計画・工学人間工学

遊具の寸法と子どもの身体——頭部挟み込み・落下高さ・手すりの高さはどう決まるか

富士ヶ丘サービス株式会社 大石浩之

学問領域:人間工学 公開・更新 2026-08-17 本文 約21,179字 読了目安 39分

要旨

本稿の目的は、公園の遊具に定められている寸法の基準——開口部の大きさ、落下高さの上限、階段の蹴上げと踏面、手すりの高さと太さ——が、なぜその値になるのかを、人間工学(人体寸法・身体比率・把持力・到達域を扱う学問)の観点から説明することである。遊具の基準は往々にして「決まりだから守る」ものとして受け取られるが、その多くは子どもの身体の計測値と、身体が構造物とどう関わるかの分析から導かれている。数値の背後にある考え方を理解することは、保護者が公園で遊具を見るときの目を養い、行政や地域が点検や更新の優先順位を考える手がかりにもなる。

方法は文献整理と概念分析である。人間工学の系譜(人体計測学からパーセンタイル設計まで)を整理したうえで、子どもの身体が「小さな大人」ではないこと——頭部が相対的に大きく、重心が高く、握力と判断力が発達途上であること——を、成長学の古典を参照して確認する。そのうえで、国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」と日本公園施設業協会の規準、および米国の公共遊び場安全ハンドブックを手がかりに、頭部・首・指の挟み込み、落下高さと衝撃吸収、階段と手すりという三つの論点について、寸法がどのような身体的根拠から定められているかを検討する。具体的な数値は公的資料に明記のあるものに限り、確信のないものは数値を挙げず「基準で定められている」と述べる。

検討の結果、遊具の寸法基準は「子どもの身体のうち最も大きい部分(頭)と最も小さい部分(胴・指)の関係」「身長ではなく重心の高さ」「大人ではなく子どもの手の大きさ」という三つの原則から読み解けることを示す。あわせて、基準を守れば事故がなくなるわけではないこと、過度の安全化が遊びの価値を損なう可能性があることにも触れ、寸法基準は「排除すべきハザード」を扱う道具であって「挑戦としてのリスク」を扱う道具ではないと位置づける。最後に、磐田市の都市公園100園のうち遊具のある64園について、幼児用遊具の有無や対象年齢表示など、今後の踏査で確かめるべき観点を示す。当サイトの現地踏査はこれからであり、個々の遊具の寸法についての記述は含まない。

キーワード人間工学人体寸法頭部挟み込み落下高さ手すり遊具安全指針磐田市

1. はじめに——問題の所在

公園の複合遊具の柵を見ると、縦の桟がある間隔で並んでいる。滑り台の踊り場には手すりがあり、その高さはどれもだいたい同じに見える。ジャングルジムの格子の一辺は、大人の目には少し広すぎるようにも、少し狭すぎるようにも見える。これらの寸法は、製造する会社が好みで決めているのではない。国土交通省の「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」と、それを受けて一般社団法人日本公園施設業協会が定める規準に沿って設計されており、その多くは子どもの身体を測った数値から導かれている。本稿が扱うのは、この「なぜその寸法なのか」という問いである。

人間工学とは、人の身体の寸法・力・動き・感覚・認知の特性を測り、道具や環境をそれに合わせて設計する学問である。椅子の座面の高さ、自動車のペダルの位置、駅の手すりの太さは、いずれも人間工学の成果である。遊具もまた道具であり環境である。ただし遊具の利用者は成人ではなく、身長も体重も比率も年ごとに変わる子どもであり、しかも遊具は「使い方が一つに決まっていない」道具である。この二つの事情が、遊具の人間工学を家具や自動車の人間工学より難しくしている。

1.1 本稿の問い

本稿の問いは三つに分けられる。第一に、柵や格子などの開口部の大きさはどう決まるか。子どもの頭が抜けなくなる「挟み込み」を避けるために、ある範囲の寸法が禁じられているが、その範囲はどのような身体の測定から導かれるのか。第二に、落下高さの上限と設置面の衝撃吸収の考え方はどう結びついているか。第三に、階段の蹴上げ(一段の高さ)と踏面(足を載せる奥行き)、手すりの高さと太さは、大人の建築の基準と何が違い、なぜ違うのか。三つの問いはいずれも「子どもの身体のどの部分を、どんな状況で守るための寸法か」という共通の形をもつ。

これらは一見すると技術者だけの関心事に思えるかもしれない。しかし保護者が公園で遊具を見るとき、「この柵は幼児が頭を入れそうか」「この高さから落ちたら下は何か」「この手すりは我が子の手で握れる太さか」という判断は、実は基準の背後にある人間工学的な問いと同じである。基準の考え方を知ることは、公園を安心して使うための目を養うことにつながる。また、行政や地域の関係者にとっては、点検や更新の優先順位を考えるときの共通言語になる。

1.2 方法と資料

方法は文献整理と概念分析である。人間工学の古典と人体計測の標準(JIS Z 8500 と国際規格 ISO 7250)を手がかりに、子どもの身体の特徴を成長学の古典から確認し、そのうえで国の指針と業界規準、および米国消費者製品安全委員会(CPSC)の公共遊び場安全ハンドブックを読み解く。具体的な寸法は、これらの公的資料に明記があると確信できるものだけを挙げ、確信のないものは数値を書かず「基準で範囲が定められている」と述べるにとどめる。遊具の寸法は改訂で変わりうるものであり、本稿は考え方の理解を目的とするからである。

寸法子どもの身体遊具なぜその値か
図1遊具の寸法は子どもの身体の計測から導かれる。本稿は開口部・落下高さ・階段と手すりの三つについて「なぜその値か」を問う。

本稿の構成は次のとおりである。第2節で人間工学と人体計測の系譜、および遊具安全基準の成り立ちを整理する。第3節で子どもの身体が「小さな大人」ではないことを、頭身比・重心・握力・認知の四つの面から確認する。第4節で開口部と挟み込み、第5節で落下高さと衝撃吸収、第6節で階段・はしご・手すりを検討する。第7節で年齢区分と対象年齢表示の意味を述べ、想定される反論に応答する。第8節で磐田市の公園への示唆を示し、第9節で結論と今後の課題を述べる。なお当サイトの現地踏査はこれからであり、本稿は磐田市の個々の遊具の寸法について何も述べない。述べるのは、踏査のときに何を見るべきか、である。

註:本稿でいう「指針」は国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」(初版2002年、以後改訂を重ね現行は改訂第3版)を、「規準」は日本公園施設業協会「遊具の安全に関する規準」を指す。医学的な判断や個別の遊具の安全性の判断は、医療機関および公園の管理者に委ねる。

2. 先行研究と概念の整理

2.1 人間工学の系譜——身体を測って道具を合わせる

「人間工学(ergonomics)」という語は、ギリシャ語の「仕事(ergon)」と「法則(nomos)」を合わせた造語で、19世紀半ばにポーランドの学者ヴォイチェフ・ヤストシェンボフスキが用いたのが最初とされ、学問として組織されたのは第二次世界大戦後、1949年に英国で研究会が結成されてからである。戦時中の航空機の計器や操縦席の設計で「機械に人を合わせる」のではなく「人に機械を合わせる」必要が痛感されたことが背景にある。米国では「ヒューマンファクターズ」と呼ばれ、アルフォンス・チャパニスらが体系化した。日本では小原二郎が椅子や住まいの寸法を通じて人間工学を広く紹介した(『人間工学からの発想』1982)。

人間工学の土台の一つが人体計測学(アンスロポメトリ)である。人の身長・座高・肩幅・手の長さ・握りの径などを多数の人について測り、分布として把握する。工業デザイナーのヘンリー・ドレイファスは『Designing for People』(1955)と『The Measure of Man』(1960)で、成人男女の人体寸法を図表にまとめて設計者に提供した。今日では国際規格 ISO 7250 とそれに対応する日本産業規格 JIS Z 8500 が、設計に用いる基本的な人体測定項目(身長、眼高、肩幅、手長、握り径など)を定義しており、産業技術総合研究所などが日本人の人体寸法データベースを整備している。ただし、これらのデータの多くは成人を対象としており、子どもの寸法データは相対的に乏しい。この点は遊具の人間工学にとって重要な前提である。

日本で子どもの遊び環境そのものを対象とした研究としては、建築家の仙田満による『こどもの遊び環境』(1984)がある。仙田は子どもの遊びを、遊具の形だけでなく、遊び場を巡る回遊の構造や、めまい・スリルを生む空間の構成として捉え、遊具を「子どもの身体が動き回る環境」として設計する視点を示した。本稿の人間工学的な視点は、これに対して個々の遊具の部位と身体の寸法との関係に焦点を絞るものであり、両者は補い合う。仙田が示した「子どもが遊具をどう使うか」の観察は、次節以降で述べる「設計者の想定外の使い方(柵に立つ、格子に頭を入れる)」を寸法の前提に組み込むべき理由を、遊び環境の側から裏づけている。

2.2 パーセンタイル設計——「平均」で設計しない

人間工学の設計原則で最も重要なのは「平均的な人に合わせて設計しない」ということである。サンダースとマコーミックの教科書(『Human Factors in Engineering and Design』)が整理するように、設計には三つの型がある。第一は極端値に合わせる設計で、たとえば戸口の高さは背の高い人(上位のパーセンタイル)に、手の届く高さは背の低い人(下位のパーセンタイル)に合わせる。第二は調節可能にする設計で、椅子の高さや自動車の座席がこれにあたる。第三が平均に合わせる設計で、これは前二者が使えないときの妥協にすぎない。

遊具はこの原則が最も鋭く問われる対象である。遊具の利用者は幼児から学齢児まで幅広く、しかも同じ遊具を「調節」して使うことはできない。したがって遊具の寸法は極端値に合わせて決めざるをえない。柵の隙間は「最も小さな子どもの胴が通っても、その子の頭は通らない」ことがないように、手すりの高さは「最も背の高い子どもの重心より高い」ように、握りの太さは「最も小さな手でも握れる」ように、というふうに、守るべき身体の側の極端値をそのつど選んで決めるのである。本稿が第4節以降で見る寸法は、いずれもこの「どちらの端に合わせるか」の判断の結果として読める。

人間工学の古典人体計測寸法極端値で設計
図2人間工学は身体を測って道具を合わせる学問である。遊具の寸法は「平均」ではなく、守るべき身体の極端値に合わせて決められる。

2.3 遊具安全基準の成り立ち

遊具の安全基準は、こうした人間工学の知見を遊具に適用したものである。米国では消費者製品安全委員会(CPSC)が1981年に公共遊び場の安全ハンドブックを公表し、その後改訂を重ねてきた。このハンドブックは頭部挟み込みの試験具(プローブ)や使用域(ユースゾーン)の考え方を広く普及させた文書として知られる。欧州では欧州規格 EN 1176 が遊具の、EN 1177 が衝撃吸収舗装の試験を定めている。日本では2002年に国土交通省が「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」を策定し、同時期に日本公園施設業協会が寸法を含む具体的な規準を整備した。指針はその後改訂を重ね、現行は改訂第3版(2024年)である。

日本の指針の特徴は、寸法そのものより「考え方」を国が示し、寸法の細目は業界規準に委ねる構造にあることである。指針は、遊びに伴う「リスク」(子どもが予測でき、挑戦する価値のある危険)と「ハザード」(子どもが予測できず、遊びの価値と関係のない危険)を区別し、遊具の設計と管理はハザードを除去しリスクを適切に管理するものであるとする。また、ハザードを、遊具の構造や配置に由来する「物的ハザード」と、不適切な服装や使い方に由来する「人的ハザード」に分ける。本稿が扱う寸法基準は、このうち物的ハザードを設計段階で除去する道具である。指針はさらに、遊具の対象年齢を幼児(3歳から6歳)と児童(6歳から12歳)に分け、対象年齢の表示を求めている。この年齢区分が寸法の前提となる身体の範囲を定めていることは、第7節であらためて論じる。

出来事本稿との関係
1857ヤストシェンボフスキが「エルゴノミクス」の語を用いる人間工学の語源
1903シュトラッツ『子どもの身体』——年齢別の身体比率の図頭身比の古典(第3節)
1930スキャモンの発育曲線——神経型・一般型ほか頭部が早く育つ根拠(第3節)
1949英国で人間工学の研究会が結成学問としての人間工学の成立
1955/1960ドレイファス『Designing for People』『The Measure of Man』人体寸法図表の普及
1981米国 CPSC が公共遊び場安全ハンドブックを公表頭部プローブ・使用域の考え方(第4・5節)
2002国土交通省が遊具安全確保指針を策定・業界規準の整備リスクとハザード・対象年齢(第7節)
2024指針が改訂第3版に現行の指針

3. 子どもの身体は「小さな大人」ではない——頭身比・重心・握力・認知

遊具の寸法を理解する出発点は、子どもの身体が成人を縮小したものではない、という事実である。もし子どもが「小さな大人」なら、遊具は成人用の建築基準を身長の比で縮めれば足りる。しかしそうはいかない。子どもの身体は比率が違い、重さの配分が違い、が違い、判断が違う。本節ではこの四つを順に確認する。以下に挙げる数値は、成長学の古典と母子健康手帳の発育曲線に見られるおおよその値であり、個人差が大きいことを断っておく。

3.1 頭身比——頭が相対的に大きい

ドイツの医師 C・H・シュトラッツは『子どもの身体(Der Körper des Kindes)』(1903)で、年齢ごとの身体比率を並べた図を示した。この図は今日でも美術解剖学や発達の教科書に引かれる。それによれば、新生児は身長が頭の長さのおよそ4倍(4頭身)、幼児期にはおよそ5〜6頭身、学齢期にはおよそ6〜7頭身、成人でおよそ7〜8頭身になる。つまり子どもは、身体全体に対して頭が大きく、手足が短い。R・E・スキャモンが1930年に示した発育曲線は、この理由を説明する。脳と頭蓋を含む「神経型」の組織は他の組織に先立って発達し、6歳前後には成人の大部分の大きさに達するとされる。一方、骨格や筋肉を含む「一般型」は乳幼児期と思春期の二度にわたって伸びる。頭は早く大人の大きさに近づき、身体はあとから追いつくのである。

この事実は、遊具の開口部の寸法にとって決定的である。頭が身体の他の部分に比べて大きいということは、胴が通る隙間に頭が通らない状況が起こりやすいということである。頭囲は出生時に30cm台であり、成人の50cm台半ばまで、生後数年で大部分の伸びを終える。これに対して肩幅や胸の厚みは、幼児期にはまだ小さい。したがって幼児が足から先に柵の隙間に入り込むと、胴は抜けても頭が引っかかる。これが第4節で述べる頭部挟み込みの身体的な根拠である。

時期頭身比のおおよその目安遊具の設計にとっての意味
新生児約4頭身頭が身体の4分の1を占める
幼児期(3〜6歳)約5〜6頭身胴は細いのに頭は大人に近い——挟み込みの危険が最も大きい
学齢期(6〜12歳)約6〜7頭身手足が伸び、到達域と落下高さの想定が変わる
成人約7〜8頭身建築基準法などの一般的な寸法基準の前提

3.2 重心——身長ではなく重心の高さで考える

頭が重いということは、身体の重心が相対的に高い位置にあるということでもある。成人の重心はおおよそ骨盤の高さにあるとされるが、幼児では頭部の重さの割合が大きいため、身長に対する重心の位置がそれより上にあると考えられている。重心が高いと、柵に寄りかかったり身を乗り出したりしたときに、柵の上端が重心より低ければ身体は柵を支点にして回転し、頭から外へ落ちる。したがって手すりや柵の高さは「子どもの身長の何割」ではなく「想定される子どもの重心より確実に高いか」で決めなければならない。第6節で述べる手すりの高さは、この考え方の応用である。

3.3 握力と手の大きさ——ぶら下がれる力と握れる太さ

第三に力の問題がある。子どもの握力は成人に比べて小さく、体重に対する割合で見ても、自分の体重を長時間手だけで支える力は幼児にはまだ十分でないとされる。したがって、成人なら手で握って持ちこたえられる場面でも、幼児は落ちる。この事実は、うんていやのぼり棒などの「ぶら下がる遊具」の対象年齢を児童に置く根拠であり、また落下を前提とした設置面の設計が幼児用遊具でも必要な理由でもある。もう一つは手の大きさである。手すりの径は、握ったときに指が回り込んで「引っかかる」ことができる太さでなければならない。成人の建築物では成人の手に合わせて径が決まっているが、幼児の手は小さいので、同じ径では握りきれず、上から押さえることしかできない。基準が遊具の握り部分の径を成人用の手すりより細い範囲に定めているのは、このためである。

3.4 認知——危険を予測する力は発達の途上にある

第四に判断の問題がある。人間工学は身体だけでなく認知の特性も扱う。幼児は「この隙間に頭を入れたら抜けなくなる」「この高さから落ちたら痛い」という予測を、経験によって少しずつ身につけている途中である。指針がリスクとハザードを区別するとき、ハザードとは「子どもが予測できない危険」であった。予測できるかどうかは年齢に依存するから、同じ構造でも幼児にはハザード、児童にはリスクということが起こる。寸法基準が年齢群ごとに分かれ、幼児用の遊具では特に厳しく物的ハザードを除くのは、認知の発達段階が違うからである。

4頭身5〜6頭身6〜7頭身比率が変わる
図3子どもは成人の縮小ではない。頭が相対的に大きく、重心が高く、握力と危険予測が発達途上である。この四つが遊具の寸法の前提になる。

以上をまとめれば、遊具の人間工学は「身長」という一つの物差しでは足りず、頭の大きさ・重心の高さ・手の大きさと力・危険を予測する力という複数の物差しを、年齢群ごとに使い分ける必要がある。次節から見る寸法基準は、この四つの物差しのどれを、どの年齢の子どもについて、どちらの端(最大か最小か)に合わせて用いたかを読み解くことで理解できる。

4. 開口部と挟み込み——頭・首・指はどこで引っかかるか

遊具の安全基準で最も人間工学らしい部分が、開口部の寸法である。開口部とは、柵の桟と桟の間、はしごの段と段の間、ジャングルジムの格子、ネットの網目、踏板の隙間、板と支柱の間など、子どもの身体の一部が入りうるあらゆる隙間を指す。基準はこれらの隙間について「入ってはいけない寸法の範囲」を定めている。重要なのは、基準が禁じているのが「大きい隙間」でも「小さい隙間」でもなく、ある特定の中間の範囲だということである。この一見奇妙な定め方こそ、第3節で見た頭身比の帰結である。

4.1 頭部挟み込み——胴は通るが頭は通らない範囲

頭部挟み込みとは、子どもが柵などの隙間に足から先に身体を入れ、胴は通ったのに頭が抜けなくなる状況をいう。頭が引っかかると身体の重さが首にかかり、自力で抜け出せなくなる。これを避けるには、隙間を「胴が通らないほど小さく」するか、「頭も通るほど大きく」するかのどちらかしかない。危険なのはその中間、すなわち胴は通るが頭は通らない寸法の範囲である。米国 CPSC のハンドブックはこの範囲を 3.5インチから9インチ(約9cmから23cm)とし、この範囲に入る開口部を作らないよう求めている。下限は幼児の胴の厚みに、上限は幼児の頭の大きさに対応する。日本の業界規準や欧州規格 EN 1176 も、試験具の寸法に細かな違いはあるものの、これと整合する範囲を用いている。

この範囲を確かめる方法として、基準は二つの試験具(プローブ)を用いる。一つは幼児の胴を模した小さな試験具、もう一つは幼児の頭を模した大きな試験具である。ある開口部に小さな試験具が通るなら、その開口部には大きな試験具も通らなければならない——これが判定の規則である。小さい方が通って大きい方が通らない開口部が、頭部挟み込みの危険をもつ開口部である。この規則は、第2節で述べたパーセンタイル設計の典型例といえる。胴の試験具は「最も小さな胴」(下位のパーセンタイル)に、頭の試験具は「最も大きな頭」(上位のパーセンタイル)に合わせて作られており、その両極端の組み合わせで判定するのである。

なお、頭から先に入る場合は問題が逆になる。頭が通れば胴も通るから、通常は抜けられる。ただし、開口部が完全に囲まれておらず、上が開いた V 字形や、下向きにすぼまる形状の場合は別の危険が生じる。首や頭が下向きにすぼまる部分に滑り込むと、身体の重さで締め付けられ抜けなくなる。基準はこのため、V 字形の開口部の角度や、すぼまり部分の形状についても制限を設けている。頭部挟み込みは「隙間の幅」だけでなく「隙間の形」の問題でもある。

格子・柵禁じられる範囲頭が抜けない幼児の頭身
図4危険なのは「胴は通るが頭は通らない」中間の寸法。米国の基準では約9〜23cmの隙間を作らないよう定め、日本の規準も整合する範囲を用いる。

4.2 首の挟み込み——ひも・突起・すぼまり

首の挟み込み(絞扼)は、頭部挟み込みとは別の機序で起こる。代表的なのは、衣服のフードのひもやマフラー、水筒のひも、ヘルメットのあごひもが、滑り台の上部や柵の突起、ボルトの頭に引っかかり、滑り降りる身体の重さで首が締まる状況である。この危険は遊具の側の寸法だけでは防げない。基準は遊具の側について、ひもが引っかかる突起や隙間を作らないこと(突起の形状や、ボルトの端部の処理などを定めている)を求め、他方で衣服の側については、日本産業規格 JIS L 4129 が子ども用衣料のひもについて要求事項を定め、消費者庁が公園で遊ぶときの服装について注意を促している。指針の言葉でいえば、遊具の突起は物的ハザード、ひも付きの服装は人的ハザードであり、両方をなくして初めて危険が下がる。

4.3 指の挟み込み——小さな隙間の問題

頭部挟み込みが「中間の範囲」を禁じるのに対し、指の挟み込みは「小さな隙間」の問題である。幼児の指が入り、関節が曲がった状態で抜けなくなる幅の穴や隙間、あるいは可動部(ブランコの吊り金具、シーソーの支点、回転遊具の軸受け)で指が押しつぶされる隙間が対象になる。基準は指について、幼児の指の太さに基づいて「入って抜けなくなる幅の範囲」を定め、可動部については隙間そのものをなくすか、指が入らないよう覆うことを求めている。ここでも「幼児の指」という下位パーセンタイルの寸法が判断の基礎になっている点は頭部の場合と同じである。

4.4 開口部は動く部分と柔らかい部分にもある

開口部というと固定された柵や格子を思い浮かべがちだが、基準は動く部分と柔らかい部分にも同じ考え方を適用する。吊り橋の踏板と踏板の間、鎖でつながれた登り具の鎖と鎖の間は、子どもが乗ることで間隔が変わる開口部である。ネットの網目は、体重がかかると伸びて広がる開口部である。基準はこれらについて、荷重をかけた状態で寸法を測ることを求めており、静止した状態で頭部挟み込みの範囲を避けていても、使っている最中に範囲に入るなら適合しない。人間工学の言葉でいえば、開口部の寸法は「構造物の寸法」ではなく「身体と構造物が関わっている瞬間の寸法」で評価される。踏査で遊具を見るときも、誰も乗っていない状態の隙間だけでなく、子どもが乗ったときにどう変わるかを想像する必要がある。

4.5 まとめ——三種の挟み込みの整理

以上を整理すると、挟み込みは身体のどの部分が、どんな形の隙間に、どの向きで入るかによって三種に分けられ、それぞれ異なる身体寸法から基準が導かれている。頭部は「胴と頭の差」、首は「すぼまりと引っかかり」、指は「関節が曲がって抜けない幅」である。保護者が公園で遊具を見るとき、隙間の幅を目で測って正確に判定することはできないし、その必要もない。しかし「柵の隙間に子どもが足から入ろうとしていないか」「ひもの付いた服で滑り台に登っていないか」という観察は、基準の考え方をそのまま日常の見守りに翻訳したものである。判定は管理者による点検に委ね、気づいた点は公園の管理課へ伝えるのが望ましい。

5. 落下高さと衝撃吸収——「落ちない設計」と「落ちても軽くする設計」

遊具からの落下は、遊具に関わる負傷の中で最も多い型の一つとされる。落下に対する人間工学的な考え方は二段構えである。第一に、落ちにくくする——手すり・柵・踊り場の設計。第二に、落ちても衝撃を小さくする——落下高さの上限と設置面(地面)の衝撃吸収。前者は第6節で扱い、本節では後者、すなわち「どの高さから、何の上に落ちるか」の考え方を検討する。

5.1 落下高さとは何か

基準でいう落下高さは、子どもが立ちうる、または身体を支えうる遊具の最も高い部分から、設置面までの高さである。ここで注意すべきは、「子どもが立ちうる」部分は設計者の想定する踊り場だけではない、ということである。子どもは柵の上に立ち、屋根に登り、支柱をよじ登る。基準はこのため、遊具の形状に応じて落下高さをどこから測るかを定めており、たとえば柵で囲まれた踊り場では踊り場の面から、登ることを前提としたネットや格子では手が届く高さや足を掛けうる部分を考慮して測るなど、遊具の種類ごとの測り方が定められている。人間工学的にいえば、これは「到達域」の問題である。子どもの手足が届く範囲は身長と腕の長さで決まり、届く範囲は登られうる範囲であるから、落下高さは設計上の高さではなく、子どもの到達域から逆算した高さで考えなければならない。

基準は年齢群ごとに落下高さの上限を定めている。幼児用の遊具の上限は児童用より低い。その根拠は第3節で述べた身体の違いにある。幼児は握力が小さく、危険を予測する力も途上にあるから、同じ高さでも落ちる確率が高く、頭が重いため頭から落ちやすい。落下高さの上限は「落ちたときの衝撃」だけでなく「落ちる確率」と「落ち方」を年齢群ごとに見込んで決められている。

5.2 衝撃吸収——頭を守るための設置面

落下したときの負傷の重さは、落下高さだけでなく、着地面がどれだけ衝撃を和らげるかによって大きく変わる。物理的にいえば、落下によって得た運動エネルギーを、着地面が変形することでどれだけの時間をかけて吸収するかの問題である。硬い面は短時間で止めるため身体に大きな加速度がかかり、柔らかい面は長い時間をかけて止めるため加速度が小さい。人間工学と安全工学は、この加速度と時間の関係を頭部への影響として評価する指標を用いる。国際的に用いられているのが HIC(頭部傷害基準)で、閾値として 1000 が、また最大加速度として 200G が、遊び場の設置面の試験(欧州規格 EN 1177 や米国規格 ASTM F1292)で使われている。設置面は「その落下高さから落ちてもこの閾値を超えない」ことを試験で確かめられ、その最大の高さが「臨界落下高さ」と呼ばれる。

ここから、遊具の落下高さと設置面の衝撃吸収は一対で決まることがわかる。落下高さの高い遊具ほど、衝撃吸収性能の高い設置面が必要になる。設置面には土、砂、芝生、木片、ゴムチップ舗装などがあり、それぞれ衝撃吸収の性能と、雨や踏み固めによる性能の変化の仕方が違う。土や砂は踏み固められると硬くなり、木片は流出し、ゴムチップは経年で硬化する。したがって設計時の性能が保たれているかは点検の対象になる。材料ごとの性質と劣化については、当サイトの材料工学の論考が扱っている。

登れる高さ衝撃吸収面落下高さ軽いけがに
図5落下高さは子どもが到達できる高さから測り、その高さに見合う衝撃吸収の設置面と一対で決められる。目的は頭部の衝撃を閾値以下に抑えることである。

5.3 安全領域——落ちる場所を空けておく

衝撃吸収の設置面は、遊具の真下だけにあっても足りない。子どもは遊具から真下に落ちるとは限らず、勢いがついていれば横に飛び、滑り台の降り口からは前方に投げ出される。基準は遊具の周囲に、他の遊具や構造物を置かず、衝撃吸収の設置面を確保する範囲を定めている。これを日本の規準では「安全領域」、米国のハンドブックでは「使用域(ユースゾーン)」と呼ぶ。米国のハンドブックは基本の使用域を遊具の周囲6フィート(約1.8m)としており、ブランコや滑り台など動きの方向が決まっている遊具にはそれぞれの延長を定めている。日本の規準も落下高さに応じた安全領域の幅を定めている。安全領域の幅は、子どもの身長と落下時の移動距離から導かれており、これもまた身体寸法に根ざした数値である。

安全領域の考え方は、遊具そのものの設計を超えて、公園の中に遊具をどう配置するかという問題につながる。狭い街区公園に複数の遊具を置くとき、それぞれの安全領域が重ならないようにするには、遊具の数や大きさに制約が生じる。したがって小さな公園には小さな遊具が、大きな公園には大きな遊具が置かれる傾向は、単なる予算の問題ではなく、安全領域という寸法の要請の帰結でもある。第8節で磐田市の公園について述べるとき、面積の小さな街区公園と大型の複合遊具をもつ近隣公園・地区公園を分けて考えるのはこのためである。

5.4 動く遊具——ブランコの座面と運動の範囲

落下と安全領域の考え方が最も複雑になるのは、ブランコ・シーソー・回転遊具のように遊具自体が動く場合である。ブランコでは、座面の高さが「幼児が自分で座れる高さ」と「振れているときに地面と接触しない高さ」の間に置かれ、座面の材質は、振れた座面が他の子どもに当たったときの衝撃を小さくするため、硬い板より柔らかい材料が推奨される。座面と座面の間隔、座面と支柱の間隔は、隣り合って揺れる身体がぶつからない範囲として定められ、前後の安全領域は振れの最大の高さから導かれる。幼児用には、身体を囲って支えるバケット型の座面が用いられるが、これは第7節で述べる「幼児用の寸法でも足りない身体に、寸法に代わる支え」を座面の形で与えるものといえる。回転遊具では、回転する部分と固定部分の間の隙間が、指と足の挟み込みの範囲を避けて定められる。動く遊具の寸法は、静止した寸法に加えて「動きの範囲」と「動いているものと身体がどこで出会うか」を考慮した寸法であり、遊具の人間工学のなかでも最も動的な部分である。

註:落下高さの上限や安全領域の具体的な幅は、日本の規準に定めがあるが、改訂で変わりうるため本稿では数値を挙げない。個々の遊具の落下高さと設置面が適合しているかの判定は、管理者による定期点検の対象である。

6. 階段・はしご・手すり——大人の建築基準と何が違うか

遊具に登るための階段やはしご、踊り場を囲む柵と手すりは、大人の建物にもある部位である。建築基準法とその施行令は、住宅の階段の蹴上げ(一段の高さ)を 23cm 以下、踏面(足を載せる奥行き)を 15cm 以上と定め、屋上広場や2階以上のバルコニーの周囲には高さ 1.1m 以上の手すり壁や柵を求めている(施行令第23条・第126条)。これらは成人の脚の長さや重心の高さから導かれた寸法である。遊具の基準はこれとは別に定められており、その違いを見ることで、子どもの身体に合わせるとは何を変えることかがわかる。

6.1 蹴上げと踏面——脚の長さと足の大きさ

階段の蹴上げは、一段を上がるときに脚を持ち上げる高さであり、利用者の脚の長さに比例して快適な値が決まる。第3節で見たように、幼児は頭が大きく脚が短いから、身長の比以上に蹴上げは低くなければならない。踏面は足を載せる奥行きであり、足の長さより短ければつま先しか載らず、後ろに滑る。遊具の基準は、幼児用と児童用で階段の蹴上げと踏面の範囲を分けて定めており、幼児用ではより低い蹴上げが求められている。加えて、階段には段の間の隙間という遊具特有の問題がある。段と段の間に空いた隙間は開口部であり、第4節の頭部挟み込みの範囲に入ってはならない。建築の階段では蹴込み板のない階段も珍しくないが、遊具ではこの隙間の寸法が制限されるか、蹴込み板でふさがれる。

はしごは階段より傾斜が急で、手と足の両方を使って登る。ここでは段の間隔が、足を掛けて登るときの脚の長さと、手で握って引き上げるときの腕の長さの両方に関わる。段の間隔が広すぎれば幼児は登れず、狭すぎれば足が段の間に入って抜けなくなる。基準は段の間隔を年齢群ごとに定め、同時に段の間隔が頭部挟み込みの範囲にならないよう求めている。人間工学的にいえば、はしごの段間隔は「登れる」(能力の下限)と「挟まらない」(頭部の上限)という二つの制約の間に置かれた寸法である。

6.2 手すり・柵の高さ——重心より高く、足がかりを作らない

踊り場を囲む柵の高さは、第3節で述べた重心の考え方で決まる。柵の上端が子どもの重心より高ければ、身を乗り出しても身体は柵の内側にとどまる。逆に上端が重心より低ければ、柵を支点にして身体が回転し、頭から外へ落ちる。したがって柵の高さは、その遊具の対象年齢のうち最も背の高い子どもの重心より高くなければならない。基準は年齢群ごとに柵の高さを定め、また踊り場の高さが一定以上になると、単なる手すりではなく、登られにくく身体が通り抜けない「防護柵」を求めている。米国のハンドブックも、幼児向けと学齢児向けで、手すりが必要になる踊り場の高さと防護柵が必要になる踊り場の高さを分けて定めている。

柵にはもう一つの人間工学的な条件がある。足がかりを作らないことである。柵の横桟は、子どもにとってははしごの段と同じであり、横桟があれば子どもは柵を登り、柵の上に立つ。柵の上に立てば、落下高さは踊り場の面ではなく柵の上端から測ることになり、設計の前提が崩れる。基準は柵の桟を縦にすること、または横桟を子どもが足を掛けにくい形にすることを求めている。縦桟の間隔はもちろん、第4節の頭部挟み込みの範囲を避けて定められる。柵の縦桟の間隔が「幼児の頭が入らないほど狭い」のは、このためである。

はしごの段握れる太さ手すり蹴上げ・踏面
図6階段・はしご・手すりの寸法は、脚の長さ・重心の高さ・手の大きさという子どもの身体の物差しから、成人用の建築基準とは別に定められている。

6.3 手すりの太さと高さ——握れる径・届く高さ

手すりの太さは、握力の節で述べたように「指が回り込んで握れる」径でなければならない。成人用の建築の手すりは成人の手に合わせた径であり、幼児の手には太すぎて、握るというより上から押さえる形になる。押さえるだけでは体重を支えられない。遊具の基準は握り部分の径を成人用より細い範囲に定めており、上限は幼児の手の大きさに、下限は握ったときの安定と強度に対応する。手すりの高さもまた、成人用より低くなければ幼児には届かない。ただし低すぎれば児童には低すぎて役に立たないので、幼児と児童の両方が使う遊具では、高さの異なる二段の手すりを設けるという「二つの極端値に同時に合わせる」設計が用いられる。

6.4 滑り台——側壁の高さと降り口の高さ

滑り台は、登る部分(階段・はしご)、待つ部分(上部の踊り場)、滑る部分(滑走面)、降りる部分(降り口)から成り、それぞれに寸法の考え方がある。滑走面の両側の側壁は、滑る身体が横にはみ出さないための柵であり、その高さは座って滑る子どもの重心が側壁より内側にとどまる高さで定められる。幅の広い滑り台では、複数の子どもが並んで滑る想定になるため、側壁の高さと幅の関係が変わる。降り口の高さは、滑り終えた子どもが立ち上がれる程度に低く、しかし地面との段差で足を取られない程度に地面から離れた値であり、降り口の先には前方へ滑り出す距離を見込んだ安全領域が要る。滑走面の勾配と長さは速度を決め、速度は降り口での身体の扱いやすさに影響する。ローラー滑り台のように長い滑り台では、途中で速度が変わり、また滑走面の継ぎ目が指の挟み込みの観点で問題になる。滑り台は一つの遊具のなかに、本節までに述べた蹴上げ・柵の高さ・重心・安全領域・指の挟み込みのほとんどの論点が集まっている遊具である。

以上のように、階段・はしご・手すりの寸法は、建築基準の値を身長比で縮小したものではなく、脚の長さ、足の大きさ、重心の高さ、手の大きさ、握力という別々の物差しを、対象年齢群の上限と下限に当てはめて一つずつ導いたものである。保護者が公園で見るべきは、数値そのものより、「柵に横桟がなく足を掛けられないか」「手すりが子どもの手で握れる太さか」「踊り場の柵は子どもの胸より高いか」といった、寸法の背後にある機能である。基準への適合の判定は管理者の点検に委ねられる。

7. 年齢区分と対象年齢表示——寸法の前提と、寸法では守れないもの

ここまでの検討で繰り返し現れたのは、寸法が「対象年齢群」を前提として定められている、という事実である。開口部の範囲は幼児の胴と頭に、落下高さの上限は年齢群ごとの握力と判断力に、柵の高さは年齢群の中で最も背の高い子どもの重心に、手すりの径は年齢群の中で最も小さな手に合わせられている。したがって、遊具の寸法基準は「その遊具が誰のためのものか」が決まって初めて意味をもつ。本節では、指針が定める年齢区分と対象年齢表示の意味を確認したうえで、寸法基準に対して予想される三つの反論に応答する。

7.1 幼児(3〜6歳)と児童(6〜12歳)——なぜ二つに分けるのか

指針は遊具の対象年齢を幼児(3歳から6歳)と児童(6歳から12歳)に分け、遊具に対象年齢を表示することを求めている。二つに分ける根拠は、第3節で見た身体の変化が6歳前後で一つの区切りを迎えることにある。頭部の発達がほぼ完了し、脚と腕が伸び始め、握力と危険予測が実用の水準に近づくのがこの時期である。二つの年齢群を一つの寸法で満たすことは原理的にできない。幼児の頭が入らないほど狭い格子は、児童には物足りず、児童が登れる高さは幼児には高すぎる。したがって遊具は年齢群ごとに設計され、その設計がどちらの群を想定しているかを利用者に伝えるために、対象年齢の表示がある。

指針はまた、3歳未満の子どもについては、幼児用の遊具であっても保護者が付き添い、必要に応じて身体を支えることを前提としている。3歳未満の身体は幼児用の寸法の前提からも外れており、寸法だけでは守れないからである。対象年齢表示は「この年齢の子どもだけが使ってよい」という排除の印ではなく、「この遊具の寸法はこの年齢の身体を前提にしている。前提から外れる子どもには、寸法に代わる守り(保護者の付き添い)が要る」という設計の前提の開示として読むべきである。3歳未満児向けの遊具を別に設けている公園があるのは、幼児用の寸法でも足りない身体に合わせた、さらに別の寸法の遊具が必要だという判断による。

実務上、対象年齢の表示は日本公園施設業協会が定める年齢表示のシールとして遊具に貼られていることが多く、幼児(3〜6歳)と児童(6〜12歳)を絵柄と数字で示し、保護者の付き添いを促す文言を添えたものが用いられている。表示は遊具の入口や踊り場など保護者の目に入りやすい位置に付けることが望ましいとされる。人間工学の観点からいえば、対象年齢表示は「寸法の前提」を利用者に渡す唯一の経路であり、表示が薄れたり剥がれたりすれば、寸法の前提は利用者に伝わらなくなる。表示の状態は、遊具の構造の点検と同じく、点検の対象として扱われるべきものである。

7.2 反論への応答

反論1——寸法基準は遊びを貧しくするのではないか。挑戦のない遊具は子どもを引きつけず、子どもは基準の想定外の使い方をする。この批判は正当である。エレン・B・H・サンドセターらの「リスキープレイ」の研究群は、高いところに登る、速く動く、道具を使うといった危険を含む遊びが子どもの発達に価値をもつことを論じており、遊び場を無菌化することの弊害を指摘してきた。しかし本稿が見てきた寸法基準は、リスクではなくハザードを扱う道具である。頭が抜けなくなる隙間、ひもが引っかかる突起、指がつぶれる可動部は、遊びの価値と何の関係もない危険であり、子どもがそれを予測して挑戦することもできない。指針がリスクとハザードを区別したのは、まさにハザードを除くことで、リスクのある遊びを許容できるようにするためであった。寸法基準は挑戦を奪う道具ではなく、挑戦を成り立たせる下地である。

反論2——子どもの身体は多様であり、パーセンタイルで設計しても外れる子どもがいるのではないか。これも正しい。パーセンタイル設計は「ほとんどの子ども」を守るが、分布の外側にいる子ども——年齢に比べて大柄あるいは小柄な子ども、身体に障害のある子ども——を完全には守らない。ここで人間工学は二つの答えを用意している。一つは、第2節の設計の三型のうち「調節可能」に近づける設計、すなわち複数の高さの手すりや、複数の難度の登り口を並べる設計である。もう一つは、身体の多様性を初めから前提とする「インクルーシブ」な遊具の設計であり、車いすのまま入れる複合遊具や、身体を支える背もたれ付きのブランコなどがこれにあたる。磐田市にもインクルーシブエリアをもつ公園があることは第8節で触れる。

3-6対象年齢表示付き添い多様な身体前提を開示
図7対象年齢表示は「寸法の前提となる身体」の開示である。前提から外れる子どもには付き添いや調節可能な設計、インクルーシブな設計が補う。

反論3——基準に適合した遊具でも事故は起こるのだから、寸法にこだわっても意味がないのではないか。基準への適合は事故をなくすことを保証しない。指針が人的ハザード(服装・使い方・付き添いの有無)を物的ハザードと並べて挙げているのは、寸法で守れる範囲に限りがあるからである。しかし「なくならない」ことと「意味がない」ことは違う。寸法基準が除くのは、事故の中でも重い型——頭部挟み込み、首の絞扼、高所からの硬い面への落下——であり、これらは一度起これば取り返しがつきにくい。頻度の高い軽いけが(すり傷・打撲)は寸法では防げないし、防ぐべきでもないかもしれない。寸法基準は「重い事故を設計で除き、軽いけがはリスクとして受け入れる」という線引きの道具として理解するのが適切である。負傷の型と頻度については、当サイトの疫学の論考が扱っている。

以上の三つの反論への応答をまとめれば、寸法基準は万能ではないが、その限界は基準の欠陥ではなく、基準が扱う範囲の限定から来ている。範囲の外側——挑戦としてのリスク、分布の外側の身体、人的ハザード——は、それぞれ遊びの設計、インクルーシブ設計、保護者の見守りと管理者の点検が受け持つ。寸法基準を理解することは、これら他の手段が何を受け持つべきかを明確にすることでもある。

8. 磐田市の公園への示唆——寸法の目で見る遊具のある64園

本節では、ここまでの人間工学的な整理を磐田市の公園に当てはめ、今後の踏査で何を見るべきかを示す。使う事実は、磐田市オープンデータ「都市公園一覧」と市の施設ガイドに記載のあるものに限る。当サイト ATAWI PARK は磐田市の公園100園(オープンデータ94行と施設ガイドのみに掲載の6園)を収録しているが、現地踏査はこれからであり、以下に述べるのは施設の名称から読み取れる範囲と、踏査の観点の提案である。個々の遊具の寸法や基準への適合については何も述べない。

8.1 遊具のある公園の分布と、小さな公園の安全領域

オープンデータ94行のうち「遊具有」は64園、「砂場有」は43園である。種別で見ると磐田市の都市公園は街区公園が51園と半数を占め、国の目安で 0.25ha(2,500㎡)・誘致距離 250m の、住宅地に最も近い小さな公園が遊具の主な受け皿になっている。第5節で述べたように、安全領域は落下高さに応じて遊具の周囲に確保しなければならず、面積の小さな公園に置ける遊具の数と大きさには寸法上の制約がある。たとえば見付地区の只来下公園は面積 458㎡ の街区公園で、施設ガイドにはブランコ、滑り台、ジャングルジム、シーソーの記載がある。この面積にこれらの遊具を置くには、それぞれの安全領域が重ならない配置が求められるはずであり、踏査ではまず「遊具と遊具、遊具と柵・園路の間隔」を見ることになる。同様に面積が 1,000㎡ に満たない街区公園(めがねばし公園 690㎡、久保公園 556㎡、西貝塚公園 796㎡ など)は、遊具の配置と安全領域の関係を確かめる代表例になりうる。

8.2 幼児用の遊具——「対象年齢の前提」が読み取れる園

第7節で述べたように、寸法基準は対象年齢群を前提とする。施設ガイドの記載から、幼児を想定した遊具があると読み取れる園がある。「幼児用滑り台」の記載がある園は、見付地区の水堀公園(近隣公園)、中泉地区の上野公園と中泉グリーンパーク、御厨地区の二子塚公園と兎山公園、豊田地区の豊田高見丘北公園・磐田ららシティ公園・豊田東原梅ノ木公園、竜洋地区の竜洋豊岡公園などであり、豊田加茂公園では複合遊具の中に幼児用滑り台とトンネルがあると記されている。見付地区の今之浦公園(近隣公園・13,675㎡)には「3歳未満児遊具」の記載があり、これは第7節で述べた「幼児用の寸法でも足りない身体に合わせた別の遊具」の例と考えられる。御厨地区の安久路公園(地区公園・32,001㎡)には「幼児用遊具」に加え、「複合遊具(インクルーシブエリアあり)」「ブランコ(インクルーシブアイテムあり)」の記載があり、第7節の反論2への応答で述べた、身体の多様性を前提とする設計が磐田市にも導入されていることを示している。

踏査ではこれらの園で、対象年齢の表示があるか、幼児用と児童用の遊具が離して置かれているか(幼児が児童用の遊具に入り込みにくい配置か)、幼児用遊具の周囲の設置面が何であるかを見ることになる。逆に、施設ガイドに幼児用の記載がない街区公園でも、幼児は来る。そこで対象年齢の表示がどう付いているかは、保護者にとって最も実用的な情報になる。当サイトの読みもの「対象年齢表示」は、この点の見方を扱っている。

遊具のある64園踏査の観点点検は管理者気づきは管理課へ
図8磐田市の遊具のある64園を、安全領域・対象年齢表示・開口部・設置面・手すりの観点で踏査する。適合の判定は管理者の点検に委ね、気づきは市の都市整備課へ伝える。

8.3 登る遊具・ぶら下がる遊具——開口部と落下高さの観点

第4節の開口部と第5節の落下高さの観点が最もよく現れるのは、登る遊具とぶら下がる遊具である。施設ガイドにジャングルジムの記載がある園は、見付地区の一番町公園・只来下公園・富士見公園、中泉地区の中央公園、御厨地区の南御厨西公園・南御厨東公園・兎山公園、竜洋地区の竜洋十束公園などであり、中泉地区の国府台西公園には「飛行機型ジャングルジム」とある。ジャングルジムは格子そのものが開口部であり、格子の一辺の寸法と落下高さが基準の焦点になる。雲梯(うんてい)の記載がある園は一番町公園、つつじ公園(複合遊具の一部)、豊田原新田公園、竜洋袖浦公園(複合遊具の一部)、獅子ヶ鼻公園などで、第3節で述べた握力の観点から児童向けの遊具である。ターザンロープの記載がある兎山公園・豊田原新田公園・獅子ヶ鼻公園、ネットクライムやザイルクライムの記載がある園(つつじ公園、向荒子公園、豊田赤池高見公園、豊田森下水神公園、竜洋袖浦公園、竜洋十束公園、浜部農村公園など)では、ネットの網目が開口部として扱われる。

滑り台では、竜洋地区の竜洋川袋公園の「ジャンボ滑り台」と築山、竜洋十束公園の複合遊具の「大波ワイドスライダー」「ウェーブスライダー」、さわやか広場・兎山公園・豊田天竜川わんぱく広場・豊田原新田公園・豊田ラブリバー公園の「ローラー滑り台」が、落下高さと降り口の前方の安全領域、および滑り台上部での首の挟み込み(ひもの引っかかり)の観点で見るべき遊具である。木製アスレチック遊具の記載がある豊田原新田公園・豊田熊野記念公園・浜部農村公園・獅子ヶ鼻公園(「丸太くぐり、壁のぼり等」)は、木材特有の劣化と合わせて開口部と足がかりの観点が重要になる。いずれも踏査で確かめるべきことであり、現時点で当サイトが述べられるのは「見るべき観点」までである。

8.4 保護者・行政・地域への示唆

保護者への示唆は、数値を覚えることではなく、寸法の背後にある機能を見ることである。柵の隙間に子どもが足から入ろうとしていないか、ひも付きの服で滑り台に登っていないか、踊り場の柵は子どもの胸より高いか、手すりは子どもの手で握れる太さか、遊具の周囲に他の構造物が迫っていないか——これらは第4〜6節の内容をそのまま日常の観察に翻訳したものである。行政への示唆は、遊具のある64園について対象年齢表示と設置面の状態を継続して確認し、更新の際には安全領域の制約から遊具の数より配置を優先することである。地域への示唆は、気づいたことを公園の管理課(磐田市都市整備課、電話 0538-37-4806)へ伝えることであり、当サイトも踏査で得た観察を市に伝える媒介になりうる。基準への適合の判定は、日常点検と定期点検を行う管理者の役割である。

9. 結論と今後の課題

本稿は、遊具の安全基準にある寸法——開口部、落下高さ、階段と手すり——が、なぜその値になるのかを人間工学の観点から検討した。結論は三点にまとめられる。第一に、寸法基準は子どもの身体の計測から導かれており、恣意的な数値ではない。開口部の禁止範囲は幼児の胴と頭の差から、落下高さの上限は年齢群ごとの握力・判断力と設置面の衝撃吸収から、柵の高さは重心の高さから、手すりの径は手の大きさから、それぞれ導かれる。第二に、寸法は「平均的な子ども」ではなく、守るべき身体の極端値に合わせて決められている。胴は最も小さい子どもに、頭は最も大きい子どもに、重心は最も背の高い子どもに、手は最も小さい子どもに合わせる、というように、論点ごとにどちらの端に合わせるかが選ばれている。第三に、寸法基準が扱うのは、子どもが予測できず遊びの価値と関係のないハザードであって、挑戦としてのリスクではない。寸法基準はリスクのある遊びを許容するための下地である。

9.1 本稿の限界

本稿の限界も明らかにしておく。第一に、本稿は文献と公的資料の整理であり、磐田市の個々の遊具を測っていない。当サイトの現地踏査はこれからであり、第8節で示したのは踏査の観点であって、結果ではない。第二に、具体的な数値は、公的資料に明記があると確信できるものに限って挙げた。日本の業界規準には落下高さ・安全領域・階段・手すりの詳細な数値があるが、改訂で変わりうるため本稿では引かなかった。数値を必要とする読者は、国土交通省の指針と日本公園施設業協会の規準の現行版に当たられたい。第三に、子どもの人体寸法データは成人に比べて乏しく、本稿が引いた頭身比などはおおよその目安である。日本の子どもの人体寸法を年齢別に整備することは、遊具の人間工学にとって基礎的な課題として残っている。

9.2 今後の課題

今後の課題は三つある。第一に、踏査による確認である。第8節で挙げた観点——安全領域、対象年齢表示、開口部、設置面、手すり——を、遊具のある64園について記録し、公園ごとのページに反映させることである。ただし当サイトは基準への適合を判定する立場にはなく、記録するのは「表示があるか」「設置面が何か」といった観察可能な事実にとどめ、判定は管理者に委ねる。第二に、人間工学の隣接分野との接続である。材料の劣化は材料工学の論考が、負傷の型と頻度は疫学の論考が、リスクと自由の関係は倫理学の論考が、身体の運動発達はスポーツ科学の論考が、遊具の形の歴史はデザイン史の論考が扱っており、寸法の問題はそれらと合わせて初めて全体像になる。

第三に、インクルーシブな設計の人間工学である。第7節で述べたように、パーセンタイル設計は分布の外側の身体を守りきれない。車いす利用者や身体を支える必要のある子どもを前提とした寸法の考え方は、成人の人間工学でも発展途上であり、遊具ではなおさらである。安久路公園のインクルーシブエリアは、磐田市でこの課題を考えるための出発点になる。第四に、寸法の「経年変化」である。本稿は設計時の寸法を論じたが、鎖は伸び、ネットはたるみ、設置面は硬くなり、木材はやせる。基準に適合していた寸法が使用のなかで範囲を外れることは、材料の劣化と人間工学の接点であり、点検の頻度と方法を考えるうえで両者を合わせて論じる必要がある。

三つの原則保護者の目踏査で記録挑戦の下地
図9遊具の寸法は身体の計測・極端値への適合・ハザードの除去という三つの原則で読める。基準は挑戦を奪うのでなく、挑戦を成り立たせる下地である。

最後に、本稿の実践的な含意を一言で述べておく。公園で遊具を前にした保護者にとって、寸法の数値は覚える必要のない知識である。しかし「この隙間は胴が通って頭が通らないか」「この高さから落ちたら下は何か」「この柵は子どもの重心より高いか」「この手すりは子どもの手で握れるか」という四つの問いは、基準を作った人々が問うた問いそのものであり、誰でもその場で立てることができる。基準は遠くの専門家の決まりごとではなく、保護者が日々公園でしている観察を、測って書き留めたものである。その連続性を示すことが、本稿の最も伝えたいことであった。

参考文献

  1. 国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」(令和6年6月)
  2. 一般社団法人日本公園施設業協会「遊具の安全に関する規準 JPFA-SP-S」(2014年版・以後改訂)
  3. 消費者庁「子どもの事故防止」ポータル
  4. 米国消費者製品安全委員会(U.S. CPSC)『Public Playground Safety Handbook』(Publication 325、2010年改訂版)
  5. ヘンリー・ドレイファス(1955)『Designing for People』(Simon and Schuster)/同(1960)『The Measure of Man』(Whitney Library of Design)
  6. マーク・S・サンダース、アーネスト・J・マコーミック(1993)『Human Factors in Engineering and Design(第7版)』(McGraw-Hill)
  7. 小原二郎(1982)『人間工学からの発想——クルマから住まいまで』(講談社ブルーバックス)
  8. 日本産業規格 JIS Z 8500:2002「人間工学——設計のための基本人体測定項目」(ISO 7250 に対応)
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  10. R・E・スキャモン(1930)「The measurement of the body in childhood」(Harris ほか編『The Measurement of Man』University of Minnesota Press)
  11. 仙田満(1984)『こどもの遊び環境』(筑摩書房)
  12. エレン・B・H・サンドセター(2009)「Characteristics of Risky Play」Journal of Adventure Education and Outdoor Learning, 9(1)
  13. 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第23条・第126条
  14. 磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0・出典:磐田市)
  15. 磐田市 施設ガイド(公園)

本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。

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