計画・工学GIS(地理情報システム)

地図の上で公園を測る——GISによる圏域分析とサービスエリアの考え方

富士ヶ丘サービス株式会社 大石浩之

学問領域:GIS(地理情報システム) 公開・更新 2026-08-17 本文 約20,831字 読了目安 38分

要旨

「この住宅地は街区公園の誘致距離250メートルの圏内にある」という一文は、地図で確かめられた事実のように響く。しかしその数は、測られたというより、いくつもの選択の積み重ねとして作られている。園のどこを起点にするか、距離を直線で測るか道路に沿って測るか、地球の丸みをどの平面に写すか、住民をどの単位で数えるか。選択が変われば数は変わる。地理情報システム(GIS)はこの選択を目に見えなくする力を持つ。ボタンを押せば多角形が描かれ、充足率という百分率が小数点以下まで出力されるからである。

本稿は、公園の圏域分析を支えるGISの手法とその前提を整理する。方法は文献整理と概念分析である。まず地理情報がベクタとラスタという二つの形式に置き換えられること、測地系と投影法を決めなければ距離も面積も定まらないこと、別々の資料を結ぶジオコーディングと空間結合が誤差を生むことを確認する。そのうえで、圏域分析でよく用いられる四つの手法——バッファ、ボロノイ分割、ネットワーク解析、カーネル密度推定——について、それぞれが何を前提とし、どの問いに答えられ、どの問いには答えられないのかを検討する。とくに直線距離のバッファが道路や河川を無視して圏域を過大に描くこと、その一方で「円の外は確実に圏外である」という上界としての用法には論理的な強みがあることを示す。

最後に、磐田市の公園100園を対象として分析を設計するとどうなるかを、三段階の手順として提示する。当サイトはまだ現地踏査を始めておらず、解析も実行していない。したがって本稿には結果の数値は一つも登場しない。書けるのは「こう設計する」「この選択が結果をこの向きに動かす」という方法論だけである。結論として、公園の圏域を示す数値は手続きの関数であり、数値を公表する前に手続きと限界を公表すべきこと、そして踏査で記録すべき地理情報は出入口・園路・段差・日陰といった、点の座標では表せない情報であることを述べる。

キーワードGISバッファボロノイ分割ネットワーク解析カーネル密度推定座標系磐田市

1. はじめに——問題の所在

公園について語られる数のうち、もっとも強い説得力を持つのは距離である。「この住宅地は街区公園の誘致距離250メートルの圏内に入っている」という一文は、地図の上で確かめられた客観的な事実のように響く。しかしその数は、測られたというより、いくつもの選択の積み重ねとして作られている。園のどこを起点にするか、距離を直線で測るか道路に沿って測るか、地球の丸みをどの平面に写すか、住民をどの単位で数えるか。選択のどれか一つが変われば、同じ公園と同じ住宅地について、別の数が出てくる。

地理情報システム(GIS=Geographic Information System。位置の情報と属性の情報を結びつけて記録・分析・表示する仕組み)は、この選択を目に見えなくする力を持つ。操作すれば圏域の多角形が描かれ、充足率という百分率が小数点以下まで出力される。出力された地図は美しく、数値は精密に見える。だがその裏側には、道路網データの整備状況、バッファの計算方式、人口の割り当て方といった前提が畳み込まれている。前提を書き残さない分析は、他人が同じ手順をたどれないという意味で、学術的な主張になりえない。

1.1 本稿の問い

本稿の問いは三つである。第一に、GISで公園を扱うとき、現実の公園はどのようなデータ形式に置き換えられ、その置き換えによって何が落ちるのか。第二に、圏域分析でよく使われる四つの手法——バッファ、ボロノイ分割、ネットワーク解析、カーネル密度推定——は、それぞれ何を前提とし、どの問いに答えられ、どの問いには答えられないのか。第三に、磐田市の公園を対象として分析を設計するとすれば、どの手順を、どの限界の明示とともに組むべきか。いずれも、結果の解釈ではなく、結果を生む手続きに関する問いである。

1.2 方法と本稿の限界

方法は文献整理と概念分析である。GISの教科書的な概念と、国や自治体が公開している空間データの仕様を突き合わせ、手法ごとの前提を言語化する。ここで先に断っておきたいのは、当サイトはまだ解析を実行していないということである。したがって本稿には、充足率が何割であったという結果は一つも出てこない。書けるのは「こう設計する」「この選択が結果をこの向きに動かす」という方法論だけである。数値の不在は本稿の弱点であると同時に、手続きを先に公開してから数値を出すという態度の表明でもある。

地図距離前提
図1距離の数値は測定の産物である。どの点から、どの経路で、どの平面の上で測るのかという前提が変われば、同じ公園でも数は変わる。

1.3 構成と、隣接する論考との分担

第2節でGISの基礎概念を、第3節で座標系と投影法を、第4節でデータの結合を扱う。第5節から第8節が本論で、四つの手法を順に検討する。第9節で手続きの記録と誤差の扱いを論じ、第10節で磐田市の公園100園を対象とした分析設計を示し、第11節で結論をまとめる。前半三節は準備に見えるかもしれないが、圏域分析の誤りの多くは解析手法ではなくデータの形式と座標系の段階で生じるため、独立した論点として扱う。

本シリーズには、公園の配置を別の角度から扱う論考がある。都市地理学の稿は誘致距離と供給の偏りという規範の問題を、時間地理学の稿は移動できる時間という制約を、統計学の稿は指標そのものの読み方を、情報学の稿はオープンデータの限界を扱う。本稿はそれらと重ならないよう、地図データの構造と空間解析の技法、そしてその前提に議論を絞る。GISは道具であり、道具の癖を知ることは、他の稿が扱う議論の土台を点検することにあたる。

付け加えれば、GISはもはや専門機関の設備ではない。無償で使える解析ソフトウェアが普及し、国や自治体が空間データを公開するようになったことで、地方都市の公園を市民や学生が自分で分析できる条件は整いつつある。条件が整ったからこそ、手続きの誤りもまた広まりやすい。本稿が解析の華やかさではなく前提の点検に紙幅を割く理由は、そこにある。

註:本稿でいう「圏域」は、ある公園から一定の距離または時間で到達できる範囲を指す。行政上の区域や管理区分とは別の概念である。

2. GISは公園を何に置き換えるか——レイヤ・ベクタ・ラスタ

GISの基本的な考え方は単純である。世界の事物を「どこにあるか」という位置の情報と、「それが何か」という属性の情報の組として記録する。公園でいえば、緯度と経度が位置であり、名称・種別・面積・トイレの有無が属性である。1960年代にカナダで土地利用の集計のために構築された地理情報システムが、コンピュータで空間を扱う最初期の大規模な試みとして知られており、その設計思想——地図を主題ごとの層に分け、層を重ねて集計する——は現在まで受け継がれている。

2.1 レイヤという発想

レイヤとは、主題ごとに分けられた透明なシートのことである。公園のレイヤ、道路のレイヤ、河川のレイヤ、人口のレイヤを別々に持ち、必要に応じて重ねる。紙の地図の時代にも、透明シートに主題を描き分けて重ね、適地を探す手法があった。造園家マクハーグが『Design with Nature』(1969)で示した重ね図はその代表で、傾斜・水系・植生・土地利用を層に分け、重ねた濃淡から開発に適した場所を読み取った。GISはこの操作を計算機に移し、目視ではなく数値の演算として実行できるようにしたものだと理解してよい。

レイヤに分けるという発想には利点と代償がある。利点は、主題ごとにデータの出所と更新時期を分けて管理できること。代償は、現実には一体である事物が層に切り分けられることである。公園と、その公園に面した歩道と、そこに立つ樹木は、子どもにとっては一続きの場所だが、データの上では別々の層に置かれ、別々の精度と別々の更新時期を持つ。

2.2 ベクタとラスタ——二つの表現形式

空間データの表現形式は大きく二つに分かれる。ベクタは、点・線・面という幾何図形を座標の並びで記述する。公園を一点で表す、道路を線で表す、園の輪郭を多角形で表すのがこれにあたる。ラスタは、空間を等間隔の格子(セル)に区切り、各セルに値を入れる。日照量の分布、標高、密度の面など、切れ目なく変化する量を扱うのに向く。どちらが優れているという話ではなく、問いの形に応じて選ぶものである。

観点ベクタラスタ
表現点・線・面を座標の列で記述等間隔の格子のセルに値を格納
得意な問いどこに何があるか、境界はどこか、つながっているかどこがどれくらいか、量がどう分布するか
公園での例園の代表点、園の輪郭、出入口、道路網日陰や暑さの分布、公園密度の面、人口の面
細かさの指標測位の精度と縮尺セルの一辺の長さ
面積の求め方多角形の座標から直接計算該当セル数にセル面積を掛けた近似
弱点連続量の表現が苦手境界が階段状になり、細い物体が消える

2.3 トポロジ——つながっているという情報

座標が近いことと、つながっていることは別である。二本の道路の端点がわずかにずれて記録されていれば、地図では接して見えても、計算上は接続していない。歩いて行ける経路を求める解析では、この位相(トポロジ)の情報が決定的に効く。端点の一致、立体交差での非交差、面の穴と隣接関係——これらが整っていないデータでネットワーク解析を行うと、到達できるはずの場所が到達不能と判定される。空間データの品質は、座標の正確さだけでなく、接続の正しさによっても測られる。

2.4 公園は点か、面か

本稿で繰り返し立ち返る分岐点がここにある。公園を一点で持てばデータは軽く、集計も容易で、地図上の記号としても扱いやすい。しかし点は面積も形も出入口も持たない。園を面で持てば、輪郭・面積・接する道路・入口の位置を扱えるが、輪郭のデータを作る手間がかかる。多くの自治体のオープンデータが公園を点で公開しているのは、この手間の差による。

点で代表させることの誤差は、園が大きいほど大きくなる。磐田市でもっとも広い竜洋海洋公園は221,722平方メートルで、これを同じ面積の円に置き換えれば半径はおよそ266メートルになる。街区公園の誘致距離250メートルとほぼ同じ長さが、一つの園の内側に収まっている計算である。園の中心から測るか、園の端から測るかで、圏域は数百メートル動きうる。小さな園ではこの差は無視できる。二之宮東第2緑地の17平方メートルであれば、点と面の違いは事実上ない。園の規模に応じて表現を変えるという設計判断が、最初に必要になる。

レイヤ格子点で代表
図2GISは公園を層に分け、点・線・面か格子のいずれかに置き換える。置き換えの段階で、形と出入口の情報はいったん失われる。

3. 座標系と投影法——距離を測る前に決めること

圏域分析の議論は、たいてい「何メートル」から始まる。しかし地球は丸く、地図は平らである。丸い面を平らな紙に写せば、長さ・面積・角度・方位のすべてを同時に保つことはできない。どれを保ち、どれを犠牲にするかを決めるのが投影法であり、どの地球モデルの上で位置を表すかを決めるのが測地系である。距離を測る前に、この二つを決めておかなければならない。決めていない場合でも、ソフトウェアは何らかの既定値で計算を進めてしまう。そこに誤差が生まれる。

3.1 測地系——同じ緯度経度が別の場所を指す

測地系とは、地球の形をどの回転楕円体で近似し、それをどこに固定するかという取り決めである。日本では長く独自の測地系が使われていたが、2002年の測量法改正により世界測地系へ移行し、その後の地殻変動を反映した測地成果が定められている。旧測地系と世界測地系では、同じ緯度経度の値が指す地点が地域によって数百メートルずれる。古い資料の座標をそのまま新しい地図に重ねると、公園が隣の街区に立つことになる。座標値には必ず「どの測地系の値か」を添えて保存する必要がある。

3.2 緯度経度は角度であって距離ではない

緯度経度は角度の単位であり、そのまま引き算しても距離にはならない。緯度1度はどこでもおよそ111キロメートルだが、経度1度の東西方向の長さは高緯度ほど短くなる。日本の平野部にあたる北緯35度付近では、経度1度の長さは緯度1度の8割ほどになる。緯度経度をそのまま平面座標のように扱って半径250メートルの円を描くと、東西と南北で半径の違う楕円ができる。GISの解析でしばしば起きる初歩的な誤りで、しかも出力された地図はもっともらしく見えるため気づかれにくい。

3.3 平面直角座標系——ゆがみを局所に閉じ込める

この問題を避けるために、日本には平面直角座標系が用意されている。測量法施行令は全国を19の座標系に区分し、各系の原点を定めている。静岡県は第8系に属する。各系は限られた範囲だけを扱うため、その範囲内では長さと面積のゆがみが小さく抑えられ、座標値はメートルで表される。つまり、二点間の距離は座標の差から直接に計算でき、多角形の面積も素直に求まる。市域程度の広がりを扱う公園分析では、計算はこの座標系で行うのが標準的な作法である。

座標面積ゆがみ
図3丸い地球を平らに写せば必ずゆがむ。距離と面積を計算する座標系と、画面に表示する座標系は、目的が違うので分けて考える。

3.4 表示用の地図と計算用の地図を分ける

ウェブ地図で広く使われている投影法は、角度を保つかわりに面積を大きく歪める。高緯度ほど拡大され、北緯35度付近では長さがおよそ1.2倍、面積がおよそ1.5倍に見積もられる。世界地図でグリーンランドが大陸のように見えるのと同じ現象が、市域の規模でも起きている。したがって、この投影法の座標のまま半径250メートルのバッファを描けば、実際より小さい円になる。表示のための座標系と、計算のための座標系を分け、どちらで何をしたかを記録するという作法が要る。

同じ理由から、既存のデータに記録された面積の値も、どの座標系でどう求められたかを確かめる必要がある。磐田市のオープンデータ「都市公園一覧」に載る面積は、台帳に記載された値であって、GISで多角形から計算し直した値とは一致するとは限らない。台帳の面積は区域の告示に基づく数値であり、法的な意味を持つ。一方でGISが計算する面積は、輪郭データの精度に依存する。両者が食い違ったとき、どちらを正とするかは分析目的による。面積の一覧を作るのであれば台帳の値を、園内の日陰の割合を求めるのであれば輪郭からの計算値を使う。

座標系の話は退屈に見えるが、公園の圏域分析では影響が直接に出る。誘致距離250メートルという基準が法令にある以上、その250メートルをどう測ったかは基準の適用そのものに関わる。ゆがんだ平面の上で測った250メートルは、法令が想定する250メートルではない。ここで手を抜くと、以降のどの手法を精密にしても、精密な誤りが積み上がるだけである。

註:座標系の識別には国際的な番号体系が用いられ、データにその番号を添えて保存するのが標準的な運用である。番号が付いていないデータを受け取った場合は、まず座標系の特定から始めることになる。

4. 別々の資料を結びつける——ジオコーディング・属性結合・空間結合

公園の分析に必要なデータは、一つの資料には揃っていない。園の一覧は市のオープンデータに、設備の記載は市の施設ガイドに、人口は統計に、道路は別の空間データにある。これらを結びつける作業が、解析の前段にして最大の手間である。結合の方法は大きく三つ——住所から座標を作るジオコーディング、共通の鍵で表を結ぶ属性結合、位置関係で結ぶ空間結合。それぞれ固有の誤差を持ち込む。

4.1 ジオコーディングと位置精度

ジオコーディングとは、住所や地名の文字列を座標に変換する処理である。変換の精度には段階がある。街区や地番まで特定できる場合、丁目の代表点しか得られない場合、大字の中心にまとめて落ちる場合。同じ一覧の中でこれらが混在していても、出力された点はどれも同じ大きさの丸として地図に表示されるため、見た目からは区別できない。したがって、点ごとに「どの水準で特定できたか」を属性として保存しておくことが、後の解釈を左右する。

誤りの原因になりやすいのは、同じ読みの地名、合併前の旧町名、枝番の表記ゆれである。市町村合併を経た地域では、旧町名を含む住所と現行の住所が混在しうる。ジオコーディングの結果を無検査で使わず、市域の外に落ちた点や、他の園と極端に近い点を機械的に洗い出す工程を挟むべきである。

4.2 属性結合——共通の鍵がないという問題

二つの表を結ぶには共通の鍵が要る。公園の場合、鍵になりそうなのは名称だが、名称は驚くほど不安定である。全角と半角、旧字と新字、「ケ」と「ヶ」、施設名に「公園」を含むか否か。行政の資料どうしでも表記が一致しない場合がある。名称で結合すると、結合できなかった行が静かに脱落し、集計から抜け落ちる。実務上の解は、分析側で安定した識別子を各園に振り、資料ごとの名称はその識別子にぶら下げる別名として持つことである。当サイトも、園ごとに固定の識別子を持たせて資料を突き合わせている。

結合の設計では、一対一で対応しないものをどう持つかも決めておく必要がある。一つの園には出入口が複数あり、写真も複数あり、参照した資料の行も複数ある。これらを園の表に列として詰め込むと、出入口が三つある園のために列を三つ用意するような設計になり、四つ目が現れた時点で破綻する。園の表とは別に、出入口の表・資料の表を持ち、識別子で結ぶのが素直である。空間データの場合、この設計判断はそのまま「園を点の層と、出入口の点の層と、輪郭の面の層に分ける」というレイヤ構成に対応する。

代表点出入口属性
図4座標が指す一点は、園の重心か、住所地番か、出入口か。どれを指しているかで、圏域の起点は数十メートル動く。

4.3 空間結合——点がどの面に入るか

空間結合は、位置関係を鍵にして属性を移す操作である。公園の点が9地区のどの区域に入るかを判定して地区名を付ける、小学校区の面と重ねて学区を付ける、地域メッシュと重ねてメッシュ番号を付ける。単純に見えるが、境界上の点の扱い、面の重なり、面が欠けている領域といった例外が必ず出る。とくに、園の輪郭が二つの区域にまたがる場合、点で代表させると片方の区域にしか計上されない。地区ごとの園数を数えるという最も基本的な集計にも、この判断が入り込んでいる。

4.4 代表点はどこを指しているのか

公園を一点で表すとき、その点が何を指すのかは自明ではない。候補は少なくとも三つある。第一に、輪郭の重心。第二に、台帳に記載された代表地番の位置。第三に、出入口。三つは一致しない。とくに重心には落とし穴があり、コの字型やL字型の園、あるいは細長い緑道では、重心が園の外に落ちることがある。緑道のように帯状の空間では、重心という概念自体がほとんど意味を持たない。

圏域分析の目的からいえば、正しい起点は出入口である。人は塀を越えて入るのではなく、門から入る。園の周囲が住宅の塀に囲まれ、出入口が一方の角にしかない園では、反対側の住宅から見た実際の距離は、重心までの距離よりずっと長い。逆に、四方に開いた園では、どの方向からも入れるぶん圏域は広がる。出入口の位置と数は、既存の資料にはまず記載がない情報であり、現地で確かめるほかない。第10節で述べるとおり、これは踏査で記録すべき筆頭の項目である。

結合の工程はどれも地味であり、報告書では一行で片付けられがちである。しかし、結合に失敗した数行、あるいは数十メートルずれた代表点は、その後のすべての解析に静かに伝わっていく。解析手法の高度さより、結合の記録の丁寧さのほうが結果の信頼性を決めるという逆説が、この分野にはある。

5. バッファ——円が黙って前提にしているもの

バッファとは、ある図形から一定距離以内の領域を作る操作である。点からは円、線からは帯、面からは輪郭を外側に押し出した領域ができる。都市公園法施行令が定める誘致距離——街区公園はおよそ250メートル、近隣公園はおよそ500メートル、地区公園はおよそ1キロメートル——を地図に表す方法として、最も広く使われているのが点からのバッファ、すなわち円である。手順が単純で、誰がやっても同じ結果になり、他都市との比較もしやすい。だからこそ、その前提を確認しておく価値がある。

5.1 円が置いている三つの前提

  • 等方性——どの方向にも同じように進めること。実際には、進める方向は道路の向きに縛られる。
  • 障壁の不在——河川・鉄道・幹線道路・水路・柵・急斜面がないこと。実際には、これらが圏域を切り裂く。
  • 起点の妥当性——円の中心が人の入る場所であること。実際には、中心は重心か地番であって、出入口ではない。

三つとも、市街地では成り立たない。直線距離と実際に歩く距離の比は必ず1以上になり、格子状に街路が通る地区では小さく、行き止まりの多い住宅地や、川と水路に区切られた地区では大きくなる。つまり円は、実際に歩いて到達できる範囲より広い領域を描く。円で計算した充足率は、原理的に過大評価である。過大評価の程度は地区ごとに異なるため、円で出した数値を地区間で比べると、街路の形が整っている地区ほど正しく、入り組んだ地区ほど甘く評価されるという偏りが生じる。

直線250m道路の迂回届かない
図5円は直線距離で描かれる。川や線路、行き止まりを迂回すれば実際の距離は伸びるため、円の内側でも歩いて届かない場所が残る。

5.2 円を足し合わせるときの誤り

円をいくつも描いたあとに起きやすい誤りが二つある。一つは重複の二重計上である。各円の面積を合計して市域面積で割ると、円が重なっている部分を二度数えることになり、充足率は容易に実態を超える。正しくは円の和集合を取り、その面積を使う。もう一つは分母の取り違えである。面積で割った値は「市域のどれだけが円に覆われたか」を示すにすぎない。円が河川敷や工業用地や山林を覆っても、そこに住む人はいない。届いた人の割合を知りたいのであれば、分母は人口でなければならない。

この二つを踏まえると、同じ100園から、面積カバー率と人口カバー率という二つの数字が出てくる。両者は通常一致せず、市街地に園が集中していれば人口カバー率のほうが高くなり、郊外に大きな園が多ければ面積カバー率のほうが高くなる。どちらを示すかで、同じ市の公園配置が充実しているようにも不足しているようにも見える。指標を出すときは、必ず分子と分母の定義を添えるべきである。

5.3 それでも円を使う理由——上界としてのバッファ

以上の批判があってなお、円には論理的に強い用法がある。二点間の直線距離は、道路をたどった距離を超えることがない。したがって、直線距離で250メートルの円の外側にある地点は、道路を歩けば必ず250メートル以上かかる。円は圏域の上界を与えるのである。ここから、次のような使い分けが導かれる。円の外に出た地区は、より精密な解析を待たずとも「圏外である」と確定してよい。逆に、円の内側にある地区は「圏内かもしれない」というにとどまり、ネットワーク解析による検証を要する。

この非対称性は実務的に有用である。道路網データの整備には費用と時間がかかるが、円は既存の点データだけで描ける。まず円で確実な圏外を洗い出し、優先度の高い地区に絞って詳細な解析を行う——という二段構えであれば、限られた人手でも根拠のある議論ができる。円を「粗いが安価な選別器」として位置づけ、そこから出る数値を充足率と呼ばないことが要点である。

なお、園を面で持っているなら、円ではなく面からのバッファを使える。輪郭から250メートル外側に押し出した領域は、園の形を反映するぶん現実に近い。竜洋海洋公園のように広い園では、点からの円と面からのバッファでは、圏域の面積が大きく変わる。園を面で持つ手間は、ここで報われる。

6. ボロノイ分割——「最寄りの公園」を面で描く

バッファが「一つの園から見た圏域」を描く手法だとすれば、ボロノイ分割は「複数の園が空間を分け合う様子」を描く手法である。平面上に点がいくつか置かれているとき、各地点をもっとも近い点に割り当てていくと、平面は点の数だけの領域に分割される。この分割をボロノイ図といい、数学者ボロノイによる定式化にちなむ。気象学では雨量計の代表面積を求める方法としてティーセン多角形の名で古くから使われてきた。応用の体系的な整理としては、大場らの研究書がよく参照される。

6.1 何がわかるか

ボロノイ分割の出力は、園ごとの「担当区域」である。ある区域に住む人にとって、最寄りの公園はその区域の中心にある一園ということになる。ここから読み取れることは三つある。第一に、担当区域が広い園は、周囲に他の園がないことを意味する。第二に、担当区域が極端に狭い園は、近くに競合する園があり、両者の役割分担を考える余地があることを示す。第三に、区域の境界線は「二つの園から等距離にある場所」であり、利用者の選択が分かれる帯として解釈できる。

実務的な利点は、圏域が隙間なく市域を覆うことである。バッファでは円の外側に「どの園の圏域でもない場所」が残るが、ボロノイ分割では必ずどこかの園に属する。清掃や点検の担当割り、地域団体による見守りの分担、あるいは緊急時の集合場所の割り当てといった、空間を漏れなく分けたい場面に向く。

6.2 前提の点検

  • 誰もが最寄りの園へ行く——実際には、遊具の種類・日陰・トイレ・友達の有無で、遠い園が選ばれる。
  • 園は互いに等質である——17平方メートルの緑地と5万平方メートルの総合公園を、同じ一点として扱ってしまう。
  • 距離は直線である——バッファと同じ問題を抱える。川の対岸の園が「最寄り」と判定されうる。
  • 対象範囲の外に園はない——市域の端では、隣接する市町の園が無視され、担当区域が不当に広く描かれる。
分け合う最寄り住まい
図6ボロノイ分割は空間を隙間なく園に割り当てる。担当区域の広さは、周囲に他の園がないことの目安として読める。

6.3 重みを付ける——園の違いを反映させる

園が等質だという前提は、重み付きボロノイ分割によって緩められる。面積や設備の充実度を重みとして与え、重い園ほど広い区域を持つように分割する方法である。重みの与え方には、距離から一定量を引く加法型と、距離を一定倍する乗法型があり、境界線の形も変わる。ただし注意すべきは、重みの決め方が分析者の価値判断だということである。面積を重みにすれば広い園が、遊具の数を重みにすれば遊具の多い園が、それぞれ有利になる。何を重みにしたかを明示しない重み付きボロノイ図は、根拠の見えない主張になる。

6.4 ネットワークボロノイと境界効果

距離を道路距離に置き換えたものがネットワークボロノイである。道路網上の各地点について最寄りの園を求めるため、川や線路による分断が正しく反映される。直線距離では対岸の園が最寄りになる地点も、道路距離では橋を渡る分だけ遠くなり、別の園に割り当てられる。分断の多い地形では、ボロノイ図の姿は直線距離版と大きく異なる。

もう一つ、境界効果への対処が要る。対象範囲を市域で切ると、市境沿いの園はその外側に競合相手がいないことになり、担当区域が市境の外へ広がるか、あるいは市境で不自然に切断される。どちらも実態を表さない。対策は単純で、市域より一回り広い範囲で公園データを集めてから分割し、結果を市域で切り取る。この「余白を取る」という工程は、バッファ・カーネル密度推定を含め、空間解析全般に共通する作法である。

ボロノイ分割は、供給の空白を見つける道具としては優秀だが、需要の量には一切触れていない点に留意したい。担当区域が広くても、そこが山林や工業用地であれば問題は小さい。担当区域が狭くても、集合住宅が密集していれば混雑する。区域の広さと、区域内の人口は別々に見る必要がある。

7. ネットワーク解析——道路グラフとサービスエリア

実際に歩いて届くかどうかを問うなら、街路を道としてモデル化するほかない。ネットワーク解析は、街路をノード(交差点や端点)とエッジ(区間)からなるグラフとして表し、各エッジに移動の費用を与えて、最小費用の経路や到達可能な範囲を求める手法である。最短経路を求める古典的な算法としてダイクストラの手続き(1959)が知られ、現在の経路探索の基礎になっている。バッファやボロノイ分割が幾何の問題であるのに対し、ここからはグラフの問題になる。

7.1 サービスエリアという出力

ある園の出入口を起点として、費用が一定値以下で到達できるエッジの集合を求めたものが到達範囲であり、これを面として表現したものがサービスエリアである。円が「半径250メートル」を意味するのに対し、サービスエリアは「道を歩いて250メートル」を意味する。両者を重ねると、円の内側でサービスエリアに入らない領域が現れる。そこが、地図の上では近いのに歩けば遠い場所——川の対岸、線路の向こう、行き止まりの奥——である。公園の配置を論じるうえで、この差こそが本質的な情報である。

計算の向きにも選択がある。園の側を起点として到達範囲を求めるやり方と、住居の側を起点として最寄りの園までの費用を求めるやり方である。前者は園ごとの圏域を描くのに向き、後者は住居ごとに「最寄りの園まで何メートル」という値を与えるのに向く。100園すべてについて前者を計算し、重ね合わせて和を取れば結果は近くなるが、計算量は園の数に比例して増える。目的が「圏内か圏外か」の判定であれば後者のほうが素直であり、園ごとの利用圏を比べたいのであれば前者を選ぶ。どちらを採ったかで、出力される地図の単位——園なのか、街区なのか——が変わる。

7.2 歩行ネットワークは自動車ネットワークではない

ここで最も起きやすい誤りは、車が通る道路の中心線データをそのまま歩行の解析に使うことである。歩行者は、車が通れない歩道橋・階段・遊歩道・公園内の園路・畦道を通れる。逆に、歩行者は中央分離帯を越えられず、横断歩道のない幹線道路を渡れず、自動車専用道路を歩けない。一方通行は歩行者には関係がない。したがって、自動車用のネットワークで計算した徒歩の到達範囲は、ある場所では過小に、別の場所では過大になる。歩行用のネットワークを別に用意するか、少なくとも通行可否の属性を歩行者向けに付け替える工程が要る。

歩く横断所要ベビーカー
図7歩いて届く範囲は、道路網の形と横断できる場所で決まる。誰の速度で、どんな段差を越えられる前提で計算したかを明示したい。

7.3 面にする方法で面積が変わる

見落とされがちな論点がある。ネットワーク解析が直接に返すのは線の集合であって、面ではない。線を面に変える方法はいくつもあり、選び方で面積が変わる。到達した線の端点を結んだ凸包を取れば、実際には到達できない内側の街区まで含んでしまい過大になる。到達した線の周囲に細い帯を付ける方法では、街区の奥の敷地が落ちて過小になる。線の集合の輪郭をなぞる形状を用いる方法もあるが、そこにも調整用の値がある。したがって「サービスエリアの面積」という数値は、面にする方法とその設定を書かなければ意味をなさない。この一点だけでも、手続きの記録が不可欠であることが分かる。

7.4 費用の設定——誰の速度で測るのか

エッジに与える費用を距離ではなく時間にすれば、坂道や信号待ちを織り込める。ただし、時間で測るには歩行速度を仮定しなければならない。健康な成人と、二歳児と手をつないだ大人と、ベビーカーを押す人と、杖を使う高齢者では、速度も、越えられる段差も、迂回の必要も違う。一つの速度で計算した到達範囲を「住民の徒歩圏」と呼ぶことには無理がある。設計としては、複数の速度で計算して幅で示すのが誠実である。なお、時間そのものの制約——いつなら行けるのかという問題——は本シリーズの時間地理学の稿が扱う主題であり、本稿では費用の設定という技術的側面に限って触れる。

7.5 データの入手と整備の粗密

歩行ネットワークの素材としては、国土地理院の基盤地図情報、国土交通省の国土数値情報、都市計画基礎調査の成果、そして市民が作る世界規模の地図データがある。最後のものは細街路や園路まで含む場合がある一方、整備の密度が地域によって大きく異なり、利用にはライセンス条件の確認が要る。どの素材を使うにせよ、市内で整備の粗密があれば、細街路がよく描かれている地区ほど到達範囲が広く出る。データの粗密が結果の地区差として現れる——これは分析の結論ではなく、データの性質である。両者を取り違えないために、使用したデータの版と整備状況を必ず記録する。

8. 密度と重ね合わせ——カーネル密度推定・ラスタ演算・人口の配分

ここまでの三手法は、個々の園を単位として圏域を描いてきた。これに対し、市全体で公園がどのあたりに厚く、どのあたりに薄いのかという傾向を見たい場面がある。点の分布を連続的な面に変換する手法がカーネル密度推定である。各点の上に小さな山(カーネル)を置き、それらを足し合わせて滑らかな面を作る。出力はラスタで、各セルの値は「その付近の密度」を表す。

8.1 バンド幅という選択

カーネル密度推定でもっとも重要な設定は、山の広がりを決めるバンド幅である。バンド幅を小さく取れば、個々の点の位置が突起として残り、地図は粒立って見える。大きく取れば、全体がなだらかになり、市街地全体が一つの高まりに見える。同じデータから、まったく違う印象の地図が作れてしまう。密度推定の統計的な扱いはシルバーマンの著作が古典としてよく参照され、バンド幅の選択に唯一の正解がないことは早くから知られている。

公園の分析では、バンド幅に意味を持たせる方法がある。誘致距離をバンド幅に採るのである。街区公園を対象に250メートル、近隣公園に500メートルを与えれば、出力は「その基準の尺度で見た公園の厚み」として解釈できる。恣意的に決めた滑らかさではなく、法令上の尺度に対応した滑らかさになる。いずれにせよ、複数のバンド幅で計算した図を並べて示すこと——感度分析——が、密度図を提示するときの最低限の作法である。

セルの大きさについても誤解がある。セルを細かくすれば地図はなめらかに見えるが、それは表示の細かさであって精度ではない。元の点データが丁目の代表点にまとめられているなら、10メートルのセルで描いた密度図は、持っていない情報を持っているかのように見せる図になる。セルの大きさは、入力データの位置精度より細かくしないという原則が要る。

8.2 重ね合わせ——複数の主題を足し合わせる

ラスタ同士は、セル単位で加減乗除ができる。公園密度の面、人口密度の面、高齢者比率の面、浸水想定の面を同じ格子に揃えれば、重ね合わせて総合的な評価図を作れる。マクハーグの重ね図の系譜にある操作で、複数の基準を重みを付けて足し合わせる評価法として定式化されている。ただし、重みの配分は分析者の価値判断であり、そこに客観性はない。重みを変えれば結論も変わる以上、重みの一覧と、重みを変えたときの結果の変化を併せて示さなければ、評価図は説得の道具に堕する。

8.3 人口をどこに置くか

圏域の議論を「面積」から「人」に移すには、人口を空間に配置しなければならない。しかし人口は点としては得られない。統計は町丁字などの小地域、あるいは地域メッシュという規則的な格子で集計される。地域メッシュは日本産業規格として体系が定められており、およそ1キロメートル四方の基準地域メッシュを二分の一、四分の一に細分した500メートル・250メートルの区画がよく使われる。行政区域の境界に依存しない格子であるため、市域をまたぐ比較や時系列の比較に向く。

問題は、集計単位より細かい配置が必要になったときである。ある区域の一部が圏域に入る場合、その区域の人口の何割を圏内に数えるか。もっとも単純なのは面積で按分する方法だが、これは「人が区域内に一様に住んでいる」という明らかに誤った仮定を置く。区域の半分が田畑や山林であれば、按分は圏内人口を過大にも過小にもする。より精密には、建物や土地利用のデータで住居のある場所に重みを寄せて配分する方法があり、これをダジメトリックな手法と呼ぶ。手間はかかるが、圏内人口という数値の意味は大きく変わる。

8.4 四つの手法の見取り図

手法出力主な前提向く問い
バッファ一定距離以内の面等方・障壁なし・起点が妥当確実な圏外を粗く選別する
ボロノイ分割園ごとの担当区域誰もが最寄りへ行く・園は等質供給の空白と担当の割り当て
ネットワーク解析歩いて到達できる範囲歩行可能な道路網が整備済み実際に歩いて届くかを検証する
カーネル密度推定密度の連続面(ラスタ)バンド幅の選択が目的に合う供給の厚薄の全体傾向を見る
密度人口配分面で見る
図8密度図と人口の重ね合わせは、供給の厚薄を面で示す。バンド幅と人口の配分方法が、図の印象を大きく左右する。

8.5 ベクタとラスタをつなぐ——区域ごとの集計

最後に、ベクタとラスタを行き来する操作に触れておく。圏域の多角形を使ってラスタを集計する処理——ある圏域の中の人口の合計、平均気温、緑の割合を求める——は、区域ごとの集計と呼ばれ、実務でもっともよく使う操作の一つである。バッファやサービスエリアで作った面を、人口ラスタや土地利用ラスタに重ねて数値を取り出す。この処理があるからこそ、圏域という幾何の話が、圏内人口という量の話に変わる。留意点は、セルが面の境界にまたがるときの扱いである。セルの中心が面に入っていれば数える方式と、面と重なる割合で按分する方式では、小さな圏域ほど結果が食い違う。街区公園の250メートル圏のように小さな面を扱うときは、この設定の違いが無視できなくなる。

9. 手続きを書き残す——再現可能性・不確実性・地図の修辞

ここまで各手法の前提を見てきた。まとめれば、圏域を示す数値は観測された事実ではなく、手続きの関数である。同じ100園のデータから、手続きの選び方によって、かなり違う数値を作ることができる。しかもどの手続きも誤りではない。だからこそ、数値だけを示して手続きを示さない報告は、検証も反論もできない。本節では、何を書き残すべきかを整理する。

9.1 「充足率」を左右する選択の一覧

選択の場面選択肢の例結果が動く向き
園の起点重心/台帳の代表地番/出入口出入口を使うと圏域は現実に近づき、多くは狭くなる
距離の測り方直線/道路距離/所要時間直線は圏域を広く見せる(上界になる)
対象とする園全100園/遊具のある園/トイレのある園条件を絞るほど圏域は狭くなる
人口の単位市全体/9地区/小地域/地域メッシュ細かいほど地区内の偏りが見える
人口の配分面積で按分/建物で重み付け按分は無人地に人を置いてしまう
対象範囲の縁市域で切る/市域外も含めて計算市域で切ると縁の評価が過小になる
集計の分母市域面積/居住人口面積は人のいない土地を数えてしまう

この表の各行について「どれを選んだか」を明記すれば、読み手は数値を自分で割り引いて読める。逆にいえば、明記のない充足率は、七つの未知数を含んだ数である。行政の計画書でも学生の論文でも、この一覧を付録として添えるだけで、議論の質は大きく変わる。

9.2 メタデータ——いつの、どこ由来の、どれだけ確かなデータか

空間データには、データ本体とは別に、その素性を記した情報を添えるという国際的な作法がある。国内でも地理情報標準として体系化されている。記録すべき項目は、出所と作成経緯、取得または更新の時点、位置の精度、属性の完全性、利用条件である。公園のデータでいえば、園の一覧がいつ時点のものか、座標がどの方法で得られたか、設備の有無がいつ確かめられたものかが、これにあたる。データが古ければ、どれほど精密に解析しても結論は古い。

記録手順検証
図9手続きを書き残すことは、他人が同じ結果を再現できるようにすることである。数値より先に、選んだ前提の一覧を公開したい。

9.3 手作業は再現できない

再現可能性という観点からは、解析の実行方法そのものが問題になる。画面上で対話的に操作し、途中の設定を記憶に頼って進めた解析は、半年後に本人が再現することさえ難しい。手順を記述したスクリプトとして残せば、入力データと合わせて配布でき、他者が同じ結果に到達できる。データにも解析手順にも版を付け、どの版のデータをどの版の手順で処理したかを記録する——ソフトウェア開発では当然の作法が、空間解析にはまだ十分に浸透していない。公園のデータは更新される。更新のたびに手作業をやり直す設計は、更新を止めてしまう。

9.4 不確実性の伝播と有効数字

入力の誤差は、出力に伝わる。代表点が数十メートルずれていれば、圏域もずれる。歩行速度の仮定が違えば、到達範囲は伸び縮みする。にもかかわらず、解析ソフトウェアの出力は小数点以下まで表示され、そのまま報告書に転記されがちである。数値の桁数は、入力の精度が支える範囲にとどめるべきである。可能であれば、代表点・速度・バンド幅を振って計算し、結果の幅として示す。「圏内人口はおよそこの範囲」という書き方は、単一の数値より情報量が多い。

9.5 地図の修辞——同じデータから違う主張が作れる

地図は中立な写しではなく、主張である。地区ごとの値を色分けする階級区分図では、階級の区切り方——等間隔にするか、分位で分けるか、データの切れ目で分けるか——によって、地区の見え方が変わる。色の選び方も同様で、濃淡の順序が読み取れない配色は誤読を招く。もう一つ古典的な誤りが、正規化していない地図である。人口で割らずに件数を色分けすれば、それは事象の地図ではなく人口分布の地図になる。地図による説得の技法と、その裏返しとしての誤導については、モンモニアの著作が広く読まれている。

9.6 細かく公開することの限界

解像度を上げれば良いというものでもない。小さな格子で子どもの人数を公表すれば、世帯が特定されうる。統計には秘匿の基準があり、少数の単位は公表されない。公園の分析でも、どの粒度までを公開し、どこから集約するかは判断を要する。分析の精密さと、公開の適切さは別の軸にある。この判断もまた、書き残すべき手続きの一部である。

10. 磐田市の公園への示唆——100園を対象とした分析設計

ここまでの議論を、磐田市の公園に当てはめて設計に落とす。当サイトが収録しているのは100園である。内訳は、市のオープンデータ「都市公園一覧」の94行と、市の施設ガイドにのみ掲載されている6園。94園には種別と面積の記載があり、77園には施設ガイドの個別ページがある。当サイトのデータは1園につき緯度経度の組を一つ持つが、園の輪郭を表す面のデータは持っていない。踏査は2026年8月16日時点で0園であり、出入口の位置も園路の形も、まだ現地では確かめていない。以下は、この条件のもとで何をどの順で行うかという設計である。

10.1 欠けているデータが、地区に偏っている

最初に確認すべきは、欠測の分布である。面積が不明な6園は、クリーンセンター公園と浜部農村公園(いずれも南部)、はまぼう公園(福田)、獅子ヶ鼻公園・新平山工業団地1号公園・天竜川ラブリバー公園(いずれも豊岡)である。南部の2園はこの2園がすべてであり、豊岡の3園もこの3園がすべてである。つまり、面積を使う分析を行うと、南部と豊岡は地区まるごと空白になる。欠測がランダムに散らばっているのではなく、地区に固まっているという事実は、集計結果の解釈を根本から変える。空白の地区を「公園がない地区」として描いた地図は、事実に反する。

同じことが属性にもいえる。トイレ・車いす対応トイレ・砂場・遊具の有無は、オープンデータの94行に対する集計であり、それぞれ69園・34園・43園・64園に「有」の記載がある。残る6園にはこの欄そのものがない。設備で園を絞り込む解析を行うとき、記載のない園を「無し」として扱うか、対象から外すかで、圏域の姿は変わる。欠測は「無」ではないという原則を、処理の段階で守る必要がある。

10.2 第一段階——円で確実な圏外を洗い出す

第5節で述べた上界としての用法に沿って、まず点データだけでできることを行う。種別ごとの誘致距離を半径とする円を描く。街区公園51園に250メートル、近隣公園14園に500メートル、地区公園4園に1キロメートル。総合公園3園・運動公園3園・風致公園3園・都市緑地10園・広場公園2園・緑道2園・墓園1園・歴史公園1園については、法令上の誘致距離の定めがないため、円を描くのではなく別途の位置づけとする。円の和集合を作り、その外側にある居住地を「道路を歩けば確実に圏外である地区」として抽出する。この段階では充足率という数値は出さない。出るのは、詳しく調べるべき場所の一覧である。

100園河川幹線歩行
図10磐田市の分析設計は三段階を想定する。円で確実な圏外を選び、大きな園を面に直し、歩行ネットワークで検証する。

10.3 第二段階——大きな園を面に直す

点で代表させる誤差は、園の規模に比例して大きくなる。磐田市で面積の大きい園を円に換算すると、竜洋海洋公園(221,722平方メートル)は半径およそ266メートル、かぶと塚公園(106,982平方メートル)はおよそ185メートル、つつじ公園(61,937平方メートル)はおよそ140メートル、磐田スポーツ交流の里ゆめりあ(57,500平方メートル)はおよそ135メートル、兎山公園(56,193平方メートル)はおよそ134メートル、安久路公園(32,001平方メートル)はおよそ101メートルになる。街区公園の標準面積0.25ヘクタールが半径およそ28メートルであることと比べれば、上位の園がいかに大きいかが分かる。

この規模の園を一点で表すと、園の反対側の縁からの距離が百メートル単位で狂う。したがって設計としては、一定規模——たとえば1ヘクタール——を超える園については輪郭を面として整備し、面からのバッファまたは出入口からのネットワーク解析に切り替える。逆に、二之宮東第2緑地の17平方メートル、豊田上新屋ポケットパークの156平方メートルのような小さな空間では、点と面の差は誤差に埋もれる。園の規模に応じて表現を使い分けるという方針は、限られた作業量を効果のある場所に配分する判断でもある。

10.4 第三段階——歩行ネットワークで検証する

磐田市は東を天竜川に接し、鉄道と幹線道路が市街地を横切る。第5節と第7節で述べた分断の問題が、そのまま当てはまる地形である。円で圏内に見える住宅地が、橋や踏切や信号のある交差点を経由しなければ園に着かないという状況は、地図を見るだけでも想定できる。第三段階では、歩行可能な道路網を整備し、園の出入口を起点として到達範囲を求め、第一段階の円と重ねる。円とサービスエリアの差が大きい場所こそ、配置の議論で最初に取り上げるべき場所である。

地区ごとの園数は、豊田28園、見付21園、中泉14園、御厨13園、竜洋13園、福田4園、豊岡3園、南部2園、向陽2園である。この差をそのまま供給の差と読むことはできない。地区の広さも、住んでいる人の数も、園一つあたりの規模も違うからである。ネットワーク解析まで進んで初めて、園数の差が到達性の差として現れるかどうかを検証できる。加えて、市境の外にある隣接市町の公園を計算に含めないと、市の縁にあたる地区の評価が実際より低く出る。第6節で述べた余白を取る作法を、ここでも守る必要がある。

10.5 踏査で記録すべき地理情報

以上の設計は、いずれも現地の情報を必要とする。当サイトの踏査はこれから始まる段階であり、GISの観点から優先して記録すべき項目は次のとおりである。

  • 出入口の位置・数・幅——圏域の起点そのもの。車止めや段差の有無も併せて記録する。
  • 園路のつながり——園を通り抜けられるか、行き止まりかで、歩行ネットワークの形が変わる。
  • 駐車場の位置と入口との関係——駐車場のある園は33園とされるが、入口までの動線は資料に現れない。
  • 園に入るまでに横断する道路——信号や横断歩道の有無は、到達時間と安全の両方に関わる。
  • 日陰の位置と季節変化——ラスタで扱うべき情報で、夏の利用可能範囲を左右する。

これらはいずれも、緯度経度の一点では表せない情報である。オープンデータと施設ガイドを突き合わせるだけでは到達できない領域があり、そこを埋めるのが踏査の役割になる。市域の公園は都市整備課が管理しており、市の資料が一次情報である点は変わらない。当サイトができるのは、資料を空間データとして組み直し、確かめた範囲と確かめていない範囲を区別して示すことである。

11. 結論と今後の課題

11.1 結論——五つの命題

本稿は、公園の圏域分析を支えるGISの手法とその前提を検討した。得られた結論を五つの命題にまとめる。

  • 第一に、公園までの距離を示す数値は観測ではなく手続きの産物である。起点・距離の定義・座標系・人口の単位という四つの選択を経て初めて数が定まり、選択が変われば数も変わる。
  • 第二に、GISが公園を点に置き換える段階で、形と出入口という圏域分析に不可欠な情報が失われる。誤差は園の規模に比例して大きくなるため、規模に応じて点と面を使い分ける設計が要る。
  • 第三に、直線距離のバッファは圏域を過大に描く。ただし直線距離は道路距離を超えないため、円は上界を与える。円の外側を「確実な圏外」として選別する用法に限れば、粗いデータでも根拠のある議論ができる。
  • 第四に、ボロノイ分割は供給の空白と担当区域を示すが需要の量には触れず、ネットワーク解析は実際の到達を示すが道路網データの整備状況に依存し、カーネル密度推定は全体傾向を示すがバンド幅の選択で印象が変わる。四手法は代替ではなく、問いに応じて使い分ける道具である。
  • 第五に、以上のすべてが手続きの記録を要求する。選んだ前提の一覧を数値と同時に公開しない分析は、検証も反論も受け付けない。数値の精密さより、前提の透明さが先に来る。

11.2 本稿の限界

本稿の最大の限界は、解析を実行していないことである。設計は示したが、実行して初めて見える問題——道路網データの欠落の実態、ジオコーディングの失敗率、計算量の壁——には触れられていない。また、人口データの取得と配分の作業、歩行ネットワークの整備状況の確認、利用条件の精査も、いずれも未着手である。したがって本稿の主張は、実行の前に立てられた仮説の集合であり、実行によって修正されるべきものである。

第二の限界は、手法の選択が四つに絞られていることである。空間統計にはほかにも、点分布の偏りを検定する手法、空間的な自己相関を測る指標、複数の要因から適地を選ぶ多基準評価など、公園の分析に使える技法がある。本稿はそれらを扱わなかった。第三に、GISで扱える情報は位置と量に還元できるものに限られる。園の雰囲気、居合わせる人の顔ぶれ、木陰の心地よさは、格子にも多角形にもならない。地図に載らないものを地図の外に置いたまま忘れないことが、この道具を使う者の責任である。

結論段階課題
図11設計は仮説である。実行して初めて見える問題があり、手順と限界を公開しておくことが、後から検証を受けるための条件になる。

11.3 今後の課題

第一の課題は、一定規模を超える園の輪郭を面として整備することである。これがなければ、大きな園の圏域は原理的に不正確なままになる。第二に、踏査による出入口の記録である。第10節に挙げた項目のうち、出入口の位置は他のどの情報にも代えがたい。第三に、感度分析の公開である。代表点・歩行速度・バンド幅を振って結果の幅を示すことで、単一の数値が一人歩きすることを防げる。

第四に、分析の成果をどう還元するかという課題がある。整備した空間データや手順を、利用条件を明示したうえで公開できれば、他の地域が同じ手順を再現でき、都市間の比較に耐える。オープンデータを受け取るだけでなく、加工した成果を戻すという循環が成り立てば、公園の議論は自治体ごとの孤立した数字の応酬から抜け出せる。

最後に、本稿の立場を繰り返しておきたい。地図の上で公園を測ることは、公園を理解することと同じではない。測ることでしか見えない偏りがあり、測っても見えないものがある。両方を承知したうえで、まず測り方を公開する——それが、踏査を始める前の当サイトにできる仕事である。

参考文献

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  2. 磐田市「施設ガイド(公園)」
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  4. 測量法施行令(昭和24年政令第322号)第2条——平面直角座標系の規定
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  7. 国土交通省「国土数値情報」(都市地域・交通・土地利用の空間データ)
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  12. A. Okabe・B. Boots・K. Sugihara・S. N. Chiu(2000)『Spatial Tessellations: Concepts and Applications of Voronoi Diagrams』第2版、Wiley
  13. E. W. Dijkstra(1959)「A Note on Two Problems in Connexion with Graphs」Numerische Mathematik 1
  14. B. W. Silverman(1986)『Density Estimation for Statistics and Data Analysis』Chapman and Hall
  15. W. R. Tobler(1970)「A Computer Movie Simulating Urban Growth in the Detroit Region」Economic Geography 46
  16. Ian L. McHarg(1969)『Design with Nature』Natural History Press(邦訳あり)
  17. Stan Openshaw(1984)『The Modifiable Areal Unit Problem』CATMOG 38、Geo Books
  18. Mark Monmonier(1991)『How to Lie with Maps』University of Chicago Press(邦訳あり)

本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。

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