計画・工学リモートセンシング
空から緑を数える——衛星画像・植生指数・緑被率の測り方
要旨
本稿の目的は、人工衛星や航空機から地表を観測する技術——リモートセンシング(remote sensing、遠隔探査)——の原理を平易に整理し、都市公園の緑を数えるという課題に適用したときに何がどこまで分かり、何が分からないのかを明らかにすることである。方法は文献整理と概念分析、および公開された観測仕様に基づく手順の設計であり、実際の画像解析は行っていない。したがって本稿は磐田市の緑被率そのものを報告するものではなく、それを測るための方法と、測った値をどう読むべきかを論じる方法論の論考である。
検討は六つの論点に沿って進む。第一に、植物の葉が可視光の赤い波長を強く吸収し、近赤外の波長を強く反射するという分光反射特性が、空から緑を見分ける物理的な根拠であること。第二に、この二つの波長の差を和で割った正規化植生指数(NDVI)が、明るさの違いを打ち消して植生の量を比べられるようにする一方、緑が濃くなるほど値の伸びが鈍る飽和や、裸地の土の色に引きずられる偏りをもつこと。第三に、熱赤外の波長帯から地表面温度を推定できるが、それは気温ではなく地面や樹冠の表面の温度であり、公園の涼しさの一面しか捉えないこと。第四に、空間分解能・観測周期・波長の細かさ・観測幅の間には交換関係があり、街区公園のような小さな公園を測るときには画素の大きさが決定的な制約になること。第五に、上から見た緑を測る緑被率・樹冠被覆率と、歩行者の視野に占める緑を測る緑視率とは別の量であり、両者は系統的にずれること。
以上を踏まえ、公園の緑を継続的に観測するための手順を、目的の設定・範囲の定義・データの選定・前処理・指数の集計・変化の判定・地上での確かめ、という段階に分けて設計し、各段階で生じる解釈上の注意を示す。最後に磐田市の公園100園に即して、種別ごとの標準面積と画素の大きさの関係から、どの規模の園ならどの分解能で測れるのかを検討する。当サイト ATAWI PARK の現地踏査はまだ始まっておらず、樹冠の量や樹種、地表の材料といった地上の事実は今後の踏査で確かめる課題である。空から測った値は、地上で確かめて初めて意味をもつ、というのが本稿の結論である。
キーワードリモートセンシング植生指数NDVI緑被率緑視率空間分解能磐田市
1. はじめに——問題の所在
「この街には緑が多い」「あの公園は木が減った気がする」。まちの緑をめぐる語りは、たいてい印象から始まる。印象は貴重な出発点だが、印象のままでは比べられない。去年と今年を比べることも、隣の地区と比べることも、印象では難しい。そこで問題になるのが、緑をどう数えるか、である。本稿はこの問いを、地表に触れずに地表を測る技術——リモートセンシング(remote sensing、遠隔探査)——の側から扱う。人工衛星や航空機に載せたセンサーが、地表から返ってくる電磁波を測り、その強さの分布から地表の性質を推定する。この技術がいま、無償で公開された衛星画像という形で、行政にも市民にも開かれている。
なぜリモートセンシングから公園を論じるのか。理由は三つある。第一に、公園の緑は、公園という区画の中だけで完結しない量だからである。隣接する社寺林、河川の堤防の草地、街路樹、民有地の庭木は、生きものにとっても、涼しさにとっても、景観にとっても連続している。区画ごとの台帳では、この連続した緑を捉えられない。空からの観測は区画の線を無視して地表をそのまま測るため、連続性を扱うのに向いている。第二に、緑は時間とともに変わるからである。木は育ち、伐られ、台風で倒れ、季節ごとに葉を落とす。ある一日の観察は、その一日の姿しか教えない。定期的に同じ場所を観測できるという衛星の性質は、変化を扱うための道具になる。第三に、公園の管理は行政の限られた予算と人手のもとで行われており、100か所近い園を毎年くまなく見て回ることは容易でないからである。空からの観測は、見るべき場所の見当をつけるための道具になりうる。
1.1 本稿の問い
本稿の問いは四つある。(1)そもそも、なぜ空から緑が見えるのか。人の目に緑に見えるものと、センサーが緑と判定するものは同じなのか。(2)植生指数と呼ばれる数値は何を測っているのか。その数値が大きいことは、木が多いことなのか、葉が茂っていることなのか、あるいは別の何かなのか。(3)緑被率・緑視率・樹冠被覆率という似た名前の指標は、どこがどう違うのか。上から見た緑と、歩行者が感じる緑とは、なぜずれるのか。(4)これらを踏まえて、市町村の規模で公園の緑を継続的に観測しようとするとき、どんな手順を組めばよく、その結果をどう読めばよいのか。
1.2 方法と、本稿がしないこと
方法は文献整理と概念分析、および公開されている観測仕様に基づく手順の設計である。ここで最初に断っておかなければならないことがある。本稿は、実際の衛星画像を取得して磐田市の緑を解析した研究ではない。したがって、磐田市の緑被率が何パーセントであるとか、どの公園の緑が増えた・減ったといった数値は、本稿には一切出てこない。書けば捏造になるからである。本稿が提供するのは、そうした数値を将来だれかが算出するときに踏むべき手順と、算出された数値を読むときに必要な留保である。方法論の論考であることを、あらかじめ明示しておく。
衛星の観測仕様——画素の大きさ、同じ場所を再び観測するまでの日数、観測できる波長帯——についても、公開資料で確認できる確実なものだけを挙げる。リモートセンシングの世界では衛星の世代交代が速く、運用状況も変わる。本稿では、長期にわたって運用され仕様が広く知られている系列に限って具体名を挙げ、細かな数値の列挙よりも、分解能と観測頻度の間に成り立つ交換関係という原理の理解に重心を置く。
1.3 本稿の構成
第2節で、航空写真判読から衛星による定量観測へという系譜と、植生指数という概念の成立を整理する。第3節では、植物の葉が電磁波をどう反射するかという分光反射特性を扱い、空から緑が見える物理的な根拠を示す。第4節で正規化植生指数(NDVI)の定義と、その利点および限界を検討する。第5節では熱赤外による地表面温度の推定を扱い、それが気温とどう違うのかを述べる。第6節で空間分解能・観測周期・波長分解能・観測幅の交換関係を論じ、小さな公園を測ることの難しさを明らかにする。第7節で緑被率・緑視率・樹冠被覆率という三つの指標のずれを検討する。第8節では、以上を踏まえた観測手順を段階に分けて設計し、各段階の注意を述べる。第9節で磐田市の公園データに即した示唆を述べ、第10節で結論と今後の課題をまとめる。
註:本稿でいう「緑」は、生きた植物の葉が地表を覆っている状態を指す。人工芝、緑色に塗装された舗装、常緑樹の落葉期の枝——いずれも人の目には緑に見えたり見えなかったりするが、センサーの見方は人の目とは別の原理に従う。この違いが本稿の主題の一つである。
2. 先行研究と概念の整理——判読から計測へ
空から地表を見る営みは、写真の歴史とほぼ同じだけ古い。気球に載せたカメラによる撮影に始まり、二つの大戦を通じて航空写真は軍事偵察の技術として発達し、戦後は地図作成・森林調査・土地利用調査の基礎技術として民生に移された。日本でも国土地理院が全国を対象とした空中写真を継続的に撮影・公開しており、同じ場所の数十年分の写真を並べれば、林が宅地に変わり、水田が工場になった過程を目で追うことができる。ここまでの技術を、リモートセンシングの前史としての写真判読(photo interpretation)と呼ぶことができる。
写真判読は強力だが、二つの限界をもつ。第一に、判読者の熟練に依存する。同じ写真から、ある人は「疎林」を読み取り、別の人は「草地に散在する高木」を読み取る。第二に、数え上げが難しい。「この地区の緑は多い」と言うことはできても、「何平方メートルの植被がある」と答えるには、写真の上で境界線を引き、面積を測るという手間のかかる作業が必要になる。判読は質的な理解には向くが、量的な比較には向かない。
2.1 センサーによる定量観測への転換
この限界を越えたのが、フィルムではなく電子的なセンサーで地表からの放射を測り、その値を数値として記録する方式である。1972年に打ち上げられた地球資源技術衛星(ERTS-1、のちに Landsat-1 と改称)は、この方式で全球を繰り返し観測する最初の実用的な仕組みとなった。写真では「濃い・薄い」としか言えなかった明るさが、波長帯ごとの数値として記録される。数値であれば、足し引きも割り算もできる。判読から計測への転換である。以後、ランドサット系列は世代を重ねて現在まで運用が続き、半世紀を超える同一系列の観測記録という、地球観測において稀有な資産を形づくっている。
2010年代にはこの資産が無償公開され、誰でも取得できるようになった。欧州宇宙機関(ESA)のコペルニクス計画によるセンチネル2号(Sentinel-2)も、同様の方針で観測データを公開している。日本でも宇宙航空研究開発機構(JAXA)が陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)などの成果を公開してきた。無償公開という制度上の変化は、リモートセンシングを一部の専門機関の技術から、市町村の職員や大学生や市民団体が手を伸ばせる技術へと変えた。本稿が方法論を論じる意味も、この変化の上にある。
2.2 植生指数という発想
数値になった観測値から植生の量を取り出す発想が、植生指数(vegetation index)である。その代表が正規化植生指数(NDVI、Normalized Difference Vegetation Index)であり、ラウズらが1974年に地球資源技術衛星のデータを大平原の植生監視に用いた研究のなかで提示し、タッカーが1979年に赤と近赤外の線形結合による植生監視を体系的に検討した論文によって広く用いられるようになった。以後、この指数は農業の作況把握、干ばつ監視、森林の変化検出、そして都市の緑の評価へと応用範囲を広げてきた。
植生指数の発想が優れているのは、絶対値ではなく比を使う点にある。同じ森でも、晴れた日の正午と薄曇りの午後とでは、返ってくる光の絶対量は大きく違う。しかし複数の波長帯で同じように明るさが変われば、その比はあまり変わらない。比をとることで、照明条件の違いという厄介な変動を、ある程度まで打ち消せる。ただし「ある程度まで」であって完全にではない、という点が第4節で扱う限界につながる。
2.3 都市の緑への応用と、本稿の位置
都市を対象としたリモートセンシングは、農地や森林を対象とする場合よりも難しい。地表の要素が細かく入り混じっているからである。一枚の画素の中に、屋根と道路と生垣と駐車場が同居することは珍しくない。また建物の壁や影が、地表からの放射の測り方を複雑にする。それでも、都市の熱環境をリモートセンシングで扱う研究は蓄積されており、スプロンケン=スミスとオークが夏の気候が異なる二都市の公園の熱環境を比較した1998年の研究のように、公園という単位に着目した仕事も早くから行われてきた。都市気候学の教科書としてはオークの『Boundary Layer Climates』が、リモートセンシング全般の教科書としてはリレサンドらやジェンセンの著作が、標準的な参照点となっている。
本稿はこれらの蓄積の上に立ちつつ、新しい解析を提示するものではない。市町村の公園という具体的な対象に対して、既存の技術をどう組み立て、その結果をどう読むかという実践的な問いに答えることを目指す。言い換えれば、本稿の貢献は方法の翻訳にある。
3. なぜ空から緑が見えるのか——分光反射特性
空から緑が見える理由を、人は「葉が緑色だから」と考えがちである。だが、リモートセンシングが植生を捉える主な手がかりは、人の目に見える緑色ではない。目に見えない近赤外(near infrared)の波長帯である。この事実を理解することが、以後のすべての議論の前提になる。
3.1 電磁波と波長帯
太陽から届く光は電磁波であり、波の長さ——波長——によって性質が異なる。人の目が感じ取れるのは、およそ紫から赤までの狭い範囲であり、これを可視光と呼ぶ。可視光より波長が短い側に紫外線があり、長い側に赤外線がある。赤外線のうち可視光にすぐ隣接する範囲を近赤外、さらに長い範囲を短波長赤外、そして物体自身の温度に応じた放射が主となる範囲を熱赤外と呼び分ける。センサーは、この波長の軸をいくつかの区間に区切り、区間ごとに届いた放射の強さを別々に記録する。この区間の一つひとつをバンド(band、波長帯)という。
人の目もまた三種類の受容体でおおよそ青・緑・赤の三バンドを測っている装置とみなせる。センサーが人の目と違うのは、バンドの数を増やせること、そして人の目に見えない波長を測れることである。この二点が、空から緑を数える技術の中核をなす。
3.2 葉が示す特徴的な反射のかたち
生きた緑葉が太陽光をどう反射するかには、はっきりした型がある。可視光の青と赤の範囲では、光合成の色素であるクロロフィルが光を強く吸収するため、反射は弱い。可視光の緑の範囲では吸収がやや弱まるため、赤や青に比べれば反射が強くなる。葉が緑に見えるのはこのためだが、この差はさほど大きくない。ところが近赤外の範囲に入ると、事情が一変する。クロロフィルは近赤外をほとんど吸収せず、葉の内部の細胞と空気の隙間の構造が光を散乱させるため、近赤外は非常に強く反射される。可視の赤で弱く、近赤外で強い——この落差の大きさが、生きた植生の指紋である。
この落差は、他の地物にはあまり見られない。裸地や舗装は、可視の赤から近赤外にかけて反射がなだらかに増えるだけで、急な段差をもたない。水面は近赤外をよく吸収するため、可視より近赤外のほうが暗くなる。屋根材や人工物はさまざまだが、生きた葉ほど極端な段差を示すものは多くない。したがって、可視の赤と近赤外という二つのバンドを比べるだけで、生きた植生をかなりの精度で他から切り分けられる。
3.3 何が反射を変えるのか
同じ植物でも、反射のかたちは一定ではない。第一に、葉の量である。葉が幾重にも重なっていれば、上の葉を透過した近赤外が下の葉でさらに反射され、上向きに戻る近赤外は増える。第二に、葉の状態である。乾燥や病虫害でクロロフィルが減れば、赤い波長の吸収は弱まり、赤の反射が上がる。紅葉や落葉はこの極端な例である。第三に、葉の含水である。短波長赤外は水に吸収されやすく、葉が水を多く含むほど短波長赤外の反射は下がる。第四に、葉のかげから覗く地面である。疎らな植生では、葉の反射と土や舗装の反射が混ざって観測される。
この第四の点は、都市公園を扱ううえで特に重要である。芝生広場の上には芝しかないが、高木が点在する広場では、上から見た一区画の中に樹冠・芝・裸地・園路・遊具・影が同居する。センサーが記録するのは、それらすべてを合わせた平均的な反射である。すなわち観測値は、地表の「混ぜ物」の値なのである。この事実は第6節で混合画素の問題として改めて扱う。
3.4 常緑と落葉、そして人工の緑
分光反射特性の観点から見ると、常緑樹と落葉樹の違いは、季節ごとの近赤外反射の変動の大きさとして現れる。落葉樹は葉を落とす期間に近赤外の反射が大きく落ち、可視の赤の反射が相対的に上がる。常緑樹はその変動が小さい。したがって、同じ公園を年に複数回観測すれば、緑の総量だけでなく、その緑がどの程度落葉性なのかという性格まで、間接的に推定しうる。
逆に、人工の緑はセンサーを欺かない。緑色に着色された人工芝や塗装面は、可視の緑の反射こそ生きた葉に似ることがあるが、近赤外の強い反射をもたない。人の目には緑に見えても、赤と近赤外の落差を見る指標では植生として拾われにくい。これは技術の欠点ではなく利点である。「見た目の緑」ではなく「生きて光合成している葉」を測りたいのであれば、近赤外を見る方式のほうが目的に忠実だといえる。ただし、日陰をつくり、目を休ませ、遊びの場になるという公園の機能から見れば、人工の緑にも役割はある。指標が何を拾い何を落とすかを知ったうえで使うことが肝要である。
4. 植生指数——NDVI の考え方と限界
前節で見た「赤で弱く、近赤外で強い」という落差を、一つの数値に要約したものが植生指数である。最も広く使われる正規化植生指数(NDVI)は、近赤外の反射から赤の反射を引き、その差を両者の和で割ることで定義される。差を和で割るという操作を正規化と呼ぶ。この操作により、値は理論上マイナス1からプラス1までの範囲におさまる。
4.1 なぜ差を和で割るのか
単に差を取るだけでは足りない理由は、明るさの問題にある。同じ樹林でも、太陽が高い夏の正午と、太陽が低い冬の午後とでは、地表に届く光の量が違う。斜面の向きによっても、薄い雲の有無によっても違う。光が二倍になれば、赤の反射も近赤外の反射もおおむね二倍になり、その差も二倍になってしまう。ところが差を和で割れば、二倍と二倍は約分されて消える。つまり正規化は、照明の強さという「掛け算的な」変動を打ち消し、地表の性質そのものに近い量を取り出すための工夫である。
値の意味はおおよそ次のように理解される。よく茂った植生では近赤外が赤を大きく上回るため、値は大きな正の値になる。裸地や舗装では両者の差が小さいため、値はゼロ近辺の小さな正の値になる。水面では近赤外のほうが暗いため、値は負になる。雪や雲もそれぞれ特徴的な値をとる。したがって、値の大小の順序は「植生の多さ」の順序とおおむね対応する。この分かりやすさが、この指数が半世紀にわたって使われ続けてきた理由である。
| 地表の状態 | 赤の反射 | 近赤外の反射 | 指数のおおよその傾向 |
|---|---|---|---|
| よく茂った樹林・芝 | とても弱い | とても強い | 大きな正の値 |
| まばらな草地 | 弱い | やや強い | 中くらいの正の値 |
| 裸地・土・砂 | 中くらい | 中くらい | 小さな正の値 |
| 舗装・屋根(材質による) | 中くらい | 中くらい | ゼロ近辺 |
| 水面 | 弱い | とても弱い | 負の値 |
この表は傾向を示すものであり、具体的な境目の数値を示すものではない。どの値から上を「緑」とみなすかは、対象地域・季節・センサー・前処理の方法によって変わるため、一律の閾値を持ち込むことはできない。閾値は、その地域とその画像に即して、地上の状況と突き合わせながら決めるべきものである。
4.2 限界その一——飽和
この指数には、よく知られた限界がある。第一が飽和である。葉が重なるにつれて近赤外の反射は増えるが、増え方はしだいに鈍る。ある程度以上に葉が茂ると、さらに葉が増えても上向きに戻る近赤外はほとんど変わらなくなり、指数の値も頭打ちになる。その結果、鬱蒼とした樹林と、そこそこ茂った樹林とを、この指数だけで区別することが難しくなる。都市公園の文脈でいえば、成熟した樹林をもつ大きな公園どうしを比べるときや、同じ公園の緑が年々厚くなっていく過程を追うときに、この飽和が効いてくる。逆に、緑が少ない場所での増減には敏感であるため、街区公園のような小さな緑地の変化を追う用途には比較的向いている。
4.3 限界その二——土壌と影の影響
第二の限界は、植生が疎らなときに、その下の地面の性質が値に影響することである。同じだけの草が生えていても、下が明るい砂地か暗い黒土かによって、観測される反射は変わり、指数の値も変わる。この問題に対しては、ヒューテが1988年に提案した土壌調整植生指数(SAVI)のように、土壌の影響を補正する項を加えた指数がいくつも考案されてきた。都市では、下地が土ではなくコンクリートやアスファルトであることも多く、同じ問題がより複雑な形で現れる。
第三に、影の影響がある。建物や高木の影に入った地表は、赤も近赤外もともに弱くなる。正規化によって影響はある程度打ち消されるが、影の中では反射そのものが小さく、わずかな誤差が比に大きく効くため、値は不安定になりやすい。都市は影の多い地表であり、太陽高度の低い季節や時間帯の画像ほど影が長く伸びる。観測日の選び方が結果を左右する所以である。
4.4 指数は「量」ではなく「代理」である
以上をまとめると、植生指数は植生の量そのものではなく、量と相関する代理変数である。代理変数であることを忘れると、二種類の誤りが生じる。一つは、指数の値をそのまま面積や重さのような物理量として扱う誤り。もう一つは、異なる条件で撮られた画像から得た指数を、そのまま並べて比べる誤りである。前者に対しては、指数を「地表の状態の分類」に用い、面積の推定は分類後の画素の数え上げによって行う、という段取りが有効である。後者に対しては、比較する画像の条件——センサー、季節、前処理の水準——を揃えることが不可欠である。この段取りは第8節で改めて手順として整理する。
5. 熱赤外と地表面温度——涼しさを空から測る
公園の緑を測る目的の一つは、公園が周囲より涼しいという性質を確かめることにある。リモートセンシングはこの目的にも応えうるが、そのためには可視・近赤外とは別の原理を使う。熱赤外(thermal infrared)の観測である。本節では、熱赤外から何が得られ、それが日常語の「気温」とどう違うのかを整理する。
5.1 反射を測るのではなく、自ら出る放射を測る
可視光や近赤外の観測は、太陽の光が地表で反射して戻ってきたものを測っている。だから夜は測れず、太陽の高さや雲に左右される。これに対して熱赤外の観測は、地表そのものが自らの温度に応じて出している放射を測る。あらゆる物体は、その温度に応じた強さと波長分布で電磁波を放っており、常温付近の地表が最も強く放つのは熱赤外の範囲である。したがって熱赤外を測れば、太陽の有無にかかわらず、地表の温度に関する情報が得られる。夜間観測が可能なのはこのためである。
ただし、測った放射から温度を求めるには、物体がどれだけ効率よく放射するかという性質——射出率(放射率)——を仮定する必要がある。水や植生の射出率は比較的高く安定しているが、乾いた土や金属、種類の異なる舗装では値が変わる。この仮定の不確かさが、推定される温度の誤差に直結する。加えて、地表と衛星の間には大気があり、大気自身も熱赤外を吸収し放射するため、大気の効果を差し引く補正が必要になる。
5.2 地表面温度は気温ではない
この点は繰り返し強調されるべきである。熱赤外から得られるのは地表面温度(land surface temperature)であり、天気予報でいう気温——地上約1.5メートルの高さで、日射と雨を遮った状態で測った空気の温度——とは別の量である。晴れた夏の日中、アスファルトの表面温度は気温よりはるかに高くなり、芝生や樹冠の表面温度は気温に近いか、蒸散によってむしろ低くなることもある。同じ場所の地表面温度と気温は、時間帯によっても地表の材料によっても、離れたり近づいたりする。
したがって、衛星が捉えた「公園が周囲より冷たい」という像は、直ちに「公園の空気が涼しい」ことを意味しない。地表面が冷たいことは、そこから空気へ伝わる熱が少ないことを示唆し、間接的に空気の温度にも関わるが、その関係は地表の材料・風・湿度・時間帯に左右される。公園の涼しさについての詳しい機構は、都市気候学の側からの検討に譲るが、本稿の立場としては、地表面温度は涼しさの一つの側面を示す量にすぎない、と限定しておく。
5.3 熱赤外の分解能という制約
熱赤外の観測には、実用上の大きな制約がある。画素が粗いことである。物体が自ら出す熱赤外の放射は、太陽光の反射に比べてエネルギーが小さいため、十分な精度で測るには広い面積からの放射を集める必要がある。その結果、同じ衛星でも、可視・近赤外のバンドより熱赤外のバンドのほうが画素が大きくなるのが通例である。たとえばランドサットの近年の機体では、可視・近赤外が30メートル四方の画素であるのに対し、熱赤外は100メートル四方で取得され、配布時に30メートルへ再標本化されている。再標本化された画像は見かけ上細かいが、もとの情報の細かさが増えたわけではない。
この制約は都市公園にとって深刻である。100メートル四方は1ヘクタールに相当する。街区公園の標準的な規模は0.25ヘクタールとされており、熱赤外の一画素の中にすっぽり収まってしまう。すなわち、街区公園の温度として観測される値は、その公園と周囲の道路・住宅を混ぜた平均になる。小さな公園の涼しさを熱赤外の衛星画像で測ることは、原理的に難しいのである。
5.4 それでも熱赤外が有効な場面
では熱赤外は都市公園に無力かというと、そうではない。有効な使い方が三つある。第一に、大きな公園を対象とする場合である。数ヘクタール以上の広がりをもつ園であれば、周囲の影響を受けにくい内部の画素が確保でき、園の内外の差を論じられる。第二に、地区スケールの比較である。個々の公園ではなく、緑の多い地区と少ない地区とを面として比べるのであれば、粗い画素でも十分な情報が得られる。第三に、可視・近赤外から求めた植生の指標との対応関係を調べる用途である。緑が多い場所ほど地表面温度が低い、という関係の強さそのものが、その都市の緑がどれだけ熱環境に効いているかを示す指標になりうる。
なお、より細かい熱の分布を知りたい場合には、衛星ではなく航空機や地上からの測定に頼ることになる。手持ちの熱画像装置で遊具や舗装の表面温度を測る取り組みは、機材さえあれば市民や学校でも実施できる。空からの粗い像と、地上の細かい測定とを組み合わせる——この二段構えが現実的な方策である。夏の遊具や舗装の熱さについては、国の指針や消費者行政の側からも注意が呼びかけられており、健康にかかわる判断は医療機関・関係機関に委ねるべきであるが、どこがどれくらい熱くなるのかを測って共有すること自体は、有益な取り組みであるといえる。
6. 分解能と観測頻度のトレードオフ
リモートセンシングを実務に使おうとするとき、最初に突き当たるのが「どの衛星のデータを使うか」という選択である。この選択は、性能の優劣ではなく交換関係の問題として理解しなければならない。あらゆる観測系は、四つの意味での細かさ——空間・時間・波長・階調——を同時に極大化することはできず、どれかを立てればどれかが引っ込む。本節ではこの構造を整理する。
6.1 四つの分解能
空間分解能は、地表のどれくらいの広さが一画素に対応するかを表す。30メートル四方の画素であれば、一画素は900平方メートルの地表に対応する。時間分解能(観測周期・再訪頻度)は、同じ場所を再び観測するまでの間隔である。波長分解能(分光分解能)は、波長の軸をどれだけ細かく刻んでバンドを設けているかを指す。放射分解能(階調)は、明るさの違いをどれだけ細かい段階で記録するかである。これらに加えて、一度の観測でどれだけ広い帯を撮れるかという観測幅も、実用上は重要な性質である。
交換関係が生じる理由は単純である。センサーが一画素あたりに集められる光の量には限りがある。画素を細かくすれば、一画素に入る光は減る。減った光でも十分な精度で測るには、バンドの幅を広げる(=波長分解能を犠牲にする)か、階調を粗くするか、あるいは観測幅を狭めて一か所に長く光を集めるしかない。観測幅を狭めれば、全球を撮り終えるまでの日数は延び、時間分解能が落ちる。細かく見ようとすれば、狭く・粗く・まれにしか見られなくなる——これが原理的な制約である。
| 立てたい性質 | 犠牲になりやすい性質 | 公園の観測での帰結 |
|---|---|---|
| 空間分解能(細かく見る) | 観測幅・観測周期 | 小さな園も見えるが、撮影日が限られ雲に阻まれやすい |
| 時間分解能(頻繁に見る) | 空間分解能 | 季節変化や災害後の変化は追えるが、街区公園は画素に埋もれる |
| 波長分解能(細かく分ける) | 空間分解能・階調 | 樹種や状態の推定に近づくが、画素が粗くなりやすい |
| 観測幅(広く撮る) | 空間分解能 | 市域全体を一度に撮れるが、細部は失われる |
6.2 代表的な系列の性格
確実に知られている仕様の範囲で、性格の違いを述べておく。ランドサット系列の近年の機体は、可視・近赤外・短波長赤外を30メートル四方、パンクロマチック(広い波長幅で明るさだけを測るバンド)を15メートル四方、熱赤外を100メートル四方で観測し、同じ場所に戻るまでの周期はおよそ16日である。長期の記録が揃っていることが最大の強みで、数十年単位の変化を追う用途に向く。センチネル2号は、可視と近赤外の主要なバンドを10メートル四方で観測し、20メートル・60メートルのバンドを併せもち、二機体制での再訪はおよそ5日である。より細かく、より頻繁で、都市の緑を扱うには扱いやすい。日本の陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)は2006年に打ち上げられ2011年に運用を終えたが、その光学センサーによる画像は、その期間の記録として参照しうる。
さらに細かい商用の高分解能衛星や、航空機・無人航空機による撮影では、メートル未満の細かさも得られる。しかしこれらは費用がかかり、撮影の頻度も自由にならないことが多い。無償で公開された衛星データを用いるという本稿の想定のもとでは、10メートルから30メートルという画素の大きさが、事実上の作業条件になる。
6.3 混合画素という核心的な問題
画素が地表の複数の要素をまたぐとき、その画素は混合画素(mixed pixel)となり、観測値は要素ごとの反射を面積比で混ぜた値になる。都市はほぼ全域が混合画素であるといってよい。10メートル四方は100平方メートル、30メートル四方は900平方メートルであり、住宅一戸の敷地や園路の幅よりずっと大きい。
混合の影響は、公園の面積が小さいほど深刻になる。ある公園が正方形だと仮定すると、その一辺の長さは面積の平方根で与えられる。30メートル四方の画素で、周囲の影響を受けない内部の画素を一つでも確保するには、おおむね一辺が90メートル程度——面積にして8,100平方メートル程度——が必要になる。10メートル四方の画素なら一辺30メートル、面積900平方メートル程度で足りる。この単純な計算が、どの規模の公園をどの分解能で扱えるかの目安を与える。
混合画素への対処法は二系統ある。一つは、混ざっていることを前提に、画素内の各要素の面積割合を推定する手法——分光混合分析やサブピクセル推定と総称される——を用いることである。もう一つは、そもそも細かい画像を用いる、あるいは航空写真や地形図から人手で境界を描くことである。前者は自動化に向くが仮定が多く、後者は確実だが手間がかかる。目的が地区スケールの傾向把握なら前者、個別の園の管理なら後者、という使い分けが現実的であろう。
7. 緑被率・緑視率・樹冠被覆率——三つの指標のずれ
「緑がどれだけあるか」を表す指標には、似た名前のものがいくつも並んでいる。緑被率、緑視率、樹冠被覆率、そして公園面積そのもの。これらは互いに置き換えられない、別々のものを測る指標である。本節では三つの主要な指標を取り上げ、それぞれが答えている問いを腑分けする。指標の混同は、議論をすれ違わせる最大の原因だからである。
7.1 三つの指標の定義
緑被率は、ある区域の面積に対して、樹木・低木・芝・草地など植物に覆われた部分を真上から見た投影面積が占める割合である。真上からの投影であることが要点で、上空から見た「緑の面積の割合」という素直な指標である。樹冠被覆率は、そのうち樹木の樹冠が覆う部分だけを取り出した割合である。芝生は緑被率には算入されるが樹冠被覆率には算入されない。緑視率は、地上のある地点である方向を見たとき、視野に占める緑の割合である。歩行者の目の高さから撮った写真の中で、緑の画素が何割を占めるかとして計算されるのが通例である。
| 指標 | 測る方向 | 主に拾うもの | 拾いにくいもの | 相性のよい測り方 |
|---|---|---|---|---|
| 緑被率 | 真上から(水平投影) | 樹冠・芝・草地・農地 | 樹冠の下の低木、垂直の緑 | 衛星画像・航空写真 |
| 樹冠被覆率 | 真上から(水平投影) | 高木の樹冠 | 芝・草地・低木 | 高分解能画像・レーザー計測 |
| 緑視率 | 地上の視点から(視野) | 街路樹の幹と枝葉、生垣、壁面緑化 | 足もとの芝、高い樹冠の上面 | 地上写真・全天球写真 |
7.2 なぜ、上から見た緑と歩いて感じる緑はずれるのか
ずれには理由がある。第一に、遮蔽(オクルージョン)である。真上からの観測では、高木の樹冠に隠れた低木や下草は見えない。逆に地上の視点からは、樹冠の上面は見えず、幹と枝葉の側面が見える。互いに相手の死角を見ているのだから、両者が一致しないのは当然である。
第二に、面積の重みづけの違いである。緑被率は地表を平等に扱う。10メートル先の芝も50メートル先の芝も、同じ1平方メートルとして数える。ところが視野は近いものを大きく写す。歩道に沿って植えられた一列の街路樹は、緑被率としてはわずかな面積でも、その下を歩く人の視野は大きく占める。反対に、広い芝生広場は緑被率を大きく押し上げるが、遠くまで見渡す視野の中では地面の帯として細く写るにすぎない。同じ緑でも、配置によって効き方がまるで違う。
第三に、垂直面の扱いである。生垣、壁面緑化、法面の植栽といった立ち上がった緑は、真上からはほとんど面積をもたないが、歩行者の視野には大きく入る。都市において人が「緑が多い」と感じる場面の少なからぬ部分が、この垂直な緑によって支えられている。
第四に、アクセスの有無である。上からの観測は、そこに立ち入れるかどうかを問わない。柵に囲まれた工場の緑地も、私有地の屋敷林も、緑被率には算入される。だが歩行者にとって、入れない緑と入れる緑は同じではない。緑被率が高いのに緑を感じにくい地区、緑被率は低いのに緑を身近に感じる地区——この逆転は、しばしばアクセスの差から生じる。
7.3 公園という単位が果たす役割
この観点から見ると、公園という制度上の単位には、リモートセンシングが直接には測れない情報が含まれている。すなわち、そこが誰でも入れる場所であること、そして誰かが管理していることである。衛星画像は緑の有無を教えるが、その緑が公共の緑かどうかは教えない。したがって、緑被率のような面的な指標と、公園の位置・面積・種別といった台帳の情報とは、互いに補い合う関係にある。どちらか一方では、まちの緑を語り切れない。
実務的な含意は次のようになる。地区ごとの緑の総量を把握するには衛星由来の緑被率が向く。歩いて心地よいまちなみを評価するには緑視率が向く。街路樹や公園の高木の管理計画には樹冠被覆率が向く。そして誰がその緑にアクセスできるかを問うには、公園の台帳と、そこまでの距離の計算が必要になる。指標の選択は、問いの選択なのである。
註:緑視率は撮影の方法——レンズの画角、カメラの高さ、向き、季節、天候——によって大きく変わる。数値を比べるときは、撮影の条件が揃っているかを必ず確かめる必要がある。条件を揃えずに得た値の比較は、意味をなさない。
8. 公園の緑をモニタリングする手順の設計
ここまでの検討を、実行可能な手順に組み直す。想定するのは、無償で公開されている衛星データを用いて、市町村の公園群の緑を継続的に観測する、という作業である。手順を七つの段階に分け、各段階で決めるべきことと、そこで生じる誤りの型を示す。実際の解析は本稿では行っていないため、以下は設計であって結果報告ではない。
8.1 第一段階:問いを決める
最初に決めるべきは、何を知りたいのかである。「公園の緑を測る」という言い方は曖昧であり、少なくとも三つの異なる問いを含んでいる。(a)ある時点での園ごとの緑の量を知りたいのか。(b)同じ園の緑が時間とともにどう変わったかを知りたいのか。(c)緑の多い地区と少ない地区を面として比べたいのか。この三つは必要なデータも精度も違う。(a)は最も高い空間分解能を要し、(b)は同じ条件の画像を複数時点そろえる必要があり、(c)は粗い画像でも成り立つ。問いを決めずにデータを集めると、どの問いにも答えられない中途半端な結果になる。
8.2 第二段階:範囲を定義する
次に、どこを公園の範囲とみなすかを決める。台帳に面積が載っていても、地図上の境界線がなければ画像から切り出せない。境界の線をどこに引くかは自明ではない。園路の外側の植え込みは園内か。園に接する河川堤防の草地は園内か。隣の学校のグラウンドとの境目はどこか。これらを一つひとつ決め、決めた内容を記録に残すことが、後の比較可能性を支える。
あわせて、境界の内側から一定の幅を除いた範囲——いわば内側の芯——を、混合画素を避けるための解析範囲として別に用意しておくとよい。前節で述べたように、画素の一辺と同じ程度の幅を内側に取れば、周囲の道路や住宅の影響を受けにくい画素だけを扱える。ただし小さな園では芯が残らない。芯が残らない園については、その旨を記録し、別の方法に回す。
8.3 第三段階:データを選び、日を選ぶ
使う衛星系列を決めたら、次は観測日の選定である。ここでの判断はしばしば結果を左右する。第一に、雲である。雲と雲の影に覆われた画素は使えない。日本の夏は雲の多い季節であり、狙った日の画像が使えるとは限らない。第二に、季節である。落葉樹の有無によって、同じ公園でも季節で緑の量はまったく違う。比較するなら、必ず同じ季節同士で比べる。理想は、複数年にわたって同じ月の同じような日を選ぶことである。第三に、太陽高度である。太陽が低いほど影が長く伸び、影の中の画素が増える。第四に、直前の天候である。降雨の直後は地表が濡れ、反射のかたちが変わる。
- 雲・雲影のかかっていない画素を確保できる日を選ぶ
- 比較する年どうしで、月と季節をそろえる
- 太陽高度の低い時期・時間帯の画像は影の影響を見込む
- 降雨直後の画像は避けるか、湿潤の影響を注記する
- 同一のセンサー・同一の処理水準の製品でそろえる
8.4 第四段階:前処理をそろえる
衛星から配布される画像には、処理の水準がいくつかある。センサーが記録した生の値に近いもの、位置を地図に合わせたもの、大気の影響を差し引いて地表の反射率に換算したもの——といった段階である。植生指数を年ごとに比べるのであれば、大気補正まで済んだ製品を用いるのが原則である。大気の状態は日によって変わり、補正なしの値の比較は大気の変動を植生の変動と取り違える危険をもつ。あわせて、位置合わせの精度も確認する。年ごとに画像が数メートルずれていれば、小さな公園では別の場所を比べてしまう。
8.5 第五段階:指数を計算し、集計する
前処理の済んだ画像から植生指数を計算し、公園の範囲ごとに集計する。集計の方法は目的による。園全体の緑の「厚み」を見るなら平均値が、緑と非緑の面積比を見るなら閾値で二値化したうえでの画素数の数え上げが、緑のむらを見るなら分位点や標準偏差が適する。ここで重要なのは、代表値を一つだけ出して満足しないことである。平均値が同じでも、園全体が一様に中程度の緑である場合と、半分が濃い樹林で半分が裸地である場合とでは、公園としての性格はまったく違う。分布そのものを見る習慣をもちたい。
8.6 第六段階:変化を判定する
二つの時点の値を引き算すれば差は出る。しかし、その差が意味のある変化なのか、観測条件の揺らぎなのかを判定しなければ、結論は出せない。判定の基本は、変化していないと考えられる場所——舗装された駐車場、建物の屋根、大きな水面——を基準点として選び、そこでの見かけの変化の大きさを測ることである。基準点でも同じくらいの差が出ているなら、その差は観測条件の揺らぎとみなすべきである。基準点では差がほとんどなく、公園でだけ大きな差が出たなら、実際の変化を疑ってよい。統計的な検定の枠組みを持ち込む前に、この素朴な確認を行うことを勧めたい。
8.7 第七段階:地上で確かめる
最後の段階が最も重要である。空から得た結果は、地上で確かめられて初めて意味をもつ。ある園の指数が下がったとき、その原因は伐採かもしれず、剪定かもしれず、病害かもしれず、あるいは工事の仮囲いかもしれない。画像はどれが起きたかを教えない。現地に行って見れば、たいてい一目で分かる。したがって、空からの観測の最も現実的な役割は、限られた人手をどこに向けるかを決めるための絞り込みである。全園を毎年見て回れないからこそ、変化の兆しが出た園を優先して見に行く。この使い方であれば、指数の絶対値の正確さはさほど問題にならず、相対的な変化を拾えれば足りる。
註:一連の手順を通じて、判断のたびに「なぜそう決めたか」を書き残すことが望ましい。境界の引き方、日の選び方、閾値の決め方——これらはいずれも解析者の裁量であり、記録がなければ数年後の自分も含めて誰も再現できない。再現できない数値は、比較の基準になりえない。
9. 磐田市の公園への示唆
本節では、これまでの議論を磐田市の公園データに当てはめる。当サイト ATAWI PARK は、磐田市のオープンデータ「都市公園一覧」の94行と、市の施設ガイドにのみ掲載されている6園を合わせた100園を収録している。オープンデータは CC BY 3.0 のもとで公開されており、出典を示せば二次利用できる。ここで確認できるのは、園名・所在する地区・都市公園法上の種別・面積、そしてトイレや遊具の有無といったフラグである。緑の量に関する情報は含まれていない。だからこそ、空からの観測が補いうる余地がある。ただし当サイトの現地踏査はまだ始まっておらず、踏査済の園は0園である。以下は「磐田市の緑がこうである」という報告ではなく、「磐田市の公園データを空から測ろうとすると、何が問題になるか」の整理である。
9.1 種別の構成が示す、規模の偏り
100園の種別の内訳は、街区公園51園、近隣公園14園、都市緑地10園、法対象外・その他6園、地区公園4園、総合公園・運動公園・風致公園が各3園、広場公園と緑道が各2園、墓園と歴史公園が各1園である。数の上では街区公園が過半を占める。都市公園法施行令および国の標準では、街区公園の標準面積は0.25ヘクタール・誘致距離250メートル、近隣公園は2ヘクタール・500メートル、地区公園は4ヘクタール・1キロメートルとされている。つまり磐田市の公園の半数以上は、標準規模で見れば2,500平方メートル前後の小さな園なのである。
この規模の偏りは、リモートセンシングにとって決定的な意味をもつ。第6節で述べたとおり、周囲の影響を受けない内部の画素を確保するには、おおむね画素の一辺の三倍程度の辺長が必要になる。標準規模の街区公園を一辺50メートルの正方形とみなすと、10メートル四方の画素であれば、内側に一辺30メートル・9画素程度の芯が残る。しかし30メートル四方の画素では、芯はまったく残らない。街区公園を個別に扱いたいのであれば、10メートル級の分解能が事実上の下限になる、ということである。
9.2 大きな園と、極端に小さな園
面積の分布は幅広い。最大は竜洋海洋公園の221,722平方メートルで、正方形に均せば一辺およそ470メートルに相当する。次いでかぶと塚公園が106,982平方メートル(一辺およそ330メートル相当)、つつじ公園が61,937平方メートル(同およそ250メートル)、磐田スポーツ交流の里ゆめりあが57,500平方メートル、兎山公園が56,193平方メートル、福田公園が49,620平方メートル、中央公園が41,642平方メートル、城山球場が41,081平方メートルと続く。30メートル四方の画素で数えれば、竜洋海洋公園は約246画素、かぶと塚公園は約119画素に相当する。この規模であれば、内部の画素だけを用いて園内の緑の分布を論じることができる。熱赤外の100メートル四方の画素で内部の画素を確保するとなると条件はさらに厳しく、一辺300メートル級の広がりが要るため、対象は竜洋海洋公園やかぶと塚公園のような園に限られる。
他方、極端に小さな園も収録されている。二之宮東第2緑地は17平方メートル、豊田上新屋ポケットパークは156平方メートル、豊田第1緑地は254平方メートル、豊田森下ポケットパークは286平方メートル、二之宮東第1緑地は299平方メートル、県営磐田団地第2緑地は314平方メートル、磐田ららシティ西ポケットパークは362平方メートル、見付本通広場公園は372平方メートルである。10メートル四方の画素が100平方メートルであることを思えば、これらの園は数画素、あるいは一画素にも満たない。衛星画像でこれらの緑を測ることは原理的に不可能であり、航空写真の判読か、地上での実測に頼るほかない。都市緑地10園と広場公園2園の少なからぬ部分がこの規模帯にあることは、市域の緑の議論を空からの観測だけで完結させられないことを示している。
9.3 地区という単位の使い方
個別の園が小さすぎるなら、単位を上げればよい。当サイトは磐田市を9地区に分けて公園を整理している。豊田28園、見付21園、中泉14園、御厨13園、竜洋13園、福田4園、豊岡3園、南部2園、向陽2園である。地区を単位とすれば、30メートル四方の画素でも十分な数の画素が得られ、地区ごとの緑被率を面として比較できる。ただしこのとき測っているのは公園の緑ではなく、地区全体の緑——農地・社寺林・河川敷・民有地の庭木を含む——である。公園の緑と地区の緑を混同しないことが肝要である。両者を別々に測り、突き合わせてこそ、「公園の緑は地区の緑のどれだけを担っているか」という問いが立てられる。
9.4 面積不明の6園と、画像から測れること
収録100園のうち、都市公園法の対象外として扱われている6園については、オープンデータに面積の記載がなく、当サイトでも面積を不明としている。こうした園については、空からの観測が台帳を補いうる数少ない場面である。境界を地図と画像から確定できれば、面積そのものを推定できるからである。もっとも、境界の確定こそが最も判断を要する作業であり、市の管理部局——都市整備課(電話 0538-37-4806)が管理課として示されている——の把握する区域と照らし合わせずに、画像だけで境界を決めることは適切でない。空からの観測は台帳を置き換えるものではなく、台帳と対話する道具である。
最後に、踏査が0園であるという事実の意味を確認しておきたい。第8節の第七段階で述べたとおり、空からの観測の結論は地上での確認を経て初めて確定する。当サイトはその確認をこれから始める段階にある。したがって、仮にいま磐田市の公園について衛星画像から何らかの数値を算出したとしても、それは検証を欠いた数値にとどまる。本稿があえて具体的な数値を一つも示さなかったのは、この順序を守るためである。踏査で得られる樹種・樹冠の広がり・地表の材料といった地上の事実こそが、空から得た数値に意味を与える。
10. 結論と今後の課題
本稿は、空から緑を数えるという行為の原理と限界を整理し、それを市町村の公園という具体的な対象に適用する手順を設計してきた。結論を四点にまとめる。
10.1 四つの結論
第一に、空から緑が見えるのは、緑色が見えるからではなく、生きた葉が可視の赤を強く吸収し近赤外を強く反射するという分光反射特性をもつからである。この落差を一つの数値に要約したものが植生指数であり、差を和で割る正規化によって太陽光の強さの違いを打ち消している。この原理を理解していれば、人工の緑が指標に拾われない理由も、落葉期に値が下がる理由も、影の中で値が不安定になる理由も、すべて同じ枠組みで説明できる。
第二に、植生指数は植生の量そのものではなく代理変数である。緑が濃くなるほど値の伸びが鈍る飽和、疎らな植生での下地の影響、影の効果——これらの限界を承知したうえで、絶対値ではなく相対的な差と時間的な変化に用いるのが、この指標の正しい使い方である。熱赤外から得られる地表面温度についても同様で、それは気温ではなく地表の表面の温度であり、公園の涼しさの一側面を示すにすぎない。
第三に、四つの分解能——空間・時間・波長・階調——の間には交換関係があり、細かく見ようとすれば観測は狭く間遠になる。都市公園にとってこの制約が最も厳しく現れるのが、画素の大きさと園の大きさの関係である。周囲の影響を受けない内部の画素を確保するには画素の一辺の三倍程度の辺長が要る、という素朴な目安が、どの規模の園をどの分解能で扱えるかを決めている。標準規模の街区公園は10メートル級の分解能でようやく扱え、数百平方メートル以下の緑地はどの衛星でも扱えない。
第四に、緑被率・樹冠被覆率・緑視率は互いに置き換えられない別々の指標である。上から見た緑と歩行者の視野に映る緑は、遮蔽・面積の重みづけ・垂直面の扱い・アクセスの有無という四つの理由で系統的にずれる。どの指標を選ぶかは、どの問いを立てるかと同じことである。そして、その緑が誰でも入れる場所にあるかどうかという情報は、いかなる画像にも写らない。公園という制度上の単位が担っているのは、まさにその情報である。
10.2 本稿の限界
本稿の最大の限界は、実際の画像解析を伴っていないことである。手順を設計しただけであり、その手順が磐田市の条件のもとで実際に機能するかどうかは検証されていない。雲の出現しやすさ、公園境界の描きやすさ、周囲の建物の高さがもたらす影の影響——いずれも、実際にやってみなければ分からない事柄である。したがって本稿の記述は、作業の見取り図として読まれるべきであり、結果の予告として読まれるべきではない。
第二の限界は、扱った技術が光学センサーに限られていることである。マイクロ波を自ら照射して反射を測る合成開口レーダーは、雲を透過して観測できるという大きな利点をもち、樹木の構造の推定にも用いられる。レーザーによる測距は、樹高や樹冠の立体構造を直接測ることができ、緑の「量」を体積として捉える道を開く。これらは本稿の範囲を超えるが、緑被率という平面的な指標の限界を補う技術として、今後検討されるべきものである。
10.3 今後の課題
今後の課題を三つ挙げる。第一に、当サイトの踏査との接続である。踏査で記録される樹木の有無、日陰の位置、地表の材料といった地上の事実は、空から得た指標を検証するための地上参照データとなりうる。踏査の記録項目を設計する段階で、この用途を意識しておくことには意味がある。逆に、空からの観測で緑の変化が疑われた園を優先して踏査する、という順序も考えられる。両者は一方通行ではなく循環する関係にある。
第二に、緑視率の測定である。歩行者が感じる緑は、公園の魅力にも、日陰の有無にも、歩いて行きたくなるかどうかにも関わる。地上の写真から緑視率を算出する作業は、特別な機材を要さず、市民参加とも相性がよい。撮影地点・向き・季節・時刻を定めた上で継続的に撮り続ける仕組みを設計できれば、衛星では届かない尺度の記録が積み上がる。
第三に、指標と制度の接続である。都市緑地法に基づく緑の基本計画は、市町村が緑の保全と創出の方針を定める枠組みであり、その進捗を測る指標として緑被率が用いられうる。しかし本稿で見てきたとおり、緑被率は測り方の細部——画素の大きさ、観測日、閾値、境界の引き方——によって値が動く。指標を制度に組み込むのであれば、値そのものよりも、測り方を明文化し、年ごとに同じ手続きで測り続けることのほうが重要である。同じ物差しで測り続けること。それが、印象の言葉を比較可能な言葉に変えるための、最も地味で最も確実な条件である。
註:本稿は解析結果の報告ではなく方法論の論考であり、磐田市の緑被率や地表面温度に関する具体的な数値は一切示していない。示された面積・園数・種別・地区名は、磐田市のオープンデータおよび市の施設ガイドに由来する当サイトの収録データの範囲にとどまる。
参考文献
- J. W. ラウズ、R. H. ハース、J. A. シェル、D. W. ディアリング(1974)「Monitoring vegetation systems in the Great Plains with ERTS」Third ERTS Symposium, NASA SP-351
- C. J. タッカー(1979)「Red and photographic infrared linear combinations for monitoring vegetation」Remote Sensing of Environment, 8(2)
- A. R. ヒューテ(1988)「A soil-adjusted vegetation index (SAVI)」Remote Sensing of Environment, 25(3)
- T. M. リレサンド、R. W. キーファー、J. W. チップマン『Remote Sensing and Image Interpretation』(John Wiley & Sons)
- J. R. ジェンセン『Remote Sensing of the Environment: An Earth Resource Perspective』(Pearson)
- R. A. スプロンケン=スミス、T. R. オーク(1998)「The thermal regime of urban parks in two cities with different summer climates」International Journal of Remote Sensing, 19(11)
- T. R. オーク(1987)『Boundary Layer Climates』第2版(Routledge)
- 米国地質調査所(USGS)/NASA ランドサット計画(Landsat 1〜9)の観測仕様資料
- 欧州宇宙機関(ESA)コペルニクス計画 センチネル2号(Sentinel-2)ユーザーハンドブック
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)の観測仕様資料
- 国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」(空中写真の公開)
- 都市緑地法(昭和48年法律第72号)——緑の基本計画の根拠法
- 都市公園法(昭和31年法律第79号)・都市公園法施行令(国土交通省 都市公園のページ)
- 環境省「ヒートアイランド対策ガイドライン」(平成24年改訂版)
- 国土交通省「都市公園における遊具の安全確保に関する指針(改訂第3版)」(令和6年6月)
- 磐田市オープンデータ「都市公園一覧」(CC BY 3.0・出典:磐田市)
- 磐田市 施設ガイド(公園)
本稿は ATAWI PARK 編集部による総説的な論考であり、学会誌等の査読を経た学術論文ではありません。引用は広く知られた著作・公的資料に限り、磐田市固有の事実は当サイトのデータベースと磐田市の公開情報にもとづきます。個々の公園の設備・状態は現地でご確認ください。医療・安全に関する判断は医療機関・関係機関の指示を優先してください。