経路に相当する働きを持ちうるということである。逆に言えば、飛び石の間隔が対象とする生き物の移動能力を超えて開いてしまえば、その連なりは機能しなくなる。ステッピングストーンの有効性は、個々のパッチの質だけでなく、パッチどうしの距離という、配置の問題に強く依存する。

5.3 連結性は人にも当てはまるか

コリドーとステッピングストーンという考え方は、もともと生き物の移動を念頭に置いた概念であるが、人の移動、とりわけ徒歩で移動する子どもや高齢者にとっての公園の連なりを考えるうえでも、類推として参照できる面がある。歩いて行き来できる範囲に公園が点在していれば、一つの公園から次の公園へと歩を進めることができ、遠方の大きな公園まで一続きの緑を伝って行けるわけではないとしても、飛び石を渡るように複数の公園を経由することは可能になる。ただし、これはあくまで生態学の概念を人の行動に類推的に当てはめたものであり、人の移動を規定する要因は、生き物の移動とは異なる道路や交通、安全といった別の条件に大きく左右されることには注意が必要である。

5.4 コリドーの幅と質

コリドーとして機能するために必要な幅や植生の質は、対象とする生き物によって異なるとされる。狭く単純な植生の帯であっても通り道として利用する生き物がいる一方、ある程度の幅とまとまった植生を備えていなければ機能しない生き物もいるとされる。フォアマンは、コリドーの幅が狭いほど、コリドー全体が縁辺の性質を帯びやすく、内部固有の環境を必要とする生き物にとっては通り道として機能しにくくなると論じている。この点は、第3節で述べたパッチの面積効果と縁辺効果の議論が、帯状のコリドーにも当てはまることを示している。

都市の街路樹や生垣のような、幅の狭い緑の帯は、その意味では限定的なコリドーであり、あらゆる生き物にとって有効な通り道になるわけではないと考えられる。それでも、幅の狭いコリドーが皆無であるよりは、部分的にでも存在する方が、マトリクスの透過性を高める効果を持ちうるとされる。磐田市の公園群についても、緑道や河川沿いの緑がどの程度の幅と連続性を持つかによって、コリドーとしての実効性は大きく変わると考えられるが、この点を確かめるための詳細な情報は、当サイトのデータにはまだ含まれていない。

コリドーの機能をめぐるもう一つの論点は、コリドーが常によい働きだけをするとは限らないという点である。第2節で触れたように、コリドーは通り道であると同時に障壁にもなりうる両義的な存在であり、場合によっては、外来種や病害が広がる経路として働くという懸念も指摘されることがある。コリドーを整備すればそれだけで連結性の課題が解決するという単純な話ではなく、何を通しやすくし、何を通しにくくするかという設計上の判断が伴う概念であることに注意しておきたい。

水路のコリドー移動する生き物飛び石のパッチ
図5帯状のコリドーが整備できない場所でも、飛び石状に点在するパッチが連結性を補うことがある。

6. マトリクスの質——「何もない場所」ではない基質

6.1 マトリクスとは何か

パッチとコリドーを取り囲み、景観の面積の多くを占める土地利用をマトリクスと呼ぶ。都市であれば住宅地や道路、農村であれば農地がマトリクスに当たることが多い。マトリクスは、しばしば分析の背景として見過ごされがちだが、フォアマンとゴドロンは、マトリクスの性質こそが、パッチどうしの連結性やコリドーの機能を左右する重要な要因であると位置づけている。マトリクスは単なる余白ではなく、パッチの価値を決める条件そのものである。

同じ広さ、同じ形のパッチであっても、それを取り囲むマトリクスが幹線道路であるか、静かな住宅地であるか、農地であるかによって、パッチの実質的な価値は大きく異なる。周囲を交通量の多い道路に囲まれた公園と、閑静な住宅地に囲まれた公園とでは、面積という数値の上では同じであっても、そこに至るまでの移動のしやすさや、周囲からの影響の質はまったく異なる。この違いを説明する概念が、マトリクスの透過性である。

6.2 透過性——通り抜けやすさという性質

透過性(permeability)とは、あるマトリクスを生き物や人がどれだけ通り抜けやすいかを表す性質である。生き物にとって、舗装され交通量の多い道路は透過性の低いマトリクスであり、パッチどうしの往来を妨げる障壁として働きやすいとされる。反対に、生垣や畑が続く農地は、種類によっては透過性の高いマトリクスとなり、パッチ間の移動を助けうる。透過性は、マトリクスを構成する土地利用の種類だけでなく、道路の交通量や照明、騒音といった細かな条件によっても左右される。

人の移動に引きつけて考えれば、透過性の低いマトリクスとは、歩いて通り抜けにくい、あるいは通り抜けることに不安を感じるような土地の並びを指すと言える。大きな道路によって市街地が分断されている場合、地図の上での直線距離が近くても、実際に歩いて行き来する経路は大きく迂回せざるを得ないことがある。マトリクスの透過性という視点は、パッチどうしの距離を単純な直線距離ではなく、実際に移動可能な経路として捉え直す必要性を示している。

6.3 マトリクスは均質ではない

マトリクスは一様な背景ではなく、内部に濃淡を持つ。住宅地の中にも、庭木の多い一角と、駐車場が連続する一角とでは、透過性が異なりうる。都市の緑地ネットワークを論じる研究では、公園という正式なパッチだけでなく、庭先の樹木や生垣、街路樹といった、パッチとして数えられていない小さな緑の要素が、マトリクスの透過性を底上げしている可能性が指摘されている。これらは公園のように面積や種別が記録される対象ではないため、当サイトのデータからは把握できないが、景観全体を評価するうえでは無視できない要素とされる。

  • マトリクスはパッチを取り囲む背景ではなく、連結性を左右する条件そのものである
  • 透過性は道路・住宅地・農地といった土地利用の種類によって異なりうる
  • 庭木や街路樹など、公園以外の緑もマトリクスの透過性に関わりうる

6.4 マトリクスと人の行動

マトリクスの透過性という考え方は、公園までの経路を歩く人の行動を考えるうえでも手がかりになる。幹線道路を横断しなければならない経路と、住宅地の細い道を通れば済む経路とでは、同じ直線距離であっても、歩く人が感じる負担や所要時間は異なりうる。とりわけ、乳幼児を連れた保護者や高齢者にとっては、横断歩道の有無や交通量が、公園までの実質的な距離を大きく左右すると考えられる。この負担の違いは、地図上の直線距離だけを見ていては捉えられず、マトリクスの性質を具体的に確認して初めて見えてくる。

また、マトリクスの透過性は、年齢や移動手段によっても感じられ方が異なる。徒歩の子どもにとって透過性の低い道路が、自転車や自動車を使う大人にとってはさほど障壁にならないこともある。景観生態学がもともと想定していたのは特定の生き物の移動能力に応じた透過性の違いであったが、人の場合も、年齢や身体的な条件によって同じマトリクスの透過性の感じ方が変わるという点は、類推として示唆に富む。この観点は、公園どうしの距離を評価する際に、誰にとっての距離かを明示する必要があることを示している。

以上をまとめると、マトリクスは景観生態学の三語彙の中でもとりわけ見過ごされやすいが、パッチの価値やコリドーの機能を実質的に決める条件として、パッチそのものと同じくらい重視されるべき要素である。磐田市の公園群を評価する際にも、公園の面積や種別だけでなく、それぞれの公園を取り囲む土地利用がどのような性質を持つかという視点を欠かすことはできない。ただし、この周辺の土地利用に関する情報は、当サイトのファクトシートが扱う範囲を超えており、本稿では概念の紹介にとどめざるを得ない。

透過性の低い道路透過性の高い緑住宅地の濃淡
図6マトリクスは一様な余白ではなく、通り抜けやすさに濃淡を持つ基質として景観の性質を左右する。

7. フラグメンテーションと景観指標——景観を測る方法

7.1 フラグメンテーションという過程

まとまった一つの生息地が、開発や造成によって複数の小さな断片に分割されていく過程を、フラグメンテーション(生息地の分断化)と呼ぶ。レノア・ファーリグは2003年の総説論文で、生息地が失われること自体(面積の減少)と、残された生息地が分断されること(パッチ数の増加と孤立化)とは、性質の異なる二つの過程であり、両者を区別して論じる必要があると整理した。面積の減少は、単純に生息できる総量が減ることを意味するのに対して、分断化は、残った面積の合計が同じであっても、パッチが小さく孤立していくことによる別の影響をもたらすとされる。

この区別は、都市の緑地を考えるうえでも参考になる。市街地が広がる過程で、まとまった緑地が徐々に開発され、残された緑が飛び飛びの小さな断片として点在するようになる現象は、都市化の典型的な帰結の一つとされる。磐田市の公園群についても、いつ、どのような経緯で現在の配置になったのかという歴史的な過程は本稿の対象外であるが、街区公園という小さなパッチが数多く存在するという現状そのものは、フラグメンテーションの帰結として理解しうる可能性がある。

7.2 景観指標——パッチの性質を数値で表す

景観生態学では、パッチの面積や形、パッチどうしの距離や連結性を数値化する景観指標という手法が発達している。代表的な指標として、単位面積あたりのパッチの数を示すパッチ密度、パッチの平均面積、パッチの形状がどれだけ単純な円や正方形に近いか、あるいは複雑に入り組んでいるかを示す形状指数、そして最も近いパッチまでの距離の平均を示す近接度指数などが挙げられる。ケビン・マッガリガルとバーバラ・J・マークスが1995年に公表したFRAGSTATSは、これらの指標を計算するための代表的なソフトウェアとして、その後の景観生態学の研究に広く用いられてきたとされる。

これらの指標を計算するには、対象地域の土地利用を細かく区分した地図データが不可欠である。磐田市の公園について言えば、各園の名称・所在地・種別・面積といった属性は当サイトのファクトシートに整理されているが、園の境界線の正確な形状や、周辺の土地利用を含めた面的なデータは含まれていない。したがって本稿では、景観指標という考え方そのものを紹介するにとどめ、実際の数値を算出することはしない。指標を計算する作業は、地図データの整備という、当サイトの現在の踏査の段階を超えた課題である。

7.3 数えられることと、数えられないこと

景観指標は便利な道具である一方、数値化できる範囲にしか光を当てられないという限界も持つ。パッチの面積や形状は測定できても、そこにどのような生き物が実際に生息しているか、あるいは人がその公園をどのように使っているかは、指標だけからは分からない。景観生態学の方法論を紹介する本節の趣旨は、数値による分析を推奨することではなく、面積や配置という、これまで個々の公園の記述では見落とされがちだった側面に光を当てる視点を提示することにある。数値化はその視点を厳密にする一つの手段にすぎず、現地での観察と組み合わせて初めて意味を持つ。

7.4 縮尺の選択という判断

景観指標を計算する際には、どこまで細かい単位を区別して数えるかという、縮尺の選択自体が一つの判断になる。たとえば公園の中の小さな花壇や築山を独立したパッチとして数えるか、それとも公園全体を一つのパッチとして扱うかによって、算出される指標の値は大きく変わる。この最小の区別の単位は、しばしば最小マッピング単位と呼ばれ、どの水準に設定するかは、分析の目的や対象とする生き物の大きさに応じて研究者が決める必要があるとされる。唯一絶対の正しい縮尺があるわけではなく、目的に応じて縮尺を選び取るという判断が、景観指標の計算には常につきまとう。

本稿が第8節で公園の種別を単位として扱うのも、一つの縮尺の選択である。公園の敷地全体を一つのパッチとして扱うことで、市全域の配置という大きな縮尺での議論が可能になる一方、公園内部の芝生や樹林、水辺の違いは見えなくなる。この選択が適切かどうかは、本稿が何を明らかにしようとしているかに依存しており、内部の環境の違いを問いたい場合には、また別の縮尺を選ぶ必要がある。縮尺の選択が結論を左右しうるという点は、景観生態学の分析結果を読む際に、常に念頭に置くべき注意点である。

本節で紹介した景観指標とその計算手法は、今後、磐田市の公園群を地図データとして整備する段階になったときに、初めて具体的に活用できるようになる道具である。現時点での本稿の役割は、そうした将来の分析に備えて、どのような指標が存在し、それぞれが何を測ろうとしているのかという見取り図を示すことにある。指標の計算そのものよりも、指標が測ろうとしている概念——面積、形状、距離、連結性——を理解しておくことの方が、実際のデータが乏しい現段階では重要であると考えられる。

距離を測る分割された地表指標という道具
図7パッチ密度や近接度指数など、景観を数値で捉える方法があるが、本稿はその考え方の紹介にとどめる。

8. 磐田市の公園群を景観として読む

8.1 種別をパッチとして整理する

磐田市の公園100園は、市のオープンデータにおいて都市公園法上の種別によって分類されている。内訳は、街区公園51園、近隣公園14園、都市緑地10園、法対象外(その他)6園、地区公園4園、総合公園3園、運動公園3園、風致公園3園、広場公園2園、緑道2園、墓園1園、歴史公園1園である。それぞれの種別には、都市公園法施行令や国土交通省の標準に基づく国の目安の面積・誘致距離が示されている。この目安を、パッチの大きさという観点から読み替えると、種別ごとの性格の違いが見えてくる。

種別園数国の目安(面積・誘致距離)パッチとしての性格(本稿の整理)
街区公園510.25ha・誘致距離250m数が多く小さいパッチ。ステッピングストーンの候補
近隣公園142ha・500m中規模のパッチ
地区公園44ha・1kmやや大きい核パッチの候補
総合公園310〜50ha大きな核パッチ
運動公園315〜75ha大きな核パッチ(用途は運動施設に限定的)
風致公園3規模の定めなし(特殊公園)大きめの特殊パッチ
都市緑地100.1ha〜小規模なすきま緑地のパッチ
広場公園2本資料に基準の記載なし小規模パッチ
緑道2本資料に基準の記載なし(線状)線状のコリドー候補
墓園1規模の定めなし(特殊公園)特殊な大きめのパッチ
歴史公園1規模の定めなし(特殊公園)特殊パッチ
法対象外6対象外分類上のすきまに位置するパッチ

この整理はあくまで種別の名称と国の目安から導いた本稿の見立てであり、実際に各パッチがどのような性格を持つかは、面積の値や周囲の土地利用によって個別に異なる。とりわけ広場公園と緑道は、国の目安に明確な記載がなく、都市緑地法に基づく緑地に近い性格を持つと考えられるが、本稿はこの点を確定的に論じない。

8.2 面積の両極——最大のパッチと最小のパッチ

磐田市の公園の中で最も面積が大きいのは竜洋海洋公園(総合公園・竜洋地区)で221,722平方メートルに及ぶ。次いでかぶと塚公園(総合公園・見付地区)106,982平方メートル、つつじ公園(風致公園・見付地区)61,937平方メートルと続く。一方、最も面積が小さいのは二之宮東第2緑地(都市緑地・中泉地区)でわずか17平方メートルであり、豊田上新屋ポケットパーク(都市緑地・豊田地区)156平方メートル、豊田第1緑地(都市緑地・豊田地区)254平方メートルがこれに続く。同じ都市公園という枠組みの中に、一万倍を超える面積の開きがあることになる。

第4節で述べたSLOSS論争の言葉を借りれば、磐田市はすでに大きな一つと小さな複数の両方を備えている状態にあると言える。ただし、これが望ましい配置かどうかは、本稿の整理だけでは判定できない。竜洋海洋公園のような大きなパッチが果たしうる役割と、17平方メートルという極小のパッチが果たしうる役割は、対象や目的によって異なると考えられ、優劣を単純に決めることはできない。

8.3 緑道と河川——線状のコリドー候補

磐田市の緑道2園は、竜洋南部緑地公園(20,907平方メートル)と竜洋西堀緑地公園(25,264平方メートル)であり、いずれも竜洋地区に位置する。緑道という種別の名称自体が、帯状に連なる緑を示唆しており、両者が地理的に連続しているとすれば、コリドーとしての機能を担いうる候補と考えられる。ただし、当サイトのデータには両園の位置関係や、実際に連続した緑道として整備されているかどうかを確認できる情報が含まれておらず、この点は推測にとどまる。

また、天竜川ラブリバー公園(豊岡地区・法対象外)、豊田天竜川わんぱく広場(豊田地区・近隣公園)、豊田ラブリバー公園(豊田地区・近隣公園)という、天竜川を名称に含む公園が3園存在する。公園の名称から見て、これらは天竜川の流域に近い立地にあると推測されるが、正確な位置関係や河川敷との連続性は当サイトのデータからは確認できない。河川は一般に、都市の中でも比較的まとまった緑を保ちやすいコリドーの候補地とされ、これらの公園が天竜川という帯状の緑と接続しているとすれば、単独のパッチとは異なる連結性を持つ可能性がある。この点の確認は、今後の踏査に委ねられる課題である。

8.4 地区ごとの密度の違い

磐田市は見付・中泉・御厨・豊田・南部・向陽・竜洋・福田・豊岡という9地区に分かれ、公園の数は地区によって大きく異なる。最も多い豊田地区は28園、次いで見付地区21園、中泉地区14園、竜洋地区13園、御厨地区13園と続く一方、南部地区と向陽地区はそれぞれ2園にとどまる。街区公園の誘致距離の目安が250メートルであることを踏まえると、公園数の多い地区では、パッチどうしの間隔が相対的に狭く、ステッピングストーンとして機能しうる密度に近づきやすい一方、公園数の少ない地区では、パッチの間隔が開き、孤立の度合いが強くなりやすいと考えられる。

この密度の違いを、フラグメンテーションの結果として一律に評価することは適切ではない。南部地区や向陽地区の公園数が少ない背景には、地区の面積や市街化の経緯、総合公園や運動公園といった大きなパッチの有無など、複数の要因が関わっていると考えられ、公園数の多寡だけで景観としての優劣を論じることはできない。ここで示せるのは、地区ごとに公園というパッチの密度が異なるという事実そのものであり、その意味づけは、対象とする生き物や利用の目的を定めたうえで、改めて検討されるべき論点である。

なお、南部地区には向陽地区とあわせて磐田スポーツ交流の里ゆめりあ(運動公園・57,500平方メートル)のような大きなパッチが含まれており、公園数の少なさが必ずしも緑の総量の少なさを意味するわけではない点にも注意しておきたい。パッチの数と、パッチの合計面積とは別の指標であり、両者を併せて見なければ、地区ごとの緑の厚みを正しく比較することはできない。この点も、SLOSS論争が示した、単純な数の比較の危うさに通じる論点である。

8.5 踏査はこれから

本節で示した整理は、いずれも磐田市のオープンデータと施設ガイドに基づくファクトシートの範囲にとどまり、パッチの内部の植生や、コリドー候補となる緑道・河川沿いの実際の連続性、パッチどうしの通行のしやすさといった、景観生態学が本来必要とする情報の多くを欠いている。当サイトの現地踏査はまだ始まったばかりであり、本節の内容は、今後の踏査によって確かめられるべき仮説の集まりとして位置づけられる。景観指標を実際に計算し、地図の上でパッチとコリドーの配置を検証する作業は、今後の課題として残される。

地区ごとの点在面積の開き種別という階層
図8磐田市の公園群は、種別・面積・地区という三つの軸で見ると、大小さまざまなパッチが不均等に散らばる景観として現れる。

9. 結論と今後の課題

本稿は、景観生態学のパッチ・コリドー・マトリクスという語彙を用いて、磐田市に散在する公園群を、個々の施設ではなく一つの景観のモザイクとして読み直す試みであった。パッチの面積効果と縁辺効果からは、街区公園のような小さな公園が縁辺の性質を強く帯びやすいことが示された。島の生物地理学とSLOSS論争からは、大きな一つと小さな複数のどちらが優れているかという問いに一般的な答えはなく、目的や対象によって評価が変わることが確認された。コリドーとステッピングストーンの概念は、孤立して見える小さな公園にも、飛び石としての連結性の役割がありうることを示した。

マトリクスの質という論点は、パッチそのものの評価だけでなく、パッチを取り囲む道路や住宅地の性質が、パッチの実質的な価値を左右することを示した。フラグメンテーションと景観指標の節では、生息地の減少と分断化とが区別されるべき異なる過程であること、そして景観の性質を数値化する手法が存在する一方、その計算には本稿が持ち合わせていない詳細な地図データが必要であることを確認した。これらの概念を組み合わせることで、公園を一つずつ論じるのとは異なる、配置と関係性に着目した読み方が可能になる。

9.1 磐田市への示唆の限界

第8節では、磐田市の公園群をこの枠組みに当てはめ、種別ごとのパッチとしての性格、面積の両極、緑道と河川沿いのコリドー候補、地区ごとの密度の違いを検討した。ただし、これらはいずれも公開されている属性データからの推論であり、パッチの内部の植生、コリドー候補の実際の連続性、パッチどうしの通行のしやすさといった、景観生態学が本来求める情報を欠いたままの検討である。本稿で示した「パッチとしての性格」や「コリドー候補」といった位置づけは、確定した結論ではなく、今後の踏査によって検証されるべき仮説として理解されたい。

とりわけ、SLOSS論争を踏まえた大きなパッチと小さなパッチの評価、および緑道・河川沿いの公園がコリドーとして機能しているかどうかの評価は、実際に現地を歩き、周辺の土地利用や緑の連続性を確かめなければ判断できない。当サイトの踏査はまだ始まったばかりであり、生き物の記録や植生の情報は、市民による観察の蓄積も含めて、今後少しずつ積み上げられていく性質のものである。景観として公園群を読む作業は、一度の分析で完結するものではなく、継続的な観察を必要とする。

9.2 今後の課題

今後の課題としては、第一に、各公園の境界線を含む地図データを整備し、パッチ密度や近接度指数といった景観指標を実際に計算することが挙げられる。第二に、緑道や河川沿いの公園について、周辺の緑の連続性を現地で確認し、コリドーとしての機能を具体的に検証することが挙げられる。第三に、地区ごとの公園密度の違いが、実際の生き物の移動や、住民の利用行動にどのような影響を及ぼしているかを、踏査や聞き取りを通じて明らかにしていくことが挙げられる。これらはいずれも、本稿のような文献整理と概念分析だけでは達成できず、現地での継続的な観察を必要とする課題である。

これらの課題に取り組む際にも、本稿が整理した語彙は道具として役立つはずである。踏査によって新しく分かる事実を、パッチの面積や形状、コリドーとしての連続性、マトリクスの透過性といった枠組みに位置づけて記録していくことで、個々の観察が断片的な情報にとどまらず、磐田市全体の景観という一つのまとまりの中に位置づけられる。本稿はその最初の一歩として、語彙の整理と暫定的な当てはめを示したものである。

最後に、景観生態学という学問領域そのものが、地図の上の模様を読むだけでなく、その模様がどのような歴史的な経緯で形づくられたかを問う視点も持っている。磐田市の公園群が現在のような種別と配置に至った経緯を跡づける作業は、本稿では扱わなかったが、パッチの配置を読むための手がかりとして、今後の検討に値する論点である。公園を一つずつ訪ね歩く踏査と、100園を一つの地図として俯瞰する景観生態学的な視点とは、対立するものではなく、互いを補い合う二つの見方として、今後も併せて用いられるべきである。

9.3 隣接する視点との関係

本稿が扱ったパッチ・コリドー・マトリクスという語彙は、姉妹編にあたる都市生態学の論考が扱う生物多様性や生態系サービスという論点と、対象を共有しながら異なる角度から光を当てるものである。都市生態学の論考が、公園群を生き物の生息場所として読み、そこに何が棲みうるかを論じるのに対し、本稿は、公園群がどのような形と配置をとっているかという、より形式的な側面に焦点を当ててきた。両者は独立して読むことができる一方、あわせて読むことで、磐田市の公園群を生態学的に読み解く視野はより広がると考えられる。地理学や都市計画学、防災学といった隣接する学問領域からの検討も、それぞれ異なる縮尺と関心から公園群の配置を照らし出すものであり、本稿はそのうちの一つの視点を提供したにすぎない。

景観としての公園群を読むという試みは、行政の担当部署にとっても、新しい公園を計画する際の一つの参照枠になりうる。ただし、本稿はあくまで概念の整理と磐田市への試みの当てはめにとどまり、具体的な配置の是非を提言するものではない。公園の配置は、生態学的な合理性だけで決まるものではなく、住民の要望や土地の取得の経緯、財政上の制約など、多くの要因の積み重ねの結果であることを踏まえれば、本稿が示した読み方は、既存の判断を相対化し、別の角度から捉え直すための一つの道具として位置づけるのが適切である。

整理の到達点記録する課題今後の踏査
図9パッチ・コリドー・マトリクスという語彙は仮説の集まりであり、確かめる作業は今後の踏査に委ねられる。

参考文献

  1. カール・トロール(1939)「Luftbildplan und ökologische Bodenforschung」Zeitschrift der Gesellschaft für Erdkunde zu Berlin
  2. ゼブ・ナヴェ、アーサー・S・リーバーマン(1984)『Landscape Ecology: Theory and Application』(Springer-Verlag)
  3. リチャード・T・T・フォアマン、ミシェル・ゴドロン(1986)『Landscape Ecology』(John Wiley & Sons)
  4. ロバート・H・マッカーサー、エドワード・O・ウィルソン(1967)『The Theory of Island Biogeography』(Princeton University Press)
  5. ジャレド・M・ダイアモンド(1975)「The island dilemma: lessons of modern biogeographic studies for the design of natural reserves」Biological Conservation, 7
  6. ダニエル・シンバーロフ、ローレンス・G・エイブル(1976)「Island biogeography theory and conservation practice」Science, 191
  7. マイケル・E・ソーレ、ダニエル・シンバーロフ(1986)「What do genetics and ecology tell us about the design of nature reserves?」Biological Conservation, 35
  8. レノア・ファーリグ(2003)「Effects of habitat fragmentation on biodiversity」Annual Review of Ecology, Evolution, and Systematics, 34
  9. ケビン・マッガリガル、バーバラ・J・マークス(1995)『FRAGSTATS: Spatial Pattern Analysis Program for Quantifying Landscape Structure』(USDA Forest Service General Technical Report PNW-GTR-351)
  10. 都市公園法(昭和31年法律第79号)・都市緑地法(昭和48年法律第72号)
  11. 磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0・出典:磐田市)
  12. 磐田市 施設ガイド(公園)

本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。

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