計画・工学自転車計画学

自転車で公園へ——走行空間・駐輪・練習の場としての公園

富士ヶ丘サービス株式会社 大石浩之

学問領域:自転車計画学 公開・更新 2026-08-17 本文 約23,938字 読了目安 44分

要旨

本稿の目的は、都市公園と自転車の関係を自転車計画学の枠組みで整理することである。自転車は公園と二重の関係を持つ。第一に、徒歩の圏域と自動車の圏域のあいだを埋める移動手段として、公園へのアクセスを支える関係である。第二に、子どもが自転車に乗れるようになるための練習の対象として、公園という空間そのものを必要とする関係である。この二つは同じ園路の上で衝突しうる。園路は歩行者のために設計されており、乳幼児・高齢者・車いすや杖の利用者と自転車の速度差をそのまま受け止めるようにはできていないからである。

本論は八つの論点を扱う。第一に、日本の自転車計画が歩道通行の制度化を経て車道通行の原則へ立ち返るまでの系譜を整理する。第二に、国土交通省と警察庁の技術指針が示す走行空間の三つの整備形態——自転車道・自転車専用通行帯・車道混在——の使い分けを、道路構造令の幅員規定とあわせて論じる。第三に、単路部よりも交差点部が計画の要とされる理由を、視認・速度差・期待の不一致という構造から説明する。第四に、駐輪需要の見立て方と、公園という施設に固有の需要の変動を扱う。第五に、子どもが自転車を習得する過程を段階に分け、段階ごとに必要な空間の条件を示す。第六に、園内利用をめぐる規則と練習の需要の衝突を、一律禁止・区域分節・時間分節という選択肢の比較として検討する。第七に、幅員の乏しい小規模公園における分離・共存・排除の設計判断を一般原則として述べる。

検討の結果、自転車と公園の関係は「道の側の連続性」「置き場の位置」「園内での速度と見通し」という三つの層に分けて考えるべきであり、それぞれ担い手(道路管理者・公園管理者・利用者)が異なることが示される。最後に、磐田市の都市公園100園——街区公園51園を含む種別の構成、221,722平方メートルから17平方メートルまでの面積の幅、駐車場のある33園、9地区の園数の偏り——に論点を当てはめ、当サイトが今後の踏査で確かめるべき項目を列挙する。園内での自転車利用の可否は各公園の規則と管理者の判断に属し、本稿はそれに反する利用を勧めるものではない。

キーワード自転車計画走行空間駐輪自転車練習園路交差点部都市公園

1. はじめに——問題の所在

自転車は、都市公園と二重の関係を持つ乗り物である。第一は、移動手段としての関係である。都市公園法施行令が街区公園の誘致距離を250mと定めるとおり、身近な公園は歩いて行ける距離に配置されることが想定されている。しかし実際には、就学後の子どもが自分の自転車で、保護者が幼児用座席のついた自転車で公園へ向かう場面は珍しくない。徒歩の圏域と自動車の圏域のあいだにある、半径にしておよそ1kmから数kmという中間の圏域を担うのが自転車である。地区公園の誘致距離1kmは、歩いて通うには遠く、車を出すには近い。この帯域こそ自転車の領分である。

第二は、練習と遊びの対象としての関係である。子どもが自転車に乗れるようになるまでには、必ずどこかで練習する時間が要る。車が入ってこないこと、平らであること、ある程度の広さと直線の長さがあること、転んだときに大きな怪我になりにくい路面であること——この条件を並べていくと、多くの地域で候補に残るのは公園か、それに準ずる広場である。ここでの自転車は移動手段ではなく、習得すべき技能そのものの対象になる。移動のための道具が、しばらくのあいだ目的に変わる、という転倒がここにはある。

この二つの関係は、しばしば同じ空間の上で衝突する。園路は歩行者のために設計されており、幅も見通しも自転車の速度を前提としていない。乳児を抱いた保護者、よちよち歩きの幼児、車いすや杖を使う人、遊びに夢中で急に向きを変える子どもが同じ舗装面を使っている。したがって多くの都市公園では、園内での自転車の乗り入れについて管理者が何らかの規則を置いている。一方で、練習の場を必要とする側の需要が消えるわけではない。規則と需要のこの緊張が、本稿の出発点である。

1.1 三つの問い

本稿は次の三つを問う。第一に、公園へ向かう自転車が通る道の側で、自転車計画学はどのような整備の形を用意してきたのか。第二に、公園に着いた自転車をどこに置くのか——駐輪の需要はどう見立て、どこに、どのような形で受け止めるのが筋なのか。第三に、園内で自転車に乗ることの可否を、誰が、どのような理屈で決めるべきなのか。三つ目の問いには、練習の場が他に見つけにくいという需要をどう扱うかという難問が含まれている。

この三つは、それぞれ担い手が異なる。第一の問いは道路管理者と公安委員会の領分であり、第二と第三は公園管理者の領分である。そして三つとも、最後は利用者一人ひとりの振る舞いに帰着する。担い手が分かれていることそのものが、自転車という乗り物の扱いにくさをよく表している。自転車は法律上は車両でありながら、多くの場面で歩行者に近い扱いを受け、施設の側では往々にして「その他」の項目にまとめられてきた。

1.2 方法と資料

本稿は現地調査ではなく、文献整理と概念分析による論考である。用いる資料は、道路交通法・道路構造令・自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(以下、自転車法と略記する)・自転車活用推進法といった法令、国土交通省と警察庁が定めた「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」などの公的な技術資料、そして自転車計画・都市設計の古典である。個別の道路や個別の公園の評価は行わない。

安全に関わる主題であるため、書き方をあらかじめ限定しておく。事故の件数や割合といった統計値は本稿では扱わない。広く知られている事故の型——出会い頭、左折時の巻き込み、右折車と直進自転車——を構造として説明するにとどめ、数を語ることはしない。個々の道路や公園が安全かどうかの判断は、権限と情報を持つ道路管理者・公園管理者・警察に委ねられるべきものであり、本稿の役割は、判断のときに使える概念の見取り図を差し出すことにある。

1.3 本稿の範囲と構成

なお、公園周辺の生活道路における歩行者の安全——速度の物理、幼児の飛び出し、ゾーン30や横断歩道といった主題——は、当サイトの交通工学の論考が扱っている。本稿はそこには立ち入らず、自転車という車両に固有の計画課題、すなわち走行空間の形態、駐輪、そして練習の場に議論を集中させる。同じ道路を扱っていても、歩行者の側から見るのと自転車の側から見るのとでは、見えてくる論点が入れ替わるからである。

構成は次のとおりである。第2節で自転車計画学の系譜と基本概念を整理する。第3節は走行空間の三つの整備形態、第4節は交差点部、第5節は駐輪の計画を扱う。第6節では子どもが自転車に乗れるようになる過程と、それに必要な空間の条件を検討し、第7節で園内利用をめぐる規則と需要の衝突を論じる。第8節は幅員の乏しい小規模な公園で歩行者と自転車をどう扱うかという設計判断を一般的な原則として述べ、第9節で磐田市の都市公園100園に論点を当てはめる。第10節が結論と今後の課題である。

自転車三つの問い道と園
図1本稿は、公園へ向かう道・公園に着いた自転車の置き場・園内での乗り方という三つの層に分けて、自転車と公園の関係を論じる。

2. 先行研究と概念の整理——自転車計画学の系譜

自転車計画学とは、交通計画・交通工学の一分野として、自転車という交通手段に固有の計画課題を扱う領域をいう。固有の課題というのは、自転車が速度と車体の大きさの点で歩行者と自動車のあいだに位置し、しかも動力を人の身体に依存しているために、勾配・距離・天候・荷物・同乗者といった条件に強く左右されるからである。歩行者の計画は主として面(広がり)で考え、自動車の計画は主として線(路線)で考える。自転車はその両方の性質を持ち、面としての回遊と線としての通行の両方を同時に扱わなければならない。

2.1 周縁化と再評価

19世紀末、空気入りタイヤと後輪駆動を備えた自転車が普及したとき、それは都市の中距離移動を一変させる新しい乗り物であった。しかし20世紀のモータリゼーションのなかで、自転車は道路計画の主役の座を降り、多くの国で「計画の対象外」の位置に置かれた。道路の断面は自動車の車線と歩道に分けられ、そのあいだにあるべき自転車の場所は、車道の端という曖昧な帯に押し込められた。

この状況が反転したのが1970年代である。石油危機と都市環境問題を背景に、オランダやデンマークをはじめとする国々が、自転車を都市交通の正規の構成要素として計画に組み込みはじめた。以降、これらの国では自転車の走行空間を独立したネットワークとして設計する技術体系が積み上げられてきた。オランダの技術指針として広く参照されるCROWの自転車交通デザインマニュアルは、自転車ネットワークが満たすべき要件として、安全性、直進性(遠回りを強いないこと)、連続性・一貫性、快適性、魅力といった項目を挙げることで知られる。

この五つの要件のうち、公園を考えるうえで特に重要なのは直進性と一貫性である。直進性とは、目的地までの経路が遠回りにならないという要件であり、これが満たされないと、利用者は規則に沿わない近道を選びやすくなる。一貫性とは、途中で途切れないという要件である。自転車の走行空間が交差点の手前で消え、渡った先で再び現れるような設計では、最も判断の難しい場所で利用者が放り出される。公園の園路と外の道路の接続部も、この一貫性の問題として読むことができる。

2.2 日本の経緯——歩道通行から車道通行の原則へ

日本の経緯は独特である。道路交通法上、自転車は当初から軽車両であり、車道の左側を通行するのが原則である。ところが1970年代の法改正により、標識等によって指定された歩道を普通自転車が通行できる制度が導入された。自動車交通が急増するなかで、自転車を車道から一時的に退避させる措置として始まったこの制度は、その後定着し、歩道の一部を自転車と歩行者が共用する自転車歩行者道が全国に広がった。

この選択には代償があった。歩道上では歩行者と自転車の速度差が直接ぶつかり、また自転車が歩道を双方向に通行するため、交差点で車道に出るときに自動車の運転者の探索順序と合わない方向から現れることになる。分離したはずの空間が、交差点でかえって危うくなるという逆説がここに生じた。国土交通省と警察庁が平成24年に策定し平成28年に改定した「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」は、自転車は車道を通行することが基本であるという原則を確認し、走行空間の整備形態を選ぶ手順を示した。第3節で扱うのはこの枠組みである。

制度の側では、1980年に自転車の駐車対策等に関する法律(現在の名称は自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律)が制定され、駐輪という主題が独立した政策課題になった。さらに平成28年の自転車活用推進法により、自転車の活用を国と地方の計画として推進する枠組みが整えられ、これに基づく自転車活用推進計画が閣議決定されている。走行空間・駐輪・利用促進という三本の柱が、ここでようやく一つの政策体系として並んだ。

2.3 都市空間の側からの視点

都市計画・都市設計の古典もまた、自転車と公園を考える手がかりを与える。ジェイン・ジェイコブズが1961年に論じた、街路に人の目があることが安全を支えるという議論は、自転車で走り抜ける人もまたその目の一つであることを示唆する。ヤン・ゲールが1971年の著作で述べた、移動の速度によって人が知覚できるものが変わるという視点は、より直接的である。歩く速度で見える街と、自転車の速度で見える街と、自動車の速度で見える街は同じではない。自転車は、街の細部が見え、途中で止まれる速度域にある最後の乗り物である。

この視点に立つと、公園は自転車にとって二重の意味を持つ。目的地であると同時に、経路の途中にある休止点でもある。水道があり、トイレがあり、木陰があり、腰を下ろせる場所がある——自転車で移動する人にとって、公園はその条件を満たす数少ない公共の場である。移動と滞在のあいだをつなぐ結節点として公園を見ることが、本稿を通じた基本の構えとなる。

車道自転車歩行者段階
図2日本の自転車政策は、歩道への退避から車道通行の原則へと立ち返る経緯をたどった。走行空間・駐輪・利用促進の三本柱が現在の枠組みである。
時期自転車をめぐる主な動き公園との関係
1950年代後半都市公園法の制定(1956年)。公園の種別と誘致距離の体系が整う街区公園は徒歩250mを想定。自転車は計画上ほぼ想定されない
1960年代道路交通法の制定(1960年)。自転車は軽車両として車道左側通行が原則公園の出入口は歩行者用として設計される
1970年代石油危機。標識により指定された歩道の通行が制度化され、自転車歩行者道が広がる歩道を経由して公園へ至る経路が一般化する
1980年代自転車の駐車対策に関する法律の制定(1980年)。駐輪が政策課題になる駅前が中心。公園の駐輪は制度の外に置かれやすい
2000年代バリアフリー法(2006年)と都市公園移動等円滑化基準園路の幅・段差・勾配に基準ができ、共用の条件が明確化する
2010年代自転車利用環境創出ガイドライン(2012年策定・2016年改定)、自転車活用推進法(2016年)車道通行の原則が再確認され、面としての回遊が政策に入る
2020年代ヘルメット着用の努力義務が全年齢に拡大(2023年)、特定小型原動機付自転車の区分新設園内で扱うべき車両の種類が増え、規則の書き方が問われる

3. 走行空間の三類型——自転車道・専用通行帯・車道混在

公園へ向かう自転車が通るのは、まず道路である。その道路の断面のどこを自転車が走るかを決めるのが走行空間の計画であり、国土交通省と警察庁のガイドラインは、これを大きく三つの整備形態に整理している。自転車道、自転車専用通行帯、そして車道混在である。三つは優劣の関係ではなく、道路の条件に応じた使い分けの関係にある。まずそれぞれの内容を確認しておく。

3.1 三つの形態

  • 自転車道——縁石や柵などの構造物によって車道および歩道から物理的に分離された、自転車専用の通行空間である。道路構造令では、自転車道の幅員は原則として2m以上(やむを得ない場合は1.5m以上)と定められている。分離の程度が最も高い。
  • 自転車専用通行帯——車道の左端に、規制によって自転車専用の通行帯を設けるものである。構造物による分離はなく、路面の表示と標識によって位置づけられる。道路構造令では自転車専用通行帯の幅員は1.5m以上(やむを得ない場合は1m以上)とされる。
  • 車道混在——自転車と自動車が同じ車線を共有する形態である。路面に矢羽根型の表示などを施し、自転車の通行位置と進行方向を示す。専用の空間を割り当てるのではなく、共有のルールを可視化する手法だといえる。

この三つを分ける主たる基準は、自動車の速度と交通量である。速度が高く交通量が多い道路ほど、分離の程度を高める側に選択が寄る。逆に、速度が低く交通量の少ない生活道路では、車道混在が現実的かつ合理的な選択になる。速度差が小さければ、同じ面を共有しても危険は相対的に小さく、また分離のために必要な幅を確保できないことが多いからである。ここには、分離は目的ではなく手段である、という原則が働いている。

3.2 分離のパラドクス

分離の程度を高めれば安全になる、という単純な図式が成り立たないことは、自転車計画学がくり返し確認してきた点である。単路部——交差点と交差点のあいだの区間——では、分離は確かに効く。自動車と自転車が接触する機会が構造的に減るからである。ところが交差点部では、事情が反転する。分離された自転車は、自動車の運転者の視野の外側、すなわち歩道側の遠い位置を走ることになり、交差点で車道と交わる瞬間に、運転者が予期していない位置から現れることになる。

この逆説は、分離を否定するものではなく、分離した空間を交差点でどう再統合するかという設計課題があることを示している。ガイドラインが単路部の形態選定と交差点部の設計を別立てで扱うのは、この事情による。第4節で交差点部を独立した節として論じるのも同じ理由からである。

3.3 自転車歩行者道という第四の現実

三つの整備形態のほかに、日本には自転車歩行者道という広く普及した現実がある。歩道のうち、標識等により普通自転車の通行が認められた部分である。道路交通法の定めるところでは、歩道を通行できる場合であっても、自転車は歩道の中央から車道寄りの部分を徐行しなければならず、歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止しなければならない。すなわち、そこは自転車の空間ではなく、あくまで歩行者の空間に自転車が入れてもらっている空間である。

この点は、園路をめぐる第8節の議論と直結する。園路もまた歩行者の空間であり、そこでの自転車の扱いは「歩道通行が認められた場合の自転車」と構造的によく似ている。徐行、車道寄り(園路では通行の少ない側)、歩行者優先、必要なら一時停止——という振る舞いの規範は、法の適用の有無を別としても、共存の実質的な条件を言い当てている。

車道自転車分離幅員
図3走行空間の形態は、自動車の速度と交通量に応じて選ぶ。分離は目的ではなく手段であり、必要な幅を確保できるかどうかが選択を縛る。
整備形態分離の程度幅員の目安(道路構造令)適する道路の条件公園アクセスでの意味
自転車道構造物による物理的分離原則2m以上(やむを得ない場合1.5m以上)自動車の速度が高く交通量も多い幹線道路遠くの公園へ至る幹線経路。交差点部の設計が要
自転車専用通行帯規制と路面表示による分離1.5m以上(やむを得ない場合1m以上)速度・交通量が中程度の道路地区内の主要経路。路上駐車で機能が失われやすい
車道混在分離しない(共有)専用幅の割り当てなし速度が低く交通量の少ない生活道路街区公園へ至る最後の数百メートルの現実的な形
自転車歩行者道歩行者と同一面を共用歩道側の規定による標識等により通行が認められた歩道歩行者優先・徐行が条件。園路と構造がよく似る

表に整理したとおり、公園へ至る経路は、幹線では分離、生活道路では混在という組み合わせになるのが通例である。問題は、その二つが切り替わる地点で自転車が迷わないかどうかにある。第2節で挙げた一貫性の要件は、まさにこの切り替わりの設計を指している。公園という目的地から逆算して経路を描いたとき、どこで形態が変わり、変わり目に何が置かれているのか——この問いは、道路管理者だけでなく、公園を利用する側にとっても具体的な意味を持つ。

註:普通自転車の大きさ(長さ・幅)や、歩道通行が認められる場合の要件は道路交通法および同法施行規則に定めがある。また2023年には、原動機付自転車のうち一定の基準を満たすものを特定小型原動機付自転車とする区分が設けられた。園内の掲示で「自転車」とだけ書いたとき、それが何を指すのかは、以前より曖昧になりつつある。

4. 交差点部——自転車計画の要はどこにあるか

自転車計画において最も難しいのは、走行空間をどう作るかではなく、その空間が他の交通と交わる場所をどう設計するかである。単路部では、自転車と自動車は同じ方向へ並んで進む。速度は違っても進行方向が揃っているぶん、互いの位置関係は読みやすい。ところが交差点では、進行方向の異なる交通が同じ平面を共有し、しかも全員が同時に判断を求められる。自転車と自動車が関わる出来事が交差点とその周辺に集まりやすいことは、自転車計画の技術資料が一貫して指摘してきたところである。

4.1 三つの型

交差点で問題になる状況は、大きく三つの型に整理できる。第一は出会い頭で、交差する道路から進入する双方が互いを見つけられないまま交差点に達する型である。第二は左折時の巻き込みで、左折しようとする自動車の左側を直進する自転車が進む型である。第三は右折車と直進自転車の交錯で、対向から右折する自動車が、直進してくる自転車の速度と距離を読み違える型である。いずれも、悪意や無謀さではなく、視認と予測という認知の仕組みから説明できる。

第一の型を支配するのは見通しである。交差点の隅にある塀・生垣・看板・停まっている車が視線を遮ると、双方が互いを見つけられる位置が交差点に近づき、判断に使える時間が短くなる。第二の型を支配するのは相対位置である。自動車の左後方は運転席から見えにくく、しかも左折時には車体が内側に切れ込む。第三の型を支配するのは速度の見積りである。人は小さく見える対象の接近速度を実際より遅く見積もりやすいとされ、自転車は自動車より投影面積が小さい。

4.2 期待の不一致という構造

これら三つの型に共通して働いているのが、期待の不一致である。運転者は交差点に近づくとき、どこに何がいるかを無意識のうちに順序立てて探す。車道の車線を見て、横断歩道を見て、歩道の歩行者を見る。この探索の順序は、その人の経験によって作られている。ここに、想定していない位置と速度で現れるものがあると、視野に入っていても認知されないことがある。歩道を車道と逆向きに走ってきた自転車が交差点に現れる状況が難しいのは、まさにこの理由による。

したがって対策の基本は、自転車を見えるところに置く、ということになる。具体的には、交差点の手前で自転車の通行位置を車道側に寄せる、自転車の停止位置を自動車の停止線より前に出す、交差点内でも自転車の進む線を路面に示して連続させる、といった手法である。分離された自転車道であっても、交差点の手前ではいったん自動車の視野の内側に合流させるという考え方が採られるのは、この原則の現れである。分離と統合を場所ごとに使い分けることが、交差点設計の中核にある。

交差点見通し自動車判断
図4交差点で難しいのは、見通し・相対位置・速度の見積りという三つの認知の条件である。対策の基本は自転車を見える位置に置くことにある。

4.3 逆走と近道——規則が守られにくい場所

自転車が車道を逆向きに走る、いわゆる逆走は、交差点の判断をいっそう難しくする。なぜ逆走が起きるのかを、規範意識の問題としてだけ扱うと対策を誤る。多くの場合、それは経路の直進性が確保されていないことの結果である。目的地が道路の反対側にあり、横断できる場所が遠ければ、人は最短の線を選ぼうとする。第2節で挙げた直進性の要件が満たされない設計は、規則に沿わない行動を構造的に誘発する。

この視点は、公園の出入口の配置にそのまま応用できる。公園の出入口が一か所しかなく、多くの利用者にとって反対側にあるならば、柵沿いに回り込む動線が生まれ、その途中で車道を横切る地点が生まれる。出入口を複数置くこと、そして利用者の来る方向に開くことは、単なる利便性の問題ではなく、経路の直進性を通じた安全の問題でもある。

4.4 公園の出入口という小さな交差点

公園の出入口は、法律上の交差点ではないが、機能の上では交差点である。園路と歩道が交わり、歩道と車道が交わる。園内から自転車が出てくる場合、そこには「速度を持った利用者が、見通しの限られた地点で、優先関係の定まらない交通に合流する」という交差点の条件が揃っている。しかも出入口の脇には、置かれた自転車や掲示板、植栽が視線を遮る要素として並びやすい。

この小さな交差点に対して使える道具は、道路の交差点と本質的に同じである。すなわち、見通しを確保すること(隅の植栽を低く保つ、駐輪の位置を出入口から離す)、速度を落とすこと(出入口を屈曲させる、車止めを置く)、そして合流の位置を一か所に定めることである。ただし、車止めや屈曲は、車いす・ベビーカー・白杖を使う人にとっての通りにくさと引き換えになる。この交換関係については第8節で改めて扱う。

註:本節では事故の件数・割合といった統計値を扱っていない。ここで述べたのは、公的な技術資料や自転車計画の教科書に共通して現れる型の説明であり、個々の交差点や出入口の危険度の評価ではない。実際の判断は、道路管理者・公安委員会・公園管理者に委ねられる。

5. 駐輪の計画——需要の見立てと置き場の位置

自転車で公園に着いた人は、必ず自転車を降りて置く。移動の計画がどれほど整っていても、置き場の計画がなければ、自転車は出入口の脇、フェンス沿い、遊具のすぐ横、ベンチの前といった場所に置かれる。駐輪は走行空間と並ぶ自転車計画の柱であり、日本では1980年の法律以来、独立した政策課題として扱われてきた。ただしその主戦場は鉄道駅の周辺であり、公園の駐輪は制度の関心の外側に置かれやすい。本節では、需要の見立て方と置き場の位置という二つの側面から、公園の駐輪を検討する。

5.1 需要をどう見立てるか

駐輪需要の推計は、一般に次のような手順で組み立てられる。まず対象施設の利用者数を見積もる。次に、そのうち自転車で来る人の割合——交通手段の分担率——を掛ける。さらに、一日の利用が同時に起きるわけではないため、最も集中する時間帯の割合(ピーク率)を掛け、逆に一台の駐輪スペースが一日に何回使われるか(回転率)で割り戻す。必要台数は、この掛け算と割り算の結果として得られる。

この手続きを公園に当てはめると、いくつかの困難がすぐに現れる。第一に、公園の利用者数は改札や券売のような記録を持たないため、実測しなければ分からない。第二に、公園の利用は季節・天候・時間帯によって大きく振れる。春と秋の休日の午前、夏の夕方、そして放課後の一時間といった山がある一方、平日の日中はほとんど利用がないこともある。第三に、滞在時間の幅が極端である。数分の立ち寄りから半日の滞在まで、同じ場所で同時に起きる。回転率という一つの数字で代表させにくいのである。

したがって公園の駐輪計画は、ピークに合わせて台数をそろえるという発想よりも、ピーク時にあふれた自転車がどこへ行くかを設計する、という発想のほうが実際的である。あふれた自転車が動線を塞がず、見通しを損なわず、出入口の機能を殺さない場所に流れるように、置き場の周囲に余白を用意しておく。これは駐車場の設計とは異なる考え方であり、自転車が自立して置ける乗り物であることの利点を活かした発想でもある。

置き場台数出入口あふれ
図5公園の駐輪需要は季節・時間帯で大きく振れる。台数をそろえるより、あふれたときにどこへ流れるかを設計するほうが実際的である。

5.2 置かれてしまう場所の力

人は自転車を、目的地から最短の位置に置く。この単純な傾向は、駐輪計画の出発点である。遊具まで100mある正規の駐輪場と、遊具の真横のフェンスがあれば、後者が選ばれやすい。置き場の位置を目的地から遠ざけるほど、規則に沿わない駐輪が増えるという関係は、第2節で述べた直進性の要件が駐輪の場面に現れたものだと言える。逆に言えば、駐輪の秩序は掲示ではなく配置によって作られる部分が大きい。

そこで置き場の位置には、次の四つの条件を同時に満たすことが求められる。第一に、主要な目的地——遊具、広場、トイレ——から近いこと。第二に、園路や出入口の通行を塞がないこと。第三に、出入口や交差部の見通しを遮らないこと。第四に、置かれた自転車が倒れても人の通る場所に倒れ込まないだけの余地があること。この四つはしばしば互いに衝突するため、小さな公園では完全に満たすことができない。そのときは、どの条件を優先するかを明示的に選ぶほかない。

5.3 ラック・舗装・勾配

駐輪ラックは自転車を整列させ、限られた面積に多く収める道具である。ただし、公園の駐輪には固有の事情がある。幼児用座席を備えた自転車、前かごの大きい自転車、車体の長い自転車は、間隔の詰まったラックに入らないことがあると一般に指摘される。また前輪だけを固定する形式のラックは、重心の高い自転車や荷物を積んだ自転車を支えきれないことがある。子育て世代の利用が多い公園では、ラックの間隔に余裕を持たせるか、あるいはラックを置かず、区画線と舗装だけで置き場を示すという選択も検討に値する。

舗装と勾配も見落とされやすい条件である。スタンドは、平らで硬い面の上でしか安定しない。砂利や芝生、土の上では、スタンドが沈み、置いた自転車が倒れる。排水のために舗装面に付けられたわずかな勾配も、置く向きによっては倒れやすさに関わる。駐輪の場所を決めるとは、実は「その一角だけ平らで硬い面を用意する」という舗装の設計に他ならない。

5.4 シェアサイクルと公園

近年広がりつつあるシェアサイクルは、決められた地点(ポート)で借りて返す方式が一般的である。ポートは面的に多数配置されるほど利便性が高まるため、公有地であり、まとまった面を持ち、見通しがよく、人の目のある公園はポートの候補になりやすい。他方で、ポートの設置は公園の一部を特定の用途に継続的に割り当てることを意味し、電源や通信、日常の整理といった管理の負担も伴う。都市公園において何を公園施設として置けるかは都市公園法の枠組みに関わる問題でもあり、設置の可否は制度と管理の両面から検討されるべきものである。

公園と自転車の関係という本稿の主題から見ると、シェアサイクルのポートは、公園を「目的地」から「経路の結節点」へと性格を広げる装置である。第2節で述べた休止点としての公園の役割が、制度的な形を与えられるとも言える。ただし、その面積が子どもの遊び場や広場を削って確保されるなら、話は別である。何のためにその公園があるのかという問いが、ここでも先に立つ。

6. 練習の場——自転車を覚える過程と空間の条件

自転車に乗れるようになるという出来事は、多くの人にとって幼少期の記憶に残る節目である。しかし計画の側から見ると、これは「一定の条件を満たす空間を、一定の期間、繰り返し使う」という具体的な空間需要である。しかもその需要は、子どもが乗れるようになれば消える、期間限定の需要でもある。本節では、習得の過程を段階に分け、段階ごとに必要となる空間の条件を整理する。乗れるようになる年齢には大きな個人差があるため、ここでは年齢ではなく段階で記述する。

6.1 習得の段階

  • 第一段階(平衡)——二輪を倒さずに進む感覚をつかむ段階。ペダルのない二輪車で地面を蹴って進む方法などが用いられる。必要なのは、ごくわずかな下り勾配と、数十メートルの平坦な直線、そして転んでも大きな衝撃になりにくい路面である。
  • 第二段階(推進)——ペダルを漕いで速度を保つ段階。連続して漕ぎ続けられるだけの直線の長さが要る。曲がる必要のない、見通しのよい一本の線が望ましい。
  • 第三段階(発進と停止)——止まった状態から漕ぎ出し、狙った位置で止まる段階。ブレーキを握る力と、止まったときに足が地面に着くことが条件になる。ここで初めて、他者との距離を測るという課題が現れる。
  • 第四段階(進路の制御)——曲がる、避ける、後方を確認する段階。後ろを振り向くと進路がぶれるという身体の癖を、時間をかけて解いていく必要がある。ここでは曲線と、多少の幅を持った面が要る。
  • 第五段階(交通のなかでの判断)——実際の道路で、標識・信号・他の車両・歩行者を読みながら走る段階。この段階は公園では練習できない。同行する大人とともに、実際の道路で少しずつ経験を重ねるほかない。

この段階分けから分かるのは、公園が担えるのは第一段階から第四段階までであり、最後の段階は原理的に公園の外にしかない、ということである。逆に言えば、第一から第四までを安全な場所で十分に済ませてあることが、第五段階を安心して始めるための前提になる。公園が果たしうる役割は、道路に出る前の準備を引き受けることだと整理できる。

子ども練習装備段階
図6自転車の習得は平衡・推進・発進停止・進路制御・交通判断の段階を踏む。公園が担えるのは第四段階までで、最後は道路でしか学べない。

6.2 空間の条件

段階を通じて共通に求められる空間の条件は、次のように整理できる。第一に、自動車が入ってこないこと。第二に、平坦であること、あるいは勾配が制御されていること。第三に、直線の長さがあること。第四に、転回や停止のための幅があること。第五に、路面が硬すぎず、また滑りやすくないこと。第六に、周囲からの見通しがよく、付き添う大人が全体を見渡せること。第七に、そこで練習していても、他の利用者の遊びや通行と交わらないだけの余白があること。

最後の条件が、実は最も満たされにくい。第一から第六までは、広場のある公園ならおおむね満たされる。しかし、練習に適した平坦で見通しのよい舗装面は、同時に、幼児が走り回る場所であり、ボール遊びの場であり、園路として人が行き交う場所でもある。練習に必要な条件と、他の利用の条件が同じ場所を指し示してしまうところに、この主題の核心がある。

6.3 なぜ公園に集まるのか

練習の場が公園に集中する背景には、いくつかの構造的な事情がある。住宅の敷地に自転車を走らせられるだけの庭を持つ家は減り、行き止まりの私道のような半公共の空間も、区画の設計が変わるなかで少なくなった。学校のグラウンドは平日の日中は授業に使われ、休日の開放にも管理上の手続きが要る。河川敷や広い駐車場は、そもそも子どもだけで行ける距離にないことが多い。結果として、家から歩いて行ける範囲で条件を満たす場所を探すと、公園が残る。

ここには一つのずれがある。公園は、自転車の練習場として設計されてきたわけではない。都市公園の体系は、緑と遊具と広場を身近に配置するという発想で組み立てられており、園路は歩くための施設である。設計上の想定と、社会が実際に負わせている役割のあいだにずれがあるとき、そのずれは規則の文面と利用者の行動の食い違いとして現れる。第7節で扱うのは、このずれをどう扱うかという問題である。

6.4 装備と点検——場の条件と並ぶもう一つの条件

空間の条件と並んで、乗る側の条件も整理しておく必要がある。道路交通法では、2023年4月から全ての年齢の自転車利用者について、乗車用ヘルメットの着用が努力義務とされている。また、幼児を同乗させる場合の要件は都道府県公安委員会の規則で定められており、幼児二人を同乗させる自転車については業界団体による安全基準も設けられている。車体の側では、ブレーキの効き、タイヤの空気圧、サドルの高さ(止まったときに足が地面に着くか)といった点検項目が、練習の前提として挙げられる。

これらは、公園という場の設計とは別の次元にある条件だが、公園での練習を考えるうえで切り離せない。場の条件が整っていても、車体が身体に合っていなければ第三段階は進まないからである。装備や車体についての具体的な判断は、販売店や整備の資格を持つ人、あるいは自治体や関係団体が行う教室などに委ねられるべきものであり、本稿はその必要を指摘するにとどめる。

7. 規則と需要の衝突——園内利用をどう考えるか

ここまでの議論は、公園へ向かう道と、公園に着いた自転車の置き場を扱ってきた。本節が扱うのは、その中間にある問い——園内で自転車に乗ってよいのか——である。あらかじめ立場を明確にしておく。都市公園の利用のルールは、公園を設置し管理する地方公共団体が条例等で定め、個別の公園の事情に応じて管理者が判断するものである。園内での自転車利用の可否も同様であり、利用にあたっては各公園の規則と管理者の指示に従う必要がある。本稿は一般的な原則を論じるものであって、規則に反する利用をすすめるものではない。

7.1 規則が置かれる理由

園内での自転車の走行に制限が置かれる理由は、速度差と予測可能性にある。園路を歩く人のなかには、乳児を抱いた保護者、歩きはじめたばかりの幼児、車いすや杖を使う人、白杖で足元を確かめながら進む人が含まれる。これらの利用者は、避ける動作に時間がかかるか、あるいは接近する自転車を音以外の手がかりで捉えにくい。加えて、遊んでいる子どもの動きは進行方向が定まらず、大人の歩行者のようには予測できない。速度を持った車両が同じ面を共有するとき、避ける負担は一方的に弱い側へ寄る。

もう一つの理由は、公園という場所の性格にある。公園は、通行のための空間ではなく、滞在のための空間である。道路であれば、人は通行という共通の目的を持ち、互いの動きをある程度予測できる。公園ではそうならない。座っている人、寝転んでいる人、走っている人、しゃがんで虫を見ている人が、同じ面の上に同時にいる。滞在の空間に通行の速度を持ち込むことの難しさは、面積の大小にかかわらず存在する。

7.2 一律禁止という選択とその副作用

最も単純な解は、園内での自転車の走行を一律に認めないことである。この選択には明確な長所がある。規則が短く、掲示が簡潔で済み、利用者が迷わない。管理する側にとっても、区域や時間帯ごとの運用を考える必要がなく、判断の一貫性が保たれる。安全側に倒すという意味でも合理的である。

他方で、この選択には見落とされやすい副作用がある。禁止によって需要が消えるわけではない、ということである。第6節で見たとおり、練習の場を求める需要には構造的な背景があり、公園で認められなければ、その需要は別の場所へ移る。移った先が、公園より条件のよい場所であるとは限らない。生活道路や駐車場、あるいは人目の届かない空き地が選ばれるなら、全体として見た安全は改善しない可能性がある。禁止の効果を評価するときは、園内で起きなくなったことだけでなく、園外で起きるようになったことも視野に入れる必要がある。

掲示利用制限合意
図7園内利用の可否は各公園の規則と管理者の判断による。一律禁止は明快だが、練習の需要が別の場所へ移る点も検討の対象になる。

7.3 分節という中間解

一律禁止と全面許可のあいだには、いくつかの中間解がある。共通するのは、公園という一つの場を、何らかの軸で分節するという発想である。軸は三つ考えられる。区域で分ける方法、時間で分ける方法、そして対象で分ける方法である。区域で分けるとは、園内の一部——たとえば周囲から独立した舗装広場——を練習に充てる方法である。時間で分けるとは、利用の少ない時間帯に限って認める方法である。対象で分けるとは、未就学児の練習に限る、補助輪を付けた自転車に限る、といった限定を置く方法である。

方式考え方成立の条件運用上の負担
一律に認めない園内は歩行者の空間として統一する近隣に練習できる代替の場が示せること小さい(掲示が簡潔で済む)
区域で分ける独立した広場など一部を練習に充てる他の動線と交わらない面がとれること・見通しがよいこと中程度(区域の明示と境界の管理)
時間で分ける利用の少ない時間帯に限って認める時間帯ごとの利用状況が把握できていること大きい(掲示が複雑・周知が難しい)
対象で分ける未就学児の練習など用途を限定する限定の趣旨が短い言葉で伝わること中程度(線引きの説明が要る)

表に示したとおり、どの方式にも成立の条件がある。とりわけ区域で分ける方式は、他の動線と交わらない面がとれることを前提とするため、面積の小さい公園では成り立たない。時間で分ける方式は、掲示が複雑になり、周知の負担が大きい。分節は万能の解ではなく、その公園の面積・形・利用の実態が許すときに初めて選択肢になる。逆に言えば、面積と形を根拠に一律の扱いを選ぶことには、十分な理由がある。

7.4 掲示の書き方——禁止・理由・代替

規則の内容と同じくらい重要なのが、その伝え方である。掲示に禁止事項だけが並んでいるとき、読む側は「なぜ」を補えないまま従うか、あるいは従わないかの二択に置かれる。禁止の理由——ここには小さな子どもが歩いている、見通しの悪い角がある——が添えられていれば、規則は納得の対象になりうる。さらに、代替の案内——練習に使える場所や、市が開く教室の情報——が添えられていれば、掲示は需要を切り捨てるのではなく、需要の行き先を示す道具になる。

公園は、特定の誰かのものではなく、地域が共同で使う場である。利用の調整は、掲示という一方向の伝達だけでは完結せず、日常の使われ方と、そこで交わされる言葉によって支えられる。誰の利用を優先するのか、どこまでを許容するのかという問いは、最終的には地域の合意の問題であり、行政と住民の関係の問題でもある。本稿はそこに答えを与える立場にないが、この問いが技術の問題ではなく合意の問題であることは、はっきりさせておきたい。

8. 小規模公園の設計判断——分離・共存・排除

前節では、園内利用の可否を規則の問題として論じた。本節では同じ問題を、設計の側から扱う。規則は空間の条件を追認するものであって、その逆ではない。分離できるだけの幅があるかどうか、速度を落とす仕掛けを置けるかどうか、見通しを確保できるかどうか——こうした空間の条件が、どの規則が現実的かを規定する。ここで論じるのは一般的な設計原則であり、個別の公園に当てはめる作業は管理者の判断に属する。

8.1 分離には幅が要る

歩行者と自転車を面的に分けるには、それぞれに必要な幅を足し合わせた寸法が要る。都市公園の側では、バリアフリー法に基づく都市公園移動等円滑化基準が、園路及び広場の幅について、原則として180cm以上(地形の状況その他の特別の理由によりやむを得ない場合は120cm以上)とする考え方を示している。この180cmという寸法は、車いす同士がすれ違える幅として設定されたものであり、歩行者の通行だけで使い切る数字である。ここに自転車の通行帯を足そうとすれば、第3節で見た自転車専用通行帯の1.5m以上という目安を参照するかぎり、園路の幅は3mを超える計算になる。

街区公園の標準面積は0.25haである。仮に正方形に近い形であれば一辺はおよそ50mであり、そこから外周の植栽帯、遊具の安全領域、砂場やベンチの区画を差し引くと、園路に割ける幅は限られる。すなわち、標準的な街区公園において歩行者と自転車を面的に分離することは、寸法の上でまず成り立たない。この事実は、小規模公園における選択肢を実質的に二つ——共存か、排除か——に絞り込む。

8.2 共存の条件——速度・見通し・面の質

分離できないときに共存を成立させる条件は、第3節で見た自転車歩行者道の規範とほぼ重なる。すなわち、速度を落とすこと、歩行者を優先すること、必要なら停止することである。ただし、これを掲示だけで成立させようとするのは無理がある。設計の側からできるのは、速度を出しにくい形を作ることである。園路を直線で長く通さず、緩やかな屈曲を入れる。舗装の質感を変えて、速度の手がかりを与える。視線の抜ける距離を意図的に区切る。いずれも、乗る人に「ここは速く走る場所ではない」と身体で感じさせる仕掛けである。

幅員歩行者自転車境界
図8歩行者と自転車を面的に分けるには幅が要る。街区公園の標準規模では分離は成り立たず、選択肢は共存か排除の二つに絞られる。

見通しの確保は、共存のもう一つの柱である。園路が交わる角、遊具の陰、出入口の内側——こうした地点で視線が通らないと、速度の低い自転車であっても、相手を見つけてから止まるまでの余地がなくなる。植栽の管理は、この点で決定的な役割を果たす。低木は視線が越えられる高さに保ち、高木は枝下を上げて幹の間から向こうが見えるようにする、という原則が一般に用いられる。見通しの確保は防犯の観点からも重視される主題であり、当サイトの犯罪学の論考と関心を共有している。

面の質、すなわち舗装も条件の一つである。滑りやすい面、目地の広い面、雨の後に水の溜まる面は、自転車の制動を不安定にする。逆に、砂利や芝は自転車の速度を自然に落とす。素材の選択は、速度を落とす仕掛けとしても、また転倒したときの衝撃を和らげる要素としても働く。ただし、砂利や芝は車いすやベビーカーの通行を妨げる。ここでも、ある利用者にとっての利点が別の利用者にとっての障害になるという交換関係が現れる。

8.3 出入口——止める装置と通す装置

出入口は、園内と園外の速度を切り替える地点である。車止め(ボラード)やクランク状の柵は、自転車に降りて押すことを促す装置として働く。第4節で述べたとおり、園内から道路へ速度を持ったまま出ることを防ぐ意味でも、この装置には役割がある。しかし同時に、車止めの間隔が狭ければ車いすやベビーカーが通れず、クランクは荷物を持った人や視覚障害者にとって通りにくい。バリアフリーの基準が求めるのは、通れることである。止める装置と通す装置は、同じ場所で相反する要求を出す。

この矛盾に対する一般的な解は、間隔と配置を工夫することである。すなわち、車いすが通れる有効幅を確保しつつ、直進では通り抜けにくい配置にする。あるいは、車止めを置く代わりに、出入口の手前で園路を屈曲させ、速度を落とさざるをえない形にする。いずれの手法も、通行の権利を奪わずに速度だけを削ることを狙っている。設計とは、この種の両立を寸法の上で成り立たせる作業に他ならない。

8.4 掲示の限界と形の力

最後に、掲示と形の関係を確認しておく。掲示は、読まれなければ働かない。読まれても、その場の形が別のことを語っていれば、形のほうが優先されやすい。長く見通しのよい直線の園路は、そこに「徐行」と書かれていても、速度を出せる場所として身体に受け取られる。逆に、屈曲し、視線が区切られ、路面の質感が変わる園路は、掲示がなくても速度を落とさせる。環境がその使い方を示唆するというこの見方は、生態心理学が扱ってきた主題でもあり、公園の設計に応用できる考え方の一つである。

したがって、規則を書く前に形を見る、という順序が望ましい。形の上で共存が難しい公園に共存の規則を置けば、規則は守られにくく、掲示は増え、管理者と利用者の双方が消耗する。形の上で共存が成り立つ公園に一律の禁止を置けば、使える資源が使われないままになる。規則と形を突き合わせる作業は、面積・園路の幅・見通し・出入口の位置を一つひとつ確かめる、地道な現地の作業である。

註:本節で挙げた寸法は、公的な基準に示された原則的な考え方を参照したものであり、個別の公園に適用される数値ではない。実際の設計・改修にあたっては、都市公園移動等円滑化基準をはじめとする関係基準と、公園管理者の判断が優先する。

9. 磐田市の公園への示唆——100園の構成から読めること

ここまでの議論を、磐田市の都市公園に当てはめる。当サイトが収録しているのは100園であり、その内訳は、磐田市のオープンデータ「都市公園一覧」の94行と、市の施設ガイドにのみ掲載されている6園である。種別の構成は、街区公園51園、近隣公園14園、都市緑地10園、法対象外その他6園、地区公園4園、総合公園3園、運動公園3園、風致公園3園、広場公園2園、緑道2園、墓園1園、歴史公園1園となっている。まず確認しておきたいのは、この構成の圧倒的な部分が街区公園であるということである。

9.1 誘致距離と自転車の圏域

都市公園の種別には、国の標準として誘致距離の目安がある。街区公園は0.25ha・250m、近隣公園は2ha・500m、地区公園は4ha・1kmである。この数字は歩いて到達することを前提とした距離であり、街区公園の250mは徒歩数分、地区公園の1kmは徒歩十数分に相当する。自転車が入ってくると、この距離の意味が変わる。徒歩で十数分の地区公園は自転車なら数分であり、総合公園も日常の選択肢に入ってくる。自転車は、種別ごとに引かれた同心円を実質的に拡大する装置である。

この拡大には二つの側面がある。利用者から見れば、選べる公園が増えるという利点である。計画から見れば、街区公園51園という配置の緻密さが、必ずしも利用の実態と対応しないということでもある。近くに街区公園があっても、遊具や広場の条件がよい地区公園へ自転車で行くという選択が成り立つからである。当サイトが公園を横断して比較できる形で並べていること自体が、この選択を支える情報基盤になりうる。

配置誘致距離自転車100園
図9街区公園250m・近隣公園500m・地区公園1kmという誘致距離は徒歩が前提である。自転車はこの同心円を実質的に広げる装置として働く。

9.2 面積の幅——同じ規則では扱えない

収録している100園の面積は、極端な幅を持つ。最も広いのは竜洋海洋公園(総合公園・竜洋)の221,722平方メートルであり、以下、かぶと塚公園(総合公園・見付)106,982平方メートル、つつじ公園(風致公園・見付)61,937平方メートル、磐田スポーツ交流の里ゆめりあ(運動公園・向陽)57,500平方メートル、兎山公園(地区公園・御厨)56,193平方メートル、福田公園(総合公園・福田)49,620平方メートル、中央公園(地区公園・中泉)41,642平方メートル、安久路公園(地区公園・御厨)32,001平方メートルと続く。

他方、小さい側には、二之宮東第2緑地(都市緑地・中泉)の17平方メートル、豊田上新屋ポケットパーク(都市緑地・豊田)の156平方メートル、磐田ららシティ西ポケットパーク(広場公園・豊田)の362平方メートル、見付本通広場公園(街区公園・見付)の372平方メートルといった園がある。面積の比は一万倍を超える。第8節で述べたとおり、歩行者と自転車の分離には幅が要る。この面積の幅を前にすれば、園内の自転車の扱いを市内一律の一つの規則で決めることが、空間の条件から見て無理を含むことは明らかである。

この点は、逆から言えば、規模の大きい園には設計上の余地があるということでもある。数万平方メートルの規模を持つ園であれば、周回する園路に十分な幅を取ること、練習に使える面を他の動線から離して確保すること、駐輪の位置を出入口から離して置くことが、寸法の上で成り立ちうる。もちろん、実際にそうなっているかどうかは現地を見なければ分からない。

9.3 施設ガイドの記載から読めること・読めないこと

市の施設ガイドには、園内施設の記載がある園がある。車輪を使う遊びとの関係で目を引くのは、兎山公園と竜洋豊岡公園の二園に「ローラースケート場(スケートボード利用可)」という記載があることである。これは、車輪のある遊びに対して独立した区画を割り当てた例として読める。第7節で述べた区域による分節の考え方が、別の種類の車輪について、すでに形になっているとも言える。ただし、この記載は自転車について何かを述べるものではない。

また、今之浦公園の備考には「駐車場以外の場所への駐車はご遠慮ください」という記載がある。これは自動車の駐車についての呼びかけであるが、置く場所を指定するという構造は、第5節で論じた駐輪の位置の問題と重なる。目的地に近い場所へ置こうとする傾向に対して、掲示で場所を指定するという方法がとられている例である。

重要なのは、読めないことのほうである。当サイトが参照できる資料の範囲では、それぞれの公園で自転車の乗り入れがどう扱われているかは分からない。駐輪の設備があるかどうかも、資料からは読み取れない。これらは掲示や現地の状況を見なければ確認できない事項であり、規則の内容については、公園を管理する市の担当課——都市整備課(電話 0538-37-4806)——に確認するのが確実である。本稿がここで断定を避けるのは、慎重を期しているからではなく、根拠となる資料がないからである。

9.4 駐車場のある33園とない67園

オープンデータおよび市の施設ガイドの記載から、駐車場があると判断できるのは33園である。裏を返せば、残りの園には自動車で乗り付ける前提がない。トイレのある園は69園、車いす対応トイレのある園は34園、砂場のある園は43園、遊具のある園は64園である。駐車場を持たない園では、到達手段は徒歩か自転車に限られ、そのぶん駐輪の位置が利用の質を左右する。駐車場のない園こそ、自転車計画の観点から見るべき対象だということになる。

9.5 地区ごとの偏り

9地区の園数は、豊田28園、見付21園、中泉14園、御厨13園、竜洋13園、福田4園、豊岡3園、南部2園、向陽2園と分布している。園数の多い地区では、街区公園が細かく配置され、徒歩圏で完結しやすい。園数の少ない地区では、一つの園が受け持つ圏域が広くなり、到達に自転車が使われる度合いが高まると考えられる。園数の偏りは、そのまま自転車の役割の偏りに読み替えることができる。ただし、地区の面積や人口の分布を踏まえない単純な比較には限界があり、この点は統計の側から改めて検討する必要がある。

9.6 今後の踏査で確かめる項目

当サイトの踏査はまだ始まっておらず、現地を確かめた園は一つもない。本稿の議論を現地で検証するために、自転車の観点から確かめるべき項目を挙げておく。これらは、公園の紹介記事に載る情報とは別の、計画の側から見た確認項目である。

  • 出入口の数と向き——来る方向に対して開いているか、回り込む動線が生じていないか
  • 出入口の形——車止めやクランクの有無、その有効幅(車いす・ベビーカーが通れるか)
  • 駐輪の実態——どこに置かれているか、動線や見通しを妨げていないか、置ける面が平らで硬いか
  • 園路の幅と線形——直線が長く続いていないか、交わる角の見通しはどうか
  • 練習に使えそうな面——他の動線から離れた平坦な舗装面があるか、その広さと勾配
  • 掲示の内容——利用のルールがどう書かれているか、理由や代替が添えられているか
  • 周辺道路との接続——公園の前面道路の性格、歩道の有無、走行空間の形態

これらの項目は、いずれも写真一枚では判断できず、寸法を測るか、時間帯を変えて見るかしなければ分からないものを含む。当サイトは公園のデータベースとして100園を並べているが、そこに載る情報の多くは公開資料に由来する。自転車という主題は、公開資料からは最も見えにくい部分に属している。踏査を重ねることでしか埋められない空白があることを、ここで正直に記しておきたい。

確認項目記録踏査
図10出入口・駐輪・園路の幅・練習に使える面・掲示・前面道路。自転車の観点から確かめる項目は、公開資料からは読み取れないものが多い。

10. 結論と今後の課題

本稿は、都市公園と自転車の関係を自転車計画学の枠組みで整理し、三つの問いを立てた。走行空間、駐輪、そして園内利用である。それぞれについて得られた見通しを、順に確認しておく。

10.1 三つの問いへの答え

第一の問い——公園へ向かう道の側で、どのような整備の形が用意されてきたのか。答えは、自転車道・自転車専用通行帯・車道混在という三つの形態を、自動車の速度と交通量に応じて使い分けるという枠組みである。分離は目的ではなく手段であり、単路部で効く分離は交差点部では逆に働きうる。公園へ至る経路は、幹線では分離、生活道路では混在という組み合わせになるのが通例であり、要点は形態が切り替わる地点で経路が途切れないことにある。

第二の問い——公園に着いた自転車をどこに置くのか。答えは、台数をそろえることよりも位置を選ぶことが重要であり、位置の条件は、目的地に近いこと、通行を塞がないこと、見通しを遮らないこと、倒れても人に当たらない余地があることの四つである。公園の駐輪需要は季節と時間帯で大きく振れるため、ピークに合わせて設備を用意する発想より、あふれた自転車の行き先を設計する発想のほうが実際的である。そして、駐輪の秩序は掲示ではなく配置によって作られる部分が大きい。

第三の問い——園内で自転車に乗ることの可否を、誰が、どのような理屈で決めるのか。答えは、決めるのは公園を設置し管理する主体であり、理屈は空間の条件から導かれる、というものである。歩行者と自転車を面的に分離するには幅が要り、街区公園の標準的な規模ではその幅が取れない。したがって小規模公園の選択肢は共存か排除に絞られ、共存を選ぶには速度を落とす形と見通しの確保が前提になる。規則は空間の条件を追認するものであって、その逆ではない。

走行空間駐輪練習整理
図11走行空間は道路管理者、駐輪と園内利用は公園管理者の領分にある。三つの層はつながっているが、決める主体は分かれている。

10.2 練習の場という残された問題

三つの問いのうち、最も解きにくいのは三つ目に含まれる練習の場の問題である。子どもが自転車を覚える過程は、平衡・推進・発進停止・進路制御・交通判断という段階を踏む。公園が担えるのは第四段階までであり、最後の段階は実際の道路でしか学べない。にもかかわらず、第一から第四段階の場所を確保することが年々難しくなっているという構造的な事情がある。庭や私道が減り、学校のグラウンドは平日使えず、河川敷や広い駐車場は子どもだけで行ける距離にない。

この需要に対して、公園が一律に扉を閉じれば、需要は別の場所へ移る。移った先が公園より条件のよい場所とは限らない。かといって、面積も見通しも足りない公園で共存を認めれば、最も避ける力の弱い利用者に負担が寄る。この二律背反に一般解はない。あるのは、公園ごとの空間の条件を確かめ、市全体としてどこで受け止めるかを選ぶ、という手続きだけである。市内に一つでも二つでも、練習に使える条件を備えた場所が明示されているなら、他の公園で扉を閉じることの意味も変わってくる。

10.3 本稿の限界

本稿には明確な限界がある。第一に、現地調査に基づいていない。磐田市の公園について本稿が用いたのは、市のオープンデータと施設ガイドの記載のみであり、園内の自転車の扱いや駐輪の実態は、これらの資料からは読み取れなかった。第二に、事故の統計を扱っていない。これは意図的な選択であるが、その結果として、どの型の状況がどの程度の重みを持つかについては何も述べていない。第三に、利用者の実際の行動——誰が、いつ、どのように自転車で公園へ来ているのか——についての観察を欠いている。

第四に、自転車以外の車輪、すなわちキックボード、スケートボード、ローラースケート、そして近年区分が設けられた特定小型原動機付自転車について、本稿はほとんど触れていない。園内の掲示に「自転車」とだけ書いたとき、それが何を指すのかという問いは、今後さらに重要になるだろう。第五に、電動アシスト自転車の普及が、幼児同乗の距離と重量の条件を変えつつあるという論点も、本稿では扱えなかった。

10.4 今後の課題

今後の課題を三つ挙げる。第一に、踏査による検証である。第9節に挙げた項目——出入口の数と向き、車止めの有効幅、駐輪の実態、園路の幅と線形、練習に使えそうな面、掲示の内容、前面道路の性格——を、園ごとに記録していく作業が要る。100園すべてについて同じ様式で記録できれば、市全体としてどこで何を受け止めるかという判断の材料になる。

第二に、情報の記述の課題である。公園のオープンデータは、トイレ・砂場・遊具といった項目を持つが、駐輪や自転車の扱いに関する項目は含まれていない。利用者にとって「自転車で行けるか、どこに置けるか」は基本的な情報であり、記述の枠組みに加える価値のある項目だと考えられる。当サイトが100園を横断して並べていることの意味は、こうした欠けている項目を可視化できる点にもある。

第三に、他の領域との接続である。自転車という主題は、道路の側では交通工学と、空間の寸法では人間工学と、身体の発達ではスポーツ科学と、危険をどこまで許容するかという判断では倫理学と接している。公園を一つの学問領域から論じることには限界があり、本稿が示せたのは、自転車という乗り物の側から見たときに何が見えるか、という一つの断面にすぎない。当サイトが分野ごとに論考を並べているのは、こうした断面を重ねることで、公園という場の厚みに近づこうとするからである。

最後に、本稿の立場をもう一度確認しておく。園内での自転車の利用については、各公園の規則と管理者の判断に従う必要がある。本稿は、規則の背後にある空間の条件と計画の考え方を整理したものであって、特定の利用の仕方をすすめるものではない。安全に関わる個々の判断は、道路管理者・公園管理者・警察・医療機関など、権限と情報を持つ側に委ねられる。

参考文献

  1. 道路交通法(昭和35年法律第105号)・道路交通法施行規則
  2. 道路構造令(昭和45年政令第320号)
  3. 自転車の安全利用の促進及び自転車等の駐車対策の総合的推進に関する法律(昭和55年法律第87号)
  4. 自転車活用推進法(平成28年法律第113号)および同法に基づく自転車活用推進計画
  5. 国土交通省・警察庁「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」(平成24年11月策定、平成28年7月改定)
  6. 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー法、平成18年法律第91号)・都市公園移動等円滑化基準(平成18年国土交通省令)
  7. 都市公園法(昭和31年法律第79号)・都市公園法施行令(国土交通省 都市公園のページ)
  8. 国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」(令和6年6月)
  9. CROW『Design Manual for Bicycle Traffic』(CROW、オランダ)
  10. ジェイン・ジェイコブズ(1961)『アメリカ大都市の死と生』(山形浩生訳、鹿島出版会、2010)
  11. ヤン・ゲール(1971)『建物のあいだのアクティビティ』(北原理雄訳、鹿島出版会、2011)
  12. 磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0・出典:磐田市)
  13. 磐田市 施設ガイド(公園)

本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。

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