計画・工学統計学
公園データの読み方——「一人当たり公園面積」は何を測り、何を測らないか
要旨
本稿の目的は、都市公園の整備水準を語るときに最も頻繁に用いられる指標「住民一人当たり都市公園面積」が、何を測っていて何を測っていないのかを、統計学の基礎概念によって整理することである。都市公園法施行令は、市町村の区域内の都市公園について住民一人当たりの敷地面積の標準を10㎡以上(市街地は5㎡以上)と定めている。この数字は、行政計画・議会・報道のいずれでも公園の充足を示す代表値として扱われる。しかし統計学の目で見ると、これは総面積を人口で割った一つの比率にすぎず、公園がどのような大きさに分かれているか、どこにあるか、誰がどれだけ使っているかを、それ自体は何も語らない。
方法は文献整理と概念分析、および当サイト(ATAWI PARK)が収録する磐田市の都市公園100園のデータの記述統計である。ケトレーの「平均人」(1835)、ゴルトンの中央値・百分位(1889)、ローレンツ曲線(1905)とジニ係数(1912)、スティーヴンスの尺度水準(1946)、ロビンソンの生態学的誤謬(1950)、シンプソンのパラドックス(1951)、ハフの『統計でウソをつく法』(1954)、テューキーの探索的データ解析(1977)、オープンショーの可変単位地区問題(1984)を手がかりに、平均・中央値・分位・分布の偏り・集計単位・代理指標という六つの論点を立てる。
磐田市の収録データでは、面積の分かる94園の合計はおよそ118.8haで、単純平均は約12,600㎡だが中央値は約3,180㎡であり、94園のうち71園が平均を下回る。最大の竜洋海洋公園(221,722㎡)1園で総面積の2割近くを占め、上位12園で6割を超える。この右に長い裾をもつ分布のもとでは、平均や一人当たり面積は「典型的な公園」の大きさを表さない。本稿は、面積指標を中央値・分位・種別別の分布・地区別の集計単位・アクセス指標と並べて読む手順を提案し、当サイトの今後の踏査で確かめるべき利用面の課題を明示する。
キーワード一人当たり公園面積平均と中央値分布の偏り分位集計単位代理指標磐田市
1. はじめに——問題の所在
公園の話をするとき、私たちはほとんど反射的に「面積」を持ち出す。あの公園は広い、この町は公園が少ない、住民一人当たりの公園面積が全国平均より低い——こうした言い方は、行政の計画書にも、議会の質疑にも、新聞の地域面にも、そして子育て中の親どうしの会話にも現れる。その中心にあるのが「住民一人当たり都市公園面積」という指標である。都市公園法施行令は、市町村の区域内の都市公園について、住民一人当たりの敷地面積の標準を10㎡以上(市街地では5㎡以上)と定めており、この数字は日本の公園行政の最も基本的な物差しとして半世紀以上にわたって使われてきた。
本稿の問いは単純である。「一人当たり公園面積」は、いったい何を測っていて、何を測っていないのか。統計学は、数を数え、平均をとり、比率を出すという日常的な操作の一つひとつに、実は多くの前提と落とし穴が隠れていることを教える学問である。総面積を人口で割るという操作は、小学校の算数で済む。しかし、その割り算の分子に何を含め、分母に誰を数え、出てきた一つの数字が「典型的な公園」の姿をどこまで代表するのかという問題は、算数ではなく統計学の問題である。
この問いを立てる理由は三つある。第一に、公園に関する数字は少ない。学校や病院と違い、公園には利用者名簿も窓口の受付記録もない。誰が、いつ、どれだけ使ったかを示す数字は、多くの市町村で体系的には存在しない。そのため、面積や園数という「測りやすいもの」が、利用や満足という「測りにくいもの」の代理として使われがちである。第二に、公園の面積は極端に偏って分布している。ある市の公園を大きい順に並べると、上位のごく少数が総面積の大半を占め、残りの大多数は小さい。この形の分布では、平均という代表値の意味が大きく変わる。第三に、面積の指標は集計する単位——市全体か、地区か、学区か——によって姿を変える。同じ数字が、単位の切り方次第で「足りている」とも「偏っている」とも読める。
1.1 方法と素材
方法は文献整理・概念分析と、記述統計の適用である。文献としては、統計学の歴史のなかで「平均」「中央値」「分位」「分布の偏り」「集計単位」「代理指標」の考え方を確立した古典を取り上げる。ケトレーの「平均人」、ゴルトンの百分位、ローレンツ曲線とジニ係数、スティーヴンスの尺度水準、ロビンソンの生態学的誤謬、シンプソンのパラドックス、ハフの『統計でウソをつく法』、テューキーの探索的データ解析、オープンショーの可変単位地区問題である。いずれも統計学や地理学の教科書に広く載る、実在の確かな文献に限った。
素材は、当サイト(ATAWI PARK)が収録する磐田市の都市公園100園のデータである。内訳は磐田市オープンデータ「都市公園一覧」の94行と、市の施設ガイドのみに掲載の6園であり、面積はオープンデータ由来である。法対象外の6園は面積が不明で、面積の分かる園は94園である。本稿で示す平均・中央値・分位・上位園の占める割合などは、この94園の面積の値から本稿が単純に計算したものであり、市が公表する統計値ではない。また当サイトは現地踏査をこれから始める段階にあり、利用実態や園内の状態については何も述べない。数字だけで語れる範囲と語れない範囲を分けること自体が、本稿の主題である。
1.2 本稿の構成
第2節で先行研究と基礎概念を整理し、第3節で「一人当たり都市公園面積」という指標の定義と制度上の位置を確認する。第4節では、磐田市の94園の面積分布を用いて「平均の罠」——大規模公園1園が平均を押し上げる構造——を示す。第5節では中央値・四分位・五数要約によって「典型的な公園」を測り直し、種別ごとの標準面積との関係を検討する。第6節では地区別集計に潜む集計単位の問題を、第7節では面積指標とアクセス指標・利用指標のずれを論じる。第8節で磐田市の公園データを読む際の具体的な示唆をまとめ、第9節で結論と今後の課題を述べる。
なお本稿は、一人当たり公園面積という指標を否定するものではない。総量を人口で割るという操作は、時系列の比較や自治体間の比較において今も有用である。本稿が主張するのは、その一つの数字を「他の数字と並べて」読む手順を身につけることであり、公園の充足を判断する場面で、平均だけが独り歩きすることを避けることである。読者として想定するのは、磐田市周辺で子育てをしている人、行政や地域の関係者、そして統計学の考え方を身近な題材で学びたい学生である。専門用語は初出で説明する。
2. 先行研究と概念の整理——平均・中央値・分布・単位
本節では、本稿の分析道具となる統計学の基礎概念を、それを確立した古典とともに整理する。目的は歴史の紹介ではなく、「一人当たり公園面積」という指標を検討するために必要な語彙をそろえることである。取り上げるのは、平均と「平均人」、中央値と分位、分布の偏りと集中度、尺度水準、集計単位と誤謬、そして探索的データ解析の考え方である。
2.1 平均と「平均人」——ケトレー
平均(算術平均)とは、値をすべて足して個数で割ったものである。この当たり前の操作を社会の記述に本格的に持ち込んだのが、ベルギーの天文学者・統計学者アドルフ・ケトレーである。ケトレーは『人間について』(1835)で、身長や体重、犯罪や結婚といった社会現象の測定値が一定の平均のまわりに散らばることに注目し、その中心にいる架空の存在を「平均人(l'homme moyen)」と呼んだ。平均人は、社会を一つの数字で代表させる発想の原点であり、同時にその限界の原点でもある。実在しない人物の値が「典型」として語られると、実際の分布の形——多くの人がその値からどれだけ離れているか——が見えなくなるからである。一人当たり公園面積は、まさに「平均人が享受する公園面積」であり、ケトレー的な発想の直系にある。
2.2 中央値・百分位・五数要約——ゴルトンとテューキー
平均に代わる代表値として、値を小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る値を中央値(メディアン)と呼ぶ。全体を百等分した位置の値を百分位(パーセンタイル)、四等分した位置を四分位と呼ぶ。これらの考え方を統計の実務に広めたのは、イギリスのフランシス・ゴルトンである。『Natural Inheritance』(1889)でゴルトンは、遺伝や身体測定のデータを順位で整理し、真ん中の値と上下四分の一の位置の値によって分布を要約する方法を示した。極端に大きな値や小さな値があっても中央値はほとんど動かない。この性質を頑健性(ロバストネス)という。
この流れを20世紀後半に体系化したのが、アメリカのジョン・W・テューキーの『Exploratory Data Analysis』(1977)である。テューキーは、最小値・第1四分位・中央値・第3四分位・最大値の五つの数(五数要約)で分布の形をつかみ、それを「箱ひげ図」として描く方法を提案した。仮説を検定する前に、まずデータを眺めて形を知る——この探索的な姿勢は、公園の面積のように偏りの強いデータを扱うときにこそ有効である。
2.3 分布の偏りと集中度——パレート・ローレンツ・ジニ
多くの社会経済データは、左に山があり右に長い裾を引く形をしている。所得や資産の分布がその典型で、少数の大きな値が全体の多くを占める。この形の集中の度合いを図と数で表す方法が、20世紀初頭に整えられた。マックス・O・ローレンツ(1905)は、値の小さい順に累積した割合を横軸に、値の合計に占める累積割合を縦軸にとる曲線(ローレンツ曲線)を提案し、完全に均等なら対角線に一致し、集中が強いほど下にたわむことを示した。コッラド・ジニ(1912)は、その対角線と曲線のあいだの面積から集中の度合いを一つの数(ジニ係数)で表した。公園の面積を園ごとに並べれば、これと同じ道具がそのまま使える。「上位1園が総面積の何割を占めるか」という問いは、ローレンツ曲線の右端を読むことに等しい。
2.4 尺度水準——スティーヴンス
数字にはできる計算とできない計算がある。心理学者S・S・スティーヴンス(1946)は、測定値を名義尺度(分類の名前)・順序尺度(順位)・間隔尺度(差に意味)・比率尺度(比に意味・真の零点あり)の四つに分け、それぞれに許される統計量を整理した。公園の「種別」(街区公園・近隣公園など)は名義尺度であり、平均をとることはできない。「面積」は比率尺度であり、平均も比も計算できる。しかし比率尺度で計算できるからといって、平均がその分布を代表するとは限らない。この区別は、第4節以降で「何を計算してよいか」と「計算した結果が何を意味するか」を分けて考えるときに役立つ。
2.5 集計単位と誤謬——ロビンソン・シンプソン・オープンショー
集団の値から個の性質を推論することの危うさは、社会学者W・S・ロビンソン(1950)が「生態学的誤謬」として定式化した。地域単位で見られた相関が、個人単位では成り立たない、あるいは逆になることがある。E・H・シンプソン(1951)は、部分ごとに見ると成り立つ傾向が、全体を合算すると消えたり反転したりする現象を分割表の文脈で示し、これは後に「シンプソンのパラドックス」と呼ばれるようになった。地理学者スタン・オープンショー(1984)は、面積で集計するデータの結果が、集計に使う区画の大きさと境界の引き方に依存することを「可変単位地区問題(MAUP)」として体系的に論じた。市全体・9地区・小学校区のどれで「一人当たり」を計算するかで結果が変わることは、この問題の一例である。
2.6 統計の見せ方——ハフ
最後に、ダレル・ハフの『統計でウソをつく法』(1954)を挙げる。ハフは、平均という言葉が算術平均・中央値・最頻値のどれを指すのかを明示せずに使うこと、グラフの軸の切り方で印象を操作すること、標本の偏りを無視することなど、日常の統計の見せ方に潜む問題を平易に説いた。本稿の関心から言えば、「一人当たり公園面積」を語るときに、それが総面積を人口で割った算術平均であること、そして中央値や分位と大きく異なりうることを、明示して読む姿勢が求められる。以上の概念を表1に整理する。
| 概念 | 提唱者・年 | 公園面積指標にとっての意味 |
|---|---|---|
| 平均人・算術平均 | ケトレー 1835 | 一人当たり面積は「平均人」の享受面積。分布の形は語らない |
| 中央値・百分位・五数要約 | ゴルトン 1889/テューキー 1977 | 極端な値に頑健。「典型的な公園」の大きさを測る |
| ローレンツ曲線・ジニ係数 | ローレンツ 1905/ジニ 1912 | 少数の大規模公園への面積の集中度を測る |
| 尺度水準 | スティーヴンス 1946 | 種別は名義尺度、面積は比率尺度。計算の可否を分ける |
| 生態学的誤謬・シンプソンのパラドックス・MAUP | ロビンソン 1950/シンプソン 1951/オープンショー 1984 | 地区別集計や合算で結果が変わる。集計単位を明示する |
| 統計の見せ方 | ハフ 1954 | 「平均」がどの代表値かを明示し、軸と分母を確認する |
3. 「一人当たり都市公園面積」とは何か——定義・分子・分母
指標を批判的に読むには、まずその定義を正確に押さえる必要がある。都市公園法(昭和31年法律第79号)は、地方公共団体が設置する都市公園について、その配置と規模の技術的基準を政令で定めるとしている。これを受けた都市公園法施行令は、市町村の区域内の都市公園の住民一人当たりの敷地面積の標準を10㎡以上とし、市街地の都市公園については当該市街地の住民一人当たり5㎡以上を標準とする、と定めている。制定当初はより低い値であったとされ、その後の改正で引き上げられて現在の値になった。この二つの数字が、日本の公園整備水準を語るときの基準線である。
3.1 分子——何が「都市公園」に数えられるか
この指標の分子は「都市公園の敷地面積」である。ここでいう都市公園とは、都市公園法に基づいて地方公共団体または国が設置する公園・緑地であり、街区公園・近隣公園・地区公園・総合公園・運動公園・特殊公園(風致公園・歴史公園・墓園など)・都市緑地・緑道といった種別からなる。逆に言えば、法に基づかない広場、河川敷の自由使用地、神社の境内、学校の校庭、民間の遊び場などは、実際にどれほど子どもが遊んでいても分子に入らない。磐田市の収録データでいえば、100園のうち6園は「法対象外・その他」であり、面積も不明である。これらは市の施設ガイドには公園として載っているが、施行令の意味での都市公園の面積には含まれない。指標の分子は、制度上の定義によって切り取られた面積であって、住民が公園と感じる空間の総和ではない。
もう一つ注意すべきは、分子が「敷地面積」であることである。運動公園の野球場も、総合公園の駐車場も、墓園の区画も、都市緑地の斜面林も、すべて同じ1㎡として数えられる。かぶと塚公園(総合公園・106,982㎡)について市の施設ガイドには『磐田市総合体育館では、大体育場、小体育場、武道場、トレーニング室などが利用できます。磐田市陸上競技場は400m×8コース』とあり、その面積の相当部分は体育施設である。緑ヶ丘霊園(墓園・17,802㎡)も都市公園の一種別として面積に数えられる。一人当たり公園面積は、遊具のある広場も競技場も墓地も区別しない「敷地の合計」である。
3.2 分母——誰が「住民」に数えられるか
分母は市町村の住民の数であり、実務上は住民基本台帳人口や国勢調査人口が使われる。ここにも定義の問題がある。第一に、公園を使うのは住民だけではない。通勤者、通学者、来訪者、隣接市の住民も使う。市境に近い公園は隣の市の住民が主な利用者かもしれない。第二に、住民のなかにも公園の需要は偏る。乳幼児のいる世帯、高齢者、犬を飼う人と、そうでない人とでは、公園への需要が同じではない。分母を「住民」全体にとることは、需要の質の違いを平らにならす操作である。第三に、市街地の5㎡という基準では、分母は「当該市街地の住民」に限定される。市街地の範囲をどう線引きするかで、この値は動く。
3.3 指標の性格——ストック・比率・標準
以上を整理すると、一人当たり都市公園面積には三つの性格がある。第一に、これはストック(蓄積)の指標である。ある時点でどれだけの公園面積が制度上存在するかを示すものであり、その年にどれだけ使われたか(フロー)は表さない。第二に、これは比率の指標である。分子と分母の両方が動くので、公園が一つも増えなくても人口が減れば値は上がり、公園が増えても人口がそれ以上に増えれば値は下がる。人口減少局面にある地方都市で一人当たり面積が「改善」する場合、それは公園整備の成果ではなく分母の縮小の結果であることがありうる。第三に、施行令の10㎡・5㎡は「標準」であって、達成を義務づける基準でも、下回れば違法となる規制でもない。標準は計画上の目安であり、地域の実情に応じた運用が前提とされている。
この三つの性格を踏まえると、指標を読むときの最低限の作法が見えてくる。すなわち、①分子に何が含まれ何が除かれているかを確認する、②分母がどの人口で、どの時点かを確認する、③値の変化が分子の変化によるのか分母の変化によるのかを分けて見る、④「標準」を「基準」や「達成率」と読み替えない、の四点である。国土交通省は毎年度「都市公園等整備現況調査」で全国と都道府県別の一人当たり都市公園等面積を公表しており、市町村もこれに準じた値を計画書に載せることが多い。ただし本稿は、磐田市の人口を当サイトのデータとして持たないため、磐田市の一人当たり面積を計算しない。また当サイトの100園は、市が制度上管理する都市公園の全体と一致することを確認していないため、当サイトの総面積を市の公式値と比べることもしない。この指標については、定義と限界を述べるにとどめる。
註:本稿でいう「標準」は都市公園法施行令の用語である。施行令は一人当たり敷地面積の標準のほか、第2条で街区公園0.25ha・誘致距離250m、近隣公園2ha・500m、地区公園4ha・1kmなど種別ごとの標準を示している。いずれも計画の目安であり、個々の公園がこれを満たさないこと自体は制度上の問題ではない。
4. 平均の罠——右に長い裾と「1園が平均を押し上げる」構造
本節では、磐田市の収録データを使って、平均という代表値が公園面積の分布をどれほど代表しないかを具体的に示す。用いるのは面積の分かる94園の値である。以下の数値はすべて、当サイトのデータから本稿が単純に計算したものであり、市の公表統計ではない。また面積は磐田市オープンデータ「都市公園一覧」の記載によるもので、当サイトが測り直したものではない。
4.1 平均12,600㎡、中央値3,180㎡
94園の面積を合計するとおよそ118.8haになる。これを94で割った算術平均は約12,600㎡である。一方、94園を面積の小さい順に並べてちょうど真ん中に来る中央値は約3,180㎡である。並べ替えると47番目が経塚公園(街区公園・見付・3,155㎡)、48番目が富士見公園(街区公園・見付・3,202㎡)で、その中間の値が中央値となる。平均は中央値のおよそ4倍である。平均と中央値がこれほど離れることは、分布が対称ではなく、右(大きい側)に長い裾を引いていることを意味する。実際、94園のうち71園が平均を下回り、平均を上回るのは23園にすぎない。「平均的な公園」は、市内の公園の4分の3よりも大きいのである。
この構造は、面積を4つの区分に分けると一目で分かる。1,000㎡未満が20園、1,000㎡以上5,000㎡未満が37園、5,000㎡以上20,000㎡未満が20園、20,000㎡以上が17園である(表2)。半分を超える57園が5,000㎡未満、すなわち施行令の近隣公園の標準面積2ha(20,000㎡)の4分の1にも満たない大きさである。最小は二之宮東第2緑地(都市緑地・中泉)の17㎡、次いで豊田上新屋ポケットパーク(都市緑地・豊田)の156㎡であり、最大の竜洋海洋公園(総合公園・竜洋)の221,722㎡とのあいだには4桁を超える開きがある。
| 面積の区分 | 園数(94園中) | 主な種別・例 |
|---|---|---|
| 1,000㎡未満 | 20園 | 都市緑地・広場公園・小さな街区公園(例:二之宮東第2緑地17㎡、見付本通広場公園372㎡) |
| 1,000㎡以上5,000㎡未満 | 37園 | 街区公園の大半(例:一ノ谷公園2,458㎡、丸山公園3,865㎡) |
| 5,000㎡以上20,000㎡未満 | 20園 | 大きめの街区公園と近隣公園(例:今之浦公園13,675㎡、豊田ラブリバー公園16,030㎡) |
| 20,000㎡以上 | 17園 | 地区公園・総合公園・運動公園・風致公園など(例:兎山公園56,193㎡、竜洋海洋公園221,722㎡) |
4.2 上位1園で2割、上位12園で6割
裾の長さを集中度として見ると、さらにはっきりする。最大の竜洋海洋公園1園の面積は、94園の総面積の2割近く(約19%)を占める。上位3園——竜洋海洋公園、かぶと塚公園(106,982㎡)、つつじ公園(風致公園・見付・61,937㎡)——を合わせると約3分の1に達し、ファクトシートに挙げられている上位12園(12番目は竜洋昆虫自然観察公園・29,119㎡)で総面積の6割を超える。裏返せば、残りの82園を合わせても総面積の4割に満たない。第2節で述べたローレンツ曲線の言葉でいえば、曲線は右端で急に立ち上がり、対角線から大きくたわんでいる。公園面積は、所得分布と同じ型の、少数への集中の強い分布である。
ここで、竜洋海洋公園1園を除いて平均を計算し直すと、93園の平均は約10,400㎡に下がる。たった1園を除くだけで平均が2,000㎡以上動く。これに対して中央値は3,155㎡(経塚公園の値)にわずかに動くだけである。これが第2節で述べた頑健性の意味である。最大値がさらに10万㎡大きくなっても、あるいは半分になっても、中央値は変わらない。平均は最大の1園の変化にそのまま引きずられる。
4.3 一人当たり面積は「平均」である
この観察が第3節の指標に直結する。一人当たり都市公園面積は総面積を人口で割った値であり、総面積は各園の面積の合計である。したがって、竜洋海洋公園1園で総面積の2割を占める磐田市のような分布では、一人当たり面積の2割近くはこの1園によって「稼がれて」いる。市内のどこに住んでいても、統計上は竜洋海洋公園の面積が住民一人ひとりに配分される。仮に市の一人当たり面積が10㎡の標準を満たしていたとしても、その内訳の多くは少数の大規模公園であり、暮らしの近くにある街区公園がそれぞれ何㎡かという問いには、この指標は答えない。
ハフ(1954)が指摘したとおり、「平均」と言うときにそれが算術平均なのか中央値なのかを示さないと、読み手は分布の形を誤解する。公園の面積は所得と同じく、算術平均が中央値を大きく上回る型の分布である。一人当たり面積が語られる場面では、「その平均は少数の大規模公園によって押し上げられている」という一文を添えるだけで、指標の読み方は大きく変わる。
なお、右に裾を引く分布を扱う技法として、値を対数の目盛りで見る方法がある。17㎡と221,722㎡を同じ直線の目盛りに載せると、大多数の園は左端に押しつぶされて見えなくなるが、桁(10㎡・100㎡・1,000㎡・1万㎡・10万㎡)で刻み直せば、94園はいくつもの桁にまたがってなだらかに散らばる。磐田市の公園は「数百㎡の緑地」「数千㎡の街区公園」「1万㎡台の近隣公園」「数万㎡以上の拠点的な公園」という桁の異なる集団の重なりとして見るのが実態に近い。桁が違う値どうしの算術平均に意味が乏しいことは、この見方からも裏づけられる。次節では、何を並べて読めば「典型的な公園」の大きさが見えるのかを検討する。
5. 中央値・分位・種別——「典型的な公園」を測り直す
前節で、平均が分布を代表しないことを示した。では何を見れば「典型的な公園」の大きさが分かるのか。本節では、テューキーの五数要約と、スティーヴンスの尺度水準の考え方を組み合わせて、二つの読み方を提案する。第一は、全体を順位で要約すること(中央値と四分位)。第二は、名義尺度である「種別」で層に分けてから、層ごとに面積の分布を見ることである。
5.1 五数要約——最小・四分位・中央値・最大
94園の面積を小さい順に並べると、最小は二之宮東第2緑地の17㎡、最大は竜洋海洋公園の221,722㎡である。真ん中の中央値は約3,180㎡(経塚公園3,155㎡と富士見公園3,202㎡の中間)である。下半分47園の中央値、すなわち第1四分位に当たるのは泉公園(街区公園・中泉・1,538㎡)、上半分47園の中央値、すなわち第3四分位に当たるのは竜洋豊岡公園(近隣公園・竜洋・11,726㎡)である。四分位の計算法にはいくつかの流儀があり、値は多少ずれるが、およそ1,500㎡と12,000㎡と読んでよい。
この五つの数——17㎡、約1,500㎡、約3,180㎡、約12,000㎡、221,722㎡——を並べるだけで、分布の形が伝わる。真ん中の半分(第1四分位から第3四分位まで)に入る47園は、1,500㎡から12,000㎡のあいだにあり、これが磐田市の「ふつうの公園」の大きさの幅である。一方、上の4分の1は12,000㎡から22万㎡までという極端に広い幅をもち、下の4分の1は17㎡から1,500㎡までの小さな緑地や広場である。箱ひげ図に描けば、箱は左端に小さく寄り、右のひげが長く伸びる。平均12,600㎡は、箱の外、右のひげの上に置かれる。
5.2 種別で層に分ける——名義尺度による層別
都市公園の種別は、大きさと役割によって設計された分類である。施行令と国土交通省の標準では、街区公園0.25ha(誘致距離250m)、近隣公園2ha(500m)、地区公園4ha(1km)、総合公園10〜50ha、運動公園15〜75ha、都市緑地0.1ha以上とされ、風致公園・歴史公園・墓園などの特殊公園には規模の定めがない。第2節で述べたとおり種別は名義尺度であり、種別そのものを平均することはできない。しかし種別で層に分け、層ごとに面積の中央値や範囲を見ることはできる。これを層別(そうべつ)という。層別すると、全体を一つの分布として見たときには隠れていた構造が見えてくる(表3)。
| 種別(園数) | 中央値 | 最小〜最大 | 国の標準 | 収録データでの読み |
|---|---|---|---|---|
| 街区公園(51園) | 2,366㎡(竜洋川袋公園) | 372㎡(見付本通広場公園)〜10,231㎡(京見塚公園) | 0.25ha=2,500㎡ | 27園が2,500㎡未満、24園が以上。9園は1,000㎡未満 |
| 近隣公園(14園) | 約11,450㎡(水堀公園と竜洋豊岡公園の中間) | 6,300㎡(塔之壇公園)〜21,306㎡(竜洋スポーツ公園) | 2ha=20,000㎡ | 20,000㎡以上は1園のみ。13園は標準を下回る |
| 地区公園(4園) | 約38,000㎡ | 32,001㎡(安久路公園)〜56,193㎡(兎山公園) | 4ha=40,000㎡ | 中央公園と兎山公園が以上、安久路公園と竜洋西堀河川敷公園が未満 |
| 都市緑地(10園) | 約306㎡ | 17㎡(二之宮東第2緑地)〜3,264㎡(権現緑地) | 0.1ha=1,000㎡以上 | 9園が1,000㎡未満 |
| 総合公園(3園) | 106,982㎡(かぶと塚公園) | 49,620㎡(福田公園)〜221,722㎡(竜洋海洋公園) | 10〜50ha | 福田公園はわずかに10haを下回る |
| 運動公園(3園) | 41,081㎡(城山球場) | 34,218㎡(東大久保運動公園)〜57,500㎡(ゆめりあ) | 15〜75ha | 3園とも15haを下回る |
表3から読み取れることは二つある。第一に、種別ごとの中央値は、全体の中央値とはまったく違う景色を見せる。街区公園の中央値は約2,400㎡、近隣公園は約11,500㎡、地区公園は約38,000㎡と、種別が一つ上がるごとにおよそ3〜5倍になる。全体の中央値3,180㎡は、園数で過半を占める街区公園の値にほぼ引きずられている。子育て世帯が日常的に使うのは街区公園と近隣公園であるから、「近くの公園はどれくらいの大きさか」という問いには、種別ごとの中央値の方がはるかによく答える。
第二に、国の標準面積と実際の分布のずれである。街区公園51園のうち27園は0.25ha未満で、24園がそれ以上である。つまり街区公園の中央値は標準面積のすぐ下にあり、標準は「典型的な街区公園の大きさ」にほぼ一致する。これに対し近隣公園14園では、標準の2haを満たすのは竜洋スポーツ公園(21,306㎡)1園だけで、残り13園は標準を下回る。運動公園3園はいずれも15haの下限を下回る。ここで注意すべきは、これを「基準未達」と読まないことである。第3節で述べたとおり施行令の値は標準であり、種別の付け方は歴史的経緯や用地の事情を反映する。統計として言えるのは、「磐田市の近隣公園の典型的な大きさは1ha強であり、国の標準面積は上位に一つあるだけである」という事実までである。
5.3 分位で読むことの意味
分位(パーセンタイル)で読むことには、もう一つの実用的な利点がある。それは、個々の公園を「市内で何番目に大きいか」という順位の言葉で位置づけられることである。たとえば一ノ谷公園(街区公園・見付・2,458㎡)は94園のなかではおおよそ真ん中より少し下、街区公園51園のなかでは中央値よりわずかに大きい位置にある。今之浦公園(近隣公園・見付・13,675㎡)は全体の上位4分の1に入り、近隣公園のなかでも中央値より大きい。この読み方は、面積の絶対値を知らなくても「この公園はふつうより大きいのか小さいのか」を伝えられるため、当サイトのような一覧型のデータベースが利用者に順位や分位を示す根拠になる。次節では、この分布を9地区で集計し直したときに何が起きるかを見る。
6. 集計単位の問題——9地区で数え直すと何が起きるか
一人当たり公園面積は、市全体で一つの値として語られることが多い。しかし住民の実感は市全体ではなく、自分の住む地区や学区で決まる。そこで指標を地区別に計算し直そうとした瞬間、統計学が「集計単位の問題」と呼ぶ一群の困難が現れる。本節では、当サイトが用いる9地区(磐田物語・ATAWI TEMPLEと共通の地区分類)で収録データを集計し、園数と面積の順位が入れ替わること、そしてその集計が境界の引き方に依存することを示す。
6.1 園数の順位と面積の順位は一致しない
9地区の園数は、豊田28園、見付21園、中泉14園、御厨13園、竜洋13園、福田4園、豊岡3園、南部2園、向陽2園である。園数だけを見れば豊田が飛び抜けて多い。ところが面積の分かる園の合計面積で並べ替えると、竜洋(13園・約41万㎡)、見付(21園・約32万㎡)、御厨(13園・約12万㎡)、豊田(28園・約11万㎡)、中泉(14園・約10万㎡)、向陽(2園・約6万㎡)、福田(面積の分かる3園・約5万㎡)の順になる。南部と豊岡は収録園がすべて法対象外で面積不明のため、面積の順位に載らない。園数で1位の豊田は面積では4位、園数で4位タイの竜洋は面積で1位である。
この逆転は、地区ごとの分布の形の違いから生じる。豊田の28園の面積の中央値は約2,070㎡で、9地区のなかで最も小さく、28園のうち16園が2,500㎡未満、8園が1,000㎡未満である。豊田は「小さな公園や緑地が数多く散らばる型」であり、最大でも豊田ラブリバー公園(近隣公園・16,030㎡)である。一方、竜洋の13園の中央値は約20,900㎡と桁が一つ違い、竜洋海洋公園1園で竜洋の合計面積の半分強を占める。見付では、かぶと塚公園(106,982㎡)とつつじ公園(61,937㎡)の2園で見付の合計面積の半分を超える。御厨では兎山公園(56,193㎡)が、中泉では中央公園(41,642㎡)が、それぞれの地区の面積の大部分を担う。
つまり第4節で見た「1園が平均を押し上げる」構造は、市全体だけでなく地区のなかでも繰り返される。地区別の一人当たり面積を計算すれば、竜洋や向陽のように大規模な一園をもつ地区の値が大きく、豊田のように小さな公園が多い地区の値が小さく出るだろう。しかしそれは、豊田の住民の暮らしの近くに公園が少ないことを意味しない。むしろ園数の多さは、歩いて行ける距離に何らかの公園がある確率の高さを示唆する。面積の総量と、近くにある公園の数とは、別のものを測っている。
6.2 可変単位地区問題(MAUP)——境界を引き直せば結果が変わる
オープンショー(1984)が体系化した可変単位地区問題は、二つの側面をもつ。一つは規模の効果で、集計する区画を大きくするほど値はならされ、小さくするほどばらつく。市全体で一つの一人当たり面積を出せば、それは9地区の差を消し、9地区で出せば地区内の差を消す。もう一つは区分の効果で、同じ大きさの区画でも境界の引き方が違えば結果が変わる。竜洋海洋公園がどの地区に属するかは、その地区の一人当たり面積を決定的に左右する。当サイトの9地区分類は歴史的な地域区分に基づく一つの選択であり、小学校区や町丁目で切り直せば、上で述べた順位は変わりうる。地区別の値を示すときは、どの境界で切ったかを必ず添える必要がある。
6.3 合算と分割——シンプソンのパラドックスと生態学的誤謬
集計単位に関わるもう二つの落とし穴を挙げる。第一に、シンプソン(1951)が示した合算の逆転である。市全体の一人当たり面積が標準を上回っていても、地区ごとに見ると多くの地区で下回っている、ということは起こりうる。大規模公園を抱える少数の地区の値が全体を押し上げるからである。逆に、地区ごとの経年変化がすべて改善していても、人口の地区間移動によって市全体の値が悪化することも理屈の上ではありうる。全体の値と部分の値は、独立に確認しなければならない。
第二に、ロビンソン(1950)の生態学的誤謬である。地区の一人当たり面積が大きいからといって、その地区に住む個々の世帯が公園に恵まれているとは言えない。竜洋の一人当たり面積が大きいのは竜洋海洋公園があるからだが、竜洋のなかでも海洋公園から遠い場所に住む世帯にとって、その面積は日常の実感にはならない。地区の値は地区の平均人の値であり、個々の住民の状態ではない。集計単位を細かくすれば誤謬は減るが、消えはしない。最終的に個々の世帯から公園までの距離や到達しやすさを測ろうとすると、面積の集計とは別の指標——アクセス指標——が必要になる。それが次節の主題である。
実務への教訓をまとめれば、地区別の数字は「園数・合計面積・中央値・最大の園」の四点セットで示すのがよい。たとえば豊田は28園・約11万㎡・中央値約2,070㎡・最大は豊田ラブリバー公園、竜洋は13園・約41万㎡・中央値約20,900㎡・最大は竜洋海洋公園、というように並べれば、園数だけ・合計だけの表よりも、各地区の分布の型——小さな園が多い型か、大きな一園が支える型か——が一目で伝わる。単一の値に要約する前に、型の違いを示す数字を残すことが、集計単位の罠に対する最も実際的な備えである。
註:本節の地区別の合計・中央値は、当サイトの収録データ(面積の分かる94園)から本稿が計算したものである。人口による割り算は行っていない。地区の人口は当サイトのデータにないためであり、地区別の一人当たり面積を示す場合には、どの時点のどの人口を用いたかを明示する必要がある。
7. 面積は利用ではない——ストック指標・アクセス指標・代理指標
ここまでの検討は、面積という一つの変数の「集計の仕方」をめぐるものであった。本節では一歩進めて、面積という変数そのものの限界を扱う。公園政策が最終的に知りたいのは、公園が住民の暮らしにどれだけ役立っているか——どれだけ使われ、どんな価値を生んでいるか——である。面積はその「代理指標(プロキシ)」にすぎない。代理指標とは、本当に測りたいものが測りにくいときに、代わりに測る、関連があると考えられる別の量のことである。
7.1 ストックとフロー——面積は「ある」ことしか語らない
面積はストック指標である。それは公園が「そこにある」ことを示すが、「使われている」ことを示さない。同じ2,500㎡の街区公園でも、毎日親子連れが訪れる園と、ほとんど人の来ない園がありうる。利用はフロー——一定期間内の来園者数や滞在時間——であり、面積とは次元の異なる量である。しかも公園の利用は、入場券のある施設と違って自動的には記録されない。国や自治体が公園利用を把握するには、特定の日の観察調査や住民アンケートによるほかなく、継続的な利用統計をもつ市町村は多くないとされる。測りやすいストックが、測りにくいフローの代理として使われ続けてきたのは、この記録の非対称のためである。
代理指標には固有の危険がある。代理が目的に置き換わり、代理の値を上げること自体が目標になることである。一人当たり面積を上げるだけなら、利用されにくい土地でも広く確保すれば達成できる。逆に、面積は小さくとも利用の多い街区公園を数多く維持することは、面積指標にはほとんど寄与しない。指標が政策の目標に据えられるとき、その指標が本来何の代理であったかを繰り返し確認する必要がある。
7.2 アクセス指標——「近さ」は面積とは別の変数である
面積の次に測られてきたのが「近さ」である。施行令の誘致距離(街区公園250m・近隣公園500m・地区公園1km)は、種別ごとに想定される利用圏の半径であり、距離という変数を制度に組み込んだものである。都市計画の分野では、ハンセン(1959)が「アクセシビリティ」を、目的地の魅力(たとえば面積)を距離で割り引いて足し合わせた量として定式化した。この見方では、家の近くの2,500㎡の街区公園は、遠くの10万㎡の総合公園より大きな値をもちうる。一人当たり面積が「市内のどこに住んでも同じ」一つの値であるのに対し、アクセシビリティは住む場所ごとに異なる値をとる。住民の実感に近いのは明らかに後者である。
収録データでこの違いを直感的に示すのは、見付本通広場公園(街区公園・見付・372㎡)と竜洋海洋公園(221,722㎡)の対比である。面積では600倍の開きがあるが、旧市街の通りに面した372㎡の広場は、そのそばで暮らす人にとっては最も近い公園であり、日常の立ち寄り先としての価値は面積に比例しない。逆に竜洋海洋公園は、市の総面積の2割を一手に担うが、市内の多くの世帯にとっては「ときどき車で行く」場所である。面積の統計と距離の統計は、別々に測って並べるべき、異なる変数である。アクセス指標の詳細は、本シリーズの都市地理学篇(公園配置の空間分析)が扱う。
7.3 設備・質の指標——「有・無」という最も粗い尺度
面積・距離に続く第三の系列が、公園の中身——設備と質——である。磐田市のオープンデータは、各園についてトイレ・車いす対応トイレ・砂場・遊具の有無を記録しており、収録94行の集計では、トイレ有が69園、車いす対応トイレ有が34園、砂場有が43園、遊具有が64園である。有無(二値)は、スティーヴンスの語彙でいえば名義尺度の最も単純な形であり、集計はできるが、質の差は表せない。「遊具有」の一言は、兎山公園のようにローラー滑り台からザイルクライムまで並ぶ園と、ブランコが一基だけの園を区別しない。市の施設ガイドの記載を読み比べると同じ「有」の中身が大きく異なることが分かるが、それを統計として扱うには、遊具の種類数や対象年齢といった、より細かい変数の設計が要る。
質の指標化には、もう一つの原理的な困難がある。質は観察者と利用者に依存することである。同じ園でも、幼児の親にとっての質(幼児用遊具・柵・見通し)と、高齢者にとっての質(ベンチ・健康器具・平坦な園路)は異なる。単一の「質スコア」に合成した瞬間、誰の観点の重みづけかという問いが生じる。合成指標は便利だが、重みの選び方という主観を内部に隠しもつ。統計の作法としては、合成する前の個別の変数(トイレの有無、遊具の種類、駐車場の有無など)を開示し、利用者が自分の重みで読めるようにすることが望ましい。
7.4 指標の階層——何を、どの順で見るか
以上を整理すると、公園の指標は少なくとも四つの階層をなす。①総量(総面積・一人当たり面積)、②分布(園ごとの面積の中央値・分位・種別別・地区別)、③アクセス(誘致距離・徒歩圏・アクセシビリティ)、④中身と利用(設備・質・来園の実態)である。下の階層ほど住民の実感に近いが、測定の費用は高くなる。一人当たり面積は最上層の、最も安価で最も粗い指標である。それは出発点としては正当だが、終着点として扱われるべきではない。統計学の貢献は、この階層を混同せずに、各層で適切な要約統計量を選ぶ規律を与えることにある。すなわち、総量には合計と平均を、分布には中央値・分位・層別を、アクセスには距離に基づく指標を、中身には個別の変数の開示を、それぞれ割り当てる。逆に、下の階層の問い——「うちの近くの公園は使いやすいか」——に上の階層の数字——市全体の一人当たり面積——で答えることは、尺度の取り違えと同種の誤りである。問いの階層と指標の階層を揃えることが、公園データを読む際の最も基本的な規律となる。
8. 磐田市の公園への示唆——100園のデータをどう読むか
本節では、ここまでの統計学的な検討を、磐田市の公園データを読む実践的な手引きにまとめる。素材は当サイト(ATAWI PARK)の収録100園——磐田市オープンデータ「都市公園一覧」94行と市施設ガイドのみ掲載の6園——であり、面積の分かる園は94園である。当サイトは富士ヶ丘サービス株式会社が運営するデータベースで、現地踏査(L2)は2026年8月時点で0園、これから始まる段階にある。したがって本節で言えるのは、公開データの数字の読み方までであり、園内の実際の状態は今後の踏査で確かめる。
8.1 磐田市の面積分布の要点——五つの数字
磐田市の公園面積の分布は、次の五つの数字で要約できる。①面積の分かる94園の合計は約118.8ha。②単純平均は約12,600㎡だが、中央値は約3,180㎡で、平均は中央値の約4倍。③94園中71園が平均未満。④最大の竜洋海洋公園(221,722㎡)1園で総面積の約2割、上位12園で6割超。⑤最小の二之宮東第2緑地(17㎡)と最大とのあいだには1万倍を超える開き。この五つを覚えておけば、磐田市について「一人当たり面積」型の総量指標が語られたとき、その内訳の偏りを即座に思い浮かべることができる。
実践的な含意は明快である。磐田市の公園の「ふつうの大きさ」を知りたければ、平均ではなく中央値約3,180㎡——街区公園なら中央値約2,400㎡——を使うべきである。これは施行令の街区公園の標準0.25haにほぼ一致する。つまり磐田市の典型的な公園は、国の制度が「住区の中の徒歩圏の公園」として設計した規模のものである。一方、市の公園面積の総量を語る文脈では、それが竜洋海洋公園・かぶと塚公園・つつじ公園という上位3園(合計で総面積の約3分の1)に強く依存していることを添えるべきである。
8.2 読み方の手順——利用者・行政・学習者へ
子育て世帯など公園の利用者に勧める読み方は、階層の下から上へ、である。まず自分の住む地区の園の一覧を見て(当サイトの9地区分類が使える)、種別と面積を確認する。街区公園なら2,500㎡前後、近隣公園なら1ha強が磐田市の典型であることを物差しにすれば、個々の園の数字に意味が生まれる。次に設備のフラグ(トイレ有69園、車いす対応トイレ有34園、砂場有43園、遊具有64園、駐車場の記載等33園)を確認する。ただし有無のフラグは最も粗い尺度であり、「遊具有」の中身は園によってまったく違う。市の施設ガイドに個別ページがある77園については原文の記載が手がかりになるが、最終的な確認は現地でするほかない。当サイトの踏査もそのために計画されている。
行政や地域の関係者に勧める読み方は、単位と分母の明示である。第一に、市全体の値と地区別の値を併記し、地区の境界の定義を添える。第二に、一人当たり面積の経年変化を示すときは、分子(面積)と分母(人口)のどちらが動いたのかを分けて示す。人口減少下では、公園が一つも増えなくても一人当たり面積は上がるからである。第三に、平均とともに中央値と分位を併記する。表計算ソフトで中央値の計算は平均と同程度に容易であり、追加の費用はほとんどない。第四に、種別別の内訳を示す。磐田市の種別構成(街区公園51・近隣公園14・都市緑地10・法対象外6・地区公園4・総合公園3・運動公園3・風致公園3・広場公園2・緑道2・墓園1・歴史公園1)は、総量の数字だけからは決して見えない情報である。
8.3 オープンデータの限界と当サイトの役割
本稿の計算はすべて磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0)の面積の値に依拠している。オープンデータの公開によって、市民が本稿のような再集計を自由に行えるようになったことの意義は大きい。同時に、限界も記録しておく。第一に、法対象外の6園は面積が不明で、分布の計算から落ちる。第二に、設備は有無のフラグにとどまり、質を語れない。第三に、データは公園の座標や境界と結びついた形では収録されておらず、アクセス指標の計算には別の作業が要る。第四に、面積の値そのものの検証——現況と台帳のずれの有無——は市民の側からはできない。当サイトの今後の踏査は、このうち第二の限界(質の記述)を園ごとの観察で補うことを目指すものであり、面積や種別といった台帳情報はオープンデータの記載を出典として明示し続ける。
最後に、指標が政策目標になることの磐田市への含意を述べる。第7節で述べたとおり、一人当たり面積を上げること自体が目的化すると、利用の多い小さな公園の維持よりも総量の確保が優先されかねない。磐田市の分布の型——典型は2,500㎡前後の街区公園で、総量は少数の大規模公園が担う——を踏まえるなら、総量指標と並んで、「歩いて行ける距離に公園がある世帯の割合」や「街区公園の設備の状態」のような、下の階層の指標を点検の対象にすることが理にかなう。数字の選び方は、何を大切にするかの表明でもある。
9. 結論と今後の課題
本稿は、「住民一人当たり都市公園面積」という日本の公園行政の基幹指標を、統計学の基礎概念によって解剖してきた。結論は次のとおりである。第一に、この指標は総面積を人口で割った算術平均であり、ケトレーの「平均人」の直系にある。分子は制度上の定義で切り取られた敷地面積、分母は住民の数であり、そのどちらの定義にも選択が含まれる。第二に、公園面積の分布は右に長い裾をもち、磐田市の収録データでは94園の平均約12,600㎡に対して中央値は約3,180㎡、71園が平均未満、最大1園が総面積の約2割を占める。この型の分布では、平均は「典型的な公園」を表さず、中央値・四分位・種別別の層別が必要である。第三に、地区別の集計は園数と面積の順位の逆転(豊田は園数1位・面積4位、竜洋は面積1位)を示し、その結果は集計単位の切り方に依存する(MAUP)。第四に、面積はストックの代理指標にすぎず、利用(フロー)・近さ(アクセス)・中身(設備と質)は別の変数として測り、階層として併読すべきである。
本稿の知見は、統計学の教科書的な概念——平均の非頑健性、五数要約、層別、生態学的誤謬、可変単位地区問題、代理指標——が、身近な公園データという素材の上でそのまま働くことを示した点にもある。磐田市の公園100園は、統計リテラシーの教材として恵まれた性質をもつ。件数が手頃で、分布の偏りが極端で、名義尺度(種別・地区・設備の有無)と比率尺度(面積)が揃い、そしてオープンデータとして誰でも検算できる。学校教育や市民講座で「平均と中央値の違い」を教えるとき、架空の所得データではなく、自分の町の公園の面積を使うことができる。
今後の課題を三つ挙げる。第一に、アクセス指標の実装である。本稿は面積の集計にとどまり、各園の位置と住民の分布を重ねた到達性の分析は行っていない。誘致距離によるカバー率や最近隣距離の計測は、本シリーズの都市地理学篇の枠組みを磐田市のデータに適用する形で進められるべきである。第二に、利用と質の観察である。当サイトの踏査はまだ0園であり、遊具の状態、ベンチや木陰の配置、実際の利用の様子といった「有無フラグの先」の情報は、今後の現地調査で一園ずつ蓄積するほかない。踏査で得られる観察は統計的な標本ではなく事例の記述だが、量的指標の解釈を支える質的な土台になる。第三に、時系列の視点である。本稿はある一時点の断面を扱ったが、公園のストックは開設・改修・廃止によって、人口は増減によって動く。一人当たり面積の変化を分子と分母に分解して追跡することは、人口減少期の公園政策を評価するうえで避けて通れない作業である。
「一人当たり公園面積」は、何を測るか。それは、制度が公園と認めた敷地の総量を、住民の頭数でならした平均を測る。何を測らないか。公園の大きさの散らばりを、場所の偏りを、歩いて行ける近さを、遊具の中身を、そして実際に使われているかどうかを測らない。指標を捨てる必要はない。ただ、一つの数字に語らせすぎないこと。平均の隣に中央値を、総量の隣に内訳を、面積の隣に距離を置いて読むこと。統計学が公園に与えられる最良の助言は、この併読の作法に尽きる。数字の向こうにある一つひとつの園の姿は、これから始まる踏査で確かめていくことになる。
参考文献
- アドルフ・ケトレー(1835)『人間について——人間諸能力の発達についての社会物理学の試み』(原題 Sur l'homme et le développement de ses facultés, ou Essai de physique sociale)
- フランシス・ゴルトン(1889)『Natural Inheritance』(Macmillan)
- マックス・O・ローレンツ(1905)「Methods of Measuring the Concentration of Wealth」Publications of the American Statistical Association, 9(70)
- コッラド・ジニ(1912)『Variabilità e mutabilità』(Cuppini)
- S・S・スティーヴンス(1946)「On the Theory of Scales of Measurement」Science, 103(2684)
- W・S・ロビンソン(1950)「Ecological Correlations and the Behavior of Individuals」American Sociological Review, 15(3)
- E・H・シンプソン(1951)「The Interpretation of Interaction in Contingency Tables」Journal of the Royal Statistical Society, Series B, 13(2)
- ダレル・ハフ(1954)『統計でウソをつく法』(高木秀玄訳、講談社ブルーバックス、1968)
- ウォルター・G・ハンセン(1959)「How Accessibility Shapes Land Use」Journal of the American Institute of Planners, 25(2)
- ジョン・W・テューキー(1977)『Exploratory Data Analysis』(Addison-Wesley)
- スタン・オープンショー(1984)『The Modifiable Areal Unit Problem』(CATMOG 38, Geo Books)
- 都市公園法(昭和31年法律第79号)・都市公園法施行令(昭和31年政令第290号)第1条の2(住民一人当たり敷地面積の標準)・第2条(種別ごとの標準面積と誘致距離)(国土交通省 都市公園のページ)
- 国土交通省 都市局「都市公園等整備現況調査」(毎年度公表・都市公園データベース)
- 磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0・出典:磐田市)
- 磐田市 施設ガイド(公園)
本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。